【インタビュー】ミスイ、「進んできた道筋は間違いじゃない。まだまだ行けるぞという姿を示したい」

ポスト

9月28日で始動5周年を迎えるV系バンド・ミスイ。

彼らは結成当初から「最低でも10年はバンドを続けること」を目標に掲げて活動している。その過程の中、今年「結成5周年」という大きな節目を迎えることから、彼らは様々な活動を行なっている。

2023年秋に、5周年企画の先駆けとして全国10都市単独公演ツアー<死に損ないの子守唄>を実施。今年に入り、1月より<9ヶ月連続2MAN「九死に一生」>を開催。さらに、春の単独公演ツアー<一華開けて天下の弱>を。現在も、夏の単独公演ツアー<ASEDAKU>を行っている。すべては、9月27日(金)に渋谷WWWで行う<始動5周年記念単独公演「幸弱論」>へ向けての行動だ。彼らが今、どんな思いを胸に日々を過ごしているのかをここへ記したい。

   ◆   ◆   ◆

──ミスイといえば、『弱』をバンドのコンセプトに掲げて活動をしています。まずは、その理由から聞かせてください。

柳(Vo):“人の持つ弱い心”。その弱さを、ミスイはいろんな楽曲に投影しながら活動をしています。その弱さを具体的な形として表現しているのが、ヴィジュアル面の象徴として使っている首吊り用の荒縄。その衝撃に惹かれてバンドに興味を持ら、ミスイの描き出すいろんな心の弱さを刻んだ歌詞や楽曲に触れる人たちが増え、我々の描き出す心の弱さに共鳴した人たちが弱虫(ファンの呼称)になり、共に心を支えあいながら歩み続けています。

──首吊り用の荒縄は、今やミスイを示す象徴ですね。

柳 :ミスイの代名詞になっているなとは感じています。だからと言って、殊更それを強調しているわけではない。最新のヴィジュアルには荒縄は使ってないですし、あくまでもミスイの存在を示すインパクトとして用いたものでした。

LANA-ラナ-(Dr):今の世の中はコンプライアンスが厳しいせいか、バンドのアーティスト写真を使う際に荒縄へモザイク処理をされることもあり、謎に卑猥なバンドのように扱われることもあります(笑)。最新のアーティスト写真では荒縄を使ってないので問題はないですが、また首吊り用の荒縄を使ったらモザイクがかかってしまうのか、そこが気になります。

▲柳(Vo)

──ミスイ=モザイク系のバンドだ。

LANA-ラナ-:その言い方をされると、ますます卑猥に聞こえるじゃないですか(笑)。

──ミスイのもう一つの特徴が、柳さんの描き出す世界観を、他のメンバーさんがしっかりと支えていること。

LANA-ラナ-:バンド活動をしていく中で、誰もが表現者であるが故に「自分が」というエゴは出てくるものじゃないですか。そういう意識が大事なのもわかるんですけど、バンドを一番うまく動かすためには、バンドの顔となる人がストレスなく表現していける環境が何よりも大切。ミスイで言うなら、バンドのコンセプトを司る柳が一切のストレスなく表現活動をしていくことが大事。メンバー4人は、最初から柳の表現したい世界観を全力でサポートしようと集まっています。

──そうなんですね。

LANA-ラナ-:ミスイとして表現したいことや、歩んでいくべき道筋、その中で生まれるいろんな企画も、すべて柳の頭の中にあるもの。楽曲のメインコンポーザーはギターの天音ですけど、つねに柳の求める世界観に沿って楽曲を作り続けている。天音の強みは表現の幅広さを持っていること。柳から、「こういう方向性の曲を突き詰めたい」と提案を受けてもすぐに対応できる。それは、うちのメンバー全員に言えることでもあって。柳の発言に対して、うちら4人の中に「嫌です」の言葉はないです。

柳:メインコンポーザーの天音さんがすごく柔軟な表現者だから、とてもやりやすいし、求める世界観も描きやすいです。むしろ柔軟すぎて、何でも「OKです」と対応してくれるから、逆に心配になるくらい。このバンドの中で、たまに「あれ嫌だ、これ嫌だ」というのはTetsuyaくらいなので(笑)。

──天音さん自身、自分の個性も入れたうえで表現しているわけですよね。

天音(G):昔から柳さんのことを知っているから、「こういう曲を柳さんが歌ったらこうなる」姿をイメージしやすくて、求められる楽曲が作りやすいんですよ。そこに「弱」というコンセプトを強く色づける柳さんの歌詞が乗ることで、ミスイとしての色に染め上がる。もう一つ心がけているのが、結成当初から積み重ねてきた楽曲の流れをしっかり踏襲していくこと。柳さんの求める意識も、弱虫たちの期待も明瞭にわかるからこそ、ミスイらしい世界観を大切に創作をしています。

▲天音(G)

──Tetsuyaさんは、たまに「嫌だ」とも言うのですか?

Tetsuya(B):ミスイの場合、ある種オールドスクールなヴィジュアル系バンドの世界観を踏襲しているので、そこが良さにも繋がっています。でも自分は、そこを通ってこなかった。だからこそ、4人とは異なる視点でミスイに刺激を投影していけると思っていて。柳さんの求める世界観へ寄り添いながらも、そのうえで各自の色を反映してゆくことが、ミスイ独自の色を作ることに繋がっているなと自分は感じています。

湊人(G):バンドとして求める「弱」というテーマが一貫しているからこそ、自然に色が統一されていく。楽器陣の4人とも、柳の持つポテンシャルをさらに引き出すためにはどうすれば良いか、というところへ意識を向けながら演奏をしています。どう演奏したら柳の歌う言葉が胸に届くのか、どう自分のギターを活かすのか……。ミスイの場合、曲の幅を広げるよりも、一つ一つの世界観をいかに深く研ぎ澄ませるか。そういう意識で、常に曲制作と向き合っている感覚なんですよ。

──活動5年目に入って以降。とくに今年に入ってからは、かなり積極的にいろんな動きを進めていますよね。

柳:今年9月で5周年を迎えるので、今まで以上に気合を入れていろんなことを仕掛けようとの思いからさまざまな動きを作ってきたし、今も動かしています。

──それが今も続いている春と夏に行った2本の全国ツアーであり、<九死に一生>と題した9ヶ月連続2MANシリーズ。

柳:そうです。他にも、楽器隊バースデー企画<BlackHome>も4回開催。<不定期コンセプトライブ>もこれまでに3回、8月に4回目も実施します。イベントライブへの出演本数は減りましたけど、そのぶん長尺のライブが増えて、1本1本への重みや深さは増したんじゃないかと感じています。中でも「とんでもねーよな」と思えたのが、<不定期コンセプトライブ vol.3>。この日は、メンバーとファンたちがライブ中にひたすらスクワットを繰り返す「グルグル巻き」という楽曲のみを、アンコールを含めて全部で10回繰り返して演奏。これは褒め言葉ですけど、わざわざチケットを買ってライブハウスへ筋トレしに来るって、アホだよなぁと思いますよね(笑)。最初は、正直埋まるかなぁと思っていたけど……。

LANA-ラナ-:後ろまでしっかり人が埋まっていましたからね。でも、こういう企画を出来ることが今のミスイの強みなんですよ。<不定期コンセプトライブ>も、最初こそ「暴れ曲限定公演」「歌もの限定公演」とかだったけど、3回目にして「グルグル巻き1曲限定公演」、8月30日に仙台spaceZeroで行う<不定期コンセプトライブ vol.4>は「水ぶっかけ公演」ってなっていて、遊び心を持った企画色がより強くなっている。前日に夏ツアーのファイナル公演を仙台で行うとはいえ、「水ぶっかけ公演を観に遠征します」と言う人たちもけっこういて。わざわざお金を払ってずぶ濡れに来る人たちがそれなりにいます。

柳:みんなほんとアホだよね(笑)。「グルグル巻き公演」のときにも、「お前らアホやな」と言ったら、みんなゼーハーゼーハーしながらもニコニコしていましたからね、ほんと最高のファンたちですよ。

▲湊人(G)

──今年の動きについての思いも語っていただけますか。

Tetsuya:春ツアーを終えてすぐに、ほぼ同じ地域を回る夏ツアーを始めたこともあって、普段ならなかなか足を運べない地方の人たちに「じゃあ、次はいついつ会おう」と約束出来たことがすごく良かった。それを繰り返せたことで、着実に各地域で支持を得られたのは大きかったなと思います。

LANA-ラナ-:しかも、その地域だからこそ見れるミスイの姿を示せたことも大きかったね。今年はとくに、9月27日の渋谷WWW公演に向け、点と点を線として結ぶ行動を強く心がけてきた。その成果が実を結んで、ミスイを大きくさせる糧になり始めている。まさに今は、その経験値を貯めている段階です。

湊人:今の夏ツアーでは、春ツアーで呼びかけた声にどれだけの人たちが応えてくれたのか。その答え合わせをしながら各地を回っている感覚もあります。そうやって回り続けたうえで、それをどう5周年公演へ繋げていくか。今は、その熱い気持ちを持ってツアーを回っているところです。 <9ヶ月連続2MAN「九死に一生」>シリーズについても軽く触れておくと、これまでなかなか対バン出来なかった人たちとライブが出来ていることで、毎回刺激をもらっています。しかも<九死に一生>公演を通して、これまで触れてこなかった層にもアピール出来ている。このシリーズも残り僅かとはいえ、とても良い刺激になっています。

天音: 正直、ここまで歩んできた一歩一歩はけっして大きくはないです。だけど、それが小さな歩幅だろうと、着実に一歩一歩進んでいるのも事実。だからこそ、LANA-ラナ-も言ってたように、点と点が線としてしっかり繋がっている実感を得られているんだと思います。とくに嬉しいのが、ミスイの持つ音楽性やヴィジュアル面だけではなく、5人それぞれの人間味にも惹かれて弱虫になってくれる人たちが増えたこと。この先も、それぞれの魅力をしっかりと伝えながら、先へ先へと繋げていけたらなと思います。

──メンバーみなさん、けっして焦っているわけではないですよね。

天音:変に無理をしたり、見栄を張ったことをやるのは、ミスイらしくない。もちろん、「ここぞ」というときには頑張りますけど。僕らはつねにぶれない一本の芯となる姿を打ち出してきたし、それを持って支持を得ていくことが大事だと思ってる。結成をしたときから僕らは、「まずはミスイを10年間続けよう」という目標を掲げて活動を続けている。だから、ずっと全力ダッシュし続けるような展開ではなく、節目節目を大事にしつつ、10年続けるためのレールを自分たちのペースでしっかりと作って、それを大事に活動をしています。

柳:今年のいろんな動きを踏まえたうえで、ミスイは9月27日に渋谷WWWで<始動5周年記念単独公演「幸弱論」>を行うわけですけど。この会場を決めたのは、5周年だからこそ盛大にやろうという気持ちもありましたが、この会場に因縁を感じていたことが大きかった。というのも、まだコロナ禍の時期、ミスイは一度渋谷WWWでワンマン公演を行いました。そのときに思うような成果を出せない悔しさもあって、メンバーみんなリベンジしたい気持ちをずっと持っていた。そのタイミングが今回訪れたことから選んでいます。今はもう、ライブ環境における制約は何もない。その状態でもう一度渋谷WWW公演に挑戦することが、僕らにとってとても重要なことでした。

──<始動5周年記念単独公演「幸弱論」>は、ミスイとしての5年間の歩みを見せる場になるのでしょうか。それとも、今のリアルなミスイの姿を示す形を取るのでしょうか。

柳:具体的な内容を煮詰めるのはこれからなので、あくまでも個人的な思いにはなるけど。つねに最新の姿を届けるのって、結局は演者側のエゴだと思うんですよ。僕自身、長年応援しているバンドがいますけど、ファンって、現在進行形の姿以上に、過去の曲やアルバムの再現を掲げたライブにこそテンションが上がっていくものだと思うんです。自分もそうだからこそ、ミスイの周年公演においても最新の姿を押しつけるのではなく、たとえばですが、シングルの表題曲を全部並べて演奏するなど、弱虫たちの求める気持ちになるべく寄り添いたいなと思っています。

▲Tetsuya(B)

──それぞれ、現在実施中の夏ツアー<ASEDAKU>や<始動5周年記念単独公演「幸弱論」>へ向けての思いや見どころ、改めてミスイの魅力を語っていただけますか。

Tetsuya :夏ツアーで感じている面白さの一つが、いつもなら柳がセットリストを考案するところを、公演ごとにメンバーそれぞれが担当しているところ。さらにワンマン公演の場合は尺が長いので、メンバー全員がMCをするブロックもある。我々はバンドマンであり、ミュージシャンであり、アーティストなので、別にMCに重きを置いているわけではないけど、ライブ自体にシリアスな雰囲気が出ているからこそ、MCでの砕けた愉快なお兄ちゃんぶりもワンマン公演では楽しんでほしいなと思ってる。自分自身、MCがあるときは、何をしゃべろうか事前に考えたりもします。その話がウケたら嬉しくなるし、滑ったら悲しくもなる。MCがウケなかったときには、ライブで上手く演奏ができなかったのと同じくらい凹むこともある。そういうシリアスさと砕けた雰囲気、その両方を味わえるのがミスイのワンマン公演の醍醐味だと思います。

──印象に残っていることはありますか?

Tetsuya :自分の場合、ツアーのファイナル公演を行うたびにいろんな思いが沸きだすせいか、感動のあまり涙腺が緩み、気づいたら目頭が熱くなることが多いんですよ。8月29日に仙台ROCKATERIAで行う夏ツアーのファイナル公演も、9月27日に渋谷WWWで行う5周年公演も、もしかしたらそうなっているかも知れない。でもそれ以上に、観てくれる人たちへつねに感動を与え続けていたい。自分が感動を覚えるライブをやれば、集まってくれる弱虫たちにもその思いは伝わるはず。だからこそファイナルや周年公演に限らず、どのライブでもその感動をみんなに伝えていきたいなと思ってる。

LANA-ラナ-:メンバーみんなが同じ方向を向いて熱量をぶつけるライブほど、観た人たちも感動を覚えるからね。一例にはなりますが、解散が決まったバンドのライブほど、最後に向かって熱量が上がっていくし、感動する。それって、みんなが同じ方向を向いて思いをぶつけていくからだと思うんです。そういうライブを常日頃から出せていたら、絶対に毎回観た人たちの心を動かせるじゃないですか。先日も、そういうことを5人で話していたんですけど。そういうライブを今、ワンマンツアーの中で見せているし、周年公演でもそれを見せていけるんじゃないかと思ってる。もう一つ伝えたいのが、初めてミスイのライブを観る人でも、最初から絶対に楽しめること。ミスイのライブには、一緒になって楽しめるポイントがいっぱいあります。しかも、毎回その日にしか見れないライブをしています。ファイナル公演や周年公演は、そういう積み重ねの一つの集大成を見せる場。かなり中身の詰まった内容になると思うから、それを味わいに来てください。ミスイのワンマン公演にはフルマラソンを走りきったような、身体がヘトヘトになりながらも楽しい充実感がありますから。

▲LANA-ラナ-(Dr)

天音:ミスイってめちゃめちゃロックバンドしているなって、最近よく思うんですよ。今の時代の風潮って、あまり冒険したがらず、どちらかと言えば守りに入る傾向がある。もちろん時代の流れに上手く対応していくのも大事だと思いますけど、お客さんが楽しみにしているのはそこじゃなくて、もっと尖った部分だと強く感じていて。それをひとつ形にして示したのが、「グルグル巻き」だけをやり続ける公演だったりもする。むしろ、そういう尖ったことをやれるのがミスイの強み。絶対にライブじゃないと見れないし味わえない楽しさを届けているからこそ、その部分を楽しみにライブに来てくれたら嬉しいです。

湊人:ミスイの魅力は、柳が表現したい言葉をしっかり届けるバンドであるところ。それを、情熱を持って表現していくことにやり甲斐を感じています。個人的に好きなのが、柳の書くいろんな歌詞が、日々を生きてく中でつねに背中を押してくれること。「生きている」ことを実感出来るというか、日々の生活の中で感じるいろんな思いを、柳はつねに言葉にして表現している。気持ちを揺さぶる歌詞の数々に、自分は柳の魂の叫びを感じています。

柳:以前のミスイは、ワンマンライブが出来ることやワンマンツアーを行えることは、本当に特別なことでした。それが今では、ワンマンツアーに遊び心を取り入れられるまでに成長してきた。これも、一歩一歩しっかりと歩み続けてきたから辿りつけたこと。今では、遊び心を入れてさえもしっかり気持ちを揺さぶれる自信があるし、そこを見てほしいと思ってる。 夏ツアーのファイナル公演は、8月29日に仙台ROCKATERIAで行います。ミスイにとって仙台は、初めて遠征をした場所。しかもその場所が、仙台ROCKATERIAと名前が変わる前の仙台HooK。当時はまだ2019年末で、そこからコロナ禍を乗り越え、5周年を前にしたタイミングで思い出の地にワンマンで帰れる。そのことにもグッときています。そして9月27日に渋谷WWWで行う5周年公演。ここはミスイにとって因縁の地だけに、この日はビシッと気合を入れて、格好いいミスイを見せようと思ってる。具体的な中身はこれからとはいえ、おそらく過去一の曲数を演るし、5年間の活動で培ってきたことの答え合わせじゃないけど、うちらが進んできた道筋は間違いじゃなかったことを自分たちで証明して、みんなに見せたいし、ミスイはまだまだ行けるぞという姿を示したい。今はみんなが同じ方向を向いて動いているからこそ、その姿を楽しみにしていてほしいなと思ってる。

取材・文◎長澤智典

ライブ情報


<9ヶ月連続2MAN「九死に一生」>
【第八夜】8/6(火) 池袋 BlackHole(vs ギャロ)
【最終夜】9/12(木) 池袋 BlackHole(vs LAY ABOUT WORLD)

<夏の単独公演ツアー「ASEDAKU」>
8/7(水) 巣鴨 獅子王
8/21(水) 福岡 INSA
8/22(木) 広島 Yise
8/27(火) 新潟 CLUB RIVERST
8/29(木) 仙台 ROCKATERIA(TOUR FINAL)

<水ぶっかけワンマン「BISHONURE」>
8/30(金) 仙台 spaceZero

<始動5周年記念単独公演「幸弱論」>
9/27(金) 渋谷 WWW〈入場無料〉

※各公演、詳細はオフィシャルサイトにて
https://www.misui-official.com/



この記事をポスト

この記事の関連情報