――「ナツノヒカリ」を聴いて、今までにはない、新たな“GRAPEVINEの色”を感じたんですが。
田中和将(以下、田中):
僕らも作ってて、「今までこういう曲、出してなかったな」と思ったんで、シングルにしたようなところはあります。
――田中さんの歌い方も変わったように感じたんですね。声がやわらかくなった、というか。それは前作「風待ち」やアルバム『Circulater』ぐらいから感じていたことなんですけど。
田中:
あぁ、そうですね。でも強いていうなら、今回は意識的に「みずみずしい唄を歌いたいな」と思って歌った部分もあります。ちょっと年齢的にも枯れかかってるんで(笑)。せっかくこういう曲やし、若々しい頃を思い出して歌いたいな、と。現実的な話をするとね、僕はもともとレコーディングの歌入れが苦手で。でも最近は、わりとリラックスした歌入れの場を自分で設けられるようになってきてて。だから「風待ち」とか、もうちょっと前ぐらいからですかね、歌入れでもいろいろ試せるようになったんですよ。
――作曲は亀井さんですが、どんなシチュエーションで作った曲なんですか?
亀井亨(以下、亀井):
今年に入ってからずっとみんなで曲出しをしてて、その時にできた曲で。特に「みずみずしい」とか「さわやか」とかいうことを意識して作ってはないです。だから意図して作ったというよりは、自然にできた感じですね。
田中:
僕ら、そもそもポップ体質やと思うんですよ。特に亀井くんとかは一番のメロディーメイカーで、非常にメロウなメロディーを書ける人なんで。ただ、ポップ体質ではあるけど、その消化の仕方っていうのがたぶん、ものすごい複雑なのかもしれないですね。だから単なるポップなものにはならないんじゃないかと。
――歌詞の方は、過去の恋愛に思いを馳せる……といった内容ですが、メロディーからインスパイアされて?
田中:
そうですね。いつも歌詞は曲から呼ばれて書くんで。今回はなんか、そういう気恥ずかしいぐらいの年齢のことが歌いたくなったんですよ。
――それが田中さんの夏のイメージ?
田中:
僕、けっこう夏好きなんで。だから夏ソング多いですよ。なんかね、いいんですよ、夏って。開放感あふれる季節だったりするじゃないですか、世間的には。でも楽しければ楽しいほど、時間が経つとなぜか遠いイメージがして……。毎年、そう思うんです。たかが昨年の夏とかでも、僕の記憶の中ではすごく遠い感じがする。そういう「はかなさ」と「楽しさ」みたいなもののバランスが、どうも好きみたいです。
――亀井さんの夏のイメージは?
亀井:
僕は学生時代、ずっと運動部だったので、クラブ活動のイメージが強いですね。「暑~い」とか、「しんど~い」とか(笑)。
――ところで、今回の作品が西原さんの復帰作ということになるんですか?
田中:
そうなんですけどね。実はレコーディングには参加してなくて。というのも、このレコーディングが終わってから復帰が決まったんですよ。だからベースは根岸(孝旨)さんで、キーボードは高野(勲)さんが参加してくれてます。
――ということは、西原さんはすごく客観的に受け止められたわけですよね?
田中:
うん、らしいです。
亀井:
単純にビックリしたみたいですよ。やっぱり、中に入って一緒に作業して作るのと、外から聴くっていうのは全然違うみたいで。
田中:
この曲も上がり(最終段階の音源)しか聴いてなくて、制作段階とかは見せてないんで、けっこうビックリしたはず。GRAPEVINEがこの1年間、どう進んできたかっていう過程を見てないんで。
――そういう意味で、今後の西原さんの意見というのは、GRAPEVINEに新たな風を吹き込んでくれそうですね。
田中:
あぁ、変わっていくでしょうね。僕らもそういうのを期待してますし。3人で作ってた時はある意味、別モンみたいなもんでしたからね。それが今回戻ってきて、今は新たなベーシストを迎えた、みたいな気分なんですよ。だからどう変わっていくのか、僕らもすごく楽しみなんです。
――今回のシングルでは、オフィシャル・ホームページやレコード店などで「先行試聴キャンペーン」を展開していましたが、ファンの方の反応はどうでしたか?
田中:
それが「すごいさわやかで、ポップで意外ですね」って言う人もいれば、「さわやかで最高!」っていう人もいて。実はもっと否定的なヤツが現れるかなと思ってたんですけど、意外とみんな肯定的でちょっとガッカリ、みたいな(笑)。
――シングルと同時発売で、ライヴビデオ&DVD『GRAPEVINE LIVE 2001 NAKED FILM』も発売されましたが。
田中:
いやぁ、最初は出す予定はなかったんですよ。2月に出したライヴ盤(『GRAPEVINE LIVE 2001 NAKED SONGS』)に、初回限定でライヴ映像を5曲収録したDVDを付けていて。最初はそれだけの予定やったんですけど、5曲以外の他の部分も、ものすごい良かったんで「もったいないから出してしまえ~!」と(笑)。
亀井:
ライヴ音源は1日しか録ってなかったんですけど、その日のライヴがすごく良くって。
田中:
DVD家で見たけど、すげー良かった。いいっすよ、アレ。自分で言うのもなんやけどね(笑)、いい演奏してる。
――そんなふうに言われると、今後のライヴがますます楽しみになってきますね。
田中:
ライヴはぜひ、見に来て欲しいですね。ビデオを見てもらうとわかると思うんですけど、ライヴとレコードの印象がかなり違うはずなんで。
亀井:
うん。「ナツノヒカリ」を聴いて引っかかった人がいるなら、他にもいい曲がたくさんあるので、ぜひライヴにも足を運んでもらえればと思います。
――今年の夏もいろんなライヴイベントに参加するんですか?
田中:
夏のフェス系のライヴがいくつか決まってるんですけど、実はレコーディングもするんですよ。
――それはアルバム用のレコーディング?
亀井:
そうですね。今年中にアルバムが出せればいいかなと。
田中:
ここから晴れて4人で作るレコードになるんで、今からすごく楽しみですね。
――それから、5月に発売されたジョージ・ハリスンのトリビュート・アルバム『Gentle Guitar Dreams』に2人で参加してましたよね?
田中:
あれはもう突然! 3日前ぐらいに(笑)、根岸さんから話があって。
亀井:
最初はバンドで参加して欲しいっていう話もあったんですけど、西原さんの復帰が微妙な時期やったんで、僕と田中くんとで出張していったんです。
――選曲(「THE LIGHT THAT HAS LIGHTED THE WORLD」)は誰が?
田中:
根岸さんが考えてたらしくて、「この曲やろうと思うんだけど」って。でも「別にいいっスよ」なんて言いながら、「どんな曲やったけなぁ」とか思って(笑)。ものすごい地味な曲なんでね、家でCD引っ張り出して聴いて、「あぁ、コレかっ!!」みたいな。
――他の人の作品に参加する、というのはどうでしたか?
亀井:
よその現場って僕は初めて参加したんですけど、すごく楽しかったですね。また機会があれば、ぜひやりたいです。
田中:
うん、おもしろかったですよ。特にカヴァーって、すごく勉強になるんで。他の人と一緒に演奏するのも楽しいし。これからも声がかかれば、どんどんやっていきたいですね。
取材・文●水越真弓