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3D a.k.a.ロバート・デル・ナジャ、Daddy G、マッシュルーム('98年に脱退)。この3人が核となったMassive Attackが、デビュー15年にして初のベスト・アルバム『COLLECTED』をリリースした。しかし、御存知の通り、彼らの活動ペースは驚くほどマイペース。オリジナル・アルバムは『Blue Lines』、『Protection』、『Mezzanine』、『100th Window』という、たった4枚しかリリースされていない。しかし、彼らが与えた影響力、シーンに残した足跡は、絶大なものがある。
今回リリースされたこのベスト盤『COLLECTED』は、そんな彼らの足跡を知るのには最適な1枚といって良いだろう。『Blue Lines』の1曲目を飾る「Safe from Harm」、トリッキーをフィーチャーしたMassive Attackの真骨頂ともいえる「Karmacoma」、エヴリシング・バット・ザ・ガールのトレイシー・ソーンを迎えた「Protection」、中期Massive Attackの代表曲「Rising Son」、そして1stアルバムリリース後、4年間の沈黙を破ってリリースされた「Sly」、コクトーツインズのエリザベス・フレイザーをフィーチャーした「Teardrop」などなど、彼らの歴史を語るうえで欠かせない名曲を収録している。
Massive Attackが重要だった点は、DJたちがDJたちの視点から音楽をクリエイトするという行為を、非常に高い水準でやってみせたところにあるだろう。本作には未収録であるが、彼らのデビューシングルである「Daydreaming」などは、その良い例である。ガラージ・クラシックとしても知られるWally Badarouの「manbo」を使用したトラックに、当時無名だったスモーキー・ラッパーであるトリッキーと、レゲエの大御所シンガーであるホレス・アンディをフィーチャーしたこの曲は、現代では当たり前の感覚かも知れないが、当時こんな形で表現できたクリエイターはほとんどいなかったはずだ。(これは後にビョークなどを手掛け、世界的なプロデューサーとなるネリー・フーパーによるところが大きいのだが……)。
また、本作のスペシャル・エディションに付属しているボーナスCDにも注目したい。初CD化の曲やオリジナル・アルバム未収録曲など、ファンには堪らない楽曲を多数収録している本盤の中でも一際目を引くのが、モス・デフをフィーチャーした「I Against I」だ。この曲は、なんとバッド・ブレインズのカヴァー! アナログの限定盤だったということもあり、ファンの間でも幻の1曲と言われていただけに、今回のCD化は嬉しいところだろう。また、マドンナと共演したマーヴィン・ゲイの「I Want You」のカヴァーも知られざる名曲だ。盟友ネリー・フーパーがマドンナのアルバムをプロデュースしたことで実現したこのコラボレートは、中期Massive Attackの楽曲の中でも屈指の仕上がりと言っていいのではないだろうか。
3Dがほぼ一人で制作したという『100th Window』は別としても、『Blue Lines』から始まったMassive Attackは、このベスト盤のリリースで1つのサイクルが終了したという見方もできるだろう。本作のラストに収録された、唯一の新曲「Live With Me」。御大テリー・キャリアーをフィーチャーしたこの曲は、これまでの活動の総決算ともとれるような曲でもあるし、新たなMassive Attackへの序章のような曲でもある。“新作はゴシック・ソウルになる”という3Dの談話にもある通り、この曲が新たな方向性への筋道になっていくのではないだろうか。
すでに来日が決定している<SUMMER SONIC 06>で、Massive Attackの今後の方向性がより明確にわかるはず。'07年初頭にリリースされるというニュー・アルバム『Weather Underground』まで、我々はもう少しだけ待とうじゃないか。
文●宮崎敬太 |
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