静かなる“旋風の前兆”Montell Jordan。既に周知のこととは思うが、'95年に誰もがハマッたシングル「This Is How We Do It?」のプラチナヒットで男性ヒップホップ/ソウル界に華々しく登場し、ヒップホップ/ソウル界を活気付けた。 彼の魅力的な曲は、街や話題のテレビ、ラジオで流れない日はなく、誰もが知ってるお気に入りの曲になっている(「What's On Tonight」「Let's Ride」「I Can Do That」「When You Get Home」)。 一方、プラチナセールス1回、ゴールドセールス2回というすばらしい記録を達成した彼だが、最近のソウル界で最も影響力のあるミュージシャンの名前を挙げてみようとした場合、彼の名は出てこないのではないだろうか。
さて、ここからはあまり知られていない話題になる。プロデューサーであり、ソングライター、レコーディングアーティストでもあるMontell Jordanは、彼の仲間であるD'Angelo、Case、Joe、そしてもちろんMaxwellに道を切り開いた。Montellは、大人の黒人達がセクシーで、とげとげしく、感性豊かに厳しい現実を歌うことがクールなのだということを実証した。ティーンエイジャーのように何人かでつるんだりせず、後ろ姿に帽子をとって会釈したり、オーダーメードのスーツを身につけたりして、女性の注意を引きつけることにも成功した。 「なぜだか、そんな風に思われるけど」。 彼は微笑み、ため息をつく。 「大変だったけど、慣れるしかなかったね。今は満足だよ。おとなしく仕事してるからね」
レコードも順調に売れ、ツアーもやり、教会にも熱心に通って家庭を大切にするJordanは、Music Bridges(毎年異なる国でクリエイティブな表現をしている世界最高のミュージシャンたちをまとめる組織)の代表のひとりとして音楽的視野を広げている。アイルランドで夜のトーク番組に出演し、ゲール語で歌ったこともある。'99年には、キューバ人アーティストと協力し、スペイン語でのレコーディングを行なって、ニューアルバムを世界的にリリースした。 またShae Jonesの大ヒット曲「Talk Show Shhh」に加え、まさに記録破りのスマッシュヒットでチャートのトップにも輝いたDeborah Coxの出世作「Nobody's Supposed To Be Here」を共同で作曲し、プロデュースした。もちろん、Deborah and RLの感動的なバラード「We Can't Be Friends」も彼の作品である。 Deborahの舞台裏で活躍したMontellは、彼女の成功を通じて名誉を回復したと感じたのか? 「名誉を回復したなんて思わなかったよ」。 彼は強調する。 「自分が成功したときより嬉しかったよ。やっと彼女が正当な評価を受けたんだからね。R&Bチャートで14週1位だぜ。これで俺のファンも見方が変わるさ」 Montellは支持者を得ていくということにもっと慣れておいた方がいい。Def Soulから出た最高の4thアルバム『Get It On...Tonite』は、R&Bチャートの上位に食い込み、これまでの熱心なファン層もさらに拡大することは間違いない。 2枚分のアルバムカバーをつけた2枚組アルバム(2枚組アルバムほどの長さもなければ、価格もお手ごろ)『Get It On』には、ダンスフロアだろうと家庭のキッチンだろうと、ダンスをするにはもってこいのすばらしい官能的なトラックが収録されている。Montellは、このアルバムを「seven headbangers and seven babymakers(7人のイカレたダンス好きと7人のセックス狂)」と表現している。
このアルバムのタイトル曲は、カリビアンと'80年代のソウルのニュアンスが催眠術のように混ざりあった曲で、クラブやラジオですぐに流れるようになった。これは、偉大なソウルや黄金時代のラップを聴いて育った世代が今では成人していることが理由ではないかと考えられる。 「俺のファンは、一晩だけのファンと教会に通うように崇拝してくれるファンとの中間なんだ。彼らはもちろんヒップホップが大好きだけど、それ以外でも楽しめるのさ。俺はそういう声やサウンドを代表してるんだ」
ヒップホップ/ソウルの大使である彼は、まさにうってつけの理由でMotown Liveの司会に抜擢された。 「俺はその辺のおきまりの奴らとは違うんだ。俺らしくやるよ。俺はレコーディング・アーティストだし、ゲストの大半とは知り合いだから、それも助かってるよ。それに、伝説の人物に関しては、長年研究してきたから詳しいしね」
Montellは自分の音楽とほかの人の音楽とのつながりを常に築いている。今回のアルバムでは、Gina Thompson、Lil' Mo、Dru HillのSisqoから曲を提供してもらった。つまり、彼がおとなしく仕事をしているのも今のうちだということだ。 |