▲作中で影一族は戦国大名/東郷秀信(津川雅彦)に仕え、対する根来忍軍は戦国大名/京極兼光(神山繁)に仕えている。しかし、京極が謎の死を遂げ、その孫娘/琴姫(奥菜 恵)が跡目を継ぐ決意をしたことから、京極側の内部人間関係が揺れはじめる。それは、根来忍軍vs影一族という戦いの構図をとることにつながっていき、ひいては、物語は思わぬ方向に展開していく。"ピースな映画を撮ること"をモットーにしている中野監督の思想は、本作のストーリーにも色濃く反映されており、"暗く忍ぶ忍者映画"とは一線を画しているのが見どころでもある。
2001年8月11日より、全国東映系劇場にて公開! ●監督/中野裕之 ●原作/横山光輝 ●脚本/斉藤ひろし、木村雅俊 ●音楽/岸 利至 「WAR DANCE」 作曲:布袋寅泰 「RED SHADOW 赤影~愛のテーマ」 作曲:布袋寅泰 ●出演/安藤政信、奥菜 恵、麻生久美子、村上 淳、藤井フミヤ、津川雅彦ほか ●配給/東映 ●上映時間/107分 Special Thanx to www.red-shadow.com |
| ▲赤影役の安藤政信。かねてから時代劇には出たかったようで、今作で念願が叶ったようだ。
| 東映50周年記念作品ということで、「SF サムライフィクション」や数々の素晴らしいヴィデオクリップを手掛けた中野裕之監督が抜擢され、未来型NINJA MOVIEとなったのが「RED SHADOW 赤影」である。
パンフレットの中で竹中直人が「中野作品は“役作り”などというくだらない作業は必要ありません! いかに“リズム”を感じ、俳優がはじけるか!それが勝負なのです!!」とのコメントを寄せているが、まさしく映像そのものに“音楽的中野リズム”がくっきりと刻み込まれている作品と言っていいだろう。
僕は原作である横山光輝著のマンガ「飛騨の赤影」あるいは「仮面の忍者赤影」を小学生の時に読んだことがあるし、その実写版のTV「仮面の忍者赤影」も毎週楽しみに観ていた記憶があるが、「RED SHADOW 赤影」は、そうした古きよき郷愁のようなものと、先鋭的な映像スピードを両方湛えている映画だと思う。A.D.1535年に地球に隕石が落ちてきて“無敵の鋼”を手にした影一族という設定も、時代劇が充分SFにもなりうるという示唆でもあろう。
▲赤影(安藤)、青影(村上淳)、飛鳥(浅生久美子)の、影一族の若手3人組。飛鳥の衣装がセクシー。で、三角関係もあったりして…。
| 僕は音楽畑の人間ゆえ、キャストに関してもミュージシャンに自然と目が行ってしまうのだが、謎の侍/風祭龍之介として登場する布袋寅泰はその存在感を惜しみなく作品に与えているし、根来忍軍の乱丸役として登場する藤井フミヤは“ヤンチャな青年”を実にスピーディに表現している(余談ながら、藤井はスタントを含む全出演者の中でもっとも足が速く、したがって動きもいちばん速かったと中野監督は言っている)。
ステージ照明でよく使われるデータフラッシュを多用した戦闘シーンや深いブルー一色の中でのシーンなど斬新で説得力のある色味も楽しめた。そして、清流や竹林、百合の花や満月といった花鳥風月系の映像が“変わらぬもの”として美しくちりばめられているところも、「RED SHADOW 赤影」がワールドワイド的作品として認知されていくポテンシャルを示しているといえる。
▲琴姫(右/奥菜 恵)は城主である祖父の死をきっかけに、男子として跡目を継ぐ決意をするが…。
| 影一族のボンデージふうコスチュームを筆頭に細部まできっちりと作りこまれた衣装も一見に値する。キャストの中では赤影役の安藤政信のいい意味での頼りなさ、線の細さが傑出している。
新世紀のヒーローとは、苦虫を潰したような表情でとってつけた哲学を語るのではなく、頼りなく線が細そうでいてスーパーな技と哲学をすでに持っているのである。できれば親子で観に行ってほしいと思っている。 |
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