【インタビュー】陰陽座、新曲2曲を含む燦然と輝く龍と鳳凰を冠した7年ぶり2枚目のベストアルバム『龍凰珠玉』
“妖怪へヴィメタルバンド”の名を掲げ、14年にわたり独自の道を切り拓いてきた陰陽座が、7年ぶり2枚目のベストアルバム『龍凰珠玉』を12月4日に発表する。前作『陰陽珠玉』以降に発表された4枚のアルバム『魔王戴天』『魑魅魍魎』『金剛九尾』『鬼子母神』を軸に選りすぐられた28曲に加え、何と言っても新曲2曲が素晴らしく超弩級! 音が鳴った瞬間から興奮が止まらない「吹けよ風、轟けよ雷」の剛速球ストレートぶり、そしてノリの良さと真摯なメッセージが絡み合う「生きもの狂い」の名リリーフぶりは、聴く者すべての感涙を呼ぶはずだ。陰陽座の家紋として燦然と輝く龍と鳳凰を冠した本作が照らす陰陽座の未来を、リーダー・瞬火を中心にメンバー全員が語ってくれた。
◆陰陽座『龍凰珠玉』~拡大画像~
■せっかくベスト選曲なんだから2枚とも聴きやすくしたいので
■どちらも等しく楽しく頭から終わりまで聴けるようにしました
――2006年の『陰陽珠玉』から7年ぶりのベストになりますね。このタイミングで新作ではなく、ベストをリリースすることに決めたのには、どんな意図があるんでしょう?
瞬火:あらかじめ言っておきますと、『鬼子母神』(2011年12月発売の最新アルバム)に続く次のオリジナルアルバムというものには、既に着手しています。ただ、その新作の有るや無しやは別問題にして、有難いことに2013年現在も陰陽座を新たに知って、興味を持ってくださる方々がいらっしゃいます。その方々が陰陽座の作品を聴いてみようとしたときに、ベストアルバムというものが出ているのなら、とりあえずベストを選ぶのが順当なところですよね。とはいえ、そこで手に取られるのが現状では『陰陽珠玉』しかないわけで、その後の7年で4作品を発表してきた自分たちからすると、やはり現在に近いものを聴いてほしいという気持ちが強いわけです。だから、このへんで『陰陽珠玉』後の作品を中心としたベストというものをまとめる必要があるなと、最近ずっと考えていたんです。
――となれば、普通は時期を分けて『陰陽珠玉』後の4作品からのみ選曲するところ、『龍凰珠玉』にはそれ以前の楽曲も数曲収められていますよね。
黒猫:選ばれた2枚組30曲のラインナップを見て、木に例えると細い枝がいっぱい伸びてるんじゃなく、幹がどんどん太くなって太い枝がグン!と伸びていってる感じがしましたね。陰陽座は結成当初からバラエティに富んだ、いろんなタイプの曲をやってきたんですが、それがさらに成長して。結成時からそのまま変わらず、良い養分を吸って成長できた結果がココにあるなぁって、手前味噌ですがそんな感慨にも耽りました。
招鬼:『鬼子母神』などの組曲からも何曲か個別に入ってますが、そもそも瞬火が作曲する時点で一つの楽曲として成り立つように作っているので、別に単体で他と離れた曲順で収録されていても違和感なく聴けますよね。全体的なことで言えば、あっちにフラフラこっちにフラフラせず、ひとつ筋の通った方向性を持って歩んで来ているのが、すごく感じられましたね。
狩姦:僕は単純に、「道成寺蛇ノ獄」が入っているのが嬉しくて! 普通ならコンパクトでキャッチーな曲を選びがちなところ、あんな10分を超える大作をベストに入れるっていうのが、もう、すごく陰陽座らしいな!と。
瞬火:キャッチーでテンポのある曲、跳ねた曲、バラードと、いろんな音楽をやってきた中、この「道成寺蛇ノ獄」ほど陰陽座にしかできない曲ってないんじゃないか?と思うので、そこは一切の躊躇なく選びました。物語を歌うバンドとしての真骨頂であり、間違いなく“安珍清姫伝説を題材としたロック”という世界の中では金字塔だと自負していますので(笑)。
――未だに対抗馬が現れませんが(笑)、陰陽座にしか出来ない素晴らしい曲であることには間違いないです。ところで、前回は勢いとテンポを備えたdisc『陽』に、静かで物語性豊かなdisc『陰』と、収録曲の特色に合わせてディスクを分けていましたが、今回のDisc『龍』とDisc『凰』には……。
瞬火:そういったディスク毎の特色は意図的に無くしました。というのも、前回の『陰陽珠玉』ではタイトルにならって陰陽座の音楽が持つ陰と陽、つまり光と影を表現することを優先したわけですが、やはりdisc『陰』はトレーに乗せるハードルが高いような気がして……要するにディスクに色を付け過ぎると、“聴きやすさ”という点では差が出てしまう。で、せっかくベスト選曲なんだから、2枚とも聴きやすくしたいということで、今回はどちらのディスクも等しく楽しく頭から終わりまで聴けるようにしたんです。
狩姦:おかげで並べたものを聴いたときには、もう、この曲順のままライブをやりたい!って思ったくらい。すごくしっくり来て、さすが瞬火の選曲だな!と。
黒猫:この形で瞬火から提示されて、メンバー全員「これしかない!」と思ったんですよ。
――2枚とも頭でドカンと上がり、最後に皆で弾けるという、まさにライブを彷彿させる流れになっていますもんね。
瞬火:やっぱりね、打順には理由があるんです。例えばWBCにしても、選りすぐりの選手を集めたからって、誰が何番目に打ってもいいわけではない。各球団での打順が1番、2番の人はWBCでも概ね1番、2番だし、4番の人は4番だし。
招鬼:最後に向かってガツン!と盛り上がっていこうっていう位置には、それぞれ「序曲」からの「魔王」、「焔之鳥」からの「鳳翼天翔」が配置されてますからね。まさにアンコール始まりのポジションですし、SEから始まるこれらの曲が来ると、条件反射でテンションが上がります。
瞬火:ベストだから入れるべき曲も立て込んでいますし、SEの「序曲」「焔之鳥」をカットするやり方もあるかもしれませんが、ライブでは高確率でイントロダクション込みで披露してますからね。せっかくベストで予習したのに、SEが掛かった瞬間、周りの人は盛り上がっているのに自分だけポカーンとなって、曲が始まってからやっと「ああ、あの曲か!」となるのは気の毒だと思うので、そこは崩さずに収録しました。
黒猫:私はDisc『凰』の「慟哭」で胸がグーッ!と来た後に流れてくる「焔之鳥」、そして「鳳翼天翔」を聴いたときに号泣しましたね。頭から陰陽座の歴史を辿って、もともとアルバムの幕開けを飾っていた曲が、終盤の“ここからもう一盛り上がり!”っていうところで流れてきたときに、堰を切ったようにいろんな想いがあふれてきたんです。あと、ライブの光景がワーッ!と目に浮かんで、違った意味で熱くなったのが「悪路王」に続く「にょろにょろ」。この並びも、かなり胸に迫りました。
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