プエルトリコ発、いま熱い注目を集めるラテン・ミュージックとへヴィロックのミクスチャー・バンド

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プエルトリコ発、いま熱い注目を集める
ラテン・ミュージックとへヴィロックのミクスチャー・バンド

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「わかるはずなんだ。ラテンのランゲージを理解した本物がやってるってことが」

最新 Album

Union』 (輸入盤)
MCA Records 112362
2001年6月12日発売

1 Ride
2 People
3 Erizo
4 Socialize
5 Numbed
6 Bridge
7 Si Aja
8 No Interference
9 Semilla
10 Matter Of Time
11 Pa' Ti Pa' Mi
12 Ahorake
13 Union

目下のところ、アメリカのマスコミを虜にしている“ラテン旋風”のおかげで、あらゆるレコード会社が、民族的もしくは音楽的にスペイン語圏と関連性のあるミュージシャンの搾取に走っている。しかし考えてもみよう。Lopezなる姓の人間がポップスを演じ、ボンゴやスパニッシュギターをサンプリングしてハウスミックスをやればラテンだというのなら、Pat Booneをメタルに仕立てるのと何も変わらないじゃないか。だが、一方にはラテン音楽の壁を本格的に崩しにかかっているアーティストもいる。プエルトリコ人メタルバンドのPuyaは、2枚目のアルバム『Union』でその本物ぶりを証明して見せた。ドラマーのEduardo Paniaguaが、「俺たちがやる以上、本物でなきゃいけない」と宣言する通りに。

Puyaのメジャーデビュー盤となった『Fundamental』が、サルサとファンキーなラテンジャズ、そして新手のメタルの凶暴性を生き生きとブレンドさせて注目を集めたのに対して、『Union』はグループの持つ音楽性の両面を強調することで、Puyaの底知れぬ可能性を示している。唸るギターと土臭いラテン・パーカッション、このサウンドの組み合わせは強烈だ。PaniaguaもシンガーのSergio Curbeloも、そう言われて目を輝かせた。

サンキュー!」と思わず大声を出すCurbelo。「正にそれなんだよ、俺たちが目指したのは」とPaniaguaも同意見だ。「興奮するよなぁ」とシンガーは続ける。「みんなに通じてるんだね。みんなわかってくれてる。今回のレコードで俺たちがやろうとしたことを、そのまんま指摘してくれるんだから、大当たりって感じだよ

プエルトリコの4人組は'99年に『Fundamental』を放つに当たって、“サルサ・メタル”バンドの物珍しさを充分意識していた。「当初は確かにそういう目で見られたよ。何しろ変わり種だったからね」とCurbelo。「でも、ライヴを観て考えを改めた人は多いはずだ。ガラリとね。こっちはしばらく居座るつもりでやってるんだってことを、ライヴで思い知らせてやるのさ。ステージに上がったら、俺たちは本気だから

Paniaguaが続ける。「今回のレコードで変えたかったことのひとつは、俺たちが根本的にはへヴィロック・バンドであると知らしめること。スペイン語だけじゃなくて英語の曲もある。一番の狙いは、へヴィミュージック好きのキッズに、お気に入りの他のバンドと同じように(俺たちの音楽でも)ロックしてもらうってことだ。スペイン語ロックだの何だのってジャンル分けしないでね。こいつはラテンの影響を受けたロックバンドなんだからさ

とはいえ、ラテンのルーツと現代的なへヴィロックの組み合わせという点で、このバンドは間違いなく融合派である。Paniaguaは自信たっぷりだ。「ラテン音楽やサルサにどっぷりのめり込んでる人が――たとえロックはあんまり好きじゃなくても――こういうパーカッションやラテンぽいのを(俺たちの曲に)聴けば、本物だってわかるはずなんだ。ラテン音楽のランゲージを理解した本物のプレイヤーがやってるんだってことがね

Puyaの前作で、既にそのノリにハマったリスナーは多い。“Oasis”という、バンドの故郷であるプエルトリコへの誇りを表明した曲は、メタル系のラジオ局でナンバー1ヒットとなり、スペイン語ナンバーとしては初の快挙を成し遂げた。“Oasis”のビデオは最近、MTVのBest Metal Videos Of All Timeに名を連ねたほか、2000年のASCAP大賞では“Cancion Rock”賞(訳注:Cancionはスペイン語で歌、つまり“スペイン語ロック”賞といった意味)を受賞。Billboard誌もまた、『Fundamental』でバンドにLatain Music Awardの年間最優秀ロック/フュージョン・アルバム賞を授与している。

俺たちは主にスペイン語で歌って、アメリカのバンドと一緒にずっとアメリカをツアーしてきた」と振り返るPaniagua。「それで目立ったのは確かだけど、アメリカでスペイン語を歌ってるほとんどのバンドより、俺たちはうまくやってきたと思う

2枚目のレコードを作ることができた俺たちは幸運だったよ」とCurbelo。「それが叶わない新人バンドが多い中で、俺たちは数少ない恵まれたバンドのひとつなんだ

新作『Union』では、GGGarth Richardson(Rage Against The Machine、Kittie、Mudvayne)とMudrock(Godsmack、Powerman 5000)がプロデュースを担当、Puyaの音楽的な筋肉は更に柔軟性を帯びている。また、バンドの4人のメンバーの他に、Angel Cachete Moldonado(バンドの当初からの支援者)、Anthony Carrillo、Edgar Lebron、そして、自らもグラミー受賞者でありバンドとは1年半にわたってツアーで共演しているRaphael Vargasといった著名なルンバ・パーカッショニストたちの演奏をフィーチャーしている。Curbeloに言わせれば、Vargasは現在、世界最高のボンゴ奏者だという。その他、ゲストにはピアニストのBrenda Hopkins Miranda(ベーシストのHarold Hopkinsの姉妹)、トランペット奏者のJuancito Torres、シンガーのAurelig "Yeyo"とEva L. Ortiz、パーカッショニストのCarlos RodriguezとJose De Leon、ギター奏者のGilberto AlomarとJohn Dones(プエルトリコのスラッシャー、Cardinal Sinの元メンバー)などがいる。

印象的なミュージシャンの顔ぶれだ。もっとも、驚くことではない。Puyaは実のところ'90年から活動を共にして、アメリカにやってくるまでに、プエルトリコのファンやミュージシャンの間で地道にその評判を高めてきたのだから。バンドの友達の有名人が誰かツアーに同行する可能性はあるかとたずねると、Curbeloはこう答えた。「スタジオに来てもらう予算は工面できたけど、ツアーに連れ出すだけの金の余裕があるかどうかはわからないな」。いずれにせよ、ゲストたちの存在に力を得たこのアルバムは、Puyaがより幅広い聴衆を相手にブレイクする手助けとなりそうだ。

Puyaにとって言葉の壁は問題ではなかった。このグループは英語とスペイン語の両方で曲を演じている(そして、必要とあればライナーノートに対訳も付ける)。こと歌詞に関して言えば、Puyaは深刻なテーマを扱っており、セックス、ドラッグ&ロックンロールのスペイン語版を綴ってるわけではない。「憧れてくれるキッズのために、歌詞にはある種の責任を感じてるんだ」とは、Paniaguaの説明である。

“Bridge”は、亡くなったラテンのバンドリーダー、Tito Puenteを忍ぶ曲。「Puenteとは、英語でいう“bridge”の意味なんだ」とCurbeloが解説する。「それだけじゃなくて、いろいろな意味がある。この曲のレコーディング中に、実は俺の従兄弟が死んでね。向こう側へ渡っていくことを歌っているけれども、同時に前向きな姿勢とか、行動を起こすこと、夢は今日のうちに叶えようと努力することを歌った曲でもあるんだよ。明日まで待つんじゃなくて、今日のうちに始めて、今日やってしまおう、今すぐにその橋を渡るんだ、とね

ポリティカルな含みを持つ“Pa'Ti Pa'Mi”――アルバム中のいくつかあるスペイン語曲のひとつで、タイトルの英訳は“for me and for you”――は、プエルトリコ沿岸の島、ヴィエケスにおける軍事状況を批判している。そこではアメリカ海軍が、実弾を使って定期的に軍事演習を行なっているのだ。バンドからのメッセージは明確だ。「ほら、彼女は泣いている/虐待されているからさ/組織が破壊にやってくる」。早い話が、「出ていけ!」というわけだ。

もうひとつ、“People”は人種差別の問題を訴え、肌の色や宗教を問わずに力を合わせようと力説し、アルバムのタイトル『Union』を呼び起す曲。このタイトルは英語でもスペイン語でも意味するところは同じだ。「その2つの世界を結び付ける」というのが、Paniguaの解釈である。8月初頭まで(同じくラテン系のメンバーを含むバンド)Fear Factoryとツアー中のPuyaは、全米のファンをひとつに結ぶことだろう。

Puyaのメンバーは既に、似たような思考を持つバンドと友好関係を育てているかもしれないが、それにしてもニューメタルの波が全米を席巻中の昨今、飽くことなく供給されるへヴィバンドたちと競り合わなければならないプレッシャーは感じないだろうか。

むしろ、その逆だよ」とCurbelo。「俺たちみたいな音を出してるやつは他にいないし、誰とも似た音を出したくない。同じジャンルにはいたいけど、やりたいのは俺たち独自のもの。だからプレッシャーなんかないさ。世間に俺たちを迎える用意があるんなら、俺たちも出てく準備は万端だ。ずっと待ってたんだからな。まだだってことなら、それでもけっこう。いつかきっとそうなるはずだ。そこにたどり着くまで闘い続けるのみさ

孤独な闘いには、決してなるまい。

By Bryan Reesman

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