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──アルバム・タイトル『primary colors』の意味を教えて下さい。
鈴木大輔(Key):光の三原色ってことで、赤と青と緑なんですけど、3つの光を一点に集めると白になるんですね。で、今回のアルバムであったりシングルというのを白で統一していて、ほかにも原色という意味もあるので、一曲一曲色のある曲の集合ということで『primary colors』と名付けました。
──いろいろな要素が詰まったアルバムということで、たとえば「DAY STAR」では夏と太陽、「moon gate」では秋と月がテーマだったりして、それを1枚のアルバムにするのは難しくありませんでしたか?
鈴木:そうですね、今回シングル曲が多く入ることは分かっていたので、ただのシングルの寄せ集めみたいにはしたくなかったんですね。それ以外の新曲5曲の選曲に苦労しました。
──でも、頭から終わりまでday after tomorrowっぽくまとまっている感じを受けました。
鈴木:1stアルバムのときよりは“手探り感”はなくなったと思うんですよ。day after tomorrowっていうイメージをどこに、どうすればいいのかっていうのが見えなかったんで。今回はシングルを4枚リリースして、なんか自分たちでおぼろげながらにも見えてきたものがあって、それでじゃないですかね。テーマ的には“こうしよう”ってのは決めてなかったです。
──音の部分でギターの音色もそうですし、シンセサイザーの使い方など非常に’80年代っぽさを感じたのですが、これは今回のアルバムで重視したことですか? 鈴木:そうですね、たとえばM3「フィットネス」とかだと、ブラスの音とかもわざと昔のディスコとかで使われていたMKS80というブラスの音をそのまま使ってみたりとか、新旧の機材を織り交ぜているんで、そういったところもあるかもしれないですね。
──その「フィットネス」ですが、オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」の影響を感じたのですが?
鈴木:フィジカルだからフィットネス(笑)。リスペクトみたいな。
北野正人(G):ギターが入ることで、一層そうなってますね。ポール・ジャクソンJR.が弾いてるという感じをもろに狙ったので。
──結構お二人の好きな音楽が反映されたという。
北野:好きと言うより、古きよきものとして。レコーディングのときにいろんなアイディアが出てくるんですね。“ここはこれっぽくやったら面白いよ”ってのがあって。それを引き出してきて入れてるって感じですね。あとは僕がすごくミーハーで、小さいころは何でも聴いてた人なんで、だからその時“よかった”と思えたものを今出したいという。
──いろいろな歌い方に挑戦していますが、ヴォーカリストとしての新しいチャレンジや成長はありましたか?
misono(Vo):自分以外の人の書いた歌詞を歌うっていうことかな。うちは今回新曲の5曲とも人の歌詞を歌ったんで。1年間いろいろな主人公を作って、歌詞を書いて主人公になりきってレコーディングするっていう挑戦だったんですけど。もうデビューしてから2年目なんで、いろいろな歌詞を歌っていきたいなって。たとえば「螢火」だったら大人っぽく歌ってみたいと思うし。 鈴木:今回アルバム全体のテーマってほど大きいものじゃなかったんですけど、misonoには“ヴォーカリストとしてのmisono”に徹してもらおうという話がありまして。歌に専念してもらったんですね。歌であったりヴィジュアルであったり。だから今回アルバムがジャケットもmisono一人でやってもらったりして。その2点に集中してもらいました。
──今回鈴木さんと北野さんが作詞されているということで、性別も男で、歌詞で歌われているより年齢も若干上ということで、難しくありませんでしたか?
鈴木:年齢的というよりは、女の人というのを考えるのが難しかったですね。僕は女の人の視点で詞を書いたんですけど、主人公の軸というか。
北野:僕は基本的には男性でも女性でも、どちらに取れるように書きました。でも、男性が女性のことを書いた方が伝わるんでしょうね。深いんですよね。映画でも『ロリータ』とか『ラマン』とか女性の心を描写するのがすごい上手かったりとかするんで。
──そういう詞を歌うのってどうでしたか?
misino:自分で書いた歌詞を歌うのは、主人公になりきっているんで、結構受け止められるんですけど。人の歌詞を歌うときって、やっぱり難しかったですね。だから、あえて何も考えずに、そのままレコーディングするって感じでした。何か自分をフラットにするというか、全てクリアな状態にして歌うっていう感じでしたね。
──「少女のままでいたあの頃」という曲がありますが、misonoさんは自分を大人の女性か、または少女の部分もあるのか、どういう風に思いますか?
misono:大人だなぁって言われるときもあれば、自分で子供だなぁって思うときもある。
──「Dear Friends」でYoshi(シリーズで100万部を超えた小説『Deep Love』作者。もとは携帯サイトの連載)さんとの共作はいかがでしたか?
misono:楽しかったです。人と何かをするのはすごく勉強にもなるし。経験とか言葉を交換し合いながら作っていったって感じですね。
──「Dear Friends」のほか、「These Days」など友情がテーマの曲があったのですが、実際の友情や友達づきあいというのはどうですか? 忙しいのでなかなか会えないと思いますが。
misono:会えないですね。会えないというか会わない。今の自分を見せれるか?ってのがあって。(メンバーに向かって)そういうのない? メールとか電話だと、今のうちはこの人の話を受けれるんだろうか?って出る前に考えちゃう。家にいるときのうちってすごい静かで、いろいろ考えてたりして、今うちが“ピッ”って出て、いつもテレビに出ているmisonoになれるかっていったらなれない。だから、すごいうれしいことがあってうちに電話してるんだとしたら、うちが(暗い声で)“もしもし”って出ることによって、その人の気分も落ちさせるんじゃないかって。“え、どうしたの?”ってなっちゃうじゃないですか。そこまで考えるんですよね。だから電話はほとんどしない。
──歌詞が携帯とかがテーマだったりして、“あー、これ分かる”っていう感情移入できるものが多かったんですよね。
misono:とくに携帯でつながってる友達とか多くないですか? 携帯のアドレス帳にはすごい300件とかあるのに、このうち何人本当の友達なんやろうって思って。もし携帯のメモリが消えちゃったら、その友達も失っちゃうんじゃないかなって。
──じゃあ、あの歌詞はかなり本音だったと。
misono:そうです。
──小説『Dear Friends』の方は読んでみていかがでしたか?
misono:最初、小説の中で展開されている内容が、ウチには見たことも聞いたこともない世界だったんですよね。でもYoshiさん宛のメールであったりファンレターを見させてもらったりすると、“共感しました!”とか“あたしも実は……”というのが多かったんで、ああー、いまどきの女子中高生はこんな体験してるんだって感じましたね。
──今回『primary colors』が2枚目のフル・アルバム、今年の8月でデビュー丸2年ということで、キャリアをスタートしたときと一番変わったことは何ですか?
鈴木・北野:……(misonoを見つめる)。
misono:なんで二人うち見てるの?
鈴木:肥えたべ? misono:……うん。
──コンポーザーやプレイヤーとしてはいかがですか?
北野:機材は違うんですけど、曲の書き方も当時も同じ書き方だった気もします。多分あんまり変わってないんでしょうね。ちょっと手際がよくなったぐらいで。
鈴木:MacがOS 9からOS Xになった。これが一番違うと思う。作業環境のシステムが変わりましたね。あとは新しい機材も使っています。MINI moog、VOYAGERのSIGNATUREとか、マシン・ドラム、あとはサンプルの音色も新しいですね。リズムに関してはほとんどサンプルで音を重ねて作ってます。VOYAGERはベースとかを「Dear Friends」あたりから使い出したんですけど。
misono:自分ではほんとに何も変えずにやってますけどね。でも、変わってはいると思います。いろいろ勉強させてもらってるし、吸収できる人が多いので、(メンバーの)二人もそうだし、五十嵐さん(五十嵐 充・サウンドプロデューサー)もそうだし。視野はすごい広がりましたね。
──アルバムを出したということで、ファンとしてはツアーへの期待がふくらむところだと思いますが。
鈴木:やりたいとは思ってるんですけど、まだアルバムを作ったばかりなので、まだそこまでの段階ではない。まずアルバムの反応を見たい。シングルから言ってしまうと(2003年)8月の「DAY STAR」のちょっと前、6月とか7月とかからずっとレコーディングしてたんですよ。2週間前にマスタリングが上がって、その1日前までレコーディングしてたんで。
──作り手としての満足度は?
北野:すごくいいアルバムというのは自負してます。でも、自己満足のために曲に打ち込んでいる3人ではないんで。やっぱり対リスナー。ファンの方々に聴いてもらって、“よかった”って答えが一番僕らの手ごたえになるんで。だから、まとまると思うんです。全員畑がバラバラなんで。そこに自己満足を入れてしまうと聴けなくなってしまう。3人とも対リスナーでいいものを作るって思いが共通なんですね。
取材・文●編集部
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