【インタビュー】ES-TRUS、進境著しいバンドの今を描いたサマーソングに素顔のメッセージ「大丈夫、肩の力を抜いてゆっくりしよう」

■オケのゆったりした感じに
■歌詞の気張らない雰囲気がマッチした
──Aitoさんの加入によって5人編成となったわけですが、どんなバンドになりたいとか、当時、話し合ったりされていたんですか。
風児:それまでやってきたものを大きく変えようとか、そういう話は特にしてなかったんですけど、5人になったことで理想の形にようやくなれたかなっていう気持ちはありました。ボーカロイドの曲もコピーしてたっていう話にも繋がるんですけど、僕らが目指していたものが、音数が多くてテクニカルなサウンドだったりもしたので、そうなるとメンバーなんて多けりゃ多いほうがいいじゃないですか。少なくとも当時はそう思っていたので、やっとピースが揃ったというか、バンドとしてようやく形になったなって。
kyoka:ようやく準備が整った、みたいな。
風児:ニュアンス的にはそんな感じでした。
──そうして活動を重ねていくなか、メンバーの脱退によって2024年、3人編成での再始動という転機を迎えます。率直なところ、どんな想いだったのでしょう。
kyoka:青天の霹靂ですね。周りからもずっと「仲いいよね」って言われてきたくらい、メンバー同士、本当に仲が良かったので、脱退するっていう感覚がまったくわからなかったんですよ。でも大人になるにつれ、それぞれ先のことを考えるようになって、ついにその瞬間がきたのかって。
風児:最初はドッキリかと思いましたもん。
──かなりショックでしたよね、それは。
kyoka:もうやっていけないと思いました。根拠なくずっと続くものだと勝手に思っていたので。

──3人になっても続けようと思えたのはどんな理由からですか。
風児:ES-TRUSに関しては、自分が人違いをしてkyokaに声をかけたところから始まっているので、もし終わらせるとしたら俺かkyokaだと思っているんですよ。売れようと売れまいと結果がどうであれ。だから意地でも続けるって思ってましたね。kyokaにもAitoにも「とにかく一旦、3人でやっていこう」って俺の気持ちだけで押し切って。
Aito:でも僕はkyokaと風児がいたら別にそんなに変わらないなって思ってましたけどね。ツインギターじゃなくてもバンドは成立するし、ドラムだってサポートを入れればライブはできるし。もちろんkyokaがやめるとなったら話は変わるけど、この3人がいる限りES-TRUSは続けられると思ったので、だったらもうやるしかないだろう、と。
──kyokaさんは?
kyoka:二人がそう言ってくれるならって感じでした。二人をここまで引っ張ってきてしまった責任も私にはあるなと思ったし、自分が何とかしないといけないっていう気持ちは、私は私ですごくありましたし。
──バンドをやめる選択肢もあるにはあったわけですか。
kyoka:はい。最初にこのバンドを組んだときに、メンバーが一人でもやめたらもうやらないって宣言していたので、「じゃあ解散だよね」って思ってたんです。でも二人は「このまま終わっていいの?」「3人でも一緒にやっていこうよ。kyokaがいれば大丈夫だから」って言ってくれて。だったら、二人がもうやりたくないっていうまで続けようって。
──そこで腹をくくれたんですね。
kyoka:今まで一緒にやってきたメンバーが抜けて、気持ちとしてはしばらく苦しかったんですけど、やっぱりそういう大きな転機があると精神的にも強くなって、ライブもさらに一段カッコよくなるし、サウンドもより練り上げていかなきゃって頑張るのでバンドとしてのクオリティは上がるんですよ。寂しいし苦しかったけど、ES-TRUSとしてさらにいい音楽が作れるきっかけにはなったのかなって今は思います。

──今回、リリースされる「oneday」は3人体制となって3作目のシングルになるんですよね。これまでのES-TRUSの楽曲は、自分の弱さもバネにして未来に立ち向かっていく、さらに前へと進んでいくパワーに溢れたものが多かったと思うのですが、今作は弱さも丸ごと肯定して包み込むような柔らかさ、サウンド的にもどこか肩の力が抜けた心地よさが特徴的で。そこには3人になってからの活動の変遷が何かしら作用しているのかもしれないと感じたんです。
kyoka:なんとか戦っていかなきゃいけない、そのために自分を奮い立たせるっていう気持ちは、もともとずっと持っているものなんですけど……大人になって、一つの物事に対するいろんな人の視点や、正解のないそれぞれの正義みたいなものがあることを知るにつれて、自分が正解だと思ってやってきたことや伝えてきたことも「本当に正解だったのかな?」って思う瞬間がすごく増えたんですよね。
──極論、正解は人の数だけあるとも言えますから。
kyoka:そうなんですよ。そんななか、今回は夏らしくて前向きな曲を作ろうっていうテーマのもとで制作に入ったんです。Aitoがまさに夏にぴったりな爽やかで、でもちょっと切なさもあるようなサウンドを仕上げてくれたので、最初はどうにかそういう疑問も前向きな歌詞にして落とし込もうとしていたんですけど、どうしても書けなくて。そのせいで制作が止まってしまったりもしたので、じゃあもう今の素直な気持ちを書こうと思って書いたらこうなったんですよね(笑)。もちろん、聴いてくれた人が曲を聴き終わったときには前向きな気持ちになれるようなものにしようと心がけてはいるんですけど。
──実際、すごく気持ちを軽くしてもらえる曲だと思いました。
kyoka:だったら嬉しい。でも、この歌詞を書いたときは、どう頑張っても無理なものは無理なんだからもう考えないようにしよう、思考停止して流されるだけ流されよう、みたいな、自分的にはちょっとネガティヴな気持ちだったんです。でもメンバーがサウンド面をすごくいいものにしてくれたこともあって、この歌詞も「大丈夫だから、肩の力を抜いてゆっくりしようよ」って受け取ってもらえるものになったのかなって。
──kyokaさんのこの歌詞を風児さん、Aitoさんはどう受け止めたんでしょう。
Aito:歌詞とメロディに関してはkyokaがやりたいことをやってほしいと思っていますし、たぶんkyokaが今、思っていることや感じているものはわかっているつもりなので、「あ、こういう感じを乗せてきたんだな」としか考えなかったですね。オケのゆったりした感じに、歌詞の気張らない雰囲気が上手くマッチしたなって。
風児:僕もAitoと同意見ですね。kyokaがやりたいと思ったこと、今思っていることを歌詞に乗せてもらうのがES-TRUSらしさだと思うので。ただ、面白いなと思ったのは、サビ終わりに必ず“oneday”ってフレーズが出てくるじゃないですか。今までもゼロではないんですけど、意外とサビ付近でタイトルを歌うアプローチってあんまりなかったんですよ。そういう意味でちょっと新鮮なことをやってるなとは感じましたね。「Dear. My friend」(2024年6月リリース)でもタイトルがフレーズになってる箇所はあるんですけど、こんなに繰り返して歌うのは今までなかったので。
──とてもキャッチーですよね。
風児:そうなんです、覚えやすいですし。こういうのも“らしさ”になっていったらいいなと思うアプローチでした。