バイオリン、チェロ、ドラムの3人が織り成すロック・スピリッツ
サンフランシスコからやってきた、ユニークで創造的なdeadweight。バイオリン&ヴォーカル担当のベン・バーンズ、エレキチェロ担当のサム・ベース、そしてドラム&ヴォーカルのパウロ・バルディといった異色の3人組だ。 この変則構成バンドが奏でるサウンドは、クラシック、ポップス、ジャズグルーヴやインダストリアルなど多角的な面を提示。だが、その根底には、非常にロック的アプローチを感じさせるのだ。そんな彼らは今年2000年のFUJI ROCK FESTIVALにて日本初上陸。そのタイミングでリリースされたアルバム『half-wit anthems』も現在、好評を博している。 今回のインタヴューは、再来日となった9月14日、新宿LOFTでの日本最終公演の、リハーサル終了後に行なわれた。 |
2000年7月発売の 『half-wit anthems』 | ――ようこそ日本へ! 我が国の印象はいかがですか? ベン:実に、刺激的だね! パウロ:人がたくさんいるのもいいね。雑踏のエネルギーは相当なもので、僕たちにもそれを分けてくれるみたいだね。東京なんて、一都市で20個分に値するくらいのものを感じるな。 サム:ラジオも大分違うな。 パウロ:そう、アメリカだとジャンルごとに専門局があるんだ。でも、僕は日本のようにいろんな曲がかかる方がいいと思うな。 ――deadweightは、独特のユニークなスタイルですが、そこに行き着いた過程を訊かせてください。 ベン:僕とサムはカレッジで知り合い、2人でドラムマシンを相手にプレイしていたんだ。でも、バンドの実体ができていないうちにギグ(ライヴ)の話が来てさ(笑)。 サム:作曲もリハーサルも何もしてなかったんだけど、ギグの話はちゃっかり受けて必死で練習したんだ。 ――クラシックの楽器をロックに取り入れて、バイオリンはギター、チェロはベースみたいに使っていますよね。そこが根底にあるものとして、精神的なロック・スピリッツを感じました。 ベン:その通り! 実は僕たちもギターとベースを弾こうとしたことはあるんだ。うまく行かなかったんだけど。 サム:僕は自分たちが表現したいものを表現する手段としてチェロを弾いているつもりなんだ。それはいいんだけど、クラシックの世界には閉口していたのは事実でね。そこで他のいろいろな音楽を聴き始めたんだ。そうやって自分たちの楽器をクラシックなものだとは捕らえずにやっていくようになったんだ。 ――そうすると、deadweightの音楽にはクラシックにはない独特の手法もあるんですよね。 ベン:ウン、大体必要なものは自分たちで編み出したかな。他人を参考にすることも少しあったけど。 サム:サウンド側からアプローチしてみると、どうしても出したいサウンドは何とか出せるようになるものだよ。 ――3人が影響を受けたアーティストは? ベン:ジミ・ヘンドリックス。 サム:僕もそうだな、それからブーツィ・コリンズなんかも。 パウロ:僕は昔のドラマーのサニー・ペインが好きだ。デューク・エリントンやカウント・ベイシーはどうかなあ?(笑) ――古きよき時代ですね(笑)。アルバム『half-wit anthems』が日本でもリリースされていますが、その聴きどころや、誇りとしている部分などはどこなのでしょう。 サム:特定の場所よりも全体の仕上がりをずっと誇りにしているんだ。たとえば演奏のなかで、前に出る部分と、後ろに下がる部分の駆け引きなんかもうまくできていると思うし。 ベン:僕もそうだね。あとは「Misfortune」のコーラス部分からブリッジ(サビ)に移行する当たりは気に入ってるかな。 パウロ:僕は「Travel By」のラストのほう、サイケデリックな雰囲気が出てるところがいいな。 ――昨夜、恵比寿・みるくでライヴが行なわれましたが、一言で言って"ワンダフル!"でした。 全員:ありがとう。僕たちも楽しかったよ。 ――生で観て、チェロとバイオリンの音の出し方に非常に興味を持ったのですが、ライヴではほかに何か打ち込み音源などは使ったりしているのでしょうか。 ベン:いや、それはないよ。 サム:アンプを2台使い分けて、それぞれギター、ベースサウンド的に使うんだ。なんら普通のバンドとして変わりないよ。 ――ときどき、どこから音が出ているのか分からない部分があって、凄いと思ったんですよ。 サム:ありがとう! 最高の褒め言葉だね。1つ1つの音じゃなくて全てが一体化しているのが理想だからね。 ベン:1人でもユニークなサウンドを実験によって作るわけだからね。でも、それだけではなく全体に耳を傾けることも大切だから! ――ところでみなさん、インターネットには興味ありますか? ちまたでは音楽配信などが話題ですが。 サム:ウン、自分たちのサイトや関連サイトもあるし、情報を集めて皆がアクセスすればいいね。 ベン:日本人で、ファンサイトを作りたいと言ってきた人もいるんだ。嬉しいよね。僕たちもWeb向けシングル曲を作ることも考えているんだ。 パウロ:インターネットで音楽が聴けたり、買えたりするのは素晴らしいことだよ。でも自分でショップに行ってお目当てのレコ-ド(CD)を買って帰って早速聴いてみるという喜びも忘れないで欲しいね。 ――今後の予定はどうなっていますか? パウロ:10月いっぱいは地元サンフランシスコあたりでツアー、その後は次のアルバムへ向けて、曲作りやリハーサルに入るんだ。 サム:実は来年、また来日を予定しているんだ。次回は東京、大阪だけではなくて、もっといろんな場所を廻りたいな。 ――やはり、いろいろな場所でプレイするのは楽しいですもんね。 全員:もちろん! 僕たちの音楽をいろんな人に聴いて欲しいからね。 パウロ:うまく説明できないけど、どの都市も少しづつ違うものなんだ。 サム:アメリカではくまなく廻ってはいるんだけど、国外で演奏するのは初めてだったんだ。CDの売上げ次第だって言われているんだけど、ぜひまた来たいよ。 ベン:ツアーの時期と場所の判断は難しいんだけど、それだけ僕らにとって重要だからね! 取材・文●中島儀幸 |