【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.12(本人歌唱指導付き)鳥羽一郎・山川豊、はやぶさ、松尾雄史、津吹みゆ、秋岡秀治

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世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。

◆本人による歌唱アドバイス 動画

演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」第12回目。2024年ラストとなる今回のコラムでは、鳥羽一郎・山川豊「俺たちの子守唄」、はやぶさ「夜霧のセレナーデ」、松尾雄史「ゆう子」、津吹みゆ「なみだ紅」、秋岡秀治「西郷隆盛 ~あぁ幕末の薩摩武士~」を紹介する。
(協力:日本クラウン)



■鳥羽一郎・山川豊「俺たちの子守唄」



6つ違いの実の兄弟である兄・鳥羽一郎と弟・山川豊。山川は現在、がんと戦いながら活動を続けており、この10月に出したばかりの「兄貴」で鳥羽のことを歌ったばかりだが、今度は兄弟デュオが実現した。二人で新曲をレコーディングするのは初ではないだろうか。

「俺たちの子守唄」は、鳥羽の息子で現在はソングライターとして活動する木村竜蔵が作詞・作曲を担当。荒々しさが持ち味の鳥羽と、洗練された山川という対極の個性を持つ2人だが、さすが、その血を引く息子だけあって、2人のヴァイブスを共振させ、さらに新しい魅力を引き出す名曲を作り上げた。特に、サビで鳥羽が主旋を、山川がハーモニーをつけるところはグッとくる。荒々しくも優しい。これは2人の魂がぶつかり合う、ソウルミュージック、いやこの激しさはもはやロックだ。カップリングは北島三郎の「演歌兄弟」をカヴァー。もちろん、このタイトルと歌詞ありきの選曲だろう。「男は演歌だぜ」のフレーズが熱い。




「俺たちの子守唄」発売情報

2024年12月4日リリース
CRCN-8710 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. 俺たちの子守唄
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山敦
2. 演歌兄弟
作詩:原 譲二 / 作曲:原 譲二 / 編曲:南郷達也
3. 俺たちの子守唄 [オリジナル・カラオケ]
4. 演歌兄弟 [オリジナル・カラオケ]
5. 俺たちの子守唄 [鳥羽一郎入りカラオケ]
6. 俺たちの子守唄 [山川豊入りカラオケ]




■はやぶさ「夜霧のセレナーデ」



ハスキーな低音が魅力の駿河ヤマトと女性のような艶やかな高音の大滝ひかるという、対極的な個性を持ったデュオ。これまでは演歌系では異例といえるほどにポップに弾けた楽曲を歌うこともあったが、2021年以降はムード歌謡路線が続いている。

今年2枚目となるシングル「夜霧のセレナーデ」は、前作の「赤坂レイニーナイト」、前々作の「外苑西通り」に続き、ムード歌謡の大御所、鶴岡雅義と東京ロマンチカの鶴岡雅義(御年91歳!)による書き下ろし。今回で三部作は完結となる。イントロで鶴岡が得意としていたレキントギター(南米産の通常よりも小ぶりなガットギター)と思しき音が合いの手のように入ってきただけで、東京ロマンチカの音だ!と胸が高鳴る。これぞムード歌謡の王道といった楽曲で、少しラテンが香るリズムと男声コーラスに一気に70年代に引き戻される。

今回は2パターン同時発売。「タイプA」のカップリングは「港町かくれんぼ」。クールファイブ系のムード歌謡で、これもA面にしてもいいほどの出来。「タイプB」のカップリングは鶴岡雅義と東京ロマンチカの代表曲の1つ「君は心の妻だから」のカヴァー。ヤマトのフランク永井のように響く低音と、倍音が豊かに広がるひかる。はやぶさはムード路線がばっちりはまっているので、もうしばらくこの路線を続けてほしい。




「夜霧のセレナーデ」発売情報

2024年12月4日リリース

・タイプ A
CRCN-8711 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 夜霧のセレナーデ
作詩:朝倉翔 / 作曲:鶴岡雅義 / 編曲:石倉重信
2. 港町かくれんぼ
作詩:本橋夏蘭 / 作曲:大谷明裕 / 編曲:石倉重信
3. 夜霧のセレナーデ [オリジナル・カラオケ]
4. 港町かくれんぼ [オリジナル・カラオケ]

・タイプ B
CRCN-8712 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 夜霧のセレナーデ
作詩:朝倉翔 / 作曲:鶴岡雅義 / 編曲:石倉重信
2. 君は心の妻だから
作詩:なかにし礼 / 作曲:鶴岡雅義 / 編曲:DOC
3. 夜霧のセレナーデ [オリジナル・カラオケ]
4. 君は心の妻だから [オリジナル・カラオケ]




■松尾雄史「ゆう子」



180センチの長身、少年のようなベイビーフェイス、独特の巻き舌歌唱が持ち味の中堅歌手。どこか新沼謙治を思わせる朴訥とした雰囲気の歌が個性的だ。

今年2枚目のシングル「ゆう子」は女声コーラスが入った少しムード歌謡テイストで軽いタッチの曲だが、歌詞の内容は幸薄い女性に寄り添う男の心情を描いた裏町演歌。松尾の優しいお兄さんといった風なビジュアルは、演歌の世界で長年にわたって歌い続けられてきたこのテーマを、現代風なものにアップデートしている。それにしても、「ゆう子」という名前も少なくなった。カップリングの「悔し涙」は、「浪花節だよ人生は」系の明るくアッパーな曲調だが、歌詞はなかなか硬派。男の人生の前に壁が立ちはだかる歌だ。両曲とも75歳にして第一線を走り続ける師匠・水森英夫の楽曲。水森は本当に多様なタイプの楽曲を書く人で、楽曲を量産できる能力は本当にすごい。




「ゆう子」 発売情報

2024年12月4日リリース
CRCN-8709 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. ゆう子
作詩:久仁京介 / 作曲:水森英夫 / 編曲:石倉重信
2. 悔し涙
作詩:ガンガン大関 / 作曲:水森英夫 / 編曲:伊平友樹
3. ゆう子 [オリジナル・カラオケ]
4. 悔し涙 [オリジナル・カラオケ]
5. ゆう子 [一般用カラオケ]
6. 悔し涙 [一般用カラオケ]




■津吹みゆ「なみだ紅」



四方章人の門下生として19歳でデビューして、今年が10年目。ここ数年はご当地ソング的な歌が続いたが、ここらで勝負に出たいところ。

今回は久々に女らしさを前面に押し出した純粋な女心を歌う。「なみだ紅」はゆったりしたメロディに乗せて、一夜の風景を無駄なく言葉少なに描いた歌。歌の表現力を非常に問われる楽曲だが、非常に情感たっぷりに歌い上げている。それにしてもこの人は発声がめちゃめちゃきれいだ。カップリングの「闇夜においで」は、印象的なサビメロを持った歌謡曲風の楽曲。津吹本人がそもそも演歌好きということもあってか、これまでも歌い込むタイプの楽曲が多かったが、素直な声質なので、軽めのポップス系の曲もよく似合う。ちょっと「抜いた」歌い方もまた武器になりそう。ちなみに、「おいでおいで」という歌詞はちあきなおみのアレを思い出してしまうが、全く別モノです。




「なみだ紅」発売情報

2024年11月27日リリース
CRCN-8708 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. なみだ紅
作詩:麻こよみ / 作曲:四方章人 / 編曲:竹内弘一
2. 闇夜においで
作詩:さくらちさと / 作曲:四方章人 / 編曲:竹内弘一
3. なみだ紅 [オリジナル・カラオケ]
4. 闇夜においで [オリジナル・カラオケ]
5. なみだ紅 [一般用カラオケ(半音下げ)]
6. 闇夜においで [一般用カラオケ(半音下げ]




■秋岡秀治「西郷隆盛 ~あぁ幕末の薩摩武士~」



着物を華麗に着流す男前。現代の男演歌を代表する歌手の一人。力強く喉を鳴らす、最近では少なくなってきた正統派の演歌歌手だ。

タイトルで驚いた。まさか今「西郷隆盛」とは。何かのコンセプト作品なのかと思ったがそういうわけではなさそうだ。作詞・作曲は川井田健一。往年の三波晴夫が得意とした浪曲歌謡のようにドラマティックにロマンを語っていく重厚な楽曲。秋岡の歌はコブシの使い方から声の調子までが計算し尽くされた見事なもの。三味線に尺八から始まり、思わず途中で啖呵(語り)が聞けるのではないかと期待したが、浪曲ではないので求めすぎてはいけないのだな。そんな歴史を感じる1曲だが、エレキギターがフィーチャーされているなど、今時の演出も。カップリングはやはり川井田が書いた歌謡曲タッチの帰郷をテーマにした楽曲で、少しフォークっぽいアレンジに哀愁を感じる。




「西郷隆盛 ~あぁ幕末の薩摩武士~」発売情報

2024年12月4日 Release
CRCN-8713 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

1. 西郷隆盛~あぁ幕末の薩摩武士~
作詩:川井田健一 / 作曲:川井田健一 / 編曲:竹内弘一・吉村英世
2. お墓参りに帰ろうか
作詩:川井田健一 / 作曲:川井田健一 / 編曲:竹内弘一・吉村英世
3. 西郷隆盛~あぁ幕末の薩摩武士~ [オリジナル・カラオケ]
4. お墓参りに帰ろうか [オリジナル・カラオケ]




文◎池上尚志



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