【インタビュー】トロット界の超新星sis、新曲とツアーで弾ける夏へ「世界を駆け抜けたい」

2025.08.08 19:26

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日本初の本格トロットオーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』から誕生した4人組ガールズグループ・sis。デビューシングル「愛のバッテリー」に引き続き、ヒャダインこと前山田健一が日本語詞とプロデュースを手がけた最新シングル「DING DONGください」は、哀愁あるキャッチーなメロディと遊び心あふれるセクシーな歌詞、そしてメンバー4人の個性が光る歌声が魅力の1曲だ。夏に全国3カ所でのワンマンツアーを控える彼女たちに、新曲と、グループの未来について話を聞いた。

■ほんの少しお姉さんになったsisを
■楽しんでいただけるのではないかと思います

──「DING DONGください」は、前作に続いてヒャダインさんが日本語詞/プロデュースを手がけた楽曲です。最初に聴いたときの印象はいかがでしたか?

太良理穂子:「愛のバッテリー」と同様、キャッチーな曲だと思いました。ヒャダインさんの和訳歌詞は、昭和・平成のレトロ感と令和らしい新しさが融合していて、すごくお気に入りです。

あさ陽あい:全体的に前作より大人っぽく、ちょっとセクシーな雰囲気を感じました。私たちにセクシーさが出せるのか不安もありましたが(笑)、精一杯頑張ったのでぜひ聴いてほしいです。

かのうみゆ:私はセクシーで色っぽい歌詞に驚きました。最初の「アーン」の吐息で、“あ、こういう方向なんだ!”と確信しましたね。でもアダルトすぎず、やわらかさや可愛らしさもある歌詞で、sisとしての新たな一面が見えた気がします。

MAKOTO.:原曲である韓国トロットの名曲「사랑의초인종(Doorbell Of Love)」は知っていたのですが、それ自体もトロットの中ではわりと現代的な印象で。sisのカバーでそれがどうなるんだろうと思って聴いたら、さらに“今っぽく”なっていて驚きました。ほんの少しお姉さんになったsisを楽しんでいただけるのではないかと思います。みんなも言ったように、確かにセクシーではあるのですが、私たちが歌うことでいやらしくならず、ヘルシーな色っぽさを出せたんじゃないかなって。こういう面もあるんだ!というのを表現できたのではないかと思います。

──サビには、「激しめに 抱いてよ」というMAKOTO.さんの情熱的なパートもありますよね。

MAKOTO.:そこは特に“ヘルシーに”歌いました(笑)。今の時代に合った、ちょうどいい艶っぽさを意識しています。トロットって“成人歌謡”の側面も強いので、そこもマッチするのかなと思います。

──他の御三方は、レコーディングで特に意識したことはありますか?

太良理穂子:言葉に歌をどう合わせていくか、という部分ですね。たとえば私の「甘いフェロモン ムンムンよ」というパートは、歌詞が歌詞だけに、歌のニュアンスがとても大事になってくると思って。……だってねぇ、そんなフレーズ言うことないじゃないですか(笑)。

MAKOTO.:みんな言わないよね(笑)。

かのうみゆ:言わない(笑)。

太良理穂子:だからこそ新鮮で、よし、うまく歌ってやろう!って気合が入りました。

MAKOTO.:あとは、「愛のバッテリー」のときにヒャダインさんが1人ひとりのキャラクター設定を作ってくださっていて。今回の「DING DONGください」にもそれが引き継がれていたりするので、基本的にはみんな、歌うときのイメージがしやすかったんじゃないかなって。

──改めて、そのキャラクター設定を教えてもらえますか?

MAKOTO.:今回はレコーディングの前に仮の録音があって、そこからヒャダインさんが本番用の設定を作ってくださいました。あいちゃんが一番、細かくて多かったよね? 何だっけ?

あさ陽あい:「ずぶ濡れの雨の中、傘も差さずに突っ立っているような愛の重い女」。

全員:あはははは!

太良理穂子:私は、「異国情緒の漂う、日本がちょっと下手なストロング女性」。たくましい感じです。

かのうみゆ:私は、「ロックで強い女」。

MAKOTO.:みゆは意外に本人のままだったかも。私は「心の中にすごく恨みを持っている感じで歌ってみて」とヒャダインさんに言われました。「声にもう、恨みがにじみ出てる感じ」って。

かのうみゆ:「恨みがにじみ出てる」って、ちょっと怖い(笑)。

太良理穂子:実はそのまんま?(笑)

MAKOTO.:いやいや(笑)。でも、奥歯をグッと嚙みしめるような気持ちで歌いました。ここまで細かく設定があると、本当に入り込みやすいよね。

かのうみゆ:うん。だからレコーディング、みんな「愛のバッテリー」のときより早く終わった。

MAKOTO.:結構すんなり歌えてたよね。ただ、私だけ最初の「アーン」のところが恥ずかしくて、一番ヘタクソだった(笑)。

かのうみゆ:私のほうがヘタだったよ。すごく薄い「アーン」しか出せなかった。

太良理穂子:私は「上手です」って言われました(笑)。

MAKOTO.:太良ちゃんとあいちゃんは、たぶんキレイにできてたんだと思う。

太良理穂子:もう、なりきったよ(笑)。

MAKOTO.:太良ちゃんの「アーン」が一番大きく入ってたと思う。

太良理穂子:え、本当!? 私、そこに結構懸けてたから……。

あさ陽あい:懸けてたんだ!

太良理穂子:「甘いフェロモン ムンムンよ」と同じで、普段言わない言葉だからこそ力が入ったっていうのもあるかも。

ヒャダイン&sis(左から、太良理穂子、かのうみゆ、MAKOTO.、あさ陽あい)

──カップリングに収録されている韓国語バージョンはいかがでしたか?

太良理穂子:今回もやっぱり苦戦しましたね。「愛のバッテリー」のときと同じで、韓国語ができるMAKOTO.ちゃんにたくさん助けてもらいました。

MAKOTO.:「ここは舌を巻いて」「ここは巻かないで」とか、かなり細かくアドバイスしました。最初は一音ずつ練習していく感じでしたね。日本語バージョンに出てくる韓国語の単語はカタカナで表記されているから、みなさんも真似しやすいと思うんですが、韓国語のバージョンでも、ある程度はちゃんと意味が通じる音で歌いたかったので……そこが難しかったです。

かのうみゆ:自分では教わったとおりに言ってるつもりなのに、「違う!」と言われることが多くて(笑)、「いや、言ってるから!」って。

あさ陽あい:私たちは違いがわからないもんね。

MAKOTO.:普段使わない発音ばかりだから。

太良理穂子:やっぱり、他国の言語は難しいって改めて感じました。

──完成音源を聴いたヒャダインさんからは、どんな反応がありましたか?

MAKOTO.:レコーディングのときの話なんですが、あいちゃんが歌うたびにヒャダインさんが「古い! 古い!」って(笑)。

あさ陽あい:(笑)

MAKOTO.:もちろん、悪い意味じゃなくて褒め言葉なんですよ。あいちゃんの声って本当に歌謡曲に合うから。もう、歌謡曲シンガーって感じ。

かのう・太良理穂子:(大きく頷く)

MAKOTO.:この間、私とあいちゃんでヒャダインさんのラジオに出演させていただいたときにも「DING DONGください」についてお話ししてくださってて。「すごくいい意味で昭和のダサさが出ていて、僕は満足です」と。

あさ陽あい:「この人たち、すごくおもしろいことしてるんですよー」と、リスナーの方に向けても紹介してくださったよね。

MAKOTO.:「こんなに歌のうまい4人がなんでこれ(トロット)やってるの?って思うけど、それをすごくうまく歌っているからまたいいんですよね」とも言ってくださって。うれしかったです。

あさ陽あい:「なんであなたたち、これやってるの?」って、ずっと言ってくださってたよね(笑)。

──「DING DONGください」はすでに発売記念ミニライブ&特典会でパフォーマンスされていますが、お客さんの反応はいかがですか?

MAKOTO.:合いの手が入れやすい曲なので、みなさんがまるで合唱のように歌ってくれています。「身体は超HOT 気持ちは超LOVE」のところなんて、(拳を挙げて)こんな感じで思いの丈をぶつけてくれているんです。

太良理穂子:すごい熱量だよね。「超HOT! 超LOVE!」って一緒に叫んでくれて。

かのうみゆ:叫んでるというか、もう爆発してる感じ(笑)。

MAKOTO.:(笑)そういう熱いお客さんがたくさんいらっしゃって、私たちもすごく歌いやすいですし、パフォーマンスをしていて本当に気持ちがいいです。

──ところで、今作のタイトル「DING DONGください」は、初見だとちょっと不思議な響きだと思うんです。みなさんはどうでしたか?

あさ陽あい:私は最初、意味がわからなかったです(笑)。

かのうみゆ:「DING DONGって何?」って、普通は思うかもね。

MAKOTO.:“DING DONG”は日本語でいうところの“ピンポン”みたいな感じ。韓国でも「ディンドン」と発音して、チャイムとか鐘の音として使われることが多いのかな。

あさ陽あい:響きが可愛くて、耳に残るよね。

太良理穂子:そこに“ください”が付いているのがまた印象的で。いい意味で引っかかるタイトルになっていると思う。

MAKOTO.:その“ハテナ”が、逆に興味を持ってもらえるきっかけになるといいなと思っています。

■日韓のみならずワールドワイドに国を行き来したい
■そしてやっぱり、sisのオリジナル曲が欲しい

──カップリングには、4人それぞれが歌うソロカバー曲が収録されています。選曲の理由や、歌ってみた感想を教えてください。

かのうみゆ:私は、松田聖子さんの「瑠璃色の地球」を選びました。地元・福岡の先輩の楽曲を歌いたいという思いがあったのと、歌詞が今の自分と重なる部分が多くて。『トロット・ガールズ・ジャパン』からsisが結成されて、こうしてメジャーデビューするまでの自分の歩みを重ねながら歌いました。

MAKOTO.:正直、みゆがこの曲を選んだのは意外だった。普段はもっと激しめなロックやポップスを歌っているイメージがあったから、「あ、こういうのも歌うんだ」って。

かのうみゆ:いつもとは違うことに挑戦したくて、「一度、スローな曲にトライしたい」とスタッフさんには話していて。レコーディングでは原曲よりキーを2度上げて歌って、最初はすごく苦戦したけど、歌い込むうちにだんだん自分にフィットしてきた気がする。

あさ陽あい:高音の響きがすごくキレイで、聴いていても気持ち良かった。

太良理穂子:いつものかのうちゃんのイメージとは違う、ギャップがいいよね。

──続いて、MAKOTO.さんは?

MAKOTO.:私は「涙の太陽」を、安西マリアさんバージョンでカバーしました。選んだ理由は、歌詞というよりもパフォーマンスを想像したときに“こういうふうにできるな”って一番想像しやすかったから。私は元々、ちょっと暑苦しい感じの曲が好きで(笑)。ギラギラした楽曲を歌って踊るのが大好きなので、自分の良さが出るのはこれしかない!って思いましたね。歌い出しから「ギラギラ太陽が~」と言ってますから(笑)。

太良理穂子:ド頭からMAKOTO.ちゃんらしさが溢れてる!

かのうみゆ:私は、がなり気味のMAKOTO.ちゃんの歌声がすごく好き。“ギラギラ”とか、濁点のある単語がよく似合うなって思う。

あさ陽あい:声にパッションがあるから、それが歌声にもパフォーマンスにも存分に表れてる。ダンスと合わせて見るのが楽しみ。

太良理穂子:どんなふうに歌って踊るんだろうってね~。

MAKOTO.:プレッシャー(笑)。

かのうみゆ:あとは私、この曲のタイトルがもう“MAKOTO.ちゃんそのものじゃん!”って思う。「涙の太陽」って、まさにだよね。

太良理穂子:ちょっと待って! MAKOTO.ちゃんのイメージって何!?(笑)

かのうみゆ:私はよくMAKOTO.ちゃんと話すから分かるんだけど、時には泣きながらもストイックに頑張って上を目指すところが「涙の女王」だなって。私、このタイトルを見ただけで涙が出そう。

MAKOTO.:あはははは、照れる。次いきましょう!

太良理穂子:私は「TAXI」(鈴木聖美 with Rats&Star)を歌いました。元々の声質が少し低めで太めなので、そのイメージに合う曲はこれかなって。ただ、レコーディングが難しかったですね。この1年ちょっとで私はボイストレーニングを通してさまざまな歌い方を学び、表現の選択肢も広がったのですが、だからこそ“どう歌うべきか……”って。本当に迷ったのですが、結局は普段の自分っぽい感じで、かつ原曲のイメージを保ちつつ歌いました。熱い女性の歌詞なので、細く歌うのは違うかなと思って、声質も調整しました。

かのうみゆ:声の艶やかさと、バブルの哀愁がすごくマッチしてた。この世代で、こんな声を持っている人はなかなかいないと思う。

太良理穂子:本当? うれしいな。

MAKOTO.:想像しちゃうもん、ステージに立つ太良ちゃん。ドレス姿で、ピンスポットが当たって、後ろにはバンド……。もう、すぐにでも見たい!

あさ陽あい:この曲、太良ちゃんの十八番かと思ってたけど、歌うの初めてなんだよね。それに驚いた。

太良理穂子:クラブシンガーをしてたときも実は歌ってなかったんだよね。もちろん曲は知っていたけど。

MAKOTO.:私、今それを知った! 確かにビックリだね。

──最後は、あさ陽さんの「オリビアを聴きながら」(杏里)です。

あさ陽あい:スタッフさんにいただいた候補リストの中にあって、元々歌いたい曲だったから迷わず選びました。でも、実際に挑戦すると本当に難しくて。有名な曲だからこそプレッシャーや責任も感じましたし、歌詞をしっかりかみ砕いて表現するのが今の私には難しくて……。苦労しました。

かのうみゆ:元々好きな曲だったの?

あさ陽あい:うん、カラオケでもよく歌ってた。切なくて考えさせられるストーリーの歌詞がいいんだよね。あとはサビの英語も苦戦したな。誰もが聴いたことのある美しい部分だから、なんとか決めたい!と思ってやったんだけど……最終的には「カタカナ英語でいいよ」と言われて。あえてのカタカナ英語で昭和感を出してみました(笑)。

太良理穂子:昭和感、出てると思う!

MAKOTO.:あいちゃんのしっとりした声が、この曲の雰囲気にすごく合っていて。昭和の香りも自然とにじみ出ていて、ベストな選曲だったと思います。

──8月16日からは全国3ヵ所のワンマンツアーがスタートします。どんなライブにしたいですか?

あさ陽あい:初めてツアーなので、初めましてのお客さんとも出会えるんじゃないかなって。そういう方たちにも「sisいいな」と思ってもらえるように頑張りたいです。今は絶賛準備中で、新曲もどんどん増えているので、何度か来てくださっている方も新鮮な曲がたくさんあると思います。老若男女、どなたが来ても楽しめるライブにしたいです。

MAKOTO.:私たちのグループのコンセプトは“世界のヴィンテージソングを歌い継ぐ”こと。国を超えて、いろんな名曲を届けていきたいと思っています。最近は若い人たちの間でもシティポップや歌謡曲が注目されているので、ライブに来てもらったら「これ知ってる!」という曲もきっと多いんじゃないかな。

──トロットを軸にした日本人の若手女性グループは、今、私の知る限りではsisしかいないように思います。近年の韓国トロットブームでみなさんの存在を知る人も多そうですし、非常におもしろい存在だと感じています。

MAKOTO.:ありがとうございます。日本でのメジャーデビューが叶って、今は韓国の音楽番組にも出させていただいているので、将来的には日韓の架け橋のような存在になれたらうれしいです。さらに大きな目標としては、日韓のみならずワールドワイドに国を行き来して、いろんな国の曲を歌えたらいいなって。あとはやっぱり、sisとしてのオリジナル曲が欲しいですね。

かのうみゆ:欲しいね~。

MAKOTO.:カバーも勉強になるし、もちろん楽しいけど、オリジナル曲を歌うということもやりたい。おっしゃっていただいたように、トロットを軸にした日本人の女性グループはほとんどいないと思うので、私たちがパイオニアになって、駆け抜けていきたいと思います。

──男性グループでは、ムード歌謡や昭和歌謡を取り入れたユニットが昨今盛り上がりを見せています。

MAKOTO.:そうなんですよね。私たちも、もっとたくさんの人に見つけてもらいたい!と思っています(笑)。「DING DONGください」で、多くの注目を集められたらいいな。(メンバー3人に向かって)ハネよう!

全員:(声を揃えて)ハネよう!

取材・文◎川倉由起子

ミニアルバム『DING DONGください』

2025年7月23日発売
COCP-42507 ¥2,500(税込)
produced by ヒャダイン
1.DING DONGください
2.瑠璃色の地球 /かのうみゆ
3.涙の太陽 / MAKOTO.
4.TAXI / 太良理穂子
5.オリビアを聴きながら /あさ陽あい
6.DING DONGください(Korean ver.)
7.DING DONGください(Instrumental)
配信:https://sistgj.lnk.to/DINGDONG0723

<sis ワンマンツアー~あなたの街まで~>

2025年8月16日(土)
@名古屋ビジュアルアーツアカデミー
2025年8月17日(日)
@大阪OSAKA RUIDO
2025年9月13日(土)
@東京神田明神ホール

◆sisオフィシャルサイト