【ライブレポート】Ken Yokoyama、ツアー<The Rags To Riches Tour ⅥI>ファイナルが全編クライマックス「きっと戻ってくる」

2026.10.19 16:01

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横山健(G, Vo)、なんて人なんだ。だって、そうだろ。3都市6会場を回ったツアーがこの日、終わってしまうことが名残惜しいと思う反動なのか、最近珍しいくらいに下ネタを含めた悪ノリを繰り広げ、もちろん、それも見どころに違いないとは言え、「(曲間のMCは)チ●コとEKKUNのくだらない話しかしてない」「……(無言)」と南英紀(G)とJun Gray(B)を呆れさせた前半戦。

そうか。9月25日に突然発表したKen Yokoyamaの活動休止について、今日は敢えて触れずに観客とバンドの交歓を心行くまで楽しもうということなのか…と、この日の対バンだったKUZIRAの末武竜之介(Vo, G)による「今回のツアーに誘われたのがENTHとKUZIRAだなんて、その意味を何か感じませんか?」という発言を聞き、“なるほど。活動休止するKen Yokoayamaから若いバンドにメロディックパンクの聖火を手渡すってことなのか”と胸を高ぶらせていた筆者は、同時にちょっと感傷的になりすぎていたのかもしれないと考えを改めたのだったが、終盤も終盤、「These Magic Words」のアウトロでいつものように「大丈夫。きっと大丈夫だよ」と語りはじめた横山はその言葉に続けて、言ったのである。「きっと戻ってくる」と。

その瞬間、スタンディングのフロアを埋めた3,000人が歓声を上げ、そこから間髪入れずに松本“EKKUN”英二(Dr)のカウントでバンドがなだれこんだのが、Ken Yokoayamaの絆と不滅のバンド魂を謳い上げる「4Wheels 9Lives」だったのだから、恥ずかしながら、筆者は両目に溢れる、いや、溢れるは大袈裟だった。滲む涙を拭わずにはいられなかった。

健さん、それはあまりにもズルすぎるだろう。ズルすぎるよ。それだけ伝えられれば、このレポートの役目は十分に果たせたと思うのだが、せっかく貴重な機会をもらったのだから、10月14日(水)、東京・豊洲PITで開催されたKen Yokoyamaによる<The Rags To Riches Tour ⅥI>のツアーファイナルの見どころをKUZIRAのライブも含め、もう少し振り返ってみたい。

KUZIRA

まずオンステージした岐阜の3人組、KUZIRAは観客が振る拳とダイヴに歓迎されながら、メロディックパンクのニューカマーからエースに成長した姿を3,000人の観客を前にしてもこれっぽっちも物怖じしない堂々としたパフォーマンスとともに見せつけた。

この日、彼らが演奏したのは、「In The Deep」から「Spin」まで、メロ良し、声良し、ハーモニー良しとメンバー自ら自負する新旧の全15曲だ。シャー:Dのスティック裁きが映える2ビートのメロディックパンクを中心にしながら、それだけにこだわらずにスカパンクの「Clown」、オールディーズなロックンロールの「And Dance Going Nowhere」、さらにはアー写で末武がWeezerのTシャツを着ているのも頷けるエモいロックナンバーの「Wasted Time」も織りまぜる曲の振り幅も聴きどころ。

「僕らの曲はメロがいいから、(フロアの)前でも横でも後ろで楽しめると思うので、自由に楽しんでください」と末武のMCにも自信が滲む。

KUZIRA

ところで、「Ken Bandのようにお客さんと一緒に歳を取りながら、少年の心を忘れないバンドになりたい。一緒にそういう関係を作っていこうよ!」と熊野和也(B, Cho)が言ってから、演奏したHi-STANDARDとは同名異曲の「Growing Up」とその次の「So Far So Good」の間にKen Yokoyamaのレパートリーの中でも人気の高い「Walk」を一瞬差し込んでみせるなど、パフォーマンスに滲ませるKen Yokoyamaオマージュに胸アツになったという観客も少なくなかったのでは。中でも振るっていたのが、「(Ken Yokoyamaの)「Let The Beat Carry On」を、自分たちのバンド活動のテーマにしている」という熊野の発言だった。

「活休はさておき、Ken Bandのほうが(年上なんだから)俺たちよりも先に死ぬじゃないですか。でも、KUZIRAがいるってPIZZAのファンに思ってほしくて。健さんはビートを止めるなって歌ってるけど、メロディックパンクバンドのことを言ってるんだって俺は勝手に思ってて、そのビートを止めないのがKUZIRAだという気持ちでPIZZAに入ってからバンドをやってます!」

前掲の「その意味を何か感じませんか?」という末武の言葉といい、熊野のこの言葉といい、そんなふうに言われたら、活動休止発表があった直後だ…前述したとおりちょっと感傷的になってもしかたないと思うが、ライブが湿っぽい空気になるのはなんだかなぁと考えたのかどうか、横山が悪ノリしたことはすでに書いたとおり。

しかし、振り返ってみれば、1曲目に「I Won’t Turn Off My Radio」を選んで、眩い光の中、観客のシンガロングとともにいきなりクライマックスと言える盛り上がりを作ってみせると(もし、開演に間に合わず、ここから見たという人がいたら、“えっ、ライブはもう終わり⁉”と焦ったはず)、「Kill For You」「Parasites」「Cry Baby」と急加速するように繋げていき、とどめを刺すように「Maybe Maybe」で再び観客にシンガロングさせたのだから、セットリストの選曲、バンドの演奏ともに相当に気合が入っていた、と誤解のないように念の為、書いておこう。

その後もMCで悪ノリしながら、NOFXのカバー「Stickin’ In My Eye」、今回のツアーのセトリのテーマのひとつであるレア曲枠の「It’s My Way, Go Your Way」、そしてSNUFFのカバー「What Kind Of Love」と見どころを連発。Jun Grayがイントロのベースリフを奏でたとたん、観客が色めき立った「Stickin’ In My Eye」は、’90年代パンクロックのカバーアルバム『The Golden Age Of Punk Rock』をリリースして以来、Ken Yokoyamaのライブに欠かせない曲になっているとも言えるが、「NOFX!NOFX!」と声を上げる観客を眺めながら、「この光景をファット・マイクに見せたいよ!」と横山もうれしそうだ。

ところで、横山と南がギターの音色と歌声を重ねた「What Kind Of Love」と観客のシンガロングが響き渡った「My One Wish」の2曲で横山は8月に完成したGibson Custom Order Modelの新ギター“Lucky”をプレイすると、演奏後、ボディにキスをして、愛着を表現したが、ちなみに1曲目の「I Won’t Turn Off My Radio」で弾いていたのは、横山が命名したギターブランド、Solid Bondで新たに作った“Peacock”というギターで、このツアーがお披露目だったのだそうだ。

閑話休題。その「My One Wish」を演奏し終えたタイミングで、「くだらない話しかしてない」と南から指摘されると、「いいのさ。言いたいことは歌に込めているから」と横山は照れ臭そうに答えたのだが、そんなやり取りがきっかけになったのか、元々そういう段取りだったのか、後半戦とも言える「Believer」からの展開は、「The Ballad」と「Walk」の間に(本編とアンコールを分ける?)横山曰く「休憩」があったものの、まさに怒涛という言葉がふさわしい勢いで「Punk Rock Dream」「Let The Beat Carry On」とキラーチューンの数々を繋げ、観客のシンガロングとともに熱狂を作り上げていった。

その時、誰もが思ったはずだ。これが活動休止を決めたバンドの演奏か、と。そして、前述した「These Magic Words」からの「4Wheels 9Lives」。シンガロングもダイヴもともにさらに熱烈にバンドに応えた観客に対して、「ありがとうございます」と言った横山は、「本当にありがとうございます」と感謝を重ねてから、言葉を続ける。

「最高だな。ろくに音楽の教育を受けていない俺がこうやってみんなの前でさ、いまだにやれてるってすげえ幸せだよ。(客席からの「ありがとう」に応えて) 本当にありがとうはこちらなんだよ。若い時はね、みんなの生活に僕たちみたいなバンドが潤いを与えてて、車のアクセルをぐんと踏むためのパワーになるんだろうなと思って、みんなのためにやってるんだって思ってたよ。でも、こうやって歳を取ってみるとさ、こんなに時間やお金や、いろいろな予定をやりくりして、見に来てくれる人がいるってことは、俺が一番パワーをもらってたって思ったよ」

ここまでは、この数年、横山が繰り返しライブで語っていることだが、この日、横山は彼の中に新たに芽生えた思いも口にした。たぶん、Ken Yokoyamaの活動休止後、誰もが聞きたかったことだと思うし、誰もが思ったに違いない前掲の疑問にも答えているから、ちょっと長くなるが、彼の言葉の続きを書き記しておきたい。

「ステージ上では本気でそう思ってるから口にするんだけど、家に帰ると、その有難みがちょっと薄れっちゃってるなって時があってさ。もしかしたら、俺だけじゃなくて、それってこのバンド全体に言えることかもしれない。だから一回、このバンドをストップするわ。ライブやりながら、“こんなにすげえライブするのに”って思ったんだけど、すげえライブにしてくれてるのはあなた方なんだよな。いや、(バンドが)発するものはきっとある。でも、発しさせてくれるのはあなた方なんだ。本当にありがとうございました。忘れられないツアーになりました。全箇所来てくれた奴もいるんだよ。きっといろいろなことをやりくりして、これを生き甲斐にしてくれてるんだろうな、ありがたいよ。今日何かのきっかけで初めて見てくれた人も同じようにありがたい。もし、未来があるんだったら、そこで会おう!」

「待ってるよ!」という言葉がフロアのあちこちから飛ぶ。それに答えるように「そうだ、そうだ。年内のツアーが1本、明日発表されるから、また会おう!」と横山が言ってから、Ken Yokoyamaが最後の最後に演奏したのは、2004年リリースのKen Yokoyamaの1stアルバム『The Cost Of My Freedom』のタイトルナンバーだ。

タイトルに“自由のために払った犠牲”という和訳を与えたこの曲をラストナンバーに選んだことに、誰もがきっとあれこれと想像を膨らませていることだろう。その答えはさておき、横山の予告通り、Ken Yokoyamaは11月23日から始まる<What Kind Of Magic Tour>の開催を発表した。Ken Yokoyamaは来年2027年6月の活動休止まで、ライブ活動に邁進するつもりのようだ。

取材・文◎山口智男
撮影◎西槇太一 半田安政 サカイマサト(KUZIRA)

 

■<Ken Yokoyama “The Rags To Riches Tour VII”>
10月14日(水)@東京・豊洲PIT セットリスト

【KUZIRA】
01.In The Deep
02.Blue
03.Snatch Away
04.Less The Best
05.21 Buck
06.Growing Up
07.So Far So Good
08.Clown
09.And Dance Going Nowhere
10.How You Feel
11.Wasted Time
12.Backward
13.A Sign of Autumn
14.Pacific
15.Spin
【Ken Yokoyama】
01.I Won’t Turn Off My Radio
02.Kill For You
03.Parasites
04.Cry Baby
05.Maybe Maybe
06.Empty Promises
07.Your Safe Rock
08.Stickin’ In My Eye ※NOFX
09.It’s My Way, Go Your Way
10.What Kind Of Love ※SNUFF
11.My One Wish
12.Believer
13.The Ballad
〜Kokomo (The Beach Boys)〜
14.WALK ※HUSKING BEE
15.Punk Rock Dream
16.Let The Beat Carry On
17.These Magic Words
18.4Wheels 9Lives
19.The Cost Of My Freedom

 

Ken Yokoyama
HAWAIIAN6

■<Ken Yokoyama “What Kind Of Magic Tour”>
11月23日 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
11月24日 埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
11月26日 長野・松本 LIVE HOUSE 箱船
11月27日 静岡・SOUND SHOWER ark 清水
12月18日 神奈川・YOKOHAMA Bay Hall
w/ HAWAIIAN6
▼チケット
【オフィシャル1次先行】
受付期間:10/22 19:00〜10/25 23:59