世代を超えたロックサミット

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1965年、Jimmy Pageは英国で最も引く手あまたのセッションギタリストのひとりだった。The Black CrowesのChrisとRichのRobinson兄弟が生まれる前の話である。しかし、似通ったスピリットを有するミュージシャン同士というものは、世代の隔たりをものともせず、興味深い形で結び付くものだ。

ロック界のこの2大勢力が、'99年7月27日、ロンドンのCafe du Parisでのコンサートで力を合わせたのもまた、不思議と納得のいくことに思えた。

これはPageが自身と親しい関係にある2つの慈善事業、SCREAM(Supporting Children through Re-Education And Music)とABC(Action for Brazil's Children)基金に資金提供するために後援したものだ。大成功に終わったコンサートでは、Chrisが声を限りに「Whole Lotta Love」や「Nobody's Fault But Mine」を熱唱。「You Shook Me」に至っては、AerosmithのSteven TylerとJoe Perryも一役買って出た。

PageとCrowesはその後、ニューヨークのRoseland Ballroom、そしてロサンゼルスのGreek Theatereと、一連のコンサートでのコラボレーションに挑むことを決定。ブルースのスタンダード曲やLed Zeppelinの曲が満載だったロサンゼルスでのショウは、レコーディングされ、2000年2月29日、musicmaker.comを通じて『Live At The Greek』としてオンラインリリースされている。評壇からも市場からも大反響を呼んだのを受けて、彼らはこの夏もまた、もう一勝負かけようとしている。The Whoとの全米ツアーである。

LAUNCHとの最新インタビューでは、PageとRobinson兄弟が、musicmaker.comとの関係や共演の経緯、そしてLed Zeppelinの曲を、例の…あのシンガー抜きで演るチャレンジについて語ってくれた。


LAUNCH:musicmaker.comとは、どういう経緯で組むことになったんですか?

RICH ROBINSON:
ロサンゼルスでのショウをレコーディングしたところ、すごく出来が良くて、「こいつは(リリースしたら)クールじゃないか」ということになってね。あとはうちのマネージャー連中に任せて、気の利いた出し方を考えてもらったんだ。そして、メジャーもインディも、ありとあらゆる選択肢を検討した結果、インターネットが浮上してきた。何といっても、こっちが提供するものを、そのまま採用してくれるというのが魅力だ。長過ぎるだの、短過ぎるだの、編集しなくちゃ使えないだの、そんなことを言ってくるやつはいない。手っ取り早いってことさ。手順を踏まえてどうのこうのっていう、面倒なことは一切抜きで、2ヶ月もあれば世に出せる。それに、選択権があるという、今までとは違う面もある。購入者は3つの買い方から選べるんだ。こっちが付けたアートワーク込みでCD丸ごと買う方法、もしくは、自分で曲順を入れ替えることもできるし、1曲づつダウンロードすることも可能だ。

LAUNCH:レコード会社との確執は、相変わらず続いているんですか?

CHRIS ROBINSON:
Zeppelinの曲やブルースナンバー、それとカヴァー曲の他に、Black Crowesの曲もいくつかやったんだが、契約上の問題等々で、それは今回のレコードに収録できなかった。ムカつく話だぜ。それもあの晩のコンサートの一部だったのに。せっかく俺たち皆にとってスペシャルな夜だったのにさ。“契約”って言葉が出てくると、大抵そういうことになるんだ。「あぁ、契約ね。だからBlack Crowesの曲は入ってないのか」と。

LAUNCH:コンピュータ上での販売ですから、このアルバムを地元のCD店でたまたま見つけて、興味を持って買うということはないわけです。そういう昔ながらの音楽との出会いは、オンラインには存在しませんよね。

RICH ROBINSON:
事実上、かつての(ラジオ)DJがやっていたことと同じだと言っていい。「これだけの人が聴いてるんだから、ここで俺がクールだと思うやつをかけてやろう」ってやつ。最近は「マーケティングがうまくいかない」とか、「フォーマットと合わない」とか、そんなのにこだわり過ぎだ。

CHIRIS ROBINSON:
それにさ、大手のレコードチェーン店へ行ってみな。連中ときたら全く…地元の小さなレコード店とはワケが違うんだ。

RICH ROBINSON:
ホームセンターへ行って、店員にノコギリの使い方を質問するのと同じこと。どうせわからない。

JIMMY PAGE:
レコード店へ行って、例えばヴィンテージ物ならば、CDの…いや、アナログ版やシングル版の棚を次々とチェックして、選んだやつを(試聴コーナーで)聴いてみるという、試聴して選ぶという過程は、インターネットでの我々のアルバムの提供のされ方と似ていると思うよ。サイトにアクセスすれば、各曲30秒づつ試聴できるから、確認してから買うことができる。レコード会社とうまくいかないバンドや、すごくラジカルな音楽をやっている新人バンドあたりが、将来的には進出してくるんじゃないだろうか。そして消費者の側は、「へぇ、変わったバンド名だな。ちょっと試聴してみよう。うん、これはいい。こっちはダメだ」とサーチしていける。わかるだろう? 探すという作業はここでも健在なんだよ。今後、世の中の流れはこういった形に移行していくのかもしれない。

LAUNCH:ニューヨークでのショウはレコーディングしなかったそうですが、それは何故ですか? すべて録音したものと思っていたんですが。

JIMMY PAGE:
録音はされているよ、ブートレッグでこっそりとね。いや、そもそもそういう考えではなかったんだ。「ローズランドでの初日だからテープに録っておかなくちゃ」とか、そういうのではなかった。むしろ、「どんなことになるか、とりあえずやってみよう」という感じだったから、当初はレコーディングなんて全く頭になかったんだよ。それが、ローズランドでの3日目を終了したあたりから、「これは録音するしかないな。すごく順調じゃないか」という話になってね。それくらい、実に魔法がかったような瞬間がいくつもあった…なるべくしてそうなったんだ。自然な成り行きさ。我々が一緒にやるようになった経緯に始まって、すべてそうだった。

CHRIS ROBINSON:
それに、ライヴ録音というのは意識すると難しいんだよ。ギグに次ぐギグという生活を送っているバンドにとっては、特にそう。直感に従うのが大事で、何も考えずにやれてる時こそ、すべてがバシッと決まるんだ。ギクシャクしたりしないでね。そういうバンドの人間は、うまくいっている時の自分たちの音がわかっている。そこが醍醐味なのさ。ところが、レコードを作っていることを意識すると、演奏だけじゃなくて、(レコーディングの機材を積んだ)トラックに乗り込んでいるスタッフのことも考えてしまう。今回、俺たちはわずか6本のショウで持っているものを出し切らなければならなかったから、調子が出てきた頃にはすっかり盛り上がってしまって、録音されていることにも気付いていなかったんだ。うん、あの晩は実に素晴らしかった。バンドもノッていたし、演奏も皆素晴らしくて…本当に意識になかったよ。

LAUNCH:6本だけということで、危機感が逆にああいうサウンドを導いたとは考えられますか?

JIMMY PAGE:
危機感というと…例えば「Nobody's Fault But Mine」は、あちこちにストップが入る、演奏の難しい曲だ。本当に難しい。そういう意味での危機感はあったよ。まぁ、こちらの紳士諸君が崩れるということはないだろうが、例えば僕が入るタイミングを間違えるというような可能性は、常にあるからね。だから、難しい演奏に加えて、注意を怠るわけにはいかない。ああいう曲は、下手をするとただの雑音になってしまうから。

LAUNCH:ショウをビデオに収録しようと考えたことはありますか?

RICH ROBINSON:
そういうノリじゃなかったね。全部のショウを録音して、ビデオにも録るという前提でやっていたら、これだけ熱いものにはならなかったと思う。もっと型にはまったものになっていただろう。Jimmyも俺たちも、型にはまるタイプじゃない。今回は、とにかく集まって何か音楽をやってみようという、それだけのことだったんだ。何かこう、大スクープになるようなやつをね。2000年を迎えて、誰かが何かを、単純に情熱だけでやってしまったってわけだ。

LAUNCH:あなた方のジョイントアルバムで新曲を聴ける可能性は?

JIMMY PAGE:
スタジオでコラボレーションをやってみようかという話はしているよ。話し合いの段階でしかないが、今のところやり方はいくらでも考えられるし、いずれも可能性のある、良さそうなものばかりだ。どんな結果になるか、楽しみだよ。

CHRIS ROBINSON:

きっと、うまくいくと思う。


JIMMY PAGE:
電話で話せるようなことではないからね。お互い、顔を見ながら話し合わなければいけない。でも、まだそのチャンスがないんだ。

LAUNCH:Zeppelinの曲に関しては、Robert Plantの歌い方を知っているだけに、プレッシャーにはなりませんでしたか?

CHRIS ROBINSON:
アングルを変えるしかなかったよ。Robert Plantがどういう人か、俺は重々承知しているし、彼を心から尊敬しているけれど、俺としては何をすればいいかといえば、自分なりに最善を尽くすしかないだろう? そんなに白黒はっきりしたもんじゃないからね。

JIMMY PAGE:
彼らのアプローチというのは…例えばここに、触るとかぶれるウルシ科のツタが一面に広がっていたとして、そこに素っ裸で飛び込んだようなものだ。真っ向勝負というやつさ。僕の方では、サウンドチェックのテープ…彼らは(自分たちの)サウンドチェックの時にリハーサルしていたから…を聴いて、どの曲もしっかりと自分のものにしているのがわかった。微妙なところも把握できていて、一緒にやるのが本当に楽しみだったよ。どの曲をやるかについては、話し合いを持ったけれど、僕はどれでもOKだった。基本的には、気持ち良く演奏して歌える曲を、ということで、僕から「これと、これと、これをやろう」と言うよりも、まずはお手合わせ…という感じで始めたんだ。

LAUNCH:Richは、Pageのリフをかなり聴き込んでいるんじゃないかと思いますが、実際に会ってみて、ちゃんと弾いたつもりが、彼から「実は、そこはこうなんだ」と指摘されたことはありましたか?

RICH ROBINSON:
俺はカヴァーバンドの経験はないんだ。ギターを始めたのは15歳の時で、すぐに自分で曲を書くようになった。というのも、人の曲を弾くほどの腕はなかったんでね。15年もバンドで活動してきて、改めてこういう曲を覚える機会を持てたのは、クールなことだと思ってる。Zeppelinの曲を子供の頃から何となく弾いていた人とは、違う見方ができるんじゃないかな。さっきの、微妙なところが把握できていたというのは、そのせいだと思うよ。曲作りの見地からのアプローチを心がけて、ひとつひとつのパートに耳を傾けるようにしたんでね。Jimmyと顔を合わせる頃にはもう、彼のパートを俺なりの解釈で弾けるようになっていたんだ。もっとも、俺には他にやりようもなかったけど。

JIMMY PAGE:
あぁ、それが良かったんだよ。彼らのバンドの個性も、だからちゃんと出ているじゃないか。Chrisの歌もそうだし、あらゆる面でね。

LAUNCH:一緒にやってみて、お互い一番意外だったこと何ですか?

JIMMY PAGE:
意外というよりも、再認識したのは、彼らが実に優れたミュージシャンだという事実。共演してみて、さらに感銘を受けた。Zeppelinの曲の演奏に限らず、すべてにおいて言えることだ。

CHRIS ROBINSON:
俺たちの側からすると、これは言葉にするのは難しいんだよな。何しろ、こうして知り合った今では、友達関係とも言えるわけだけど、一方では伝説を相手にしているわけだから、ヘマはしたくないし、やることはやらなきゃいけないし…それに誰よりもJimmyを感心させたいというのがあってね。ロックンロール文化のアイコンとなっている曲をやるんだぜ。となれば、何よりも問われるのは信頼だと思う。そして、Jimmyに受け入れてもらうこと、それはできたと思ってる。

LAUNCH:The Black Crowesの今後の予定は? またアルバムは出ますか?

RICH ROBINSON:
目下、作業中だよ。曲を書いているところだ。レーベルの状況を整理しなければいけないんで、インターネットの会社からインディペンデントのレーベル、そしてメジャーまで、あらゆる選択肢を検討している。俺たちの変化を受け入れてくれる、相応しい相手を見つけようと思ってね。レコード毎に変化を遂げてきたことを、俺たちは誇りに思っているんだ。それが俺たちのキャリアの後押しをし、プラスになってきたはずだから。売上には浮き沈みもあったけれど、そのいずれもが何らかの形で俺たちに力添えをしてくれている。それを好意的に受けとめてくれて…いじくり回そうとするんじゃなくて、(musicmaker.comが言ったように)「こっちはこっちの仕事をするだけだ。きみたちは作品を渡してくれれば、後は何とかする」という相手がいい。

CHRIS ROBINSON:
どんな音楽でも、アルバムに捨て曲が入る余地はないはずだ。ところが今は、捨て曲だらけの時代らしい。俺は捨て曲に興味はない。

RICH ROBINSON:
俺は自分たちの書く曲が大好きだ。半端な曲はレコードに入れないよ。レコードに入る曲はどれも、Chrisと俺で練りに練ったものばかり。曲順も、入れるか入れないかも、自分たちで考える。自分たちのやってきたことに誇りを持っているからこそ、一緒に仕事をする相手にも、それがColumbiaだろうがどこだろうが、同じ姿勢であってもらいたい。なかなかそうはいかないんだろうが、理想的にはね。

LAUNCH:Jimmyはどうですか。今、進行中のものは?

JIMMY PAGE:
去年書いた素材がいくつかあるんだが、今のところ例のNet Aidで発表したにとどまっている。1曲はインストでやって、あとはそのうち、何らかの形で世に出したいと思っているんだ。いつになるかはわからない。

CHRIS ROBINSON:
俺たちの次のアルバムに入るかもよ。

JIMMY PAGE:
あぁ、もしかするとね。お互いのアイデアを盗み合って、後で訴え合うことになるかもしれない。

CHRIS ROBINSON:
インターネットでやって、料金は裁判所で支払う、と。

LAUNCH:Black Crowesに対する最大の誤解は何でしょうか?

CHRIS ROBINSON:
何とも言えないな。こっちは前から、包み隠さずやってきたんだ。こいつを単純なサザンロックの一種とみなしている人は…前に観た俺たちのビデオのイメージからそう考えていて、その後の展開を追いかけていない人は…要するに俺が言いたいのは、今週の売れ線だの今年の流行だのをとりえあず買うような人に対しては、うちのバンドについて何の説明をする必要も感じないってこと。わかるだろ? そういう連中は本気で音楽に入れ込んじゃいないんだ。ところが、俺は本気で音楽に入れ込んでいる。俺だって、自分たちの曲やアルバムに、たくさんの人が触れてくれたらとは思うけど、レコードというのは…人気があるから良いレコードってことはまずないんだよ。大抵、めちゃくちゃ人気のあるレコードは、俺に言わせればめちゃくちゃ酷いものだったりする。

LAUNCH:Jimmy、あなたに関して誤解されていることは何でしょう?

CHRIS ROBINSON:
世間が思うほど悪魔がかっちゃいないぜ、この人は。

JIMMY PAGE:
今日のところはね。2日前は一緒にいなかっただろう?

LAUNCH:やり残したこと、これからやってみたいことはありますか?

JIMMY PAGE:
(Zeppelinの)1stアルバムの時に言ったように、すべては時間との競争だ。当時の僕は、Zeppelinは素晴らしい車両で、どこまでも走りつづけ、驚異的な結果を残していけるものと信じていた…しかし、やはり時間との競争だったんだと思う。John Bonhamを失った時には、それが何を意味するのかさえ気づいていなかったけれどね。でも、そのとおりだった。間違いない。年をとるほどに厳しさは増す。残された日々に限りがあるからだ。良い作品を作り、過去の実績に上塗りを試みる今も、変わらず時間との競争さ。

by Darren Davis

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