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Linda Ronstadtほど影響力が強く、高い人気を持続させているヴォーカリストはほとんどいない。しかも、彼女は予測のつかない変化を見せながら、幅広い音楽をプレイすることで、この地位を築き上げたのだ。

アリゾナ出身のLinda Ronstadtがロサンジゼルスに移ってきたのは''60年代なかごろのこと。そこで、彼女はまずStone Poneysというフォークロックバンドを結成する。やがて、''68年にソロになった彼女は、強いカントリーからの影響を保ちながらも、さらに幅の広いサウンドを取り入れていくようになる。

彼女の人気が高くなり始めたのは''70年代の半ば過ぎだった。このころまでに彼女は、その豊かなヴォーカルの才能を繊細に使う方法を学んでいた。彼女はここで才能を発揮するための完璧な方程式を見いだし、『Heart Like A Wheel』以降5枚のアルバムで、その方程式どおりのやり方を見せている。

つまり、当時頭角を現しつつあったJackson BrowneやWarren Zevon、Karla Bonoffといったソングライター達から最高の曲を集め、それを慎重に選んだポップの名曲や古いカントリーの曲と組み合わせてアルバムにするのである。繊細な歌と上品な感情表現で、彼女は様々な曲の入ったアルバムをひとつにまとめていたのだ。

しかし、時代の変化につれて自らの方程式を変えようとしたその時、彼女はアーティストとしてのよりどころを失った。''80年代初期の彼女のアルバムは、昔ながらのやり方にニューウエイヴの流れを取り入れようと試みたものだったが、創造性の面でも売り上げの面でも、失敗に終わってしまった。ブロードウェイでリバイバル上演されたミュージカル『ペンザンスの海賊』に出演した後、Linda Ronstadtはメインストリームのロックとポップの道を捨ててしまう。

まず、彼女は''40年代から''50年代にかけて人気のあった、オーケストラを使ったポップスのスタンダード曲に焦点をあてたアルバムを3枚制作。さらに、彼女は自らのメキシコ系の血を意識した作品を数枚作り、その後は成熟したエレガントな雰囲気のポップスのアルバムを制作している。その一方で彼女は、Dolly PartonとEmmylou Harrisと3人で共作を行ない、''87年には美しい曲の詰まったアルバム『Trio』を発表。さらに、''99年には同じ流れで『Trio II』をリリースしている。