キャリア20年のベテランが語る、ヒップホップ界で成功する秘訣
キャリア20年のベテランが語る、 ヒップホップ界で成功する秘訣 |
ベッドを供にした女性から銀行口座の金額まで、あらゆる事項があれこれ取り沙汰されるToo $hortのようなMCにとって、ヒップホップ界で最も長く最も成功したキャリアの一例について自慢するのは、それほど大きな苦もないことだろうと思われているようだ。 だが、Too $hortの現実生活でのもうひとつの自我であるTodd Shawは、彼のストーリーがヒップホップ企業家精神の模範となっているにもかかわらず、あまり目立たない形で物事を運ぶのを好むようだ。 Too $hortのキャリアは'79年にカリフォルニア州オークランドで、自家製のラップのテープを車のトランクに積んで売り歩くことから始まった。 彼の活動はJive Recordsとの契約にこぎつけるほどに注目を集め、その後11枚のアルバムを発表、3枚がゴールド、6枚がプラチナに輝いた。その間にラップ業界からの引退と復帰があったものの、レコード上では仲間の誰よりも多くを闘い取ってきたのである。 いかなる基準からしても、これはサクセスストーリーなのだが、驚いたことにToo $hortにとっては特に自慢したいほどのものでもないそうだ。 「音楽以外のキャリアにスポットライトを当てて欲しいと思ったことは、個人的には一度もないね」と$hort。 「つまりね、信じられないかもしれないし、俺のことを嫌う人もいるだろうけど、本当に俺は出版メディアやラジオ、テレビなんかの助けをまったく借りずに、ファンのために音楽を作るのを純粋に楽しみたいだけなんだ。商業的な評価が必要だということにはまったく賛同できない。そんなもの俺には必要ない。レコードを買ってくれる人たちはわかってくれている。他の何百万人もの人たちもわかってくれている。レコードを買わない人たちだって、Too $hortの伝説については知っているのさ」 $hortは12枚目のアルバム『You Nasty』のリリースに備えており、その伝説に新たな章が書き加えられることになりそうだ。 「これは一度きりの企画アルバムだ」と$hortは主張する。 「俺のところにやってきて“例のオールドスクールで、うんとナスティなToo $hortらしいヤツをもっと聴かせてくれよ”ってせがむファンのために作ったのさ。いわばスペシャルリクエスト盤というものだ」 このディスクには$hortが80年代から発表してきたのと同様の露骨なナイトライフに関する歌が満載されていることを考えれば、アルバムのタイトルは適切なものである。だが、今回は過激な物語のテーマが5種類の異なる“成人指定”カヴァーにも溢れだしており、デザインのひとつは裸の$hortが二人の女性の“サービス”を受けているシーンをフィーチャーしている。 $hortによればこうしたカヴァーは、EminemやLil' Kimといったラッパーと新たなレベルで露骨さを競うための試みではなく、ただ単に自分のテーマを強調したかっただけだという。 彼は説明する「これはある種のアートなんだ。ユーザーは何年も前からToo $hortの音楽を聴いているし、動いている映像やライヴを実際に見たことがあるかもしれない。それと同じように、今回のカヴァーでもまだまだフィクション的な部分は残るということなのさ。この写真を見て“このゴミを俺の目の前から放り出してくれ!”という人たちもいるだろうし、“こいつは$hortのヤツらしいぜ、気に入ったよ”って連中もいるだろう」 このアルバムに関して従来とまったく違うのはアートワークだけだと$hortは強調する。音楽的な面では“壊れていないのなら、修理するな”のアプローチを採ったという。 「Too $hortのアルバムが出たと聞いただけで曲の内容を聴いてみることもせずにレコード店へ行って買ってしまうようなハードコアなファンのために音楽を作るというのが俺の方針だ。連中がアルバムを買ってくれたときに、失望させないのが俺の仕事というわけさ」 「ハードコアなファンの中には“$hort Dogはキテるぜ!”みたいな連中もいると思うよ」と彼は続けた。 「若いファンと話した感触では、Too $hortの昔のアルバムを集めるのにハマっている連中が増えていると確信したね。18才のヤツがやってきて“カーステでずっと『Born To Mack』ばかり聴いてるよ”って言うのさ。だけど『Born To Mack』が出たころ、そいつは一年生だったんだぜ。ラップを始めて20年経つが、あの作品が10年前と同じように人気があるとは、すげえショックだったよ。10年間以上もやってきたのと同じパターンを続けることができて、それが今のガキどもにも通用するなんてね」 「こんなに嬉しいことはないと思うから、それに乗っかるけど、あまり濫用したり、調子に乗りすぎないようにしないとな」 さらに$hortはありがたそうに付け加えた。 「状況の成り行きに任せて、あまり多くを変化させないようにするつもりさ。違った種類の音楽を作り始めて、ファンを失うなんてことはゴメンだからね」 $hortは新たなキャリアの目標に向けた13枚目のアルバムを出すことを確約してくれた。 「俺は最初は夢を追っていた。Too $hortを全米で、そして国際的にブレイクさせて、プラチナアルバムを出すってね」と彼は説明する。 「それから俺は引退を本気で考えた。引退する最初のラッパーになることを思い描いて、すべてを手放そうとした。だが、ラップは非常に中毒性の高いもので、引退に成功した前例は誰一人思い付かなかったのさ。今の俺が自分で設定した新しいゴールは、ゴールドやプラチナのアルバムをもっとたくさん連ねて、次世代のラッパーが何年かかっても追い付けないような記録を打ち立てることだ」 皮肉なことにToo $hortの成功を真似ようとするアーティストの多くが、彼の企業モデルに追随することになるだろう。 これに対して$hortは新しいアーティストたちに、音楽を大衆に届けるための方法よりも精神性の方がずっと重要だと説いている。 「レコードを店に並べることや誰かにそれを買わせることに関しては、自分自身で努力したほうが良いということに多くの人々が気付き始めている。単に音楽を作ってメジャーレーベルを当てにするよりも、独自のルートを選んだほうが得策なんだよ。契約がなければ成功できないなんて、馬鹿馬鹿しいじゃねえか!」 「もし俺が今の状況でスタートしていたなら、最近の他の連中と同じように、何が本物なのか、何が適切なアプローチなのか混乱していたかもしれない」と$hortは認めている。 「Cash MoneyやNo Limitはインディペンデントとしてスタートしたが、全国的に認知されるずっと前にインディーズとしてそこそこの成功は収めていたんだ。ヤツらは長い間インディーズならではのフットワークの良さを活かして、銀行口座を充実させ、資産を形成してきたのさ。だから、全米あるいは世界のスケールで強力に音楽ビジネスへと参入することが可能になったわけだよ。それもこれも単なる地元のローカル企業のころの活動からコツコツと積み上げてきたものなのさ。まるでカレッジ時代の修業のようにね」 「だけど、ゴールは自分で設定しなくちゃだめだ。次のアルバムの方向性がどのようなものになるかはわからないが、俺はいつでもファンキーなトラックを作って、セックスにしろ社会問題にしろ、身近に感じられるテーマについてラップし続けてきた。いずれにせよ今回の作品の後には、13枚目のアルバムが登場するだろう。俺が約束したからには、必ずスゴイのを出してみせるさ」 by James Carter |