a-nation '05 国内最大規模のフェスティヴァルをレポート!

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14時35分くらいに味の素スタジアムの中に入ると、すでにオープニング・アクトのminkのライヴが始まっていた。アコースティック・ギターとオルガンというシンプル&オーガニックなサウンドと飾り気のない率直なヴォーカルが気持ちいい。強い日射しは残っているものの、ときどき涼しい風が吹いてきて、居心地は悪くない。次に、9月にデビューを飾る8人組エンタテインメント・グループ“AAA(トリプル・エー)”による弾けるようなパフォーマンス、TRFのメンバーがプロデュースする“act-dancer”の初々しいステージが終わると、いよいよメイン・ステージがスタート。これからゾクゾクと登場するアーティストたちが、どんなライヴを見せてくれるの……? 期待感がどんどんふくらみ、会場全体のテンションが上がっていくのが手に取るようにわかる。うん、いい感じだ。

最初に登場したのは、鈴木亜美。数人のダンサーを引き連れた彼女が姿を現わし、観客が次々と立ち上がると、「今年も<a-nation>が始まった!」という実感がわき起こる。切れ味のいいダンスと力強さを増したヴォーカル。彼女が<a-nation>に参加するのは今年が初めてなのだが、そのステージは十分に“新しく生まれ変わった鈴木亜美”をアピールしていたと思う。特に「Eventful」「Delightful」というトランス系ダンス・チューン2連発は、オーディエンスに強烈なインパクトを残したはずだ。

続いてはロードオブメジャー。数日後に2ndアルバム『ROAD OF MAJOR II』のリリースを控えた彼らは、「おお、いつのまにこんなに成長したんだ!?」と驚きの賞賛に値する、堂々とした演奏を展開。大らかにして情熱的なヴォーカル・ライン、ラウドとポップを同居させたバンド・サウンド。「蒼天に向かって」のサビのメロディが響いた瞬間に僕は、彼らがバンドとしてのスケール感を獲得しつつあることを実感した。「僕らがずっと大事にしている曲です」という北川のMCに導かれた「大切なもの」では、会場のあちこちで大合唱が聞こえてくる。観客をひとつにできる親和感こそが、彼らの魅力であることを再確認した。



より大きな歓声のなかで登場したDo As Infinityは、完全ロック・モード。右手に“ホワイトバンド”をつけた伴ちゃん、レス・ポールをガシガシと弾き倒す亮さん。まだまだ強い日射しが照りつける会場をさらにヒートアップさせていく2人のパフォーマンスには、「もっとガンガン盛り上がっていこうぜ!」という空気感がみなぎっていた。個人的に印象に残ったのは、ブーストさせたベースが強力なグルーヴを生み出していた「冒険者たち」。CD音源とはまったく違う音像をダイレクトに体感できる。これこそが、やはり、ライヴの醍醐味だろう。もちろん、メロコア的スピード感をたたえた「本日ハ晴天ナリ」も最高。この曲、“野外”っていうシチュエーションにホントによく似合う。

4番目に登場したのは、この日最初のサプライズ・アーティストであるD-51。ハイトーン系のYASU、ディープな声質を持つYU。2人が生み出す独特のコーラス・ワークはスタジアム級の会場でも、十分に機能していた。生ドラムを中心としたアコースティックなイメージのバンド・サウンドもめちゃくちゃ気持ちいい。「メジャーデビューして1年経ちますが、今日が一番大きな会場です!」なんて言ってた彼らだけど、そのライヴ・アクトは完全にメジャー級と言っていいと思う。特に「南国の空気を味わってください!」というMCとともに披露された「ハイビスカス」(レゲエ、ハワイアンなどを融合させた南国系ポップ・チューン)の気持ち良さと言ったら……!


D-51のライヴを観ているうちにすっかり「うわー、どうしても喉が渇いた!」ってことになり、急いで売店へ。サブ・ステージが復活したり、飲食物はもちろんグッズやTシャツの物販など、たくさんの屋台が出ていたりと今年の<a-nation>はかなりフェスっぽい雰囲気が漂っている。でも、アリーナから飲み物が売ってる場所までの距離がかなりあって、ちょっと時間がかかっちゃうんだよね……。<a-nation>ってセット・チェンジが早くて(たぶん、平均5分くらいだと思う。他のイベントなら少なくても15分はかかるのに……)、たとえばちょっとトレイに行っただけでも、次のアーティストが始まっちゃったりする。がっちりライヴを観るか、観たいアーティストを絞り、イベント全体を楽しむか……。そこは判断が分かれるところだろう。

案の定、アリーナに戻る頃には倖田來未のライヴはすでに終盤。しかも目に飛び込んできたのは、ホワイトを基調にしたゴージャス&セクシーな衣装に身を包み、男性ダンサーと絡む彼女の姿……。しっかりオーディエンスの期待に応える彼女の姿勢にリスペクト。時間は短かったが、その確かな歌声と、セクシーかつタイトなダンスは印象的だった。くっそー、セット・チェンジが早すぎるんだよ!(←八つ当たり)

気を取り直して、本日2つ目のゲスト・アーティスト、氣志團を待ちかまえる。エイベックス・ファンが集う<a-nation>で、彼らがどんなGIGを見せてくれるのか……。個人的にもっとも注目していたのが、氣志團のステージだった。

「BE MY BABY」(COMPLEX)のジュリアナ・ミックス(笑)で登場すると同時に会場には笑いと興奮が同時にわき起こり、あとはもう、完全に氣志團のペース。それにしても「One Night Carnival」はやっぱり名曲。どんな趣味の人も思わず“アフー!”と声を上げてしまうこの曲で、味の素スタジアムはしっかりとひとつになったのだった。團長、ありがとう。「I (ハート) avex」とプリントされたTシャツを着たあなたの雄姿、決して忘れません。

夕暮れの空気が色濃くなってきた頃、大塚 愛のライヴがスタート。ステージの真ん中にボンッ!と登場した大塚は(いつものように)ニコニコと笑顔を浮かべ、Vサインを振りかざしながら、いきなり「SMILY」を炸裂させる。「笑って~、笑って~」というサビのメロディが響くと、オーディエンスのなかにもどんどん笑顔が広がっていく……。うわー、すごい! パンキッシュにチューン・アップされたバンド・サウンドと大塚のラブリー&キュートなヴォーカルのコンビネーションも良く、会場の興奮度は加速度的に増していく。そして「さくらんぼ」「Happy Days」の連発でオーディエンスのテンションはピークに達する。彼女の楽曲が持つハッピー感染力って、ホントにすざまじい……。ラストはミドル・バラードの「ネコに風船」。人は誰でも自分が可愛くて、自分勝手。でも、よーく探してみたら、愛はいろんなところで見つけられるはず……。そんなメッセージを持ったこの曲を、彼女は持ち前の表現力で描き出していく。どんなにハッピーな曲を歌っても、その背後にはどうしようもない“切なさ”を感じさせる。それが大塚 愛の魅力なのだと思う。

色とりどりの感情を幅広い表現力でまっすぐに伝えることができる。持田香織もまた、そんなヴォーカリストの一人だ。この日のEvery Little Thingのステージでも彼女は、類い希なヴォーカル・センスをたっぷりと見せつけてくれた。最初の2曲、「FOREVER YOURS」と「ソラアイ」では、しっとりと洗練された歌を披露。2本のアコースティック・ギターを中心としたアンプラグド的なバンド編成で演奏された2曲は、彼女の歌に含まれた暖かいヴァイブスをしっかりと際立たせていた。信じられないほどの集中力を伴い、楽曲の世界観を立体的に表現していく彼女。そして、その姿をじっと見つめるオーディエンス。このときに生まれた空気は、今年の<a-naiton>の一つのハイライトだった。ここからの展開がまたすごい。「よーし、アホになる気があるのか、東京!」というMCで、会場のムードは一気にロック・モードへ。ひと声でスタジアムの雰囲気をガラッと変えてしまう彼女のパフォーマンス能力は、やはり強烈だ。いつになく攻撃的な雰囲気で演奏された「Dear My Friends」、楽しかった~。

どっぷりと日が暮れ、暗闇に包まれたスタジアムをカラフルな光とアグレッシブなビートで切り裂く。この日最後のサプライズ・アーティスト、T.M.Revolutionが見せたライヴは、彼がいま、何度目かのピークにいることをはっきりと証明した。「HOT LIMIT」から「HIGH PRESSURE」という'90年代のヒット曲でがっちりと会場の空気を掌握すると、そこからは最近のシングル曲を連発。高速のデジタル・ビートとヘビィロック的バンド感をバランス良く配合させた超オフェンシヴなサウンド・フォーメーション、そして、ジェットコースターみたいに音階を駆け抜けていくメロディを完璧に再現するヴォーカル。ふと気が付くと、ガンガンとヘッド・バンキングをやってる女の子があちらこちらに…。いままでT.M.Revolutionをよく知らなかった人にもしっかりアピールするアクトだったと思う。

続いては、TRF。“レイヴ・カルチャーとJ-POPの融合”というめちゃめちゃ斬新なコンセプトで'90年代前半の音楽シーンをリードしたTRFだが、そのサウンドは'00年代になってもしっかり機能している。この夜のステージで、彼らはそのことを証明してみせた。ポイントは100%クラブ仕様のサウンド・メイク。特に下半身を“ドン!ドン!ドン!ドン!”と直撃する低音は、かなり衝撃的。スタジアムにおける野外ライヴというシチュエーションで、こんなサウンドが体験できるとは思ってなかった。20代後半~30代は懐かしく、20代前半~10代は新鮮なインパクトを楽しめたのではないだろうか。

ラストは当然、日本を代表するシンガー浜崎あゆみ。10名以上のダンサーとともにステージ現れた瞬間、絶叫に近い声援が一気にわき起こる。1曲目はアグレッシヴなダンス・チューン「STEP you」。細かい動きのひとつひとつにまで計算が行き届いたダンス、聴く者の理性をぶっ飛ばす官能的かつポップなヴォーカル。ライヴが始まってわずか数十秒で、彼女が持っている破格の才能が伝わってくる。「5時間以上、いろんなアーティストを応援してくれてると思うんだけど、今日がこの夏の最高の思い出になるように最後まで歌って踊って帰ってくれ~!」というMCをはさみ、ライヴはさらに深化していく。野村義男の“ハードロック魂、全開!”って感じのギターソロに続いて披露された「is this LOVE」、夏という季節が持つ切ない情緒を描いたバラード「HANABI」。まったく異なった世界観を持つ楽曲をごく自然につなぎながら、独自の音楽世界を立ち上げていく。めちゃくちゃ単純な感想で申し訳ないが、浜崎あゆみはまちがいなく、現在最高のポップ・エンターテイナーである。

そして圧巻は「flower garden」「independent」のメドレーで登場した“あゆ御輿”。これに乗って彼女は、なんとアリーナをぐるりと1周。目の前であゆが歌ってる…。あまりにも意外なサプライズに観客も大興奮。“お客さんを楽しませたい”という徹底したプロ意識に圧倒されてしまった。

そしてラストは500発の打ち上げ花火。この日、味の素スタジアムに足を運んだ人たちは、あゆの言う通り、この夏いちばんの思い出を得たにちがいない。ビッグ・アーティストが次々と登場するだけでなく、意外性に満ちたゲスト・アーティスト、素早いステージ転換を含め、イベントしての成熟を感じさせた今年の<a-naiton>。来年も楽しみっす!

取材・文●森 朋之
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