映画『アクロス・ザ・ユニバース』、音楽は全てビートルス

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舞台版「ライオン・キング」でブロードウェイ・ミュージカルの常識を打ち破った天才演出家が、今度はミュージカル映画に革命を起こした。それも音楽界の至宝、ビートルズの名曲たちを武器にして。

その演出家とは、演劇、オペラ、人形劇、映画(『タイタス』『フリーダ』)など、シアトリカル・アートのあらゆる分野で型破りな挑戦を続けるジュリー・テイモア。彼女がアジアの人形劇や仮面劇、日本の文楽などの手法を取り入れた「ライオン・キング」は芸術性と娯楽性の両面で傑出し、それまで低迷していたブロードウェイに活気を取り戻させた画期的な大ヒット作。そのテイモアが、映画監督として初めて手がけたミュージカルが『アクロス・ザ・ユニバース』だ。この作品は、33曲におよぶミュージカル・ナンバーのすべてが、なんとビートルズの名曲なのだ。

とはいえ、これはビートルズについての映画ではない。ビートルズのメロディと歌詞を、ストーリーや登場人物の心情を物語るメッセージとして再生。1960年代のアメリカと、そこに生きる若者たちの恋と青春をリアルに描いたオリジナル・ミュージカルだ。しかも、テイモアならではの独創的な映像イメージを散りばめたミュージカル・シーンは、観客の度肝を抜くほど衝撃的で斬新。『アクロス・ザ・ユニバース』はこれまで誰も体験したことのない、真に革命的なミュージカルなのである。

全米では、2007年9月14日に封切り。23スクリーンでの限定公開ながら、興行成績で16位にランクインという快挙を達成。その後、クチコミ人気が広がって964スクリーンにまで拡大され、2度のベスト10入りを果たす大ヒットとなった。また、ゴールデン・グローブ賞ではミュージカル・コメディ部門の最優秀作品賞にノミネート。アカデミー賞では衣裳デザイン賞に、グラミー賞では最優秀サウンドトラック賞へのノミネートを果たしている。

ビートルズのスピリットから紡ぎ出されたストーリーの基本は、“ボーイ・ミーツ・ガール”。主な舞台となるのは、ベトナム戦争が激化し、反戦運動や黒人解放運動、ドラッグ・カルチャー、ロックンロールの嵐が吹き荒れ、混迷を極めつつも反骨の精神に満ちあふれていた'60年代のニューヨークだ。

リバプールの造船所で働く青年ジュードは、父親を捜しにアメリカへと旅に出る。そこで出会ったのが、やんちゃな大学生のマックス。たちまち親友同士となった二人は、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジへと流れ着く。ロックシンガーのセディ、ギタリストのジョジョ、元チアリーダーで同性愛者のプルーデンスという仲間たちを得て、街のエネルギーを感じるジュード。そして彼は、マックスの妹で、純真ながらも芯の強いルーシーと恋に落ちるのだった。しかし、無邪気な時間は続かない。徴兵令状を受けたマックスはベトナムへと出兵、ジュードとルーシーも時代の波に翻弄され、固く結びついていたはずの心は、いつしかバラバラに…。しかし、映画は困難に立ち向かおうとする恋人たちの情熱を、'60年代という時代の精神を、ビートルズのサウンドに乗せて力強く描いていく。

もうひとつ、この映画の「新しさ」を支えているのが、魅力あふれるキャストの新鮮さだ。テイモア監督はこの映画にいわゆる「有名スター」を使わず、登場人物のイメージにピッタリな新星を発見。キャストはすべて吹き替えなしで、しかもライブ録音でセリフ同様に歌を歌っている。主人公のジュードには、本作の後に主演した『ラスベガスをぶっつぶせ』でもスター性を証明した、イギリス出身のジム・スタージェス。ヒロインのルーシーは、『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』で美少女スターとして頭角を現したエヴァン・レイチェル・ウッド。マックス役は、『敬愛なるベートーヴェン』や『ビカミング・ジェーン』のジョー・アンダーソン。セディ役には、オフ・ブロードウェイの舞台でジャニス・ジョプリン役を演じたシンガーのデイナ・ヒュークス。ジョジョ役は、インディーズのソウルシンガー/ギタリストとして絶賛を集めるマーティン・ルーサー・マッコイ。プルーデンスには、香港の歌姫テレサ・カーピオの娘で、ダンサー/女優のT.V.カーピオという面々。

さらに、カメオ出演者の豪華さも特筆ものである。ドラッグ・カルチャーのアイコン的な人物、ドクター・ロバート役にはあのU2のボノが扮し、そしてビートルズの友人でもあったジョー・コッカーが、ニューヨークの住人3役に扮して渋いヴォーカルを聴かせている。マックスの幻想シーンに登場するセクシーな看護師5人を演じて楽しませてくれるのは、テイモア監督作『フリーダ』に主演した、サルマ・ハエックだ。

テイモアとのコラボレーションで、彼女のとてつもない発想を具体化したスタッフも、超一流の個性派揃い。撮影は、『アメリ』でオスカー候補となったブリュノ・デルボネル。プロダクション・デザインは、『ダージリン急行』のマーク・フリードバーグ。編集は『タイタス』『フリーダ』でもテイモア監督と組んでいるフランソワーズ・ボノ。衣裳デザインは『オール・ザット・ジャズ』『バグジー』でオスカーに輝いたアルバート・ウォルスキー。音楽プロデューサーにはテイモア監督と長年のコンビで知られるエリオット・ゴールデンサール。振付はアメリカを代表するダンサー/振付師のダニエル・エズラローがあたっている。

さて、この映画を、ビートルズはどう評価したのか?

早い時期での試写を鑑賞したリンゴ・スターはすっかり楽しんだ様子で「とても気に入った!」と絶賛。ポール・マッカートニーはテイモア監督の隣でプライベート試写を鑑賞、監督に人生最大の緊張を味わわせたが、「気に入らなかったところはありましたか?」と聞かれて「気に入らないところなんてあるものか」と即答。どれだけ満足したかを語ったという。オノ・ヨーコももちろん、ポールに負けないくらい映画を愛してくれた。きっとジョージ・ハリスンやジョン・レノンも映画を見ることができたなら、さぞや誇りに思ったことだろう。

この上なくヴィヴィッド、リアルでいてマジカル。ありえないほど新しいミュージカル・ワールドへのミステリー・ツアーが、あなたを待っている。

◆映画『アクロス・ザ・ユニバース』フォトアルバム
https://www.barks.jp/feature/?id=1000040678

◆『アクロス・ザ・ユニバース』の試写会に5組10名様をご招待
(応募締め切り:2008年7月20日)
https://www.barks.jp/present/

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