【インタビュー】pachae、TVアニメ『この好き』ED主題歌に恋愛真理とシティポップ「シティの部分は17%」

■pachaeには普段は変態っていう一面が
■ストレートな恋愛を今まで歌ってない
──歌詞も、ストーリーの中からいろんなものをピックアップして?
音山:そうですね。この曲はどんな感じで書いていったか、いい意味で記憶がなくて。結構自然とできたんですよ。pachaeっぽくしようとかもなく、ストレート純愛アニメやから。で、個人的に推しポイントあって、Bメロの“お忍びたい”から、“誰にも渡さない”までのセクションは、えぐいぐらい韻を踏んでるんですよ。
──確かに。ここの怒涛の韻踏み具合はすごい。
音山:踏むなら踏み切らんと気持ち悪くて、でもめっちゃアニメのこと歌いたかったんですよ。この作品のことをまんま説明したぐらい歌詞で、しかも韻を踏めてたら、歌っててテンション上がるなと思ったんで。“お忍びたい”から“わざと悪態”ついてるし、“秘密の合図”も“素敵な芝居”と思ってる二人のシーンがいっぱいあるし、“見てて飽きない” “探り合い”は視聴者の目線ですけど、“止められない” “僕らの愛”とか、マジでこのアニメのことなんですよ。こんなにまんま書いてていいのか?っていうぐらいやけど、それで韻を踏むのがめっちゃムズくて、ここだけは死ぬほど書き直した記憶があります。Bメロに、記憶を全部持ってかれてますね(笑)。
──あはは。なるほど。
音山:サビは、会社内の恋愛に寄りすぎず、いろんな場所に当てはまるように書いてますけど。それはアニメを知る前に、この曲に出会ってくれた人にも届けたいから。ただ、届けたいけど、その人たちには「超純愛のラブソングです」とは聴いてほしくないっていうこだわりがあって。アニメを見てくれてる人には、そういう曲として聴いてほしいんですけど、先にpachaeの曲として出会った人には、pachaeには普段は変態っていう一面があるんで(笑)。めっちゃストレートな恋愛を今まで歌ってきてないから、他の人の歌詞にないような表現は入れときたいっていうのもあって、ラスサビの“昨日の言い合いは覚えたままで好きだよ”っていうフレーズを入れたんですよ。それって、ラブソングではあんまり聴かん歌詞だなと思って。
──というと?
音山:普通は、言い合いがないことを大事にするじゃないですか。ストレートな純愛ソングだと、言い合いがあったけど仲直りして幸せ、みたいな歌詞ばっかりだから。でも、最初に言ってた話にも通じるんですけど、結局、嫌いなところがあってこそ好き、ということはあると思うし、“昨日の言い合いは覚えたままで”っていうのは、仲直りしてない説もあるんですよね。
──確かに。
音山:言い合いの内容は全部覚えてて、未だに腹立ってるけど、好きは絶対好きやから。っていう文章なんですよ。それは絶対にストレートなラブソングには入らない、でも“昨日の言い合いは覚えたままで好きだよ”というのが、真理やと思うんで。僕は。
──うーん。音山さんに一票。沁みますね、ここ。
音山:やった。ありがとうございます。恋愛でも、友達でも、何においても、たとえば今めっちゃ親友の奴とか、喧嘩したこともちゃんと覚えた上で、もう忘れた、とはなってないと思うんですよ。逆に“もう忘れた”は危険なんですよ。もう一回爆発する可能性があるから。でも「あれは腹立ったな。今でもお前うざいわ」って言い合える奴らって、めっちゃ仲いいじゃないですか。「別に許してないけどな」ぐらいの感じが。恋人にも、それはあるよなって思うんですね。「ここだけはこいつ意味わからんねん。でもなんだかんだそういうとこもいい」みたいな。

──いいインタビューだ(笑)。繋がりましたね。最初の話から曲の話まで。
音山:急ハンドルで(笑)。
──急ハンドルじゃないですよ、すごく滑らかに(笑)。あと、サウンド面のこだわりについても聞いておきたいですけど。pachaeにはハイブリッド・シティポップという看板があって、その要素が良くに強く出た曲だなぁと思うんですね。メロウで、緻密で、グルーヴィーで。
音山:シティポップの部分は、まだ見つけられてないところもあるんですよね。“ハイブリッド・シティポップ”なんで、ただのシティではないけど、今回は、いわゆる王道のシティの部分が17%ぐらいは入ってるかな?と。
──細かいな(笑)。
音山:pachaeは、最初の頃のほうがより“シティ味”が強かったと思ってるんですけど、シティポップってすごく複雑なジャンルやから、それついて言及する勇気が僕にはなくて。「ダンシング・エモーション」(2024年夏リリースのシングル)はポップやけど、シティは0.002%ぐらいだったし(笑)。それに比べて「ふたりじめ」は17%。その振り幅を出させてもらってるのが楽しいっすよね。「ダンシング・エモーション」と、作った人が同じじゃない。
──それくらいモードが違う。
音山:「ダンシング・エモーション」の人は、“昨日の言い合い”を忘れそうやから(笑)。そういう、テンション感の全然違う曲だからこそ、幅広く届いてくれたらと思います。今までpachaeのファンじゃなかった、まだ見つけれてなかった方が、「ふたりじめ」でpachaeを見つけてくれて、また「私はこれよりこっちのほうが好きだな」とか、そういうコメントがたくさん出て来るぐらい大きい曲になったら、と思ってます。「ふたりじめ」が、というか、pachaeの全曲で。







