【ライブレポート】SEX MACHINEGUNS、2年半ぶりニューアルバムを掲げマンスリーライブ「マグマのように熱く燃えましょうか!」

前作『地獄の暴走列車』から約2年半ぶりとなるニューアルバム『HEAVY METAL COMMANDER』を、2025年12月17日にリリースしたSEX MACHINEGUNS。
同作はSEX MACHINEGUNSならではの王道的なヘヴィメタル/スラッシュメタルのテイストとユニークかつリアルな歌詞の取り合わせを活かしたスタイルを引き継ぎつつ、より魅力を増した最新の彼らを堪能できる一作となっている。さらに、アルバムリリースに伴って2025年12月から2026年3月にかけて川崎CLUB CITTA’、 名古屋Electric Lady Land、大阪BIGCATでマンスリーライブを行うことも決定となった。このSEX MACHINEGUNSの意欲的な動きに、歓喜の声をあげたリスナーは多かったに違いない。
そして、SEX MACHINEGUNSのアルバムリリース・ライブやツアーに関しては、注目点がひとつある。彼らは新作を携えたライブ/ツアーであっても新曲を披露すること以上に、リスナーが聴きたい曲を演奏することを大事にするバンドとして知られている。“果たして、今回も彼らはそのスタンスを貫くのか?”“『HEAVY METAL COMMANDER』はライブ映え間違いなしの曲が多いから、今回は意外と新曲をやるのでは?”“新曲を演奏するとしたら、どの曲だろう?”……などなど、様々なことを思いつつマンスリーライブ3連戦の初日を飾る川崎CLUB CITTA’へと足を運んだ。

開演を迎えて暗転した場内にダークなオープニングSEが鳴り響き、SEX MACHINEGUNSのメンバーがステージに姿を現した。男性ファンの多いライブならではの「ウォーッ!」という野太い歓声と熱い拍手が沸き起こる中SEは生演奏に引き継がれ、客席に伸びたランエリアに立ったANCHANG(Vo, G)とSUSSY(限りなくメンバーに近いサポートギター)がエモーショナルなハーモニーを奏でる。そんなドラマチックな幕開けを経て、ライブはパワフルに疾走する「みかん」と「食べ舐め」を続けて聴かせる流れから始まった。
ステージ中央に力強く立ち、力感と深みを併せ持った歌声を聴かせ、テクニカルなギターソロを決めるANCHANG。思わず目を引かれる激しいステージングと重厚なサウンド/グルーブで、オーディエンスを魅了するSHINGO☆(B)。ドラムセットの後ろから鮮やかな存在感を発しながらタイトかつテクニカルなドラミングを展開するTHOMAS(Dr)。シュアなギターワークと客席に荒々しく煽りを入れる熱い姿のマッチングが印象的なSUSSY。異なった魅力を湛えた4名が並び立った情景と全身を揺する轟音の応酬にオーディエンスも激しいリアクションを見せ、ライブが始まると同時に場内のボルテージは一気に高まった。

2曲聴かせた後、ANCHANGのMCが入った。「川崎! ちょっと待て、ちょっと待て。今までで1番多い人数じゃないですか! 大丈夫ですか? 今日はSEX MACHINEGUNSのワンマンですよ。どなたも来ませんよ。ゲストで(デーモン)閣下も来ませんよ(笑)。いいんですか、それでも? そうか。俺達がSEX MACHINEGUNS! それでは紹介しましょう、SHINGO☆!」(ANCHANG)
「石垣島生まれで、最も太陽に近い男、SHINGO☆だあーっ! 平日のCLUB CITTA’へ、ようこそ! みんな本当はやらなきゃいけない仕事を溜め込んで、溜めて、溜めて……いや、むしろ今日ここに来なければ私は年を越せない、私はお仕事をがんばれないかもしれない。そんな気持ちで、皆さん今日ここに来てくれていると思います。見てください。こんなに沢山の人が、人が、人がいっぱいおります。ありがとうございます! そして、我々のニューアルバムが出ました」(SHINGO☆)
「そう。これも口が酸っぱくなるほど言っていますが、我々は“新しいアルバムが出たからといって、新曲をやると思うな、この野郎!”というバンドなので(笑)。でも、今日は仕方ないから、やります。「ハイウェイスター」!」(ANCHANG)

モダンなスピード感やキャッチーなサビなどを配した「ハイウェイスター」を完璧といえる形で披露して新曲を昇華させる力量の高さを見せつけた後、ダークな「森のくまさん」やアッパーな「JAPAN」などが続けて届けられた。鉄壁のアンサンブルが光る良質なサウンドやランエリアも使い切る派手なパフォーマンス、全員がしっかりシンクロした“フリ”などが折り重なって生まれるSEX MACHINEGUNS の引き上げ力は圧倒的で、終始いい空気感でライブは進んでいった。
その後は「今日これだけみんなに集まってもらえたのはTHOMASのがんばりも大きかったと思いますよ。では、なにもしない男を紹介します!」というANCHANGの呼びかけに応えて、SUSSYが挨拶。
「SUSSYだあーっ! 川崎! いや、俺くらいのスターになるとさ、なにもしなくても寄ってくるのよ。なんか惹きつけちゃうよね! 音楽って、そういうもんじゃない? 発信することって大事だけど、惹きつけちゃうって、もっと大事じゃない? ヘヴィメタル最高じゃない? ヘヴィメタル、吠えてる!? 轟けますか!? もっと轟かせないと! ヘヴィメタルを轟かせろ!」(SUSSY)

そんなSUSSYの熱いアジテーションに続くライブ中盤ではANCHANGがヴィンス・ニール(モトリークルー)やブライアン・ジョンソン(AC/DC)などを彷彿させる歌声で流麗なメロディーを聴かせる「サンダー」を皮切りに、超高速チューンの「震え」やホラー感を湛えた陰りが魅力的な「悪魔笛」、エモーショナルな世界からスピーディーなミドルセクションに移行する「そこにあなたが」などが演奏された。突進力を押し出したられたライブでいながら、こういった楽曲達をじっくり聴かせる辺りも実に見事で、SEX MACHINEGUNSが描き出す様々な情景に場内を埋めたオーディエンスが深く惹き込まれていることが如実に伝わってきた。
その後はドラマチックに疾走する「American Z」を聴かせた後、THOMASがドラムソロを披露。客席へのアジテーションも交えた肉感的かつテクニカルなドラムソロでオーディエンスを大いに沸かせてみせた。さらに、火柱が何度となく上がるギミックと共に演奏された「ジャパメタ」や心を駆り立てられる「愛人」などが続けざまに放たれて、場内の熱気はどんどん高まっていく。ライブ中盤のメリハリを効かせた構成はさすがの一言で、常にハイエナジーでいながら中だるみなどは微塵もなく、ついぞ観飽きることのないライブになっていることが印象的だった。

「川崎CLUB CITTA’、イェーッ! ヤバいっス、ヤバいっス、ヤバいっス! こんなに「イェーッ!」って言ってくれる人が何倍、10倍、100倍、200倍、1000倍! 何倍かわからないけど、すごくいっぱーい! イェーッ! この時が終わってほしくないっス。幸せだぞ! 誰よりも幸せだぞ! ありがとうございます! もう最後まで、ぶちかます!」というTHOMASの熱いMCを経て、ライブは後半へ。
後半ではメロディアスな「BURN」、圧巻の突進力とタッピングやスウィープピッキングなどを織り交ぜたANCHANGのギターソロをフィーチュアした「桜島」などが演奏された。今回のライブを観てあらためて感じたことだが、ANCHANGの速弾きの1音1音の発音のよさやリズムの正確さなどは注目といえる。彼のギタープレイを生で観ることができるのはSEX MACHINEGUNSのライブの大きな魅力であると共に、シンガーとしても、ギタリストとしても高いポテンシャルを備えたANCHANGという存在には圧倒されずにいられない。
そして、場内のボルテージがさらに高まっていく中、本編のラストチューンとして「FIRE」が演奏された。ライブ最終盤に入り、さらに勢いを増して全身全霊のパフォーマンスを織り成しながら轟音を鳴り響かせるSEX MACHINEGUNSと、それに応えて熱気に溢れたリアクションを見せるオーディエンス。「FIRE」で場内の盛り上がりは最高潮に達し、「FIRE」を演奏し終えてメンバーがステージから去ると同時に、客席からはアンコールを求める熱い声と手拍子が湧き起こった。

アンコールでは「マグマのように熱く燃えましょうか!」という言葉と共に「プライド」を聴かせた後、炸裂するように「SEX MACHINEGUN」をプレイ。場内は熱狂的な盛り上がりを見せ、ライブが終わった後の川崎CLUB CITTA’の場内は完全燃焼ライブならではの晴れ晴れとした空気に包まれていた。
今回のライブで、そのポテンシャルの高さを余すことなく見せつけたSEX MACHINEGUNS。最新作『HEAVY METAL COMMANDER』は“おっ!”と思わせる楽曲が並んでいるにも拘わらず、演奏されたのは「ハイウェイスター」と「悪魔笛」2曲のみで、いつもと変わることなくオーディエンスが望む曲を聴かせるスタンスを貫いたのはさすがといえる。そして、ここに来てライブバンドとしての魅力をより高め、上質なアルバムを完成させ、それに呼応するようにライブの動員も増えるなど、SEX MACHINEGUNSにいい風が吹いていることを感じさせる。2026年以降の彼らがさらなるスケールアップを果たすことは確実といえるだけに、今後の彼らにも大いに注目していきたいと思う。
取材・文◎村上孝之
写真◎らいち







