松本伊代、進化する歌唱力で満場の観客を魅了した、東京をテーマにしたスペシャルステージ

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松本伊代が、10月12日(土)と13日(日)、東京の大手町三井ホールで<松本伊代Live 2024 “Journey” Tokyo Lover>を開催。両日ともシティポップ系の楽曲を中心としたセットリストと進化する歌唱力で満場の観客を魅了したが、サプライズもあった2日目の模様をレポートする。

1981年に「センチメンタル・ジャーニー」(作詞:湯川れい子、作曲:筒美京平)でデビューを飾った松本は、その声を愛した筒美からの提供曲を数多く歌唱。筒美にゆかりのあるミュージシャンと歌手が集結した2021年のトリビュートコンサートに出演したことがきっかけとなり、同コンサートの音楽監督・指揮を務めた作編曲家の船山基紀とも親交を深めてきた。

松本の歌唱力と表現力に惚れ込んだ船山は、2022年のデビュー40周年ライブから音楽監督に就任。上演曲のアレンジやステージの構成を手がける一方、信頼を寄せる腕利きミュージシャンをキャスティングして最高の演奏を引き出すなど、強力なバックアップを継続している。

3年目を迎えた今回は、松本が作詞を担当した新曲「Tokyo Love」(韓国の人気DJ・Night Tempoの作曲で4月に配信リリース)にちなんで「Tokyo Lover」をテーマに設定。東京で生まれ育った松本の想いを反映させるべく、近年世界的なブームを呼んでいるシティポップ系の洗練された楽曲が多数セレクトされた。

好評を受けて、同ライブにおける「バージニア・ラプソディ」の歌唱映像がYouTubeの公式チャンネルで公開された。今後も数曲の公開が予定されているので、極上のステージの興奮をこの機会に体験していただきたい。



【ライブレポ―ト】

日本を代表するミュージシャンが奏でるゴージャスなサウンドと調和した深みのあるボーカル、キュートでエレガントな衣装と飾らないトーク――。歌手・松本伊代の魅力を存分に味わえるステージだった。


10月13日(日)、東京の大手町三井ホールで開催された<松本伊代Live 2024 “Journey” Tokyo Lover>には令和世代も含む多くのファンが詰めかけた。YouTubeや定額制音楽配信サービス(サブスク)を通じて、往時の活躍を知らない10代、20代にも松本の歌声が浸透している表れだろう。


“花の82年組”の1人として、キラキラしたアイドルのイメージを持たれがちな彼女だが、20代で発表したシングルやアルバムには林哲司、小西康陽、大江千里、崎谷健次郎など、近年のシティポップブームで再注目されているミュージシャンが多数参加。高い音楽性が評価され、この2年間でアルバム3作(『Private File』『風のように』『サムシングI・Y・O』)が復刻される人気ぶりを示している。


2023年11月に出演した林哲司のトリビュートコンサートではアイドルからの転機となったバラード曲「信じかたを教えて」と「サヨナラは私のために」をしっとりと歌い上げ、持ち前の歌唱力がシティポップファンにも知られるようになった。前日の公演に台湾から駆け付けた観客がいたのは、海外にも楽曲のよさが浸透しているからに違いない。


本公演の音楽監督を務める船山基紀は松本の1stアルバムからアレンジャーとして参加。名盤の誉れ高いアルバム『天使のバカ』(86年)と『風のように』(87年)では全編曲を手がけるなど、80年代から松本の楽曲制作に関わってきた。筒美京平作品の編曲を最も多く手がけたことで知られる船山は2021年に開催された筒美のトリビュートコンサートで音楽監督と指揮を務めたが、そこで松本と再会。翌年以降、単独ライブのアレンジと構成を担当している。


彼女の声と歌唱力に惚れ込んだ船山は自身が信頼する当代一のミュージシャンを毎回キャスティング。この日のメンバーも3年連続で参加している増崎孝司(ギター/バンドマスター)、安部潤(キーボード)、Amazons(コーラス)、ルイス・バジェ(トランペット)、アンディ・ウルフ(サックス)に、新しく江口信夫(ドラムス)と川崎哲平(ベース)が加わった強力な布陣だった。


開演は16時30分。デビュー30周年を機に再結成された親衛隊が「伊代ちゃんコール」を始めると、これから始まるスペシャルな時間への期待が高まる。客席の照明が落ち、バンドメンバーに続いて純白のミニドレス姿の主役が登場すると、大きな拍手と歓声が巻き起こった。


オープニング曲の「Private fileは開けたままで・・・」は韓国の人気DJ、Night Tempoがリエディットしたことで注目され、サブスクでも人気を集める89年の作品。都会で働く女性の心情を華やかなサウンドに乗せて歌う、幕開けにふさわしいポップチューンだ。昨年Night Tempoと初コラボを果たした松本は今年4月に自身が作詞をした新曲「Tokyo Love」(作曲:Night Tempo)をリリース。今回の公演名に入れられた「Tokyo Lover」はそのタイトルに由来している。


続けて歌った「ビリーヴ」はドラマ主題歌としてヒットした代表曲の1つ。疾走感のあるサウンドで総立ちの観客を盛り上げると、会場では色とりどりのペンライトが振られる。最初のMCで自分が生まれ育った東京への想いを語った松本は「今日は一緒に思いきり楽しみましょう!」と呼びかけ、ライブでもお馴染みのシングル曲「すてきなジェラシー」「ラブ・ミー・テンダー」「あなたに帰りたい(Dancing’ In The Dark)」をメドレーで披露。「あなたに帰りたい」では、この3年間で定着したサビの振付を全員で踊り、オーディエンスとの一体感も生まれた。


その後は近年復刻されたアルバムからセレクトしたシティポップのコーナーに突入。『Private File』(89年)からはピチカート・ファイヴの小西康陽から提供された「有給休暇」、『サムシングI・Y・O』(82年)からはサブスクで人気の高い「バージニア・ラプソディ」、『風のように』(87年)からは林哲司が作曲を手がけた「Too late Too Young」を3曲続けて歌い、アルバムも名曲揃いであることを知らしめた。国内外のファンから注目されている松本伊代のシティポップはこれからもディグられていきそうだ。


ライブ後半、韓国ドラマの女優の衣装に着想を得た黒いミニドレスに着替えた松本は全幅の信頼を寄せるバンドメンバーを紹介。撮影タイムを経て、日本のポップマエストロ、杉真理が石川さゆりに提供した「ウイスキーが、お好きでしょ」を艶のあるボーカルで聴かせて新たな魅力を訴求する。曲間のMCではウイスキー代わりにほうじ茶を飲んで笑いを誘ったが、もう1曲、40周年アルバムでカバーした西田佐知子の「くれないホテル」を歌唱すると、場内はすっかり大人のムードに包まれた。本人にとっては挑戦だったようだが、松本の声質を生かした選曲で、歌手としての進化を印象付けたと言えるだろう。


恩師の筒美が作曲した「くれないホテル」は松本が「いつかテレビで歌いたい」と語るほどお気に入りの1曲。筒美のことも、松本のことも熟知する船山のジャジーなアレンジによって、ライブの定番曲となりつつある。デビュー40周年(21年)を機に音楽活動を本格化させたことが新たな出会いを生み、それがまた本人の意欲に繋がる好循環が生まれているようだ。


新しい取り組みはさらに続き、MCを挟んで21歳のときに新境地を開拓した“恋愛三部作”のメドレーに。川村真澄(作詞)、林哲司(作曲)、船山基紀(編曲)の座組による「信じかたを教えて」「サヨナラは私のために」「思い出をきれいにしないで」の3曲を船山が新たにアレンジし、まるで一篇の映画を観るような構成となった。今回のライブではショーとしての流れを重視したという船山の狙いがここにも現れていたと言えよう。


ソフィスティケートされたバラードで真価を発揮した松本だが、終盤は一転、“アイドル・伊代ちゃん”の代名詞的楽曲と言える「TVの国からキラキラ」でスタート。当時の振付を再現したパフォーマンスで会場を沸かせ、「キラキラ」のフレーズを繰り返すサビでは今回のライブのために用意された「キラキラタオル」を舞台に向けてファンが振る盛り上がりを見せた。

「嬉しい~! この景色が見たかったの」――。そう叫んだ松本は続けて「Last Kissは頬にして」を歌唱。自身のインスタグラムで振付動画を公開していた「MARiAGE~幸せになって」では観客と一緒に踊り、バンドサウンドにアレンジされた「時に愛は」で本編を締めくくった。

興奮冷めやらぬ客席から拍手と熱狂的な「アンコール!」が連呼されるなか、バンドメンバーに続いてサプライズで現れたのは夫のヒロミ。妻の写真がプリントされたオフィシャルTシャツを着たヒロミは「皆さん、アンコールの声で相当お疲れでしょうから、オジサン我慢できずに出てきてしまいました」と言って笑いをとった。そのヒロミに呼ばれて再登場した松本は夫と同じTシャツ姿。結婚30周年を迎えた2人だが、ペアルックにするのは初めてだという。

ひとしきり松本との爆笑トークを展開したヒロミは観客席にいたキャプテン(北澤清子、山本恵子)を発見。アイドル時代にバックコーラス兼ダンサーとして活躍していた2人に登壇するよう呼びかけると、妻と熱いハグを交わして舞台をあとにした。

アンコール1曲目は大瀧詠一の作詞作曲で、アイドル時代のコンサートでも歌っていた「夢で逢えたら」をカバー。「デビューしたときは16歳だった私も来年は還暦です。これからもさらにパワーアップして、皆さんと一緒に人生の旅(Journey)の想い出をたくさん作ります!」とコメントしたあと、キャプテンとともにデビュー曲「センチメンタル・ジャーニー」を歌い踊り、フィナーレを飾った。

セットリスト

01. Private fileは開けたままで・・・(89年/10thアルバム『Private File』/作詞:国分広城、作曲:西脇辰弥)
02. ビリーヴ(84年/13thシングル/作詞:売野雅勇、作曲/筒美京平)

<シングルメドレー>
03. すてきなジェラシー(87年/22ndシングル/作詞:川村真澄、作曲:岸正之)
04. ラブ・ミー・テンダー(82年/2ndシングル/作詞:湯川れい子、作曲:筒美京平)
05. あなたに帰りたい(Dancin’ In The Dark)(85年/14thシングル/作詞:売野雅勇、作曲:筒美京平)

06. 有給休暇(89年/10thアルバム『Private File』/作詞・作曲:小西康陽)
07. バージニア・ラプソディ(82年/2ndアルバム『サムシングI・Y・O』/作詞:康珍化、作曲:亀井登志夫)
08. Too late Too Young(87年/9thアルバム『風のように』/作詞:川村真澄、作曲:林哲司)
09. ウイスキーが、お好きでしょ(91年/オリジナル歌手:石川さゆり/作詞:田口俊、作曲:杉真理)
10. くれないホテル(69年/オリジナル歌手:西田佐知子/作詞:橋本淳、作曲:筒美京平)

<恋愛三部作メドレー>
11. 信じかたを教えて(86年/19thシングル/作詞:川村真澄、作曲:林哲司)
12. サヨナラは私のために(86年/20thシングル/作詞:川村真澄、作曲:林哲司)
13. 思い出をきれいにしないで(87年/21stシングル/作詞:川村真澄、作曲:林哲司)

14. TVの国からキラキラ(82年/3rdシングル/作詞:糸井重里、作曲:筒美京平)
15. Last Kissは頬にして(86年/18thシングル/作詞:松本隆、作曲:関口誠人)
16. MARiAGE~幸せになって(91年/12thアルバム『MARiAGE~もう若くないから』/作詞:鮎川恵、作曲:熊谷幸子)
17. 時に愛は(83年/9thシングル/作詞・作曲:尾崎亜美)

<アンコール>
18. 夢で逢えたら(76年/オリジナル歌手:吉田美奈子/作詞・作曲:大滝詠一)
19. センチメンタル・ジャーニー(81年/1stシングル/作詞:湯川れい子、作曲:筒美京平)
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