──今回のアルバム『熱帯JAZZ楽団 IX~Mas Tropical!~』も、二度と同じ演奏演奏をできないものばかりですね。
カルロス:だって、二、三回しか演んないですから。基本的にはスタジオに全員入って、“せーの”で、クリックいっさい使わないし。ステージではこの3倍から5倍はスゴイことになりますよ(笑)。
──アルバムをじっくり聴かせてもらって、こじんまりまとまったものを作っても面白くないんだよ、というカンジがよく分かります。パーカッションにしても、ベースの高橋ゲタ夫さんにしても自由で。一番落ち着いて演奏してるのはドラムの神保さんかもしれない。
カルロス:神保さんは本当にね、全てをぴしっとまとめてくれる。後は野放し状態みたいな。
──コスマスさんも好き勝手にやってる。
カルロス:彼は、どっか行っちゃうカンジがなくなったら、コスマスじゃなくなっちゃう(笑)。
──さて、熱帯JAZZ楽団はツアーがあるんですよね。
カルロス:7月にやります。札幌、大阪、鳥取、東京と。夏場はまたジャズフェスもありますし、秋にもコンサートが入ってますんで。今年は例年よりちょっと多めで、あちこち行ってみたいなと。
──こういう音楽が、がんがん普通に流れるような状況であってほしいですね。
カルロス:ラテンに限らず、生の音を楽しんで欲しいですね。また戻ってきてるじゃないですか。一時、コンピューターだったですけど。やっぱり生っていいですよね。生の塊ですからね、ライブってのは。
──最近は、新しいラテンのイメージを持って、潜在的にパーカッションの音を聴きたいという人が、けっこう増えてる気がします。それから、女性がサルサのダンスを習いだしている。こういうシーンが増えつつあるのに、熱帯JAZZ楽団みたいなバンドとなかなか融合してこない。いいバンドができて、いい楽曲を届けるっていうラテンの盛り上がりなんじゃなくて、最初に楽器やラテンの流行だけがある。
カルロス:僕は全然イヤじゃないし、すごくいいと思いますよ。デ・ラ・ルスで帰ってきてツアー始めた頃は、踊れる人がいなかったですもの。しょうがないからデ・ラ・ルスのコンサートが始まる前に、お客さんを集めてレッスンしたんです。そういうのをずっと続けていて、そういう中から先生がいっぱい出てきた。その当時は今の状況が考えられなかったですね。それから、打楽器にはストレス解消のセラピーみたいな効果もあって、今すごく盛んになってるんですよ。子供の教育もそうだし、企業のストレス解消セラピーにも。
──カルロスさんは、今の日本人よりテンションが高いですね。それって、ずっとサルサという音楽と接してきたことと関係ありますか?
カルロス:関係あります。普段、家ではあんまり聴かないんですよ。でも、音楽がかかった瞬間にじっとしていられなくなっちゃう。向こうへ行って、ラティーノと仕事したり生活したりすると、やっぱり彼らは人間としてのパワーがスゴイですよ。何に対してもへこたれないですから。常にポジティブにしかモノを考えない、みたいな人達だから。この音楽があるからこういう人たちなのか。彼らだから、こういう音楽なのか。
──今の若い子達がサルサを踊るというのは、少し変わってきてるんでしょうね。ファッション誌でも、ラテン系のファッションは注目されてますしね。
カルロス:向こうでは、女性はセクシーであること、男はマッチョであることがすごく重要なんですよ。クラブとか行っても、何の恥ずかしげもなく上手ければ知らない人とでも一緒に踊るし、自分の彼女と二人で来てても、違う女の子と一緒に踊るし。不思議なカンジなんですよね、日本人からすると。陰にこもってない、というか。そういうライフスタイルだから。そういう大らかな感じが日本の中でも出てくれば面白いと思いますね。