――2ndアルバム『Meg Lion』、完成しましたが。まず、1stアルバム『Sharon Stones』を作っているときに、すでに『Meg Lion』の存在を天野さんは予感していたましたか?
天野:
『Sharon Stones』を作っている間に、今年中にもう一枚、ということは決めていました。
――そのときに『Sharon Stones』と、ある意味で対になるようなアルバム、という構想もあったわけですか?
天野:
いや、それはまったくなくて。作り始めているときに、逆というか、『Sharon Stones』に比べると、今回は、やはりシングルは少ないので、そうすると『Sharon Stones』で表現できなかった曲、つまり、シングルではない曲、が中心になるだろうなと。
――シングルで開けてない扉というのは、天野さんの中でかなりあるんですか?
天野:
あるかもしれないですね。“書くたびに発見していかないと”とまでは思わないですけど。
――どちらかというと、アルバム指向のソングライターじゃないですか。シングル向きの曲と、アルバム収録向きの曲というのは、ご自分でなんらかジャッジをしなが ら書いてるわけじゃないですよね。
天野:
んー、わりとジャッジはしてますね。「人形」は1stアルバムが出来上がって間もなく書こうと思ったタイトルだったんですけど、曲を作る前から“これかな、シングルは”って。タイトルで(笑)決めました。次に出すシングルは、私のすべてを集めたような、でありながら、原点であるような曲にしようと思ったんで。「人形」というタイトルから想像するものをかき集めている段階で、“これだな”と思って書き上げたふしはありますけどね。
――原点でありながら、すべてが詰め込まれているという?
天野:
それでいて繋がるような。前作の1曲1曲だったり、『Meg Lion』の1曲1曲であるすべてが繋がるような、今まで出していたシングルのすべてが繋がるような。
――かなり重要じゃないですか、ポジション的には。実際書き上げたときにそうなりました?
天野:
そうですね。“なんで自分がモノを作るのかな”とか“自分は小さいときこうだったな”とか、そういう心は小学生くらいまで戻って(笑)、書いていたふしがありました。
――モノを作るときの、初期のモチベーションというのはなんだったんですかね?
天野:
それは最近気がついたことでもあるんですけど。先日「陶芸やガラスには興味がないの?」とレコーディング仲間に言われ。作ってみたいとは思うけど、時間があったら趣味で、というくらいで。すごくそそられるものではないな、という話をして。
そのときハッと気がついたのは、自分は料理も好きですし、曲を書くのも好き、絵を描くのも好き、写真を撮るのも好き。例えば編み物だとか、洋裁をするのも好き。全部人に見せるものなんですよ。人と共有できるもの。陶芸を誰かほかの人にプレゼントする、となったらたぶん気合いが入って作るんでしょうけど。そういうことだな、と思いましたね。
ここから誰かに提示するとか、そういうものを自分は作りたいなと。例えば、作った料理がまずくてもいいんです、“おいしくない”って言われても。コミュニケーション・ツールではないですけど、自分が外に向けるものだな、と。
――人との関わり合いを促す何かとしての表現という話が出ましたけど、今回『Meg Lion』の「時計台の鐘」と「ライオン」は傑出していいな、と思うんですけど。両方とも関わり合いの情景を歌ってますね。
天野:
ええ。「時計台の鐘」は、シングル「人形」の中に入っている……今「メグとライオン」という絵本を執筆してまして、それの序章なんです。この曲は、ほかの曲を作っている合間に、まったく違うメロディが浮かんだんで、Aメロに歌詞を乗せたというか一緒に歌ったら<止まってしまえ時計台 八時を告げる間に>になったので。で、この絵本(「人形」に入っている)の最後もこの言葉で締め括られているんです。
――1stと2ndで、コンセプト上は“1stが赤、2ndは青の姉妹品だ”となってますけども。この「時計台の鐘」と「ライオン」のヴォーカルとかを聴くと、ものすごく進化していることがわかるんです。
天野:
楽曲が出来上がってすぐレコーディングで歌を録る、という作業が続いたので、出来上がったときの気持ちみたいなものを維持しながらヴォーカル録りに挑めた、っていうのはあったかもしれないです。わりと時間を置かずに。作品をクールに見つめる、というよりかは、そのままの気持ちを持っていくことができる時間の中でレコーディングできたな、と。
実際、まったくクールに見えないくらい急にレコーディングっていうこともあったんで。今日プリプロして明日、みたいな(笑)。歌を先に録ってから、というようなことがあったんで、そうなってくると、まったくクールになれないままであったりするので、出来上がった今、やっと第3者のような気持ちで聴けるようになったかもしれないですね。耳が疲れてしまうほど作業に没頭してました。
取材・文●佐伯 明