集大成と新境地が同居する3rdアルバム『Thrill With Maximum』!

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この感情的なリフやオブリガードこそ、まさに"ギターが歌っている"というのだろう。
スイッチトラウトの3rdアルバム『Thrill With Maximum』は彼らの集大成と新境地が同居する出来ばえだ。
三重県四日市在住、名古屋を拠点に活躍するこのスイッチトラウトは
パブロック系ガレージバンドとして、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなど
国内外の数々のレーベルからリリースを果たしているツワモノだが、
彼らのフェイバリットは意外なところにあった。

インタヴューは中心人物である中村尚人(Vo&G/上記写真中央)に行なったのだが、
20世紀最後のクリスマス・イヴ、下北沢シェルターでのライヴ前で、すでにテンションが高め。
が、しかし中村氏のやんわりとした人間性も溢れるものとなった。


『Thrill With Maximum』発売中!
KOGA-123 1,995(tax in)
――早いペースでの3rdアルバムを・リリースですね(編集部註:2000年で3枚CDをリリース)。

中村:
そうですね。いつも趣味に走ってしまうんですけど、今作が一番僕達のサウンドにあったものじゃないかな。ヤードバーズのカヴァー「FOR YOUR LOVE」も入ってるし、ジャケットもヤードバーズっぽいですよね。ウチは作品のうち9割がインストなんですが、このカヴァー曲はドメニコドモランテのトク the D(Vo)に参加してもらいました。外部に手伝ってもらうのは初めてなんですけど、そこもひとつ聴きどころです。

――カヴァーと言えばサンハウスの楽曲も入っていますね。

中村:
ベースのSHIMIZUがサンハウス大好きでね。スイッチトラウトのカヴァーには「エ?」って感じかもしれないけど、彼のリスペクトが強くてね。好きなものを入れようというわけなんです。

――最近の傾向では、必ずしも演りたいものと好きなものが一致していないケースも多いので、気にする必要はないですよね。

中村:
ウチ等のジェネレーションって日本のロックはなかなか資料が手に入りにくくて、イメージだけが先に広がっちゃってね。だから音源見つけたときの幸せって大きいんですよ。多感な時期にそんなだったんで、サンハウスとかは思い入れ強いですね。

――そうなると、スイッチトラウトのバンド始まりのキッカケが気になりますが。

中村:
最初はR&R系のバンドをやっていたんですけど、ある日、ライヴにヴォーカルが来なかったんですね(笑)。で、その時に何やろうかと。そういうノリで、ギターインストものをやったんですけど、インストって……趣味じゃないですか(笑)。まさかアルバムを出すなんて思わなかったしね。でも、やってるうちに楽しくなっちゃったし、他に類を見ないと言ってもらえるし。インストっていうとサーフ・ロックだったりアメリカって明るいイメージがあるんでしょうけど、僕やメンバーは'60年代のイギリスで楽しいんだけどちょっと暗い、切ないというのが好きってのがあって。でも、まあ、ベンチャーズが好きなんですよ、矛盾してるけど(笑)。彼らの「Cruel Sea」って曲と、DAKOTASってパブロックバンドの「OHYEH」って曲があるんですけど、その作曲者が一緒だったんですよ。それで「OHYEH」をやりたいなと思って今回のアルバムでもカヴァーしましたから。だから、本当、自分らが楽しくて演っているって自己満足だけなんで、逆に聞きたいんですよ。聴いてる人は僕達の音楽のどこが楽しいのかなぁって(笑)。

――(笑)。でも、とても物腰柔らかい人柄の中村さんなのに、そのサウンドは狂暴ですよね。

中村:
あんまり年寄り臭いのはやりたくないんですよ(笑)。僕達の周りにもいるんですよ、渋いバンドが。でもベンチャーズってライヴでは激しいところもついてくるんで、体が動けるうちは動こうって感じですね(笑)。それがサウンドにも繁栄されてるんじゃないでしょうか。

――じゃあ、ステージ上がると、豹変してしまうと?

中村:
そんなことないですよぉ。ただ喋るなって言われます(笑)。ジョークが分かりにくいのかなぁ。僕たちは歌がないんで、曲と曲の繋がりが難しいんですよ。まあ、お客さんには何も考えず、踊り狂ってもらえれば良いかなって思ってるんですけどね。あとは歌心のあるギターを弾きたいとは思ってますね。実は今さっき、別のセッションで歌ってきたんですけど、それも良いですね。そうやっていろいろ変わっていいのかもしれない(笑)。

――ヘンに縛りがない方が楽しいですしね。今回の『Thrill With Maximum』のレコーディング作業はいかがでしたか?

中村:
今までは一発録りだったけど、今回はオーバーダブに凝りました。これは地元で知り合いの器材を借りたから、制限時間なくできたんですよね。でも、一時間ぐらい同じ曲を演奏するんで、だんだん無口になってね(笑)。最初は「大丈夫、もう一回~」なんて言ってたのが、最後は「もうコノヤロォ」って(笑)。オーバーダブの録り方が分からなかったんです(笑)。頭の中は30年くらい遅れてますから。でも、新曲がどんどん高度になっていったんで、オーバーダブだな、これって。試してみたかったしね。もうね、インストだから全部ソロじゃないですか(笑)、トラックシートを見てもどこが本当のソロなんだぁって。

――もしかして、譜面はないんですか。

中村:
いや、それはあります。…でも企業秘密です(笑)。いや、とても見せられたものじゃないんです。象形文字みたいなキーワードがたくさん入っていて。だからこのバンドに入って、最初の仕事はそれを理解してもらうところからなんです(笑)。

――最後に、スイッチトラウト(Switch Trout)って変わったバンド名の由来は?

中村:
いろんな説があるんですけど定説では(笑)、メンバーが釣り仲間だったんです。ある日、逆に魚に釣られた夢を見まして、非常に痛かったんです。それからは、魚を釣ったからには食べようと。それまではブラックバスをよく釣っていたんですが食べられないので、ターゲットをトラウト(鱒)に変えたんです。つまり、トラウトにスイッチした、と。

取材・文●中島儀幸

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