【インタビュー】モダンスカイ「中国の若者はポップ・ミュージックには凄く敏感です」
Nagie Laneのmikakoがお送りしているinterfm「TOKYO MUSIC RADAR」(毎週火曜日21:30~)では、11月頭に開催された国内唯一の音楽マーケット・見本市TIMM(東京国際ミュージックマーケット)の現場に突撃し、様々なアーティストや音楽関係著名人にインタビューを行っている。
今回、mikakoがお話を聞いてきたのは、中国の音楽レーベル「モダンスカイ」のシェン・ユエ副社長と、モダンスカイジャパンの牧野晃典代表取締役社長のおふたり。1997年に設立された「モダンスカイ」は、影響力の高い若者向けのカルチャー企業として高く評価されており、彼らが手掛けるイベントのひとつに、中国最大級の音楽フェス<ストロベリーミュージックフェスティバル>がある。
中国で15年続く大人気の音楽フェス<ストロベリー・ミュージック・フェスティバル>は、2025年に日本に初上陸を果たし、アジアの音楽とトップ・アーティストが新たな潮流を生み出す期待が高まっている。ということで、そんなモダンスカイ社のおふたりの話に耳を傾けてみよう。
左から牧野晃典(モダンスカイジャパン代表取締役社長)、mikako、シェン・ユエ(モダンスカイ副社長)
──(mikako)モダンスカイはどんな会社なんでしょうか。
シェン・ユエ副社長:モダンスカイは1997年に設立された中国のエンタテインメント会社で、音楽出版やアーティストマネジメント、ライブイベントなどを手掛けている企業です。また、ライブ会場やレコーディング制作、ビジュアルアート・リテールおよび商業スペースなど、幅広い事業を展開しています。
──(mikako)モダンスカイが手掛けるもので有名なものに中国最大級の音楽フェス<ストロベリー・ミュージック・フェスティバル>がありますが、2025年には日本で初開催となりますね。
シェン・ユエ副社長:モダンスカイでは10年前から海外で音楽フェスティバルを展開してきました。2014年に<モダンスカイ・フェスティバル>というタイトルで、ニューヨークをはじめ欧米圏で開催していましたが、このコロナ禍で中断を余儀なくされ、パンデミックが収束した後に再び再開している状況です。日本での音楽フェス開催は以前からの目標でもあったんですよ。
──(mikako)そうなんですね。
シェン・ユエ副社長:日本の音楽は、中国のインディーシーにも大きな影響を与えていますから。地理的、文化的にも日本は中国に近くて、モダンスカイにとって重要な市場のひとつだと思っています。日本での<ストロベリー・ミュージック・フェスティバル>開催においては、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社様との共同主催が実現することが大きなきっかけとなりました。
──(mikako)実際のところ、中国での「日本の音楽の評判」ってどうですか?
シェン・ユエ副社長:中国の若者はポップ・ミュージックには凄く敏感で、日本の音楽に非常に注目しています。そのため、日本の音楽が中国の大衆市場に入る可能性はとても大きいんです。ここでの大衆視聴というのは、J-POPの熱狂的なファンのみならず、中国で国民的なポピュラリティを持つ可能性があるということです。ですから、日本の音楽業界と我々が協力して中国の巨大なオンラインプラットフォームを通じ、<ストロベリー・ミュージック・フェスティバル>やモダンスカイが手掛けるツアー、コンサートで日本の音楽を中国の大衆に届けたいと思っています。
──(mikako)現在、中国ではどのような音楽がウケているんですか?
シェン・ユエ副社長:中国は非常に大きな市場で、様々な音楽ジャンルがそれぞれのファン層を持っています。昔からJ-ROCKもシティポップもすごく流行っていますが、もちろんこれだけではなく、それぞれの音楽によってはある程度のファンベースがあるんです。例えば、私は一昨日に神戸で「新しい学校のリーダーズ」のライブを観たのですが、彼女たちの音楽には多くの西洋の要素が含まれていますよね?ザ・プロディジーのような洋楽の要素も感じましたし、同時に日本の昭和文化の影響も多く見られます。日本の音楽業界の制作力によって様々なスタイルをポップスにうまく融合させていることを感じますし、新しいポップカルチャーを創造することができていると思っています。それもまた、私たちが日本の同業者から学びたい点でもあるんです。
──(mikako)逆に、中国のポップスの魅力というのは、どういうところにあると思いますか?
牧野晃典:中国に行くようになってから気付いたことがたくさんあるんですけど、中国と日本ではSNSのプラットフォームが違うので、中国の最新音楽情報というのがなかなか日本に入って来ないんです。それってすごいもったいないことだなと思うんですよね。実際中国に行けば、<ストロベリー・ミュージック・フェスティバル>もあるし、コンサートもあるし、普通に楽曲も配信されているので、いいアーティストってほんとにいっぱいいるんです。中国には当然のようにそういう人たちのファンが何千・何万・何十万人といるわけですから、日本でそのムーブメントを受け入れる環境を作ることも、今回モダンスカイのジャパンオフィスを作ることになった理由のひとつでもあるんです。中国の音楽シーンで言うと、とにかくヒップホップですね。ヒップホップはすごい。意外と思うかもしれませんけど、そういう情報をしっかりと日本に伝えるような努力もしたいなと思っています。
──(mikako)音楽って国境を超える力がありますから、その機会が増えるといいですね。
牧野晃典:モダンスカイにも150組以上のアーティストがマネージメントとして所属していて素晴らしいアーティストがいっぱいいますから、日本に届けていきたいなと思います。
シェン・ユエ副社長:音楽は音楽そのものだけではなくて、その国やそのエリアの文化だったり、好きなビジュアルやドラマなどとも深く関わっていますから、J-POPに関してはすごく日本的だなと深く感じていますね。日本の音楽産業は凄く成熟していますし、先日の「新しい学校のリーダーズ」のライブでは、アーティストのアイディアや企画が、高い技術とオリジナリティで実現できていることに大きな感銘を受けました。
──(mikako)今後、 中国音楽市場と日本音楽市場、そして世界の音楽市場はどのように発展していくと思われますか?
シェン・ユエ副社長:これからの音楽がどのように発展していくのかはわかりませんが、例えばハイパーポップという音楽は、最初からは独立したひとつの音楽スタイルになるのではないかなと思われていました。が、最近では、ハイパーポップは多くのシーンでは他の音楽スタイルと融合し、それによってまた新しい音楽スタイルを生み出すことになっていますよね。そういう意味では、将来的には全ての音楽ジャンルが自然と何かしらのコラボによって新しい音楽スタイルを生み出していくのではないかなと期待しています。どうなるかわからないからこそ楽しみのひとつでもありますね。
牧野晃典: 今後はよりいっそうボーダレスになっていくと思いますし、僕らがやりたいことも、やらなきゃいけないこともそこにあると思っています。アーティストがどんどん海外でいろんな国で地域も関係なくマーケットを開拓していくとしたら、僕らのような伝える側も同じ意識である必要があります。洋楽とか邦楽とか分けるのではなく、同じ意識でひとつの音楽として捉えるようになっていくと思っています。
──(mikako)これからもご活躍を期待しています。ありがとうございました。
取材◎mikako(Nagie Lane)
文・編集◎烏丸哲也(BARKS)
◆モダンスカイ・オフィシャルYouTube
◆モダンスカイジャパン・オフィシャルサイト
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