[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「ナダ・サーフ」

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ナダ・サーフの新作「イフ・アイ・ハッド・ア・ハイファイ」はカヴァー集なのだが、この選曲が面白い。若手のソフト・パックから、同世代のスプーン、ケイト・ブッシュにデペッシュ・モード、近年再評価著しいアーサー・ラッセル、果てはプログレのムーディー・ブルース(!)までと、呆気に取られるほど幅が広いのだ。

しかし本作は「ルーツを辿ってみました」という種類の真っ当なカヴァー・アルバムと幾分感触が異なる。車のラジオからたまたま流れてきて知ったスペインのメクロミナ。友人から薦められたゴー・ビトゥイーンズ。フードゥー・グールズのライナーを書いていた女性からレコードをプレゼントされたドゥワイト・トゥイリー・バンド。そんな風にメンバーが人生のところどころで出会った楽曲の数々を、いかにもナダ・サーフらしいギター・ポップに置換して綴った本作には、ロードムーヴィーを思わせる風情があるのだ。原曲に縛られる気などまるでない編曲も好印象。日本盤に収められた少年ナイフ、スピッツ、アジアン・カンフー・ジェネレーションのカヴァーも、まるで彼らのオリジナル曲のように感じられる。

1曲、いわくつきのカヴァーもある。スプーンの「ザ・アゴニー・オブ・ラフィッテ」は、彼らがエレクトラからクビになった際の苦い思いを、担当A&Rマンに歌いかける形で書いたもの。歌詞に出てくるシルヴィアという女性は、ナダ・サーフをクビにしたエレクトラのCEO(当時)と同一人物なのだ。そんな曲をこうして取り上げるあたり、一見穏やかそうだが腹にパンク魂を抱えてるナダ・サーフらしくて好感が持てる。

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