【コラム】令和、再びCRAZEに酔いしれる
1994年から2006年まで活動した、今では伝説のロックバンド・CRAZE。2月22日に、キングレコード時代に発表したCRAZEの全作品が、ダウンロードとストリーミングで解禁されることになった。
今回ダウンロードとストリーミングが解禁されるのは、1995年の1stアルバム『BE CRAZY』、1996年の2ndアルバム『THAT'S LIFE』、1997年のミニアルバム『BEAT SO LONELY, ALL NIGHT LONG』、1997年の2枚組ベスト『RESPECTABLE DAYS』、1996年のツアーの模様を収めたライブ盤『live [liv]』という初期の5作品である。
どの作品も名曲揃いなのは言うまでもない。その幾つかを紹介したいが、まずは改めてCRAZEのストーリーも振り返っておきたい。
CRAZEとは、元JUSTY-NASTYの藤崎賢一(Vo)、元BODY、現在もD'ERLANGERのCIPHERこと瀧川一郎(G)、元ZI:KILLの飯田成一(B)、元ZI:KILL 、BODY、現在もD'ERLANGERのTetsuこと菊地哲というラインナップで、1995年に結成された。それぞれがキャリアも実績もあるミュージシャンがひとつになった、いわばスーパーバンドでもあった。
しかしCRAZEの4人は、その上で胡坐をかくような真似はしなかった。ライブは常にエネルギー全開であり、オーディエンスのノリも加熱する一方。当時はクラウドサーフやモッシュなど一般的ではなかったが、CRAZEのライブでは誰もかれもがステージ前へ押し寄せるという激しさ。メンバーも演奏だけに集中することなく、煽りたてるプレイとライブパフォームを決めまくる。激情と衝動と衝撃が同時に襲い掛かってくるようなライブをCRAZEは展開した。
D'ERLANGERやZI:KILLから流れてきたファンも多かったが、それとは別に、血の気の多い野郎たちも増してゆくばかりだった。また、瀧川一郎も菊地 哲もRE雨宮でカスタムされたド派手なチューニングマシン、飯田成一もリフトアップしたド迫力のカスタム四駆が愛車で、それを拝むためにライブの入り待ちや出待ちする男たちも。CRAZEのステッカーをメンバーと同じように愛車に貼るファンも続出。同性にとって、CRAZEは俺たちのヒーローや兄貴的な存在となっていた。
曲やサウンドに目を向けると、ビートロックの要素が強いものの、単純にそうとは呼べないほど各サウンドは鋭利であり、それぞれがプレイで主張しまくる。そして藤崎の唱法を活かしたポップな側面もありながら、泣きも哀愁も知るメロディも。メンバー4人とも作詞や作曲を手掛け、それぞれが辿ってきた道のりや経験も楽曲にフィードバックさせながら、理想のバンドが形になった喜びを炸裂させたのがCRAZEだろう。
1997年に藤崎賢一が脱退し、後任で緒方豊和が加入。さらに緒方の脱退後の1999年には鈴木慎一郎が加入。そして鈴木が脱退後、後任がなかなか見つからなかったため、CRAZEは解散も考えた。そこに「俺がまだ歌ってない」と元ZI:KILLの板谷 祐が現れた。有名な話だが、CRAZEを結成するとき、メンバーが最初に声を掛けたのが板谷でもあった。そのときはタイミングや当時の板谷の心境で加入には至らなかった。その板谷が2000年に正式加入し、これまで以上にラウド感や人間味溢れるサウンドや曲をCRAZEは鳴らした。しかし2005年、板谷が脱退。2006年にCRAZEは解散してしまった。
今回、ダウンロードとストリーミングが解禁されるCRAZEのキング・レコード時代とは、藤崎賢一が在籍していた時期にあたる。
CRAZEのデビューシングルであり、『BE CRAZY』にも収録されている1曲が「NAKED BLUE」。ポップでありながらハジけるエネルギーがあり、バンドが産声をあげた瞬間のスパークする気持ちと、新たなバンドへの意気込みが歌詞にも反映されている。過激に歪ませたドンシャリサウンド気味のギターサウンドが特徴的で、当時、真似しようとする若手ギタリストも多かった。タイトな刻み方とピッキングハーモニクスもやや絡めた弾き方も印象に残る。
またデビューアルバム『BE CRAZY』は、バランスの取れた作品でもある。強靭なベースラインで引っ張っていく「RAIN NOISE」。当時のライブでは、曲の前に飯田成一のベースソロ“Bomber Bass”がフィーチャーされることも多かった。そして怒りの感情をムキ出しにしたのが「[D]ear[C]ool DEAD」。そういった激しいナンバーもある一方で、情景や匂いまで描き出すバラードの「Socialの中で…」や、良質のメロディで包み込んでくれる「TO THE NIGHT」も。新たなバンドでやりたかったことをメンバーそれぞれが表現し、CRAZEの4人だけのバンドマジックの末に、バリエーションの広さと深み、そしてバランス感が生まれている。
続くセカンドの『THAT'S LIFE』は、精力的なライブやツアーを重ねる中でCRAZEとして確かな自信と勢いを持った時期の作品だ。ライブの始まりを思わせる激しいグルーヴを貫く「Merry-go-round」からアルバムは幕を開け、間髪なく疾走感溢れる「NOBODY」へとなだれ込む。アルバム全編にあるドライブ感と生々しさもライブの賜物だろう。「BABY PUNKS」ではそれが十二分に味わえるし、「THAT'S LIFE」でも菊地 哲の放つ太いグルーヴの中でメンバーが自由奔放に決める。哀愁がドラマティックな形になっているのは「傷」だ。実は原曲は、D'ERLANGER解散直後、発表する予定もないまま瀧川一郎が作ったという逸話もある。
ミニアルバム『BEAT SO LONELY, ALL NIGHT LONG』は、スタジオレコーディングの表題曲と5曲のライブで構成された作品。この作品を発表後、藤崎賢一は脱退というか、突如、誰とも連絡の取れない疾走をしてしまう。恐らくギリギリの精神状態の中でレコーディングに臨んでいたのだろう。疾走感もある「BEAT SO LONELY,ALL NIGHT LONG」だが、メロディには寂しさが、歌にはもがきも擦り切れたマインドも感じられる。ボーカルが緒方豊和にチェンジして作られたアルバム『ZERO』にも収録された曲だが、肌ざわりも質感も大きく異なる。
ライブ盤『live [liv]』は、<THAT'S LIFE" FOUR fuckers ROYAL V.I.P TOUR '96>からツアー・ファイナルとなった12月11・12日の中野サンプラザから18曲、<BE CRAZY '95>から日比谷野外音楽堂のライブ4曲で構成したもの。荒々しくもドラマティック、そして生き様を見せつけるようにプレイする姿が音からも伝わる。藤崎賢一が在籍していた時期の絶頂期を味わえるだろう。
そして、CRAZEのキング時代のベスト盤が『RESPECTABLE DAYS』。2枚のスタジオアルバムやアルバム未収録テイクなども収められている。BODY時代からの「I LOVE YOU」は、『THAT'S LIFE』ではシークレットトラックとして収められていたが、このベストでは正式トラックとして収録。初期CRAZEの入門編として最適だろう。だが、バンドがライブを重ねて強靭に変化していった様を味わえるのが、2枚のスタジオアルバムであることを明記しておきたい。
また、これ以降の作品については、すでに前から配信も行なわれている。今回、解禁になった初期作品から再びCRAZEの魅力に酔いしれてほしい。
文◎長谷川幸信
1st ALBUM『BE CRAZY』
1995/09/21 Release
1. NAKED BLUE(アルバムバージョン)
2. the Unclouded day
3. Social の中で・・・
4. You are everything and everything is you
5.君に逢いたい・・・
6. BAD BABY
7. RAIN NOISE 8.〔D〕ear 〔C〕ool DEAD 9. Remember
10. TO THE NIGHT
2nd ALBUM『THAT’S LIFE (+2)』
配信URL:https://lnk.to/craze_thats_life
1996/11/17 Release
1. Merry-go-round
2. NOBODY
3. RISKY(Album Version)
4. with you
5. i wish
6. BABY PUNKS
7. THAT’S LIFE
8. 少年のままで
9.傷
10. I LOVE YOU(Secret Version)
11. to me,to You(Album Version)
12. RISKY (Single Version)
13. to me, to you (Single Version)
※シングルオンリーのトラックを M12,13 に収録
MINI ALBUM『BEAT SO LONELY, ALL NIGHT LONG』
1997/06/21 Release
1. BEAT SO LONELY, ALL NIGHT LONG
2. with You(LIVE VERSION)
3. i wish(LIVE VERSION)
4. the unclouded day(LIVE VERSION)
5.[D]ear [C]ool DEAD(LIVE VERSION)
6. to me, to you(LIVE VERSION)
BEST ALBUM『ESPECTABLE DAYS』
1997/12/22 Release
1. NAKED BLUE(Single Version)
2. the Unclouded day
3. NOBODY
4. RISKY(Album Version)
5. RAIN NOISE
6.[D]ear [C]ool DEAD
7. BEAT SO LONELY, ALL NIGHT LONG
8. I LOVE YOU (Secret Version)
9. TO THE NIGHT(Single Version)
10. BABY PUNKS
11. with you
12. You are everything and everything is you
13. i wish
14. Remember
15. Socialの中で…
16. 少年のままで
17. 傷
18. I LOVE YOU(Acoustic Version)
19.君に逢いたい…
20. to me,to You(Album Version)
LIVE ALBUM『live』
1998/04/03 Release
1.NOBODY
2.RISKY
3.BAD BABY
4.You are everything and everything is you
5.with you (LIVE VERSION)
6.i wish (LIVE VERSION)
7.少年のままで
8.傷
9.RAIN NOISE
10. the Unclouded day (LIVE VERSION)
11. I LOVE YOU
12. TO THE NIGHT
13. THAT’S LIFE
14. 君に逢いたい…
15. to me,to You(LIVE VERSION)
16. NAKED BLUE(Single Version)
17. BABY PUNKS
18. [D]ear [C]ool DEAD (LIVE VERSION)
19. Socialの中で…
20. BAD BABY
21. RAIN NOISE
22. [D]ear [C]ool DEAD