Message | | ヴォーカル同様、優しく美しい声でインタヴューに応えてくれたハナレグミこと永積タカシさん。そんな彼から、メッセージ映像が到着!
画像をクリック! |
|
|
| ――気がつけば国民的人気シンガーですね。
永積タカシ(以下、永積):いやあ、実は僕自身こうなるとは思ってなかったんです(笑)。そもそもレコーディングしてリリースする予定なんてなかったですからね。知り合いに聴いてもらえればいいかなあって。そしたら、内容がすごくいいからこれならCDにしてみたら?って言われて。ホントにまさかCDを出せるなんて思ってなかったんですよ。最初は“ただの歌うたい”になりたいって気持ちの方が強くて、楽器持って井の頭公園に一人で行って歌ったりしていたくらいなんで。なんでもない、誰でもないものになりたかったんですよね。自分の好きな時に好きな歌を歌ってみたいなって気持ちに戻りたかったんでしょうね、最初。
――では、いつ頃からハナレグミとしての自覚、聴いてくれている人がいるんだ、という自負みたいなものが手応えとなってきましたか?
永積:やっぱり『音タイム』を作った後の周りの人の反応が大きかったですね。リスナーのみなさんからの反応もそうだし、友達ミュージシャンとかからの反応も大きかったんです“こんなこと歌ってもいいのかな”みたいにちょっと怯えていたところもあったんですけど、“あ、これでいいんだ”って思えるようになりましたね。そう思えた時から自分のやることに自信をもって進めるようになりましたね。まあ、例えばクラムボンのメンバーとかは専門学校の頃から知っているんで、僕が弾き語りもやることはわかってくれていたから自然に受けとめてくれましたけどね。
――永積さんの歌を聴いていると、ヴォーカリストとしての意識の高さのようなものも強く感じるんですよ。ただ好きというだけじゃない、プロフェショナルな匂いのような。
永積:それは嬉しいですね。実は最近、そういうのをより強く考えるようになったんですよ。前にある人に言われたんです。“ちょっとヘンなクセがついてるから直した方がいいんじゃない?”みたいに。そういうこともあって、僕自身、ちょっと考え直してみたんですよね。確かに昔から“音楽とは歌うものだ、自分で歌うものだ”みたいなものがあって、サウンド・メイキング面には今もそれほど入りこむものがないんですよ。むしろ、歌の表情みたいなものに惹かれるんですね。そういうのって、ボブ・マーリィとかから学んだことなんですけど、でも、一方で、感情的な歌い回しに入り込み過ぎると、そこに酔っちゃうんですよね、どうしても。ただ歌が好きで、その日の気分でワーッと歌うだけじゃダメだっていうか。ボブ・マーリィとかフェラ・クティとかも実はすごくリハーサルを重ねるタイプだったみたいで、そういう話を聞くと、ああ、自分もこのクセに頼った歌い方だけじゃダメなんだなあって思えてきて。自分で自分をコントロールできるようにならなきゃなって。最近になってホントにあらためてそう思いますね。
――ということは、このベスト・アルバム『hana-uta』は本能で歌ってきた初期ハナレグミの集大成である、と?
永積:そうそう、最初の3枚は全部“本能アルバム”(笑)。本能の部分をもうひとしきりやってきたって感じ。でも、この当時はこういう歌い方を自分自身求めていたし、実際、楽しそうに歌っている、楽しんで歌っている、という雰囲気は、本能があってこそだとも思うんですよ。でも、それだけじゃダメだって。だからね、これからはそういうところをつきつめていきながら活動していきたいなあって思いますね。例えば、レコーディングで最初のテイクでキメるってこと、今は一発録りが主流になってきているから結構簡単なことのようにも思えるんだけど、一回でビシッと決めるためには技術やモティヴェイションがないといけないでしょ。完璧になることが大切ではないけど、これ以降先に進む必要は絶対ある。そう思ったら、“あー、ゆっくりしている時間なんてないなー!”って(笑)。
――なるほどね。実は私もハナレグミがどんどん大きな存在になっていって、個性が際立っていくにつれ、手癖や歌い癖みたいなものに走っていってしまうんじゃないかって心配はしていたんですよ。自分の才能の上にあぐらをかかなきゃいいなあっていうか。新しいシンガー像を見せてくれてきただけに、そこらが少し不安ではあったんですよ。
永積:うんうん、それは僕自身気にしていました。そうあっちゃダメだなって。やっぱり恍惚と不安を繰り返して進むものだって思いますね。それと、僕にはスーパーバタードッグがあるっていうのも大きいんですよ。帰れる場所があるっていうか、バンドのすごさを知っているというか。バンドは自分一人が完結したからってそれで終わりじゃないわけでしょ。他のメンバーとのぶつかりあいがその先にまだ待っている。もちろん、それが面白かったりするわけですよね。だからバタードッグは驚くほどたくさんのリハーサルをやってきたし、みんなで高めあっていたんですよ。そういう経験を積んでからソロになったという経緯があるから、今の僕はいろいろなことに気づけているのかもしれないって思いますね。だから、今後もバタードッグは続けていくつもりです。具体的な活動予定はまだないですけどね。
――とはいえ、男性か女性かわからないようなフェミニンなヴォーカル・スタイルと、泣きながら笑っているような声の出し方はこの数年の間に一つの完成を見たとは思いますよ。
永積:そうですね。ボブ・マーリィとカーティス・メイフィールドとナット・キング・コールとあとジャクソン5、ああいう声に涼しさのあるヴォーカリストに惹かれていたんでね。何かを抜いていけばいくほど、気持ちが浮かび上がってくるような感じがするんですよ。言葉にならない声を発したところにその人の気持ちがあったりとかね。目に見えない気持ちを裏で抱えているんだけど、それをあえて言わない、歌わない、でも伝わってくる、みたいなね。心の中で泣いているけど笑って歌えるような歌い手がいいなって僕が思うのも、そういうことなんでしょうね。
■ハナレグミ野外フリーライヴ 9月24日(土) 小金井公園いこいの広場 開場:11時 開演:12時 終演:17時予定 休憩アリ/入場無料/全自由/雨天決行
取材/文●岡村詩野 |
|