【インタビュー】ゆるめるモ!、「世の中を“こちら側”にしたい」

2024年に6人体制になったゆるめるモ!が、初のフルアルバム『虚無泥棒』をリリースした。
この世知辛い世の中で“虚無”を感じることは日常茶飯事になりつつある。が、そんな心持ちを打破してくれるのが、ゆるめるモ!の音楽。はちゃめちゃで、かわいくて、エモくて……もしかするとこれはいろんな気持ちを代弁してくれる特効薬なのでは、とも思わせてくれる。そんな楽曲が詰まった『虚無泥棒』。メンバーたちの想いを聞くことができたので、ぜひチェックしてもらいたい。
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──ゆるめるモ!は昨年5月に、らきさん、まことさんが加入して現在の体制となりましたが、この1年5ヶ月でグループの雰囲気って変わりましたか?
ねるん:わんぱくさが加わったような気がしていて。個人的にはコミュニケーションを多く取れていないんですけど、みんな和気藹々としているように見えます。
なに:もともといた4人(なに、ねるん、へそ、めあり)も個性がバラバラなんですけど、さらに全然違うキャラクターの2人が入ったので、グループとしても可能性が広がったんじゃないかなと思います。
へそ:新しさが増したのかな。2人とも次世代って感じがしますし。
めあり:お客さんにとっても、ハマるキャラクターの選択肢が増えたことは大きいんじゃないかなと思います。

──らきさん、まことさんはゆるめるモ!として1年半近く活動してみて、改めて感じたことって何かありますか?
らき:加入したての頃ってやっぱりド緊張していたんですけど、その頃よりは馴染めてきたかな。
まこと:みんな自由だし、無理に喋りかけてこないから、こちらも無理に馴染もうとしなくてもスーッと入っていける感じがして。自然体でいられる場所だなと思いました。
へそ:でも、最近はどんどん自分から喋りかけてくれたりするようになったので、全然溶け込んできてるなって感じます。
──では、グループとして結束してきたなとか、絆みたいなものを感じられる瞬間ってこの1年半の間にありましたか?
めあり:ここまでが自然な流れすぎて、急に仲良くなったとかどんな瞬間にそう感じるようになったかとか、あまり記憶になくて。でも、大きなツアーが終わったあとに「どうだった?」とかワイワイ話しているときとか、移動中に楽しく話しているときには、距離が近づいたんだなと感じるかもしれないです。
なに:やっぱり最初の頃よりも、今のライブのほうが……別に振りとかが揃っているとか、そういうわけではないんですけど、みんながちゃんと良いものを届けたいっていう気持ちで臨んでいることが伝わってくることが多くて。そういう気持ちの面で、みんなの意識がどんどん揃ってきているのかなとは思います。
ねるん:ふざけるときはみんな一緒になってふざけることができるようになったし、この間ツアーファイナルを終えたんですけど、その直前にちょっと欲しかった素材についてみんなに投げ掛けたときに、心よく送ってくれて。みんなが人に対して優しい気持ちを持っていることは感じられましたし、喧嘩とか争いとか仲間外れとかもないので、それが何らかの絆みたいなものにはなっているのかなと思います。

──今ねるんさんがおっしゃった全国ツアー<もんもっちゃい夏あーっ!>に関しても、お話を聞かせてください。
まこと:今回のツアーでは毎回劇をやったんですけど、へそちゃんが劇を盛り上げるために小道具とか工作してきてくれて。ライブに関しても、なにちゃんは常に「こうしたらもっと良くなる」と歌に関して教えてくれたり、めありちゃんはダンスについて「こうしたらもっと揃うと思うよ」とアドバイスしてくれたり、ねるんちゃんはツアーファイナルでこういう素材が必要とかいろいろ考えてくれたりして、そういうみんなの頑張りに私たち新メンバーもついていこうと必死でした。
らき:そういう先輩の姿を見て、尊敬とか感謝の気持ちがより大きくなりました。
──そんな先輩メンバーの皆さんは、ツアーの手応えはいかがですか?
めあり:このツアー中に今回の新しいアルバム『虚無泥棒』の新曲を初披露していったので、ツアーと並行して新曲の振り入れも常にやっていたんです。既存の曲はすでにある程度高い完成度で披露できるけど、新曲に関しては未知数じゃないですか。でも、初披露のあとで映像を見返してみると、みんなの気持ちがひとつになれていることが伝わってきて、すごくいいなって……未来に期待が持てました。
へそ:私はもともと自分に対して自信もないし、めちゃくちゃネガティブで、自分から何か積極的に動くことも今まではなかったんですけど、さっきまことも言ってくれたように、今回は主に劇に関することを自分から進んで作ったりしていて。そういう意味では成長できたというか、楽しみながら殻を破ることができたのかなと思います。
なに:各々の個性とか存在感をちゃんと確立させてこれたからこそ、初めてやる曲に対しても信頼して任せられたし、それこそライブ中もいっぱいふざけられたし。自分自身も不安な気持ちとかなく、純粋にライブを楽しめた気がしています。
ねるん:今回のツアーはいろんなハプニングがあって、スムーズにいかないことも多かったんですけど、そういう場面になると自然とメンバーの一体感が感じられて、自然とみんなで乗り越えることができたんです。なので、メンバー全員いろんな対応力が付いたのかなと思っています
──そのツアー中に披露されてきた新曲を含むニューアルバム『虚無泥棒』が、ついにリリースされました。タイトルのインパクトがかなり強いですよね。
めあり:初めて聞く言葉だし、最初は「虚無」と「泥棒」がなかなか結び付かなくて。
へそ:ゆるめるモ!って今までタイトルが漢字のアルバムってなかったので、そこに驚きつつも、私たちが虚無を盗む泥棒になるというコンセプトを聞いて、「なるほど、そういう意味なのか。いいいね」と思いました。

──アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「虚無泥棒」に対しては、どんな印象を持ちましたか?
らき:足音とかパトカーのサイレンとかいろんな音が詰まっていて、メロディも音程がいろいろ動くので、最初に聴いたときはワクワクしました。ただ、途中で音程が変になるところがあって、最初は歌うのが難しかったんですけど、今はそこも含めて楽しいです。
──音源がリリースされる前からツアーで披露していたこの曲、ライブではどんな姿勢でパフォーマンスに臨みましたか?
なに:ゆるめるモ!には自分たちのそのときの気持ちで、心の底から曲を届けるっていうイメージがあるので、私的には音源が完成形というわけではなくて、ライブのたびに披露されるものこそ正解なのかなと思っていて。もちろん、初披露のときは振り付けをミスらないかなとか、歌詞を間違えたりしないかなっていう不安もありますけど、そこを乗り越えてこの6人でどれだけいい歌を届けられるかが、毎回楽しみなんですよ。今はもうリリースもされて、みんな音源もたくさん聴いているだろうけど、ライブでは音源よりもいい歌い方をする可能性もあるので、この「虚無泥棒」含めてアルバムの新曲はまだまだ成長していくんだろうな、それが今から楽しみだなと思っています。
──リードトラックとしてMVも制作された「真面目に生きて報われたいの♡」は、清竜人さんの提供楽曲です。
まこと:最初に清竜人さんご本人が歌っている音源をいただいたんですけど、清竜人さんの歌っているものはそのまま清竜人さんの曲なのに、自分たちが歌うとちゃんとゆるめるモ!の曲になるから、すごく不思議な気分でした。あと、ほかの新曲は歌うのが難しくて、結構悩んだりすることも多かったんですけど、この曲に関してはただただ楽しく歌えた気がします。
ねるん:「真面目に生きて報われたいの♡」というタイトルですけど、自分は報われたいと思うことがなくて。なので、歌詞を読んで「ああ、『報われたい』ってこういうことなのか」と初めてわかりました。曲調も、聴いただけだとシンプルに感じたんだけど、歌ってみると難しくて。なびくような歌い方をするところが多いですし、私はそういう歌の技術を持っていなかったから、レコーディングではいっぱい泣きました。
──最終的に掴めたものってありましたか?
ねるん:まだ歌詞を噛み砕いている最中で。自分の中になかった感情なので、歌うたびに不思議な気持ちになります。

──MVでは、めありさんがウェディングドレス姿を披露しています。
めあり:自分が着るんだってことに、まずびっくりして。そういう衣装を着ること自体にちょっと抵抗があったんですけど、撮影が始まると本当に楽しくなってきて、「ウェディングドレス、可愛いからいいかも」って思えるようになりました(笑)。それに、「こんなことして大丈夫なのかな?」って心配になるくらい、教会であんなにわちゃわちゃできることもそうそうないので、やれてよかったです。
──パジャマ姿からのギャップも激しいですものね。
めあり:食パンをくわえたパジャマ姿から始まって、ウェディングドレスを着たり、みんなはメイド姿になったりして。ファンの方たちも「みんな可愛い」っていっぱい言ってくれて、嬉しいいです。
──撮影中、何か印象に残っていることってありますか?
らき:自分は人生で一度は教会に行ってみたかったので、それを早くもクリアできて嬉しかったです。あと、みんなで野球をしている場面が、曲が終わったあとに入っているんですけど、あのシーンは3回くらい撮っていて。でも、途中で土砂降りになっちゃって、雷まで落ちてきて、テンションが上がりました(笑)。
まこと:自分は、そのらきちゃんの雷の話が好きすぎて(笑)。「近くに落ちた!」って、ずっと騒いでいたんですよ。
──そんなことが(笑)。アルバムの中からそれぞれお気に入りの1曲を挙げるとしたら、どれになりますか?
めあり:その日の気分によって変わるんですけど、今は「全肯定協奏曲」かな。この曲には「聴いて救われたい」側と「聴いた人を救っていきたい」側の2つの視点があるんですけど、自分はレコーディングでもライブでも「救っていきたい」側の気持ちで歌っていて。そういう設定も含めて、この曲が好きです。
へそ:私はライブで披露していても楽しい「ポンコツチキンヒーロー」です。歌い出しが自分のパートなんですけど、そのあとでみんなが横から〈ヒーロー〉っていうフレーズで加わってきて。そこを映像で見返すと、自分が応援されているみたいな気持ちになって、ちょっと幸せな気分に浸れます(笑)。
なに:ついつい聴き返しちゃうのは、さっきもお話した「虚無泥棒」なんですよ。いろんな音が入っているから、耳が楽しい曲ですし、歌詞は意外と意味がわからないところがあって、そこもすごく面白いなと思って。ライブではまだ1回しか披露していないので(※取材は10月上旬に実施)、これからどう育っていくのかも含めて楽しみな1曲です。
ねるん:私は「ちゃんとしま宣言」です。自分自身ちゃんとしていないのもあって、どこか自分のことを歌っているようでもあるので気に入っていますし、落ちサビに出てくる〈幸福追求〉というフレーズも……四文字熟語とか漢字を4つ並べた言葉が好きなので、そこも自分の中でポイントが高いです。
らき:自分は「エスケープダイブ」が一番楽しく歌えたと思っていて。曲中、デスボとか入っていて、自分がやりたかったことができた曲でもあるので嬉しかったですし、大音量で聴いても不愉快じゃない音で、爽快感を楽しめる曲だなと思います。
まこと:レコーディングでは歌うのが一番難しかったんですけど、「めんどくせんじゃ」という曲が気に入っています。ゆるめるモ!の曲って1曲1曲全然雰囲気が違うんですけど、個人的にはその中でもエモい系の曲が好きで。そういう曲を自分が歌えることがすごく嬉しいんです。

──オリジナルアルバム『虚無泥棒』が発売された1週間後には、ゆるめるモ!の過去の代表曲を今の6人で再録したミニアルバム『ロクロクビ!』もリリース。ライブを通して何度も歌ってきた曲も含まれているかと思いますが、改めて音源として残すことになり、皆さんの中で意識したことやレコーディングで気を付けたことってありますか?
ねるん:初めて再録をしたんですけど、すでに前のメンバーの声で形として残っている曲を自分が歌うことで、オリジナルよりも勝ることができるのかなと考えると、自分は勝てないと思っていて。でも、自分の声が入った再録曲を聴いたときに「あれ、意外といけとるかも」みたいに、 初めて自分を客観視することができたので、そういう意味では再録できて良かったなと思っています。らき:ねるんちゃんの意見とちょっと似てるんですけど、聴き慣れた声で完成していた曲たちに自分の声が入ったことで、最初は違和感があったけど、こうしてミニアルバムとして通して聴いてみたら、今のゆるめるモ!として表現できているなと思えるようになりました。
──この2枚のアルバムを聴けば、今のゆるめるモ!のことが理解できるはずですし、ライブを観てみたくなるんじゃないかと思いました。この自信作を経て、これからグループとして成し遂げたいこと、挑戦したいことって何かありますか?
まこと:すごく大きい会場でライブをして、それをちゃんとした映像で撮ってもらいたくて。で、YouTubeとかで検索したときに、そういう映像がちゃんと出てきて、いろんな人に観てもらって興味を持ってもらえるようになりたいです。
らき:お客さんがぎゅうぎゅうに入ったライブ会場でダイブができるくらい、普通に「売れたい」です。
めあり:ゆるめるモ!はちょくちょく海外に行ってライブもしているんですけど、日本のまだ届いていない人たちにもしっかり届けつつ、海外でライブをしたときに日本と同じような光景が見られるようにしていきたいです。
へそ:私はロックが好きで、よく好きなバンドのライブ映像を観るとお客さんが音楽にのめり込んで、アーティストとバン!とぶつかり合うみたいな光景がカッコいいなと思っているんです。なので、ゆるめるモ!もいつかそういうライブを実現させられるようになりたいです。
なに:グループとしての目標とか夢とはちょっと違うんですけど……ライブ用のイヤモニを作ってみたくて。そのためには、イヤモニが必要となるような規模の会場でライブができるようにならないといけないなと思っています。届くべき人がたくさんいる曲を歌っている自負はあるので、その届けなくちゃいけない人たちにしっかり届けて、規模が広がっていったら一番かな。
ねるん:私は今世の中で流行っているものの大半に対して、本当にセンスがないなとムカついているので(笑)、今までゆるめるモ!に興味がなかった人もどんどん引きずり込んで、世の中を“こちら側”にしたいです。
(ほかのメンバー、静かに頷く)
ねるん:え、わかってもらえるんだ。
らき:うん、わかる。
なに:わかるよ。本当に世の中センスない奴ばっかだもんな(笑)。
めあり:ありがとう、そう言ってくれて。大好き!

取材・文◎西廣智一
写真◎野村雄治
<ゆるめるモ!ツアー「ろくろ首の泥棒逃走記 -あなたの虚無をいただきます-」>
11/14(金)柏・ALIVE
11/22(土)上海・YGGDRASIL世界树劇場
12/7(日)広島・PEACE CAFE
12/21(土)町田・Nuttys
1/10(土),11(日)台北
1/18(日)東京・MilkyWay
2/8(日)横浜・BuzzFront
2/11(水)大阪・STARBOX
2/21(土)仙台・SpaceZero
2/22(日)水戸・SONIC
2/28(土)東京・渋谷Veats
3/1(日)兵庫・太陽と虎
and more
『虚無泥棒』
2025.09.30 RELEASE
配信リンク:https://linkco.re/yaXxRdSH
[収録曲]
- 虚無泥棒
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、顕 -aki- - ポンコツチキンヒーロー
作詞・作曲・編曲:KITA. - 真面目に生きて報われたいの♡
作詞・作曲:清竜人 編曲:SUKISHA - ちゃんとしま宣言
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、顕 -aki- - ロックンぼっち
作詞・作曲・編曲:KITA. - 全肯定協奏曲
作詞・作曲・編曲:KITA. - 推してよ♪
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、顕 -aki- - もんもっちゃいな!
作詞・作曲・編曲:KITA. - めんどくせんじゃ
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、安原兵衛
10 .泡べちゃアドベンチャー
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、顕 -aki-
- ニンニン
作詞:松本一起 作曲・編曲:RYU智秀 - 忍者NOW
作詞:小林愛 作曲:田家大知・ハシダカズマ(箱庭の室内楽) 編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)、顕 -aki- - 不死鳥火焔太鼓
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、四市田雲豹 - エスケープダイブ
作詞・作曲:田家大知 編曲:田家大知、顕 -aki-







