アイアン・メイデン、怒涛の来日公演を緊急レポ

10/25の武道館には、アイアン・メイデンの黒Tシャツで武装したファンたちが、その勇姿を拝み、その音に触れようと大挙して押しかけた。今回の来日公演には、スティーヴの愛娘ローレン・ハリスが前座として帯同。軽快なロックンロールで、後ろに控える大御所の登場を待つ会場の空気を暖める。そして…。
武道館ごと揺れ響く爆音、凄まじい歓声とともにアイアン・メイデンが現われた! ニュー・アルバムのアートワークを踏襲した“戦場”を再現したステージで、観客をその世界に引きずり込む。

ブルース・ディッキンソンによる圧倒的なパフォーマンス。デイヴ、エイドリアン、ヤニックによるトリプルギターで刻まれる劇的なリフ。そしてスティーヴはベースから出ているとは思えない強力なフィンガーピッキッングで金属音を押し出す。今回はニューアルバム『A MATTER OF LIFE AND DEATH』の全曲を一曲目から全て同じ曲順で完全再現するという、メイデンのライブでは初の試みとなった。その実験的なセットリストからは、初めてビルボードの10位内にランキングされた、メイデン史上最大の成功作でもあるニュー・アルバムへの自信が感じ取れる。
70年代のNew Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)のバンドが、ここまで登りつめるとは一体誰が予想しただろうか? 現在の多様化した音楽シーンの中で今回のような成功に繋がったのは、メイデン独自のスタイルがメタルというジャンルを越え、若い世代に幅広く浸透しはじめたからだと言える。80年代のメタルブームで頂点であったメイデンは、メタルのスタンダードからロックのスタンダードになろうとしている。いま、この現在がメイデンの歴史の中でもっとも売れている状態と言っていい。『POWER SLAVE』あたりを黄金期と言っていた時代は過去のものとなり、今後も語り継がれていく伝説が今まさに武道館の中で生まれようとしていた。

ブルース・ディッキンソンは観客を完璧にまでコントロールし、他のバンドにはない空気感を作り上げメイデンと観客を一体化させた。新曲は次々と突き進み武道館を一気に駆け抜けていく。8曲目の「For the Greater Good of God」は9分以上もある大作でありながら、キャッチーな歌メロと強力なリズムの変化で、演奏中は長さを全く感じさせない。「Lord of Light」は、疾走感あふれるギター・ソロと「Die With Your Boots On」にも似た後半のリフに、メイデンの楽曲が持つ普遍性を感じ取ることができる。アルバム最後の曲「The Legacy」は、NWOBHMが生まれる以前のプログレッシプ・ロック的色合いが強く出た楽曲である。3人のギタリストが各自2台のギターを持ち替えてアルバムと同様に音を表現していく姿は感動的だ。スティーブ・ハリスが体験した音楽性のルーツ、メイデンの原点に回帰させてくれる。

そして会場内は「Fear of the Dark」のフレーズとともに激変。リフに合わせ大合唱がはじまり、歓声の波が押し寄せる。観客の動きも一致し、ライブならではの一体感が生まれテンションはさらに高まった。そこにライヴの定番曲「Iron Maiden」の強烈なリフが切り込んでできたところで、観客は度肝を抜かれる。曲の途中、突然キャタピラの音が会場に鳴り響き、ステージ後方から巨大な戦車が出現したのだ。予想外の展開に誰もが唖然。ステージの下にあれほど大きいものが収まっていたとは! 巨大な戦車は実物の2倍近くあり、回転して砲身を客席側に向けると、戦車のハッチが開き兵士が登場。双眼鏡を手にし周囲を見渡すこの兵士はもちろんエディだ。ステージ両脇からもメンバーの背丈より大きなキャタピラが現れ回転し、ジャケットのアートワークと同じ光景で戦車が迫ってくる。「Iron Maiden」の轟音が渦巻くなか盛り上がりは最高潮に達した。
アンコールでは、「The Evil that Men Do」で長身のエディが登場、兵士の姿で赤く目を光らせながらステージを徘徊していく。武道館が大合唱に包まれ、ブルース・ディッキンソンが合図をとり、全員一斉に拳を突き上げる。興奮状態はそのまま「Hallowed Be Thy Name」のラストまで続いていった。

ステージに赤い炎と廃墟が映し出され、戦争は終結。『A MATTER OF LIFE AND DEATH』を全身で体験し戦場を去った。重鎮の中の重鎮、帝王アイアン・メイデンらしい疾走感と重さ、そしてヘヴィメタルの迫力を十二分に感じられる公演だった。この後も広島、東京、大阪、名古屋で公演が予定されている。ヘヴィメタルを愛するファンは行くしかないでしょ!
撮影:(c)Tomomi Mori/creativeman
●セットリスト 10/25@武道館
01.Different World
02.These Colours Don’t Run
03.Brighter Than a Thousand Suns
04.Pilgrim
05.Longest Day
06.Out of the Shadows
07.Reincarnation of Benjamin Breeg
08.For the Greater Good of God
09.Lord of Light
10.Legacy
11.Fear of the Dark
12.Iron Maiden
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13.2 Minutes to Midnight
14.The Evil that Men Do
15.Hallowed Be Thy Name
●この後の公演
10/28(土)東京国際フォーラム
10/30(月)大阪城ホール
10/31(火)名古屋市民会館
●詳しくはコチラで
http://www.creativeman.co.jp/







