祝!設立 エチケットレコーディング
「洒落」。この言葉がこれほど似合う人たちもいないだろう。かねてから洒落のわかる人たちの間で高い評価を得ていたyes,mama ok?。'95年「ナードロック」を名乗り登場したこのグループは、ステレオタイプなロックバンドフォーマットを踏襲せず、ひたすらダメぶりを装う、という手の込んだやり口でコアなファンを掴んできた。「わかりにくい!」そんな数の論理に負けず、洒落のわからん人にはついていけぬ世界を展開。そして2000年夏、彼らを慕うバンドを率いて遂にレーベルを本格設立。今、最も危険な「まさかあの優等生が!」。ある種、パンク精神を最も具現化する集団、ここに現わる! 【ETIQUETTE RECORDING co.】 yes,mama ok?金剛地武志によって'98年秋に設立。2000年、10数バンドを率いて(株)アウトサイドと正式契約。参加アーティストにはロッキーチャック、ジェミニX-III、インスタント・シトロンとコアな人気者が顔を並べ、1stコンピレーションにはパラダイス・ガラージ、キプソーン、マクドナルド・ダック・エクレア、アローツアー、ザ・バニーズ、ザ・ダイアルズなど意気のいいメンバーが参加。かなり面白いことになりそう!
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●まずはエチケットレコーディングの設立、おめでとうございます。 金剛地武志(yes, mama OK?):ありがとうございます。 ●早速ですけど、8月23日にコンピレーションが発売になりますよね。聴かせて頂いて驚いたというか、さすがだなあ、それぞれオリジンだなあ、と思いました。皆さんに集まってもらった機会に、楽曲を聴いた感想なんかから聞きたいのですが。 金剛地:豊田君は? 豊田道倫(パラダイス・ガラージ):僕は……。昨日聴いて…。まあまあ、かな(全員笑)。いや、光栄、光栄です(笑)。 金剛地:仲間はずれって感じ? いや、でも豊田君のあの曲は、やっぱり(曲順は)ラストしかあり得なかったってことなんですよ。 山下太郎(ロッキーチャック):僕はみんないいと思った。パラガとか良くって。 NOE(ロッキーチャック):うん、私もどれもいいなって。イエママもすごく良かったし。 ●ジェミニさんは初めての参加ですが。 瞳(ジェミニX-III):CDを作るなんて初めてだったから面白かったです。でもレコーディングは辛かったです。ずっと歌ってて死ぬかと思った。何テイクも録って……。 豊田:(癒すように)そうだったのか~ (全員爆笑)。 ●さて、金剛地さんはアーティストであり、このレーベルのプロデューサーでもありますが、1枚のコンピの人選から監修まで手がけてみて、仕上がりに対してはどんな感想を? 金剛地:マスタリングをやってたとき、周りにスタッフもいましたけど、感慨ひとしおでした。泣きそうでした。みんなほんと、素晴らしい楽曲を提供してくれて。 山下:いや、泣いてました。僕は見ました(笑)。 金剛地:はい、泣きました。 ●特に印象に残っているバンドとか意外性のあった楽曲とかあります? 金剛地:印象はそれぞれ強いですね。それぞれ「これしかないでしょう!」というものが上がってきて、結果的に雑多に楽しめるものができたなあと。人選の段階で、ある種、いい意味のバラバラ感は予想済みだったんです。同じテイストの人はいないし。 ●このメンバーに共通の音楽のベースというか、志向性っていうのはあるんですか? 金剛地:ない。(全員爆笑)たぶん、インスタント・シトロン、パラダイス・ガラージ、ロッキーチャック、イエスママ、みんなそうだけど、例えば“一生パンク!”とかそういうノリじゃないでしょう。まあロックでもありたいし、カラオケで歌えるポップなものもやりたいし。守備範囲が広い人たちなんですよ。それで重なるところが当然、どこかにあるという。でも“この人が神!”というものはないんです。共通してるのはある種のポップを求めていることくらいで、あとは友だちだからってこと(笑)。友だちになりたい、とかね。
長瀬五郎(インスタント・シトロン):金剛地さんとは、片岡さんのラジオ番組にゲストで来てもらったことから(関係が)始まって。僕らもインスタント・シトロンでちゃんと曲をやろうということになったのが1年ぶりくらいなんですよ。そのタイミングが合ったというか。ダラダラと、こう、ポケモンとかゲームばっかりやってて、デモテープを渡したこと自体まあ1年ぶりくらいで。僕がデモテープを(片岡)ともちゃんに渡して、彼女がOKしないとインスタント・シトロンは成立しないところがあるんで。それで、金剛地さんが拾ってくれたんですよ。ほんと、僕らどこにも合わないんですよ、テイストとか。だから今回もマスタリングするまで不安だった(笑)。今、CD聴いてもやっぱり僕ら浮いてるな、とは思いますけど。 ●そういう疎外感? 違う感、って何なんでしょう? 長瀬:僕らはたぶん、全然、周りを見ていないんでしょうね。 金剛地:たぶん、アルバム全体を聴いてみて、自分の曲が浮いているという感想は全員が持ったと思う(全員爆笑)。僕はyes,mama ok?が一番浮いてると思った(全員再爆笑)。 ●ところで高橋晃さんはまだ発言がないんですが、ここまでの話しはいかがですか。 高橋晃(yes,mama ok?):え? あ、僕ですか。僕は、今この場で何について話し合ってるかが全然わかんないんですよ。みんな何をやった人なんですか? 何か作り上げたんですか?? (全員大爆笑)。 ●じゃあもういいです(笑)。さて、話は変わりますが。 NOE:ヒドイ~(笑)。 ●ところで、今回、金剛地さんはレーベルプロデューサーというポジションになるわけですが、そういった役割は初めてですよね? 責任も相当あると思うんですが。 金剛地:もちろんです。あの、最初はですね、何か色々やろうと思ってたんですよ、大人っぽく。スーツでも着て現場に現われて、「メシおごるよ」かなんか言って領収書を手にして立ち上がるとか(笑)。ところがフタを開けてみると自分のアルバムに手いっぱいだったりして(笑)。まあ、そもそも手が回るとか回らないとか言う前に、僕自身が考えるプロデューサー像とか在り方っていうのは、前提として相手側のミュージシャンが、ミュージシャンとして自立していることが重要なんですよ。楽曲はもちろん、活動に対して自分にビジョンがあるかどうかとか、いわゆる“やらされ感”みたいなものがないこととか。コントロールされたり、したりする必要がないことというか。まずそれを前提として人選しているので、結果的に僕が横にはり付いて何かサジェスションを与えるという場面も、実はそんなに必要ないんですよ。要するに自立したアーティストが集まっているということなんです。だからまあ、いわば“雇われ店長”みたいなもん? ダメ? この意見?(全員爆笑) ●マイナス発言! じゃあ話は変わりますが(笑)。皆さんキャリアのあるアーティストなわけで、まったくの新人はジェミニさんだけですよね。これまでの経験とかを踏まえたときに、このレーベルでやろうと思うこと、逆にやらないでおこうとか思うことってありますか。 長瀬:いや僕らも新人ですよ。バンド名、変えようかと思うくらい。経験って、ほんと全然ない。時がたっているだけで。 金剛地:メジャー経験、ということでいうとオリックスの木田の今後の動向に注目しています(全員笑)。経験はね、基本的には個人的なものでしょう。経験したということは、狭い所に捕われやすい罠でもあるわけなんですよ。例えば僕の経験したコロムビア時代というのは、僕にとってのメジャーというものの全てになってしまっているわけで。でもそれは非常に些末な個人的なことでしかないんですよ。それを踏まえた上で今後の何か正しい答えを引き出そうとしても、それは無理な話なわけなんですよ。
山下:ですね。 金剛地:僕は、女・子供、すごい好きなんですよ。 ●ただの女好きじゃないんだ!(全員笑)。 さて、いよいよ7月15日にレーベルの初イベントが新宿ロフトでありますよね。これはどんなものになりそうですか? 金剛地:どんなものになるんでしょうか? 長瀬:『神奈川県 金剛地さんからのお便りでした』! ●(笑)。豊田さんも参加するんですよね。どういうものをやろうと思ってます? 豊田:参加します。自分の好き勝手にやります。 金剛地:あまり大上段に構えた感じも実はないんですよ。以前、ロッキーチャックもイエスママもパラガも、みんなバラバラのメーカーにいて活動していた時期があって、そのメンバーが同じライブにブッキングされてたら面白かろう、というくらいのシャレッ気というか。こういうメンバーが一緒にライブやるというのもないだろう、ということでかなり面白くなるんじゃないかと思います。 ●そして9月29日には心斎橋クラブクアトロでエチケットナイト決定ということですし、もちろん、その前の8月23日には、いよいよyes, mama OK?3年ぶりのアルバム発売。 全員:おお~(笑)。 金剛地:タイトルは「CEO」です。『最高責任者』という意味のようでもあり『CENTURY END ORDER』だったりもするんですけれど。同時にロッキーチャックもシングルが発売します。 山下:はい。「LET ME FLY」という曲です。 ●秋にはシトロンさんのアルバムの予定もあり、あとレギュラーのTV出演も決定しているとか? 金剛地:はい。MXTVの番組(*1)内でちょこっとレギュラーコーナーを持つのと、「I.D」(*2)という番組です。 ●これまでマイペースで活動していたメンバーだけに、精力的な展開が非常に楽しみです。 金剛地:秋にはコンピレーションの第2弾を予定していて、現在、人選中です。あとジェミニの初アルバムも秋には出します。ロッキーチャックのフルアルバムも秋には発売になります。 高橋:へえ~。(のんきに)すごいな~(全員笑)。 長瀬:めちゃくちゃ大変じゃないですか。 薫:小学生の頃、夏休み前に書いた宿題の予定表みたい! ●とにかく働く、と。では最後にみなさんの意気込みを。 薫:まず金剛地さんについて行きますってことと、あとライブですね。ライブ初めてなんで、めちゃめちゃ騒ぎたいですね。 瞳:Tシャツ破り。がーっとTシャツ破る! これで入場やりたいですね(笑)。 山下:僕らは前に100万枚売れたいとか言ってちょっと失敗したので。今度は50万枚と言っておきます(笑)。 豊田:僕はあんまりレーベルとか興味ないんでね。個人個人がいい音楽やれたらいいってことで。ほんとにいいものがあればいいんじゃないかな、と。個人がポップであればいい方向に行きます。 長瀬:僕らはCDをリリースできるという機会があれば、ただそれをやっていくと。イエママのファンは一杯いるし、一緒にやれることが嬉しいですね、ほんとに。何かレーベル全部が似ていて、そのどれも全部好き、っていうよりは、シトロン好きって言う人がパラガは嫌いって言ってくれるほうがお互いにいいというか。 豊田:好きなものは好き、いやなものには全く見向きもしない、ということはこれは怖いことだから。好きなものもいやなものも一緒のパッケージでいいんですよ。好きなものは聴く、嫌いなものも我慢して聴く、という。そういった雰囲気を金剛地さんはちょっと持ってる。それが希望だね。あんまり好きなもので固めていって追求していくと、最後は嫌いなものの差別に繋がっていくからね。今の少年問題なんかもそうだしね。 金剛地:とにかく朝ちゃんと起きて働きますんで。みなさん期待しててください! *1:MXTV「お台場・音楽・夜一番」(月~木 23:30~23:55) インタビュー & 文●Misiel Yamazaki |