東山奈央、歌手活動7周年記念パーティーライブはギュッと濃密&華やかに

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春の足音が近くで聞こえるような、爽やかな陽気に恵まれた2024年2月12日(月・祝)。声優・歌手の東山奈央による、歌手活動・7周年記念パーティーライブ<7th Anniversary Party “Live☆Pallet”>が、恵比寿 ザ・ガーデンホールで開催された。チケットは早々にソールドアウト。2017年2月1日に歌手デビューを果たした東山による、「みんなと一緒に作り上げるライブ」をコンセプトに掲げた記念すべきステージだ。

昼におこなわれた1部。開演前の会場は、パーティーがはじまる前のような、華やいだざわめきに満ちていた。ふっと照明が落ち、幻想的な空気のなか、東山のライブバンド・レインボードッグスのメンバーたちにつづいて、東山本人がステージに姿を現す。ロックテイストと上品さをあわせもつデニム生地の上下に、花が散りばめられたレースのスカートをまとった、まさに「パーティーライブ」らしい衣装だ。

「ひとりきりじゃ 辿り着けない景色」というフレーズからはじまった「君と僕のシンフォニー」。オールスタンディングのフロアも、最初から爆発するような熱気と歓声、手拍子で迎える。東山のソロライブでみんなが声出しできる機会は本当に久しぶりのこと。ステージとフロアの境界を乗り越えるように、ようやく響き渡った声の数々を、東山は「7周年ありがとうー!」という感謝の叫びで受けとめた。


東山が愛するペンギンのモチーフ全開の「ウェルカム・トゥ・レインボーワンダーランド!」では、緩急自在の「ペンペン!」の大合唱。「次はかわいく!」というお願いに対して精一杯「ペンペンッ……!」と返したフロアに、「ふふ、かわいい!」と笑顔を見せる東山(かわいい)。「やっとお披露目できました!」と語った「プロローグ」(2021年リリースのコンセプトミニアルバム『off』収録)も、念願の初パフォーマンスとなった。

「『このCD初めて買ったんだよなあ』『このときのリリイベ楽しかったんだよなあ』と、皆さんの歩みと私の歩みを重ねあわせて聴いてくれたら嬉しいです!」ということばの後に演奏されたのは、これまで7枚リリースされたアニメタイアップシングル曲を詰めこんだ“7周年メドレー”だ。

「True Destiny」「イマココ」「灯火のまにまに」「歩いていこう!」「冷めない魔法」……。一曲一曲に思い出がつまっているからこそ、その記憶が連鎖するメドレーは感情を揺さぶる。会場全体はもちろん、女性専用エリアへ手を振る様子も、東山らしいホスピタリティにあふれていた。「あの日のことば」の、「めくるめくるめくるめくるめく日々」というメロディーとともに左右に揺れるペンライトが、一緒に過ごしてきた月日の輪郭を浮かびあがらせる。メドレーのラストを飾ったのは、2023年7月にリリースされたシングル曲「door」。リリースイベントを除けば、やはりソロライブでは初披露。高音域へと伸びゆく東山の歌声を堪能できる一曲であり、自身のライブにおいても新たな“扉”が開いた時間だったといえるかもしれない。


そしてステージ上に設置されたのは、一台のキーボード。普段のライブでのダンスにかえて、今回は弾き語りに挑むという。演奏するのは、「7周年に欠かすことができない曲」という「Rainbow」。かつて、初めての作詞作曲にチャレンジした楽曲だ。当時はトンネルのなかにいるような気がしていたという東山。いまトンネルを抜けたとはいいきれなくても、光が見えたり、ひとりじゃないかもと感じられたりする。そんな「7周年のいろんな心境をこめながら、皆さんにお披露目することができたらいいと思います」と話し、「Rainbow」はたっぷりの思いをこめて演奏された。冒頭の歌詞のように、たしかに「ここにいる」東山が奏でる、真摯な音色。途中で若干のミスタッチがあり、演奏後には東山も苦笑いしながら「ああああ……!」と崩れ落ちはしたのだが、「どんなに間違えても歌が外れたとしても、100%東山から奏でられている音」を届けると覚悟を決めていたのだという。もちろんファンは、東山が普段からパーフェクトなパフォーマンスを目指し、かたちにしてきたことを知っている。そのすべてが虹のように、かけがえのない軌跡を描く。

ファンのリクエスト曲コーナーで観客を沸かせたのは、投票で3位になったという「ガラクタフルワールド」。そのエモーショナルさで支持を集める一曲だ。カバーリクエストのコーナーでは、東山が桐崎千棘役を務めた2014年放送のテレビアニメ「ニセコイ」第1期最終話のエンディングテーマ「想像ダイアリー」(原曲は桐崎千棘・小野寺小咲・鶫誠士郎・橘万里花名義)と、熱いリクエストが多数寄せられたというYOASOBI「アイドル」が歌われた。バラエティ豊かな楽曲がパーティーライブを彩る。


「さあ、ここからもたたみかけていきたいと思います! 東山の“ハッピーセット”、いきますよー!」という掛け声とともに、怒涛の終盤へ。咲き誇る未来を予感させるロックチューン「FLOWER」に、軽快に刻むギターやうねるベース、駆け出すドラムとキーボードが体を揺らす「ワゴン」。「ANIMAX MUSIX 2023」などでも歌われ、ソロのライブではようやくの初声出しとなった「グー」は、真っ赤なペンライトに染まるフロア、速いテンポでのコール&レスポンスと、まさにお祭り騒ぎとなった。

続くのは新曲「(前略)全人類へのファンファーレ!」。歌手活動7周年・前夜祭企画 3カ月連続配信リリースの第3弾として2023年12月にリリースされたシングルだ。本来は異様に長いタイトルをもつがゆえに、タイトルコールはもはや愉快な寸劇に。連続配信リリースにあわせて開設された東山のTikTokアカウントでは、事前にコール&レスポンスの練習動画が投稿されていたが、ファンも予習はバッチリだったようだ。見事に「(おめで)たいをっ!」「(祝い)たいよっ!」といったやりとりが舞台と客席のあいだでかわされていた。

代表曲のひとつ「君の笑顔に恋してる」は、一緒に楽しむ定番の振付もあわせて、みんなでみんなを包み込む、そんな安心感を醸しだすようになっている。そして「歌手・東山奈央として最初にレコーディングした楽曲」だという「Chain the world」の、7年間の成長を物語る、壮大なロックサウンドを全身で満喫するように歌う東山の姿をもって、ライブ本編は終了した。

愛称である「なおぼう! なおぼう!」のアンコールに応え、ライブTシャツを着て再登場した東山が歌いだしたのは、リクエストで1位となった「群青インフィニティ」。「うぉーうぉー!」と煽るその身振り、ビートに合わせて跳ぶジャンプといった動きは、2024年に入ってから通っているジムの成果か、以前にも増した力強さを感じさせる。

「ここでお知らせがあります!」と東山が告げたのは、2024年5月に大阪・横浜でおこなわれる、自身初のアコースティック・ライブ<NAO TOYAMA Billboard Live 2024 “p.rhythm”>のお知らせ。歌手としてのネクストステージを予感させる発表に、喜びの声があがった。

そんなフロアに向け、「パーティーのラストナンバーになります! みんなで真夜中の怪獣になっちゃおー!」と演奏されたのは、先述の3カ月連続配信リリースの第2弾として2023年11月にリリースされた「真夜中の怪獣」。かぎ爪を“がおがお”するようなキュートな振付を、みんなでエンジョイした。レインボードッグスと並んで、最後に客席へ挨拶。バンドメンバーのTシャツの背中に描かれた「祝7周年」の文字とともに、パーティーライブは大団円を迎えた。

夜の2部では、セットリストの一部に変化が。メドレーパートでは「イマココ」にかえて、同じく2ndシングルの収録曲「月がきれい」を、ステージ背景におぼろげに差す月のかたちの照明のもと、歌いあげた。「あの日のことば」も、ダブルタイアップシングルに併録されていた「Growing」へと変更。その場でキュートに足踏みする東山の姿が、すこしずつ前に進んでいくような曲のテーマとシンクロしていた。

リクエストパートでは、2018年の「東山奈央 1st LIVE“Rainbow”at 日本武道館」以来となる、「星ノ標」がセットリスト入り。投票で2位にランクインし、夜の部にこそ似合うと思ったという貴重な一曲は、つま弾くギターのサウンドが星の瞬きのようにしみいるラブソングに仕上げられていた。東山自身、自身の成長を最も感じられる、そんな楽曲のひとつだという。

カバーリクエストパートでは、「今日は2月12日じゃないですか! この日に歌えるのはこの曲しかない」と、中川かのん starring 東山奈央「バレバレ・バレンタイン」(2012年)を歌唱。テレビアニメ「神のみぞ知るセカイ」から生まれたアイドルにして、後に歌手活動をはじめる東山のキャリアにも影響を与えた中川かのん。続いてストレートなボーカルを響かせたAimer「残響散歌」(2022年)が、東山が須磨役を演じたテレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編オープニングテーマだったことを思えば、東山のキャリアに縦の糸を通すカバー2曲だったともいえる。

2024 年6月の、オフィシャルクラブ「虹のわっか」会員限定『鍾乳洞ライブバスツアー』の開催も発表。これもまた、初となる試みだ。ニュースは尽きない。


ちなみに2部の「Rainbow」キーボード弾き語りで東山は、見事な演奏を届けていた。自ら何度も見つめ直す“原点”だと語る、そのはかなくも強さを感じさせる世界観で、観客の涙を誘ったのだった。

こうしてひとつずつ積み重ねていく東山の姿を、今回も、これからも、ファンたちは見つめている。2部終了時のレインボードッグスの背中には、「めざせ100th」と書かれており、あたたかい笑いが広がっていった。まずは、3カ月後。パーティーライブの余韻は、アコースティックな調べへと変わり、ゆるやかにつながっていくことだろう。

Text by 宮田文久
Photo by 高田 梓

ライブ・イベント情報

<NAO TOYAMA Billboard Live 2024“p.rhythm”>
出演:Vocal:東山奈央
Piano:伊賀拓郎
Guitar:高木大丈夫
Bass:一本茂樹
Cello:伊藤ハルトシ
Percussion:はたけやま裕
公演日程:2024年5月12日(日)・大阪
2024年5月18日(土)/19日(日)・神奈川
各日2部制
会場:Billboard Live OSAKA(大阪)
Billboard Live YOKOHAMA(神奈川)
開場・開演時間:2024年5月12日(日)
1stステージ 開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ 開場18:30 開演19:30
サービスエリア¥9,000- カジュアルエリア¥8,500-(1ドリンク付)
2024年5月18日(土)/19日(日)
1stステージ 開場15:30 開演16:30 / 2ndステージ 開場18:30 開演19:30
サービスエリア¥9,000- カジュアルエリア¥8,500-(1ドリンク付)
【お問い合わせ】
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