【インタビュー】ゆきむら。、初の全国流通アルバム-Never ending Nightmare-†』発売「みんなの存在証明になれれば」
ジェンダーレスな声を持ち、パワフルなロックナンバーから繊細な楽曲まで、圧倒的な歌唱力で歌いこなす歌い手のゆきむら。。その中性的なビジュアルから10~20代の女性ファンに絶大な人気を誇っている。これまでも音源リリースやライブなど、意欲的な活動を行ってきた。
◆撮り下ろし写真
そんなゆきむら。が12月11日に初の全国流通となるアルバム『- Never ending Nightmare-†』をリリースする。オリジナルから自身のルーツを掘り下げるカバーまで、シンガーとしての可能性に挑戦した意欲作だ。2025年2月11日には東京ガーデンシアターでの単独公演も発表されており、話題満載のゆきむら。に、アルバムへの思いや、来年のライブへの意気込みを聞いた。
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◾︎“これぞゆきむら。”っていう答えが出せたら
──全国流通としては初となる1stアルバム『-Never ending Nightmare-†』がリリースになりますね。制作の向き合い方で意識したことはありましたか?
ゆきむら。:これまでニコニコ動画とかYouTubeで“歌ってみた”という活動をしてきて、割と自宅での作業が多くて。自分でこれが正解かなって判断したり、視聴者の皆さんの反応を見ながら活動してきたんですね。でも、全国に音源が届くとなれば、さらにいろんな人に聴いてもらえるチャンスだと思ったので、今まで通りに歌っているだけじゃダメだなと。たくさんのプロの方々と並ぶところで、曲を聴いていただいたときに、“ゆきむら。ってちゃんと歌をやってるんだな”って思っていただけるように、ひとりの表現者としてアルバム制作に取り組みました。
──相当な気合で臨んだんですね。
ゆきむら。:アルバム制作のお話自体は結構前々からあったし、ファンの皆さんもずっと期待してくれていたんです。でも、自分の中ではいろいろ葛藤もあって、ようやく形になったなという感じです。結局、制作期間はあっと言う間に過ぎていって、もっと時間があれば……って悔やみましたけど。
──オリジナル曲に加えて、カバー曲も幅広い選曲でした。なるほど、と思うものから、意外なものまであったので、選曲にはかなり苦労されたのでは?
ゆきむら。:めちゃくちゃ迷いましたね。まず、ボカロ曲はもともとすごく好きで。もともとは歌い手さんの“歌ってみた”をパソコンの前から見ていた側だったので、その中から自分がずっと聴いてきた神曲や、多くの歌い手さんによって歌い継がれてきた曲を選びました。今回選ばせていただいた曲って、聴いている子たちの中には、それぞれの曲に対して自分の思う“本家”がいると思うんです。それくらい知られている曲だからこそ、“ゆきむら。ってどんなもんなの?”って目で見られますし、期待値も上がる。そういう意味ではプレッシャーでしたね。でも、アルバムを作るってなったときに、やっぱり自分がずっと影響を受けてきたボカロの、ずっと歌いたかった曲を入れたいなと思って、あえて挑戦することにしました。ゆきむら。として、どこまで本家さんを塗り替えられるのかが課題でした。
──王道のボカロ曲だけでなく、いまや世界のトレンドとも言うべきYOASOBIの「アイドル」をカバーされていたのも驚きました。しかも、すごくゆきむら。さんらしい仕上がりになっていたなと。
ゆきむら。:ありがとうございます。この曲で意識したのは、本家さんや作品へのリスペクトはもちろんなんですけど、まさに“自分らしい作品になれば”というところだったんです。そもそも自分が“アイドル”という言葉とか概念が好きですし、過去にアイドルに憧れていたこともあって。“自分がアイドルだったらどういう表現をしたんだろう”と考えて歌いました。
──YOASOBIの「アイドル」って、実は闇の部分もあったり、楽曲自体も非常に難曲ですよね。歌いがいもあったんじゃないでしょうか。
ゆきむら。:レコーディングは結構苦戦しました。漠然とアイドルになりたかったな~とか、可愛い子ってこうだな~とか、ステージでアイドルっぽい衣装を着て歌う自分を想像したりもしたんですけど、そうじゃないなって。途中で、むしろ“今のゆきむら。がアイドルになったら”という仮定の上で聴いてもらった方が面白いかなって気づきました。かわいいところはかわいく、でもカッコいいところはゆきむら。として曲げられないですからね。そこには強い自我がありました。
──一方でボーナストラックではZONEの「secret base~君がくれたもの~」を選ばれてますね。この世代を超えて愛される名曲を歌っているのは新鮮でした。
ゆきむら。:僕が歌を始めたのは、ZONEのリードボーカル&ギターのMIYUさんがキッカケだったんです。彼女の歌を聴いた時に“歌をうたいたい”という感情が生まれまして。 “深くて刺さる声で、誰かに何かを届けたい”とまで思えたのは、ZONEとの出会いがきっかけでした。でも、いざボーナストラックでこの曲を歌おうと考えたとき、自分が歌っていいのかってさんざん悩みましたね。それぐらい大事な曲だったんです。ただ、せっかく今回全国流通の音源を出せることになったので、何とか自信を持って、歌わせていただくことにしました。
──そんな経緯があったんですね。
ゆきむら。:音源を出す時期は「secret base~君がくれたもの~」の季節とは違ってしまったんですけどね(笑)。
──季節は違えど、どんな世代の人も夏の郷愁というか、子ども時代の美しい思い出がよみがえりますよね。
ゆきむら。:たぶんゆきむら。の姿を見た時に、この曲は歌わなさそうっていうイメージがあると思うんですよ。ビジュアル系とかロックが好きそうな見た目ですしね。もちろん、そういう音楽も好きではあるんですが、自分のバイブルはZONEなんですよね。
──オリジナル曲も幅広い音楽性で、いろんな可能性を感じました。ここからはオリジナル作品についても、語っていただこうと思います。ご自身で特に会心の仕上がりだったと思える曲はありますか? あ、もちろんどの曲も会心の作ではあるのは前提ですが……。
ゆきむら。:それを選ぶのはめちゃくちゃ難しいですね(笑)。う~ん……あえて選ぶとしたらゴリ押しで曲を書いていただいた「愛未遂ジェーン・ドゥ」ですね。これは自分自身が愛してやまないモーニング娘。さんなどの制作に関わってきた大久保篤さんに書いていただいたんです。
──それってすごいことですよね。
ゆきむら。:憧れの作家の方に声をかけること自体、勇気がいることでしたよ。もし受けていただいたとしても、自分はそれに相応するクオリティを出せるのかってところも考えましたし。もしもうまく歌えなかったら自分自身が嫌いになっちゃうかもって思うほど、感情が揺れる中でお願いさせていただいたんです。そしたら快く“ぜひ!”と言っていただけて。言い方はおかしいんですけど、自分自身、推しとつながりたくないタイプなんですよ。むしろずっと見上げていたいのに、憧れの存在の大久保さんとお話する機会を得て、焦ってました。楽曲を頼んでおいて、すごく矛盾する話なんですけど(笑)。
──わかる気もします(笑)。
ゆきむら。:その後、大久保さんに自分の好きなテイストの楽曲をいろいろお伝えして、そしたらもう本当に素晴らしい楽曲が届いて! これが自分の曲になるのかって、仮歌で怯えました(笑)。。憧れの作曲家さんの曲と自分がシンクロすると考えたら、ある種の怖さもあったんですよね。ただ、もしうまくシンクロできたら自分がひと皮剥けるんじゃないかとか、今の自分だからこそ巡ってきたチャンスでもあるのかなって思って。最終的には“やってやるぞ!”っていう気持ちで臨みました。大久保さんからは「ゆきむら。さんの気持ちのまま、思った通りに歌ってください」と言っていただけました。
──そんなエピソードは全く知らずに曲を聴かせていただいたので、これはもうノリもいいですし、ゆきむら。さんらしいパンチも効いているし、気持ちよく歌われたんだろうなと思っていました(笑)。あとはヒゲドライバーさんとコラボした「反逆ノノロシ feat.ヒゲドライバー」にも、熱さを感じました。
ゆきむら。:そうですね。実は以前、自分が推していたCheeky Paradeさんっていうアイドルグループがいて。今は解散してしまったんですけど、ヒゲドライバーさんはCheeky Paradeさんに楽曲提供していたんです。すっごいカッコいい曲で、オタク心をつかむサウンドっていうんですかね、イカついのにかわいい子たちがハジケて歌えてライブでも盛り上がれるっていう。なので、いつかヒゲドライバーさんにも曲をお願いしたいと思っていたんです。で、ヒゲドライバーさんには僕がやらかしてしまったこととか、死生観とか、世の中に対するうっぷんの話をちょっとだけさせていただいたんです。で、その話を結構肯定していただけて(笑)。「そういううっぷんを音楽に落とし込むいい機会なんじゃない? ちょっと尖った曲を書いてみるよ」って、上がってきたのが「反逆ノノロシ」だったんです。
──へぇ! だからこういったテイストになっているんですね。
ゆきむら。:思った以上に尖ったものがきましたね(笑)。殴り返されたようなインパクトがありました。言葉を音楽に落とし込んだときにその重さが変わるというか……曲で届けるってこういう感じなのかって。なので、レコーディングではいちばんカロリーを使いました。
──この曲もライブ映えしそうです。お客さんから大きな声が出ていたり、みんな拳を上げているような……そういう熱を感じました。
ゆきむら。:ロックの魂とかパッションというか。クールでいいタイプの曲ではないので、すごくプレッシャーはありました。ライブで披露するまでに、この曲との向き合い方を考えなきゃですね。
──ゆきむら。さんならではという曲といえば、「シナリオノート」。制作面ではおなじみのSakuさんの作詞作曲ですね。
ゆきむら。:Sakuさんとはよく雑談させていただいていて、「どんなものが好きなの?」とかいろんな話をさせていただくんですよ。だから、今回はまるっとお任せしました。それこそバンドアレンジにも携わっていただいているので、安心感もありますし。
──あと、アルバムの中ではSakuさんとの共作になる「AI」も印象的でした。「AI」というタイトルでイマドキのテクノロジーがテーマかと思いきや、“愛”の方なんですよね?
ゆきむら。:そうなんです、“AI(エーアイ)”と思った人もいるかもしれませんが、“愛”なんですよね。自分が伝えたいことって、リスナーの皆さんとつながっていること、人間対人間の部分をすごく大事に活動してきたっていうことなんです。“愛”って言葉は配信でもよく言っているんですが、そうではなくて、作詞の中で“愛”を語るっていうのもすごくいい機会だなって。実はSakuさん自身が“愛”をテーマにしようって言ってくれて。これは僕に適しているかもしれないと思ったので、Sakuさんに「作詞したいです」って伝えました。書いている中で思ったのは、結局これは自分へのはなむけの言葉かもしれない、ということでしたけど。
──自分へのはなむけ……というのは?
ゆきむら。:恋愛ソングって、相手がいて自分がいて……っていう内容になりがちじゃないですか。でも、突き詰めていくと、誰かに愛を与えるためには、まず自分を愛せないといけない。だったら、自分よがりな曲でもいいんじゃないかなと。聴いてくれた人には自分への愛に陶酔して欲しいっていう思いを込めました。結果、孤独感が強い曲になっちゃったんですけど(苦笑)。
──なかなか自分を愛せずに悩む人達も多いと思いますが、案外そこに刺さるような曲の数は多くないんですよね。
ゆきむら。:そうかもしれないですね。
──他にもいろんなタイプの曲が揃っているので、初めてゆきむら。さんの歌を聴く人でも、好きなタイプの曲が見つかりそうですね。
ゆきむら。:そうだと嬉しいです! 今回は欲張ってしまいまして(笑)。やっぱり全国流通が嬉しかったんですよね。たくさんの人に“ゆきむら。っていろいろ歌えるんだ”って思って欲しかったのもあるし、いろんなことを思っているんだなって感じ取って欲しくて。決して、全曲ドロドロしているとか、クールなテンションの僕だけじゃないよっていうのを伝えたかったんです。
──そして、アルバムが出るということは、やっぱりライブも期待しちゃいますね。というところで、先日重大発表がありましたね。
ゆきむら。: 2025年2月11日に東京ガーデンシアターでライブをさせていただきます! 1年前にも、東京ガーデンシアターのステージには立たせていただいたんですけど、この1年間だけでも時代の流れや自分のまわりの環境について、いろいろ模索してきたんですよね。前回は<ゆきむら。 Memories Full of Noise>というタイトルでやらせていただいたんですが、“雑音だらけの世界”がテーマだったんです。でもその時は“雑音”のまま終わっちゃった気がしていて。なので、またもう1回同じ場所に立てるんだったら、今度は“これぞゆきむら。”っていう答えが出せたらなと。1年前とは全然気持ちの入れ方が違いますし、意気込みはだいぶ熱いです。
──次の2月11日のライブは、この先の活動につながるような大事な公演になりそうですね。
ゆきむら。:ここで踏ん張れたら、また何か新たなものが生まれそうな気がしています。自分の人生においても。実は、来年のライブには答え合わせのような感覚もあるんですよ。今までやってきたことに対して、ファンの皆さんと答え合わせをするみたいな。
──なるほど。
ゆきむら。:それと同時に、僕自身としては “で、お前はこの1年間どうだったの?”って突きつけられる場面でもあるから恐怖感もあるんですよ。初めてライブに足を運んでくれた方には小手先のカッコつけだけでは説得力がないし、歌も届けることができないと思うんです。だから、ライブまでにボイススレーニングもダンスもしっかり学び直すつもりです。いい感じに自分を追い込みたいと思っています。
──ビジュアルのイメージから、ゆきむら。さん=クールと感じる人が多いと思うんです。でも、実際にはかなり情熱的な方なんですね。その思いの根底には何があるのでしょう。
ゆきむら。:リスナーさんの中には、心の底から僕にある種の“助け”を求めている方もいます。自分はこれまでずっとその声を聞いて活動してきたので、自分が諦めたらこの子たちはどうなっちゃうんだろうって思うんですよ。僕は、こういった子たちを自分の歌で救いたいと思っています。
──素敵な話です。そういう思いは、話題になった“全裸ジャケット”の潔さにも通じている気がしました。
ゆきむら。:よく言葉で“等身大で生きていく”とか“みんな等身大でいいんだよ”って言ってたんですけど、でも実際 “等身大”って何?って自問自答しちゃって。それがちょうどアルバムジャケットを考えていたときで、それなら全裸ジャケットはわかりやすいかなって(笑)。
──究極ですね(笑)。
ゆきむら。:結局、脱いだらみんな同じ人間。今ってAIとかVTuberとか、いろいろあるじゃないですか。否定するわけじゃないですけど、それって本当の姿がわからなくなってきた時代ともいえますよね。だったら……じゃあ脱ぐか!って(笑)。
──ファンの中にはそういう部分に共鳴する人も多いと思います。きっと2月11日のライブは、ファンの皆さんにも大きな意味をもたらすのでしょうね。Xでもゆきむら。さんは「絶対に死ねない理由がここにある」って投稿してましたし。
ゆきむら。:ここまで押し上げてくれた子たちにとって、アルバムも、ライブも、そして僕の存在そのものが、みんなの存在証明になればいいなって思っています。
取材・文◎海江敦士
撮影◎尾藤能暢
1stアルバム『- Never ending Nightmare-†』
【初回限定盤 A】
CD+Photobook QACB-6003 ¥5,500(税込)
[Photobook]
<Re:Collection>(2024年8月22日 Zeep Haneda)のライブ写真やアルバムのために撮り下ろしされた写真で構成された豪華フォトブック
【初回限定盤 B】
CD+DVD QACB-6004 ¥5,500(税込)
[特典 DVD]
<Re:Collection>(2024年8月22日 Zeep Haneda)ライブダイジェスト ・涙腺回路(Plastic Tree)・フォニイ(ツミキ)
「反逆ノノロシ feat.ヒゲドライバー」Music Video 「愛未遂ジェーン・ドゥ」Music Video
【通常盤】
CDのみ QACB-6002 ¥3,000(税込)
[封入特典]※通常盤のみ
アナザージャケット 全16種 ランダム封入
(イラスト6種 / 実写2種)全8絵柄 +ホログラム(イラスト6種 / 実写2種) 本人の直筆サイン入りがランダムで(ホログラム ver.実写2種)当たります。
[共通収録曲]
M1.天涯
M2.AI
M3.ロミオとシンデレラ(doriko)
M4.愛未遂ジェーン・ドゥ
M5.え? ああ、そう。 (蝶々P)
M6.虎視眈々 (梅とら)
M7.反逆ノノロシ feat.ヒゲドライバー
M8.ヒバナ (DECO*27)
M9.アイドル (YOASOBI)
M10.Calc. (ジミーサム P)
M11.ハウトゥー世界征服 (Neru)
M12.シナリオノート
※通常盤のみ収録
Bonus Track:secret base 〜君がくれたもの〜 (ZONE)
<Never ending Nightmare -The Nigh†->
開場開演:OPEN 15:30/START 16:30
会場名:東京ガーデンシアター
お問い合わせ:DISK GARAGE https://info.diskgarage.com
チケット料金:8,500円(全席指定・税込)
アルバム封入先行:(FC「殿厨 上層部」枠/FC「殿厨 本部」枠/一般枠)
受付方法:抽選
受付期間:12月10日(火)19:00〜12月17日(火)23:59