【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、乃木坂46を迎えた<Mrs. TAIBAN LIVE>DAY1「今年も開催できて嬉しく思います」
2023年4月に開催されたMrs. GREEN APPLEの対バンイベント<Mrs. TAIBAN LIVE>が、2024年は5月21日と22日の2日間、神奈川・横浜アリーナで開催された。そのDAY1の対バンは、日本の数あるアイドルグループの中でも間違いなくトップクラスの人気と実績を誇る乃木坂46。大型フェス以外では、なかなか目にする機会のないコラボレーションに、横浜アリーナには約2万人の満員の観客が詰めかけた。
◆<Mrs. TAIBAN LIVE> 画像
最初に登場したのは乃木坂46。この日は17人のメンバーがステージに上り、「おひとりさま天国」でライブをスタートさせると、「ガールズルール」「Monopoly」「シンクロニシティ」といった人気曲を次々に披露。乃木坂46は、いわゆる“対バン”形式でのライブは「ほとんど経験がない」とMCで語っていたが、そんなシチュエーションであっても、まるで乃木坂46のワンマン公演かのような熱気を会場に作り出すあたりはさすがのひと言。アイドル界のトップを走り続ける理由が否応なしにわかるステージングであった。
そうした中、MCでは乃木坂46メンバーにMrs. GREEN APPLEファンがたくさんいることや、乃木坂46の5期生がレギュラーを務めるテレビ番組『超・乃木坂スター誕生!』で、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴(Vo, G)との共演が実現した際のエピソードを披露。そして、同番組内でも歌われたMrs. GREEN APPLEの楽曲「春愁」を乃木坂46がカバーした。すると続いて始まった曲は「きっかけ」。彼女たちの節目となるライブでも度々歌われてきた曲で、乃木坂46メンバーにとってもファンにとっても大切な一曲となっているが、この曲でセンターに立ったのは、大森元貴だった。
割れんばかりの大歓声の中、大森は会場の隅々にまで届く力強い歌声で、原曲のテイストを崩すことなく、しかしながら“ボーカリスト大森元貴”の刻印をきちんと打ち込みながら、ライブ初共演とは思えないほどに久保史緒里との美しいハモリを披露。ステージ上で乃木坂46と大森元貴がケミストリーを起こしただけでなく、両アーティストのファン同士の垣根さえも取り払い、会場全体を一心同体とするパフォーマンスであった。
その後、乃木坂46は「好きというのはロックだぜ!」「帰り道は遠回りしたくなる」「Sing Out!」でライブを締め括り、ステージ上では機材転換が始まった。
◆ ◆ ◆
その際、サウンドチェックで歪みが強めにかけられたギターサウンドが聴こえてきた。ステージに目をやると、若井滉斗(G)の立ち位置の後ろにはギターアンプがセットされている。最近のMrs. GREEN APPLEのライブでは、ステージにギターアンプが置かれることはほとんどない。その理由はおそらく、機材をシンプルにし、ステージセットのヴィジュアル面を生かしたいという側面と、プロファイリングアンプ等を利用することで、緻密に作り込んだギターサウンドをクリアに観客に届けたいという意図からだと想像するが、2023年に続いて、2024年の<Mrs. TAIBAN LIVE>でもあえてステージにギターアンプをセッティングした点に、今日のMrs. GREEN APPLEはロックバンド・モードなのだなという予感で、期待感は大いに高まっていく。それが正解だったと確信したのは、いきなり1曲目からだった。
心臓の鼓動、生命の力を思わせるラウドなビートが鳴り響き、一瞬の間を空けてモールス信号が鳴り始める。その狭間を切り裂くように、若井のハードなギターサウンドがかき鳴らされる。そこに藤澤のシンセフレーズがしなやかに絡み合うと、大森が満員の観客に“Boys and Girls”と、芯の強い声色で語りかけるように歌い始める。こうして「ANTENNA」で、Mrs. GREEN APPLEのステージがスタートした。
続いてドラムが激しいビートを叩き出し、藤澤がアグレッシヴなプレイでキーボードを重ねると、ギターを手にした大森が歌うは、インディーズ時代の楽曲「ナニヲナニヲ」。続けざまにドラムとベースのかけ合いから1stフルアルバム『TWELVE』(2016年)収録の「SimPle」が始まると、若井はお馴染みブラックボディのストラトで印象的な単音リフのフレーズを奏で、フロントへ出てきた藤澤が観客にかけ声を求める。大森もギターを弾きながら圧倒的な歌を届け、ギターロック・モード全開で、Mrs. GREEN APPLEは初っ端からトップスピードで駆け出していったのだった。
その勢いを緩めることなく、新曲「ライラック」、そして「青と夏」へ。この2曲でさらなる盛り上がりを見せた会場が、一体どこまでヒートアップしていくのかと思わせたところで、風の音のような、街の雑踏のような不穏なノイズが場内に流れ始める。その中から“ハァ、ハァ”という乱れた吐息が聴こえてくると、ステージは一転、ダークモードへと突入。ひとりセンターステージまで歩んでいく大森が、苦悩を激白するように感情をむき出しに「Loneliness」を歌うと、ステージ前方では炎が燃え上がり、ステージの左右に設置された大型LEDスクリーンに映し出される大森の姿にも荒々しいエフェクトがリアルタイムでかけられた。
突如として巻き起こったダークな熱量を穏やかに浄化させるかのように、ステージドリンクのグラスを手にした大森は「楽しんでますか?」と観客に柔らかく語りかけ、スローなビートから「Feeling」へ。まるで喜怒哀楽を織り交ぜた短編小説のように進んできたセットリストは、続く感動的な「Soranji」で最初のセクションが締め括られた。
「最高に楽しいです。今年も<Mrs. TAIBAN LIVE>を開催できて嬉しく思います」──大森元貴
この日、最初のMCでこう語り始めた大森は、先にステージに上がった乃木坂46に感謝の意を表しつつ、こう話しを続けた。
「『超・乃木坂スター誕生!』でご一緒した五百城茉央さんが「小中学生の頃から聴いていて」と言ったのを聞き逃さなかったよ。何年やってんだよ、オレら(笑)」──大森元貴
会場の笑いを誘うと、そこから前日に配信リリースされたばかりの新曲「Dear」の話題へ。
「新曲を出しました。昨日の夜にリリースされたのかな。それをやってもよろしいですか? (今日がライブ)初披露になります」──大森元貴
藤澤の手から生み出されるピアノのハーモニーとストリングスのピチカートサウンドが重なるイントロで曲が始まると、ギターを手にした大森と若井が以心伝心でギターを鳴らし、壮大なバンドサウンドを生み出していく。
アリーナのような大会場では、ステージにいる人間は小さな点くらいにしか見えなかったりする。サイズ感を考えれば当然だ。しかし、そうした物理法則を超えて、大森、若井、藤澤の存在をとてつもなく大きなものと感じられるのは、心の内から発する歌の力と、楽器で奏でる一音一音に込めた魂の強さゆえだろう。まさにこの日の「Dear」は、そうしたMrs. GREEN APPLEの想いと熱が詰まった演奏であり、その歌詞世界とバンドアレンジに注入されたエネルギーは、続く「Magic」のコール&レスポンスによって、歓びの感情へと一気に解き放たれ、昇華した。
興奮冷めやらぬ中、大森の口から、2024年10月、神奈川・Kアリーナ横浜でトータル8日間という前代未聞の定期公演<Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”>開催が告げられ、会場からは驚きと歓喜の声が上がった。Kアリーナ横浜のキャパシティは2万人、8日間で計16万人。7月開催のスタジアムツアー<ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~>は、既に15万人分のチケットがソールドアウトしており、Mrs. GREEN APPLEの止まるところを知らない勢いと、彼らに寄せられる期待の大きさを改めて強く感じさせられた瞬間だった。
そこから、最後の曲として演奏されたのは、聴き慣れないフレーズ。何と乃木坂46「ぐるぐるカーテン」のワンフレーズだった。「歌う曲、間違えちゃった(笑)」とおどけてみせる大森。こうしたニクい演出も、多くの人々が彼らに惹きつけられる大きな魅力だ。
そして仕切り直しとばかりに、改めて「最後の曲です」と紹介し、歌われたのは「ケセラセラ」。約一年前のリリース以降、今や彼らのテーマソングと言ってもいいほどに、現在のMrs. GREEN APPLEのスタンスが表現されたこの曲で、<Mrs. TAIBAN LIVE 2024>DAY1は華々しくフィナーレを迎えた。
こうして、先にパフォーマンスを行った乃木坂46、そして本イベントのホストであるMrs. GREEN APPLEのステージを通して強く感じたことは、Mrs. GREEN APPLEのエンターティナーとしての揺るぎのない姿勢と意志であった。
そもそも<Mrs. TAIBAN LIVE 2024>と銘打ったイベントで、“対バン”と言いつつも今日の相手はバンドではなく、アイドルだ。この段階で、Mrs. GREEN APPLEは自分たちの活動にジャンルやカテゴリーといった線引きを一切せず、エンターテインメントという広い視野で物事を見つめる姿勢が自ずと伝わってくる。しかも、自分たちがリーダーシップをとってエンターテインメントの世界を拡張させていこうという意志は明白だ。
そのうえで今回、単なるお祭り的に“バンドとアイドルが共演してみました”といったものではなく、Mrs. GREEN APPLEファンにアイドルのすごさを紹介し、アイドルファンに自身の歌をしっかりと届けるといったレベルの高いコラボレーションを成功させられた理由は、意志だけでなく、実力を兼ね備えたMrs. GREEN APPLEだからこそ。彼らだから飛び越えられた、高いハードルだった。
そのステージで、多彩な表現力を持つMrs. GREEN APPLEが、あえてロックバンド・スタイルという引き出しを開け、乃木坂46との共演に挑んだという点も非常に興味深い。彼らの音楽性、演奏力、パフォーマンス、そして何よりも楽曲そのものが放つパワーは、横浜アリーナに集まった乃木坂46ファン、ミセスファンの全員に“今日はいいライブだった”と言わしめるに十分すぎるほどの説得力を持ち合わせていた。
取材・文◎布施雄一郎
撮影◎田中聖太郎写真事務所 / 高田梓、樋口隆宏、金谷龍之介
■<Mrs. GREEN APPLE「Mrs. TAIBAN LIVE 2024」>2024年5月21日@神奈川・横浜アリーナ SETLIST
01. おひとりさま天国
02. ガールズルール
03. 裸足でSummer
04. Monopoly
05. シンクロニシティ
06. 制服のマネキン
07. ごめんねFingers crossed
08. 春愁 ※Mrs. GREEN APPLEカバー
09. きっかけ w/ 大森元貴
10. 好きというのはロックだぜ!
11. 帰り道は遠回りしたくなる
12. Sing Out!
【Mrs. GREEN APPLE】
01. ANTENNA
02. ナニヲナニヲ
03. SimPle
04. ライラック
05. 青と夏
06. Loneliness
07. Feeling
08. Soranji
09. Dear
10. Magic
11. ケセラセラ
■定期公演<Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”>
10月05日(土) 神奈川・Kアリーナ横浜
open16:30 / start18:00
10月06日(日) 神奈川・Kアリーナ横浜
open16:30 / start18:00
10月09日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月10日(木) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月15日(火) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月16日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月30日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月31日(木) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
・Ringo Jamシート:20,000円(税込) ※特典付き/詳細は後日発表
・SS指定:15,000円(税込) ※特典付き/詳細は後日発表
・S指定:12,800円(税込)
・着席指定:12,800円(税込)
※着席指定は 小さなお子さまや、コンサートを座ってご覧になりたい方の為のお席となります。公演中は立ち上がってのご観覧はできません。
応募方法:https://mrsgreenapple.com/news/detail/20263
■スタジアムツアー<ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~>
7月06日(土) ノエビアスタジアム神戸
7月07日(日) ノエビアスタジアム神戸
open16:30 / start18:30
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
7月20日(土) 横浜スタジアム
7月21日(日) 横浜スタジアム
open16:30 / start18:30
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
指定席:12,800円(税込)
※雨天決行・荒天中止
※4歳以上のお子様よりチケット必要/3歳以下のお子様はご入場できません(年齢はご来場の公演当日時点)
※営利目的の転売禁止
■デジタルシングル「Dear」
配信リンク:https://lnk.to/mga_dear
※iTunes、レコチョク、Apple Music、LINE MUSIC、Spotifyなどの音楽配信サイトにて配信中
※映画『ディア・ファミリー』主題歌
▼映画『ディア・ファミリー』2024年6月14日(金)公開
原作:清武英利「アトムの心臓『ディア・ファミリー』23年間の記録」(文春文庫)
監督:月川翔
脚本:林民夫
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「Dear」
音楽:兼松衆
出演:大泉洋 菅野美穂 福本莉子 新井美羽 上杉柊平 徳永えり ・ 満島真之介 戸田菜穂
川栄李奈 / 有村架純 ・ 松村北斗 光石研
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配給:東宝
撮影期間:2022年12月4日~2023年2月4日
(c)2024「ディア・ファミリー」製作委員会
公式サイト:dear-family.toho.co.jp
公式X:@dear_family_
公式Instagram:@dear_family_movie
公式TikTok:@dear_family_
▼ストーリー
“ただ娘の命を救いたい”、その一心だった。
生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は【余命10年】を突き付けられてしまう。「20歳になるまで生きられないだと…」──日本中どこの医療機関に行っても変わることのない現実。そんな絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が人工心臓を作ってやる」と立ち上がる。
医療の知識も経験も何もない宣政の破天荒で切実な思いつき。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。坪井家は佳美の未来を変えるために立ち上がる。絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる。
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