【ライブレポート】鬼頭明里、アーティスト活動5周年記念ライブ完走「今までの感謝を皆に返していけるように」

声優・鬼頭明里のアーティスト活動5周年を記念したライブ＜鬼頭明里 5th Anniversary LIVE『All Light！』＞が、2024年11月にウェスタ川越とKAAT神奈川芸術劇場にて開催された。

◆ライブ写真

両会場とも2Days公演となっており、「鬼頭明里」名義楽曲の全てを2日間に分けて披露した。本レポートでは、11月23日・11月24日に行われた神奈川公演の模様をお伝えする。

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ライブ冒頭、会場の光が落とされると大スクリーンが灯る。そこに映し出されたOPムービーは、鬼頭のアーティストデビューからこれまでの軌跡を振り返るように、過去のMVやライブ映像が映し出され、5年という短くも長い期間の数々の思い出が脳裏に巡る。


Day1公演は2019年にリリースされた1stシングル「Swinging Heart」から幕が開け、まさに5周年を振り返る1曲目にふさわしいスタートで心を揺さぶってくる。次曲のイントロ中に、「始まりました！5th Anniversary LIVE「All Light！」今日は5年分の感謝を込めて歌います！」というショートMCがあり2曲目に突入していくが、我々はとんでもないものを見せつけられることになる。

なんと、鬼頭はここからアンコールまで、MC無しのノンストップで本編22曲を駆け抜けていくのだ。これは持って生まれた喉の強さと、声優活動を10年、歌手活動を5年続けてきたからこそできる賜物で、“鬼頭明里楽曲”が大好きな里民(鬼頭のファンの愛称)たちは楽曲を浴びながら踊り狂う2時間を体験することとなる。

楽曲も華やかであるが、両日で披露された衣装も全7パターンと多種多様。大人びた紫のジャケットや、腕に施されたアームカバーも特徴的なフリンジのトップス、キラキラと光る宝石のように眩いグリーンが鮮やかなドレスなどをかわるがわる着こなし、パープル主体のチェック柄のセットアップでは、ブロックの後半になるとジャケットを脱ぐことでよりアクティブな印象を与えた。


それらの衣装チェンジの時間は、ONiGASH!MAダンサーズたちのソロパートダンスがふんだんに盛り込まれた。最近ではイベントのMCもこなす甚古萌をはじめとする、Rinka・花菜・いぶきといったダンサーたちも鬼頭と共に5年を走り抜けてきた仲間だ。そして、この日もバンドセットで臨んだライブにおいて、贅沢なサウンドを届けたONiGASH!MA(G / 魚住有希、B / 伊藤千明、Key / にしのえみ、Dr / 今村舞)が主役となった豪華なバンドタイムも見せ場の一つとなった。

これまでリリースされた鬼頭明里名義の全楽曲を歌うとだけあって、2日間において披露された曲数は全48曲。5年の歳月の重みを感じさせるラインナップとなったが、その中心に据えていたのが2024年8月28日にリリースされたばかりの2ndミニアルバム『Give Me Five!』だ。“ライブが盛り上がる疾走感と爽快感”がテーマのアルバム収録曲は5曲とも両日披露され、Day2ではリードトラック「キャンバス」を1曲目に持ってきた。Day1ではデビュー曲、Day2では最新の楽曲で開宴の号砲を撃つことによって、6年目7年目とまだ先の航路を切り開ける未来を見せてくれるようなセットリストだ。

そんな「キャンパス」は、PENGUIN RESEARCHの堀江翔太が作曲し、鬼頭が初めて単独で作詞を務めたポップチューン。今まで自身を支えてきてくれた人を思いながら制作した楽曲は、サビの一部に観客から発してほしいレスポンスも盛り込まれており、真っ白なキャンパスを会場全体で徐々に染め上げるように進行していく。


ライブ中の印象的な場面の一つに、鬼頭が右耳に手をやる仕草が散見されたことがある。当初はイヤモニの位置を修正しているのかと思ったが、これはラストのMCで鬼頭自身が明かしていたように、観客が声を出す楽曲の際に会場の声を聴くためイヤモニを外して聴いていたのだった。『Give Me Five!』は、皆で声を出して楽しめる曲を軸に据えていることもあり、アルバムの楽曲がこの現場で完成されていく様を鬼頭も存分に楽しんでいるようであった。

Day1の終わりには、アーティスト活動との向き合い方について鬼頭の思いの一端が分かるシーンがあった。「声優のお仕事は自分のためにやっているというか、自分が色々なキャラクターの人生を歩みたいというのがまず一番にあって。アーティスト活動は何のためにやっているんだろうと考えた時に、ライブに来てくれる皆のためにやっているんだろうなと。歌を始めて、より皆に気持ちを届けなければという気持ちが芽生えて、演技との相乗効果でより歌に気持ちが込められるようになったので、私も歌でお返しがしたいなと思うようになりました」


お返しの気持ちで歌う鬼頭の歌声を受け取っているのは、里民たちは勿論、普段裏方として鬼頭とともにステージをつくりあげているスタッフも同様だ。その感謝と5周年のお祝いを伝えるために、鬼頭には秘密のサプライズ企画が仕込まれていた。Day1では入場時に里民たちに一輪の花と趣旨を説明した一枚の紙が渡された。紙には、アンコールラストの「君の花を祈ろう」の落ちサビに入った瞬間に花を掲げようというもの。

これは、まだコロナ禍にあって観客の声が出せない2020年の＜1st LIVE TOUR「Colorful Closet」＞で、鬼頭へのメッセージを伝えるボードを掲げたサプライズ企画のリバイバル版であったが、肝心の鬼頭は歌の世界に入り込み、時には目を瞑っていたために気づかないまま。サプライズは大成功とはいえなかったが、歌唱後に気づいた鬼頭は笑顔でDay1公演を締めくくっていた。そしてDay1のサプライズ企画のリベンジとして、Day2には全楽曲を歌い終えた鬼頭のもとに、花束を持った椿本プロデューサーが歩み寄った。アレンジされた白いライブTシャツはさながら白いキャンパスのようで、鬼頭の胸に収まった花束は、まさにこの5年間の歩みを彩るように咲き誇っていた。


Day2のアンコール、この日唯一のMCで、5周年ライブを駆け抜けた鬼頭はゆっくり振り返る。

「こうして4日間やってきましたけど、思えばこの5年間、色々なタイミングで私のことを知ってくれて、ライブまで来てくれる人がいて本当にありがたいなと思います。これから私のことを知ってくれる人もいるかもしれないので、もっと皆で一緒に楽しいライブをつくっていけたら、というのをテーマに2ndミニアルバムをつくりました。

今回のライブで皆が声を出してくれるのが本当に良くて、皆でライブをしている感覚で私はやらせていただいているので、歌唱パートを皆の分もつくってあります(笑)。それをちゃんと大きな声で歌ってくれてすごく嬉しくて、そういうライブをもっともっとやっていきたいなと改めて思った5周年ライブでした。

アーティストデビューをした頃はこんな景色が見れるとは思ってもみなかったですし、まだ私が始めた頃はアーティスト活動どうやってやっていけば良いのかわからない状態だったのに、それでもついてきてくれた人たちがたくさんいたから、ここまで私も来られたのかなと思いました。

……全然泣くつもりなんてなかったのに、ここに立って皆の顔を見たら思いが溢れてきまくりです。そのくらい皆が楽しんでくれてるというのがわかっているからこそ私もあまり気負わずに楽しみながらライブができるようになったことをすごく実感していて、今までの感謝を皆に返していけるようにもっともっと楽しい思い出をつくれるようにしたいなと思います」


その感謝の思いを伝えるように、「Fly-High-Five! 5th Anniversary Ver.」で自身のアーティスト活動5周年を祝いながら、6年目へと高く飛び立った。

2025年2月には7th シングル「With a Wish」が発売されることも発表され、鬼頭明里も八尋寧々役で出演する、2025年1月12日放送スタートTVアニメ『地縛少年花子くん2』EDテーマに決定したことも合わせて解禁された。アーティストとしても声優としても成長を見せ続ける鬼頭明里に、今後も注目していきたい。