【ライブレポート】中森明菜、<ジゴロック2025>で人生初の野外フェス出演「みんな大好きよ」

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2025年で2回目となる大分の野外フェス<ジゴロック2025 ~大分“地獄極楽”ROCK FESTIVAL~>が4月19日および20日の2日間、大分スポーツ公園にて開催された。

◆中森明菜 画像

今回の目玉は何と言っても、音楽プロデューサー小室哲哉によるコラボステージ『TK LEGENDARY WORKS』である。小室哲哉曰く「ダメ元でお願いした」「絶対そこは一つのピークになるんじゃないですかね。なかなか野外で動いて歌っている明菜さんって見れないですよ」という言葉が現実になったのだ。

初日19日は会場に1万3千人の観客が集まり、当日券ナシの完全ソールドアウト。この日は最高気温30°という真夏日となり、大分でも今年イチの暑さを記録した。前述したコラボステージにて、OVAL SISTEM、Aicong、n.SSign、鈴木亜美、氷川きよし+KIINA.とアクトが続き、残りは1組のみ。

「人生初、野外フェスに降臨! 中森明菜!」というアナウンサーの紹介と共にコラボステージのトリとして、明菜が遂にステージ中央へとゆっくり歩いてくる。その姿が見えた瞬間、会場は悲鳴にも似た歓声に包まれた。“目の前に、あの明菜が本当に現れた!”と誰もが興奮状態に陥っているようだ。


小室哲哉が耳馴染みのあるイントロを奏でると、1曲目は「DESIRE -情熱-」で幕開け。“♪Get up, get up, get up, get up Burning love”の力強くも伸びやかな歌声が、晴天の空に気持ちよく響き渡る。大げさだと思われるかもしれないが、現実にもかかわらず、本当に夢でも見ているような気分だ。近年は自身のYouTubeチャンネルにて、既発曲を大人びたジャジーなアレンジで、しっとり歌い上げる映像をアップしていた。正直、ライヴを観る前はしっとりバージョンで歌うのかなと半信半疑であった。だが、小室哲哉とタッグを組み、野外フェスという不特定多数の場に出るならば、多くの人が耳馴染みのある通常バージョン(アレンジは加えているが)に忠実であるべきという判断でのことだろう。

ステージは期待に見事応えてくれた。明菜の歌声は当時から変わっていない。しかも振り付けもこなし、その一挙手一投足に熱い視線が注がれる。歌と連動した振り付けのカッコ良さと美しさこそ、明菜が他とは一線を画す孤高のアーティストたらしめている要因と言えるだろう。加えて、満面の笑顔を含むキュートな仕草を随所に入れるなど、得も言われぬ存在感を放っていた。


「盛り上がってますか? 明菜だ。生きてたぞ!」──中森明菜

と挨拶する明菜。しかし、1曲目からつけ爪が外れたらしく、それを観客側にポンッ投げる場面もあるなど、会場の空気が一気にほぐれていく。「期待していた曲になっていたか不安です。7月になったら還暦だ。10年前だったらもうちょっと踊れていたけど、精一杯やっているつもりだ!」と終始キュートな声で話しかけ、会場からは「かわいいー!」の声援が連発される。

そして、ここから小室哲哉が制作を手がけた楽曲が2曲続く。曲に入る前に投げキッスをして、「MOONLIGHT SHADOW -月に吠えろ」へ。深くも広がりのある歌声を聴かせ、終盤にはパワフルに叫ぶパートもあった。

「皆さん「愛撫」はご存知ですか? 『ザ・ベストテン』(歌番組)とかで歌っていたんだぞ」と語りかけた後、「歌うときは中森明菜でいきますから」と急に低音ボイスに切り替え、観客の心を鷲掴みにする。そして小室哲哉とは1995年の歌番組で共演した過去がある「愛撫」へ。左手を水平に大きく突き出す派手なアクションも完全に再現し、大人の明菜ワールドを存分に発揮。曲中に明菜自らハンドクラップを煽り、「フォー!」と叫ぶ場面もあるなど快調ぶりをうかがわせる。


「「愛撫」歌いました。間違えちゃって、すいません」──中森明菜
「2曲、僕が作った曲を歌ってもらって、素晴らしい出来ですよね?」──小室哲哉
「支えがなかったら、お声がけがなかったら…」──中森明菜
「みんなが待ってましたから!」──小室哲哉
「もう疲れちゃった」──中森明菜

という2人のやり取りも微笑ましく、貴重なステージに立ち会えた喜びを大勢の人たちが噛み締めたことだろう。



「この1曲で終わりだな。盛り上がれ〜、盛り上がれ〜」と呪文のように連呼する明菜。ラストは「TATTOO」へと雪崩れ込み、セクシーな歌い回しと振り付けですべての観客を骨抜きにする。歌い終えると、「大丈夫? 私もみんな大好きよ〜、本当にありがとう!」と満面の笑みで感謝の言葉を口にする。

しかし、まだまだ終わりではない。最後の最後に小室哲哉はショルダーキーボードでステージ最前に飛び出し、コラボステージの出演者たちを全員呼び込んで、TM NETWORKの「Get Wild」を披露。明菜が歌うパートでは小室哲哉が肩に手をかけて、そっと寄り添う。その二人の幸せそうな表情は、ある意味この日のハイライトだった。

「ジゴロックを機に活動してくださいね!」──小室哲哉
「はい!」──中森明菜

と声高らかに返事するシーンに、胸が熱くなったのは言うまでもない。



2009年の横浜公演以来、ディナーショウなどを除くと、16年ぶりとなった中森明菜のパフォーマンスは、本当に素晴らしいものだった。ちなみに翌日20日にもコラボステージに出演。小雨が降り続く中、前日同様の選曲で見事に歌い上げてくれた。

「グリーンの髪が昨日と違って素敵ですね」と小室哲哉から声をかけられ、一緒に食事に出かけたエピソードを挟んだ後、「いいだろ?」と返す明菜の無邪気な表情も印象的だった。

今回の<ジゴロック>をきっかけに、その圧倒的な“個性”と“歌声”をより多くの人に届けてほしいと願わずにはいられない。約40分(19日)におよぶステージだったが、時の経過を忘れて、観た人の心に永遠と刻まれる初の野外パフォーマンスであった。

取材・文◎荒金良介
(C) ジゴロック2025

■<ジゴロック2025 ~大分“地獄極楽”ROCK FESTIVAL~>

▼コラボステージ『TK LEGENDARY WORKS』
中森明菜 セットリスト
1. DESIRE -情熱-
2. MOONLIGHT SHADOW -月に吠えろ
3. 愛撫
4. TATTOO
5. GET WILD (TM NETWORK楽曲) ※コラボステージ全員参加


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