【ライブレポート】Aile The Shota、ポップアーティストとしての第一章スタート「一緒に踊りましょう」
「俺自身も今日ここで、音楽に救われようと思ってます。日々の嫌なこととか、何でも音の上に落っことして、一緒に踊りましょう」
◆ライブ写真
Aile The Shotaは、昨年までの活動を「序章」と位置付けて「第一章」をスタートさせた今、「踊ること」と「歌うこと」がどれほど人間に喜びや生きる力をもたらすかを伝えようとしてくれている。
冒頭の言葉は、8月2日、Zepp Hanedaにて開催された全国ツアー<Aile The Shota Oneman Tour 2024 "odorimasenka">のファイナル公演にて語られたもの。その全貌を、オープニングから振り返る。
最新曲であり新章の幕開けを飾る「踊りませんか?(Prod. Chaki Zulu)」のSEが流れる中、Aile The Shotaが登場。ステージセンターに立ち、スポットライトを全身に浴びて、右腕を横にまっすぐ伸ばすと、大きな歓声が上がる。「IMA」が鳴り始めて「Are you ready? 東京!」とスタートの合図を告げると、一気にAile The Shotaの音の渦へと招かれていく。
1曲目から勢いよくオーディエンスの身体を突き動かし、サビ前の《波の上》では合唱が起きる。「IMA」はAile The Shotaにとって自分のアイデンティティを主張する曲として誕生したものであるが、この日は軽やかに、自身の宣言というよりも聴き手を誘うように歌っていたことが印象的だった。そして「Pandora」、ゲストのNovel Coreを迎えて「Villans」では、ビームライトが派手に動き回る中で重たいビートのダンスミュージックが鳴り響く。
「踊りにきたってことで合ってるよな?」ともう一枚心の扉を開かせるように誘い込んで、「DEEP」では、Aile The Shota自身が長い手足を自由自在に動かしながら踊る。続けて「DAWN」では、心地良い4つ打ちで全員を飛び跳ねさせる。そうやって、縦に飛ばせるし、横に揺らすし、一心不乱に全身を振らせる瞬間もあるような、ありとあらゆる方法で踊らせるのが今のAile The Shotaのライブだ。
「J-POPスターになりたい」と常々語るAile The Shotaだが、いくつもの「踊れるジャンル」を自由に取り入れて、それを「ポップス」へと昇華し、J-POPのメインストリームで鳴らそうとしている。しかもこの日は、森光奏太(dawgss)をベースに、Hiromuをキーボードに、HIRORONをDJに迎えたバンド+DJセットで生演奏ならではのアレンジも施されていて、より自由にさまざまなジャンルを行き来する音楽が鳴り続いた。
冒頭で踊らせたあとは、歌が際立つゾーンへ。「常懐」では、オーディエンスが身体を揺らすだけでなく、サビでAile The Shotaが「上手っ!」とリアクションするほどの歌声を響かせる。「ランデヴー」(dawgss feat. Aile The Shota)では森光もボーカルを取ったが、二人の声はとても相性がよく、重なり合うと甘い空気が流れる。そして「無色透明」はソファに腰掛けて、歌とHiromuのピアノだけで披露。テンポを落としたピアノ弾き語りバージョンはあまりに素晴らしく、裏声やビブラートを繊細に扱って表現できるAile The Shotaの歌の美しさに心が震えるほどで、演奏後は拍手がしばらく鳴り止まなかった。
「恥ずかしがらなくていい。好きな揺れ方してくれていいから。あなたの踊りは素敵です」とさらに言葉を重ねて始めた「Like This」も、バンドセットならではのアレンジで、各々が自由に身体を揺らすことを誘うアダルトなムードができあがっていた。そこからDJ、ベース、ピアノのセッションが繰り広げられて、ソロ回しのバトンを受け取るとAile The Shotaはダンスで魅せる。さまざまな音楽ジャンルをつなげる中で、「バンド」と「ダンス」の境界線すらも溶かすような演出だった。
その後は、ダンス/ヒップホップカルチャー出身であるAile The Shotaのルーツを見せるゾーン。ダンスクルー・THE SPC BOYS CLUBをステージに迎えて「new blood」を披露した。
そして、新曲も届けられた。バンドメンバーに迎えたdawgssとともに、この日のために楽曲を制作したという。「色々言うけど、本当に大事なのは愛だなと思います」「愛に気づけた瞬間を、これからも音の上で作っていきたいなと思う」と想いを語ったで、「愛のプラネット」と題した楽曲を初披露。弾むピアノのイントロから始まるこの曲は、全員が初めて聴いた状態であるにも関わらず《愛のプラネット》のフレーズの合唱が起こるほど美しくてメロウなメロディが印象的で、Aile The Shotaにとって新しい形のR&Bポップスの誕生を確信させた。
「愛のプラネット」で生まれた温かい空気を増幅させるように、Novel Coreが再度登場し「HAPPY TEARS」を歌唱。曲の途中でハグをして、最後は肩を組みながら歌って、終わったあともハグ。さらにステージを去る直前、Novel Coreは「こいつのためだったら、俺、何でもするぜ!」と言葉を放り込んだ。二人の固い友情で結ばれた関係性が溢れ出たステージに、会場全体が笑顔に包まれた。
そこから終盤に向けて、Aile The Shotaの「踊り」と「歌」を畳み掛ける。いろんな角度からオーディエンスの声と身体を解放させるAile The Shotaのライブパフォーマンスを見ていると、これまでの「序章」は彼自身がアーティストとしての存在を証明するためのタームであったことに対して、「第一章」は聴き手である「あなた」の存在を証明するポップミュージックを届けようとしていることを感じ取った。
日々の中で誰しもが、理性や理由に従って声や体の動きを抑え込んでいるが、それを少しでも解放し、心が踊る瞬間をひとつでも多く作っていこう、と呼びかけてくれているのが今のAile The Shotaの音楽だ。冒頭に書いた言葉は「常懐」を歌う前に語られたもので、「あなたの持っているヴァイブス、愛、不安な気持ち、何でもいいから僕に預けてください」と続けるAile The Shotaは、ポップアーティストとしてとても頼もしかった。そんな彼の現在地を詰め込んだ「踊りませんか?」を、ミラーボールと紙吹雪が煌びやかに彩る中で届けて、ツアーファイナルは幕を閉じた。
アンコールでは再びTHE SPC BOYS CLUBを迎えて、NAGI thespcstpprがコレオグラフを手がけた「Thrilling Moves」を披露。Aile The Shota含む11人が横並びで踊りながら歌う様は圧巻だった。パフォーマンスを終えて、Aile The Shotaが一人ずつ後ろからハグしながらマイクを向けて名前を紹介するシーンは、彼のダンサーへの愛とリスペクトから生まれたもの。最後は「J-POPSTAR」から「LOVE」をつなげて、「LOVE」では《生きていてよかったと今日もまた思いました》と歌詞を変えてこの日の想いを歌の中で叫んだ。ピースを掲げながら「またね!」と告げて締めくくったステージは、来年3月16日開催、国内最大級のホールである東京ガーデンシアターでのワンマンライブへと続く。
文◎矢島由佳子
写真◎SATOSHI HATA
セットリスト
02. Pandora
03. Villains feat. Novel Core
04. DEEP
05. DAWN
06. 常懐
07. ランデヴー feat. dawgss
08. 無色透明
09. Like This
10. hungover
11. newblood with THE SPC BOYS CLUB
12. NEBULA
13. 愛のプラネット feat. dawgss
14. HAPPY TEARS feat. Novel Core
15. Yumeiro
16. so so good
17. AURORA TOKIO
18. 踊りませんか?
EN1. Thrilling Moves - Live ver. - with THE SPC BOYS CLUB
EN2. J-POPSTAR
EN3. LOVE
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