──まず、アルバムのコンセプトは?
「今までやってきたことに縛られずに、自分の中にあるルーツとかいろんなものをきちんと反映させて、やりたいようにやるっていうのが唯一のコンセプト。こういう内容にしようと固まったものはなかったですね」
──前作『MG4』は、それまでのMONDO GROSSOの集大成みたいなクールなサウンドでしたが、今回は一転して、ダンストラックを中心に開放感のある力強い仕上がりですよね。
「前作とかは自然に身についちゃっているものを出しすぎたのかなって。それって本当に内(心)から湧き出たものなのかなって言われると、知識で知ってて技術で覚えていることの組み合わせで自分を納得させてやっているって感じで、自信を持ってうなずくことができなかった。でも今回の曲はね、衝動的にやりたくってやってる音として100%に近いんかもしれないね。自分が体得していない技術とか、ともすれば僕がやんなくってええやんっていう音もやってたり……。音の全てに僕の魂が宿っているって思ってもいいし。それをやらないと自分の中でリアルな音楽にならなかったんですよね」
──本作にはロック的要素も多く、これまでのMONDO GROSSO=ソウル、R&Bをベースにしたサウンド、と想像していたので新鮮でした。
「特にジャンルっていうのは考えてないんやけど、最近では10代で影響を受けたニューウェイヴとか、その中にあるロックな要素とかが再燃して、それが反映されているのかな。あとはアイデアの源に制限とかリミットを与えるようなパターンを作らないっていうやり方ですね。あまり今までなかったんですけど、今作では頭の中で思いついたフレーズみたいなのを、最終的にそのままメロディに採用してるのが、結構が多いですね。BoAちゃんの歌っているヤツなんかも、なんやろ……睡眠作曲法っていうの(笑)。思いついたフレーズが寝てるときにずっと頭の中で鳴ってて、次の日起きても忘れてないんですよ。覚えてると、これやっぱ作らなあかんのかな~って気になって。そうしてできたんです。ゆえに複雑なメロディとかは思いつかないんですけどね」
――新鮮さといえば、ゲスト・ミュージシャンもこの作品で新たな個性が伺えて刺激的でした。
「いたずらに変なものをぶつけてるわけではないんですけどね、結果、やっぱその人達の全然違うものにフォーカスが当たりますね。単純にMONDO GROSSOでやるんだから、彼らの作品みたいなことをやっても仕方がないし」
――海外勢だとKELISがBeastie Boysのカヴァー曲で参加してますよね。
「KELISはマイアミで友達から紹介されて、意外なことやりたいよねっていうことでビースティのカヴァーを思いついて。この曲はラップじゃなくて、メロディでやっちゃう、っていうのを特にやりたかったんです。KELISっていうのは適役、バッチリだった」
――最後に収録されているUAの曲だけ、日本語詞ですね。
「他の人と同じようにUAに対しても英語で、歌詞も少なくっていうヴィジョンがあったんですよ。でも、UAだけどうやっても僕の中でしっくりこなかったんですよ。結局、普通に歌ってもらおう、ということになったんです。この曲だけアルバムの中では異色というか。やっぱりUAは僕の中で特別なんですよ。誤解を覚悟でいうけど、僕の中で日本一すごい歌手やと思いますね」
──その他、作品を作る中で他に刺激になったことは?
「全部が刺激的だけど、何より、自分に刺激を受けることが多かった。今までやらなかったことをやってる自分を客観的に見たり、できた過程とか結果見て、なるほどこれは可能性あるよな~とか。具体的には手法なんですけど。今まで知っている音なんだけど、聴こえ方が違うやん…みたいなね。リスナーの自分と、クリエイトしていく自分と2人いて、リスナーである自分と繋がっている部分を満足させるのがすごく大変なんです。そのためには僕がおもしろがるような作業をやらないと飽きちゃうので、作るときにおもしろいルールを作るんですよね」
――大沢さんが得た刺激、それが本作で最近の日本のダンスミュージック・シーンが失いかけてるパワーを感じさせてくれる気がしますね。
「そうなってくれると本当に嬉しいんですけどね。マニアックを追求するっていうのはずっとやっていったほうがいいと思うけど、そこに入ってしまったときになかなか抜け出せないっていうのがあってね。音楽って、”音を楽しむって書いて音楽”なんで、自分が楽しむのは当然なんですけど、人を楽しませられないとね。僕もこの14曲はマニアックにやってますけど、基本的にポップなものにしているつもりなんです。それを感じてもらえれば嬉しいです」