【インタビュー】西田“DRAGON”竜一、<40周年記念公演・番外編>を控えたスーパードラマーが明かす胸中「形としてはアルティメット」
長きにわたりパワフルかつタイトな演奏で音楽ファンを魅了し続けてきたドラマー、西田“DRAGON”竜一。2023年9月30日にはそのデビュー40周年を記念しての<DRAGON 40th ANNIVERSARY ~NOW and FUTURE>と銘打たれたライヴを行ない、彼が現在籍を置くRa:IN、PUNISH、THE西北寺の3組が総登場し、すべてのステージで彼自身がドラムを叩き続けるという離れ業をみせ、会場となった東京・渋谷CYCLONEに詰めかけた観衆を圧倒した。
◆西田“DRAGON”竜一 画像 / 動画
その彼がこの1月28日、今度は東京・渋谷GARRETにて次なるイベント・ライヴを開催する。題して<DRAGON 40th ANNIVERSARY EXTRA ~NOW and FUTURE Vol.2>。つまりは2023年の公演に続く40周年企画第2弾ということになるわけだが、着目したいのは今回の公演告知に“番外編”という言葉が添えられている点だ。実際、今回は、あくまで西田自身が主導する形で進められた前回とは異なり、同公演の際に司会進行役を務めていたドラマー、魔太朗との共同開催という形式がとられており、複数のバンドのライヴが続くのではなく、2人を中心としながらの、多様なミュージシャンによるセッションを軸とするイベントになるようだ。今回は同公演の開催に先がけ、西田自身に話を聞いた。
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■1月28日のライヴは
■スタート地点になるはず
──まずは昨年9月の公演を振り返りたいと思います。西田さんにとっては、まるでトライアスロンのようなライヴでしたよね?
西田:まさしく(笑)。企画段階から“1日じゅう叩きまくってやろう”という気持ちが固まっていたんです。今、自分が携わっている3バンドで全部叩こうじゃないか、と。THE 西北寺に関しては30分だけでしたけど、PUNISHとRa:INでは90分のフル・ステージでやろうと最初から決めていました。
──その3ステージもそれぞれ素晴らしかったですが、VIPチケット購入者を対象に実施された公開サウンドチェックもかなり貴重なものだったと思います。なにしろライヴハウスのPA担当者とやり取りしながら音が整えられていく過程まで見学出来たわけですから。
西田:YouTubeとかでああいった場面の動画をあげている方は結構いると思うんですけど、実際、生で見て音を直接聴く機会というのはなかなかないですからね。まさに“そのまんま”な状態を見てもらうことが出来たのは、自分的にも良かったなと思ってます。
──そこに価値があるはずだと思えたのは、西田さん自身もかつて憧れた人たちのそうした場面を見てみたかっただろうと察します。
西田:そうですね。実際、好きなドラマーのクリニックに足を運んだこともありましたし、自分でもそういうことをやってみたいという願望はありました。僕の場合、これまで全然そういうことをやらず、バンドの一員としての見せ方しかしてこなかったし、自分自身についてアピールするということについて、あまり積極的に取り組んでこなかったところがあるんです。ただ、ここ数年の経過の中で“そういうこともやっていくべき時代になったんだな”ということをすごく感じさせられて。今回の場合、40周年というのはそういうことを始めていくうえでの取っ掛かりにもなるだろうと思いましたし、ここから未来に向けてどんどんやっていきたいな、という意思表示でもあったわけです。
▲<DRAGON 40th ANNIVERSARY ~NOW and FUTURE>2023年9月30日@東京・SHIBUYA CYCLONE
──個人としてのアピールをもっとしていくべき時代。そこについてもう少し詳しく聞かせてください。
西田:やっぱり情報量の違いですよね。昔はそれが、なかなか手に入れられなかった。それこそ僕がデビューした40年前当時は、ライヴ映像なんてほとんど見られなかったわけです。ロック喫茶みたいな場所で、たまにイケナい映像や音源が流れていることはあっても(笑)。それに対して今では、検索すればほとんど何でも見たり聴いたりすることが出来る。しかもネットを通じて何かを教えてる人もいたりする。そうした方達がたくさんいるのを見て、これは自分も何かやらないと、と考えたわけです。特に僕の場合、これまで自分がやってきたことというのを、ほとんど外側に放出してこなかったので“じゃあ西田“DORAGON”竜一というのは何なんだ?”というのをもっと出していくべきなんじゃないか、と感じて。
──確かに各バンドのライヴを観に来ている人たちも、そのバンドの枠内での西田さんにしか触れられないわけですしね。
西田:ええ。僕の場合、バンドをまったくやらずに、いわゆるスタジオ系の仕事ばかりやっていた時代もあるんですけど、その時代の僕を知っている方にしても、特定の作品の中での僕しか知らない。そこで、一個人としての自分を見てもらいたいな、という気持ちが遅まきながら芽生えてきたんです(笑)。今になって欲が出てきたというか(笑)。
──いや、でも大事なことだと思います。そうした考えに至ったのには、やはりコロナ禍を経てきた影響などもあるんでしょうか?
西田:そうですね。やはり辛い時期もありましたし、それが引き金に放ったところもあると思います。いつ、誰が、どうなるかもわからないような時代というか…。これは感染症のことだけを言っているわけではなく、世界各地で起きてるさまざまな出来事とかも指しているわけなんですけど、本当に今の世の中、先行きが見えないところがあるじゃないですか。それは要するに、いつまで自分がこの世に存在し続けられるかもわからないということでもあるわけで、だからこそ“もっと自分から発信していかないと!”という気持ちが強まった部分もあると思います。
▲<DRAGON 40th ANNIVERSARY ~NOW and FUTURE>2023年9月30日@東京・SHIBUYA CYCLONE
──なるほど。9月のライヴはそうした自己発信のスタートの機会にもなったわけですね。実際、3バンドで立て続けに演奏するという試みも、西田さんにとって初めてだったはずですよね?
西田:ええ、もちろん。
──実際にやってみて“こんな大変なこと、すべきじゃなかった”と後悔したり、懲りたりした部分はありませんでしたか?
西田:ははは! いや、それは全然ないです。3バンドとも楽屋でもすごく仲良く過ごしてましたし、むしろ機会があればまたやりたいなというのが正直あります。自分の体力が続く限りは。
──カギはやはり体力ですか!
西田:はい(笑)。ただ、実際のところあの日は30分、90分、90分というステージだったわけですけど…正直な話、全部終わった時点で“あと4時間ぐらいは出来るな”と思ったんです(笑)。だからもう2バンドぶんぐらいは演奏出来る。もちろん手抜きをしてたわけではなく、思いっきりやってみたうえで“まだ行けるな”と思えたんです。こういうことって、自分でもやれると思っているうちに進めていかないと実行出来ないじゃないですか。少しでも弱気になると出来なくなってしまう。だからそうならないうちに行けるところまで行きたいな、というのがあるんです。とはいえ少なくとも現時点では、自分から弱気な部分が出てくるとは思ってないんですけどね。ただやっぱり、いつ、何が、どうなるかわからないという現実もある。自分としては生涯現役で続けていきたいという考えですし、当然そこでいろんな方たちに助けていただくことにはなるんですけど、それもひっくるめて頑張っていきたいな、と。9月にああいうライヴをやったことで、今後に期待していただけている部分もあると思いますから、そこにも応えていきたいですし。
──ええ。一度あのような濃厚なライヴを味わってしまうと、観る側の要求もエスカレートしていきますし“前回は各バンド90分だったのに今年は60分”というわけにはいかなくなってくるはずです。
西田:そこが問題なんですよね(笑)。ただ、正直、この先続けていくうえで、何かを削ることというのは考えてないんです。おそらくそこで何かを削ったところで、何もいいことはないはずだとわかっているので。仮に自分が観に行く側だったとしても“なんか今日、前回よりも短かったし薄かったよね”とは思わされるのは嫌ですし、そんなふうに言われるのは悔しいじゃないですか。それを考えると、やっぱり何も減らすわけにはいかない。
──そうなってくると観る側にも体力と集中力がより求められるかもしれませんね。そしてこの1月28日には、40周年記念ライヴの第2弾が開催されます。これは前回とは趣旨も趣向も違うものなんですよね?
西田:今回は完全に番外編です。前回の延長上にあるものではないですね。一応、僕の名前を公演タイトルに掲げてはいますけど、今回はドラマーの魔太朗君と一緒にやっていこうという企画で、昨年のイベントとはまったく別物です。具体的な内容については、2人でいろいろと試行錯誤しつつ練り上げてきたものなので、当日を楽しみにしていてください。
──ドラマー2人による共催ということは、9月のイベントの際にはなかった、ドラム同士の絡みというのも当然出てくるわけですよね?
西田:もちろん。形としてはアルティメットというか、何でもアリという感覚でやろうかと思っています。これまで僕が携わってきた中にはないものをやろうかな、ということなんです。そういう意味では、前回とはむしろ逆ですね。今まで僕が見せてきたものとは、またちょっと違ったテイストのものをお届けすることになると思います。
──確かに出演ミュージシャンの顔ぶれもさまざまで、何が起きるのか想像がつきませんが、想像しきれないまま観に行ったほうが楽しそうですね。ところで魔太朗さんは、前回のイベントでは司会進行役を務めていましたが…。
西田:いい合いの手を入れてもらえてましたね(笑)。今回はドラムでいい合いの手を入れてもらいたいな、と(笑)。彼自身も確立されているドラマーなので、一緒にやることによってお互い楽しめればいいな、と思います。逆に、彼にリーダーシップをとってもらってもいいかなと思っている部分もあるし、もちろん完全に対等な立場でやるんですけど、むしろ僕にかかって来てもらう感じのスタンスであってもらえたほうが面白いことになるんじゃないかな、と。だからもう、ドラマー同士、フルコンタクトで。
▲<DRAGON 40th ANNIVERSARY ~NOW and FUTURE>2023年9月30日@東京・SHIBUYA CYCLONE
──まさにアルティメットな闘いですね。今回の流れは40周年という節目に合わせてのものではあるわけですが、西田さん自身、こうした活動は今後も続けていく意向なんですね?
西田:ええ、何かしらの形で。この2月21日までが40周年イヤーということになるので、それ以降は違うタイトルか何かを掲げることになるのかもしれませんけど、自分自身を発信していく機会、いろんな人と面白く音楽をやれる機会というのを、この先にも設けていきたいと思ってます。あらかじめ形が決まっている場に人を当て嵌めていくんではなく、その場その場でのインスピレーションを頼りに面白く音楽をやっていけるような形態を、もっと広げていけたらなと思ってるんです。ある意味、ジャズ的なことをハード・ロックでやるというか。敢えて言葉にしようとすれば、そういうことになるかもしれない。今後、こうした機会を重ねていく中で、参加者の顔ぶれが変わったり増えていったりする部分もあるでしょうし。
──それも楽しみです。そこからまた新しいバンドが生まれる可能性も?
西田:その可能性もないとは言えない。何事も実際にやってみないとわからないし、この先、“まさかこんなに自分と手の合う人がいるとは!”というような巡り合わせがある可能性だってあるわけですし。そうやって、各々がやっていく中で新しく形になっていくものが出てくれば面白いな、と思います。それが今までにないもの、新しいものが始まる切っ掛けになればいいな、と。あと、個人個人をアピールすることに加えて、“こんな音楽の提示の仕方、楽しみ方もあるんだ!”ということも発信していきたいところですね。ある意味、公開実験みたいなライヴでもあるわけですけど、今後はそういった実験にも本腰を入れていくことになると思います。1月28日のライヴは、そのスタート地点になるはずですね。自分でもまだ、実際にやってみるまでどうなるかわからない部分がありますけど。
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40年の活動を経ても、今なお新たな領域へと歩みを進めようとしている西田“DRAGON”竜一。今後のさらなる可能性の広がりに期待しつつ、まずは1月28日、渋谷GARRETでどんなことが起きるのかに注目したいところだ。
取材・文◎増田勇一
■<DRAGON 40th ANNIVERSARY EXTRA 〜NOW and FUTURE Vol.2>
open17:30 / start18:00
▼出演
Drums:西田“DRAGON”竜一/魔太朗
Guitar:EITA/北川遊太
Bass:IKUO
Keyboads:磯江俊道
Saxophone:ikumi
Live Painter:白黒灰脂
▼チケット
・プレミアムシート(ちょっとしたプレゼント付き):10,000円(税込 / 座席指定)
・スタンディング:前売7,500円 / 当日 8,000円(税込)
※入場時ドリンク代別途600円必要
※未就学児童入場不可
※社会状況により開場 / 開演時間が前後する場合がございます。
※出演者の変更・キャンセル・開場 / 開演時間変更に伴うチケット代の払い戻しは致しません。
【TIGETチケット販売】
2024年1月27日(土)23:59まで
※限定数に達し次第販売終了
https://tiget.net/events/278695