とた、ベッドルームを飛び出した初のワンマンライブで「また会いましょう」

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とたが2023年10月24日に、初のワンマンライブ<とた oneman live 2023 bloomin’>を渋谷WWWにて開催した。オフィシャルから届いたライブレポートを掲載する。

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2000年代生まれ、ベッドルームポップを奏でるシンガーソングクリエイター、とた。ピアノ、ギター、ベースなどの様々な楽器とDAWを駆使したセルフプロデュースによる楽曲制作に加え、ハッとさせられる物語性ある歌詞によって令和時代のポップミュージックを拡張する新しい才能だ。

2023年10月24日、初のワンマンライブ<とた oneman live 2023 bloomin’>を、渋谷WWWにて開催した。創作の秘密基地だった自宅ベッドルームを飛び出してのワンマンライブだ。開演前からオーディエンスも、とたを見守るあたたかな雰囲気でいっぱいである。

19時20分。バンドメンバー4人とともにステージにとたがあらわれた。枕元にあるようなベッドサイドランプを“パチっと”付けてキーボードへ。ライブのはじまりの合図だ。これは、SNSでの音楽発信を通じて拡散された彼女の音楽性を示すキーワード、ベッドルームポップをあらわしているのかもしれない。

オープニングを飾ったのは「薔薇の花 (bloomin’)」。TikTokLiveで開催された『1st Online Live - Bedroom Session- 」でも1曲目に披露されたナンバーだ。まさにベッドルームから生まれた楽曲を、たくさんのオーディエンスの前でプレイするという感動。しかも本作はライブごとに楽曲とサブタイトルを更新していくスペシャルなナンバーだ。実は、開演前、入り口では今日のための歌詞が書かれた、本人によるスマホで手書きされた淡い紫色の花のイラストカードが配布されていた。





続いて、“小説みたいな恋をしよう”という、粋な歌い出しが胸を弾ませてくれる「君ニ詠ム。」。跳ねるビート、きらびやかなサウンドと溶け合うように、透き通っているのに凛とした歌声が響き渡る。一言、“今日は楽しんでいきましょう!”と挨拶しながらクラップでフロアを煽り、軽快なギターポップ「ブルーハワイ」では、バンド編成のライブに見事に馴染むアグレッシブなとたを垣間見た。もちろん、まだライブ経験も少なく慣れていないはずだ。だが、ステージを楽しんでいる様子が伺えたのが微笑ましかった。

第一声のMCは“今日は来てくれてありがとうございます。遠くから来てくれた人も。近くから来てくれた人も、初めてのワンマンライブに足を運んでくれた私にとって大切な人です。ありがとうございます。ライブのタイトルのbloomin’というのは、花が咲くという意味のブルーミングからとりました。今日は花に水をやるように音楽が流れて、明日からの生活になにか少しでも繋がるものがあったらいいなと思っています。楽しんでいってください!”と、落ち着きながらトーク。ギターをテレキャスに変えて、アッパーかつパンキッシュな「こうかいのさき」を披露。ギターロックナンバーが続いて「せーかいせかい」では、とたによる軽快なカッティングが印象的であり、裏声を使ったボーカリゼーションがせつなさを刺激する。歌詞にある、“花が咲きそうです”のフレーズは、ライブに通じる言葉であり突き刺さった。







空気は一変して、アコースティックな「一弦」では、アコギ片手に、淡いサウンド感が紅葉色の照明とシンクロ。ギターの弦を擬人化しながら、自らの心情と重ね合わせる歌に心を震わされる。続いて、緑のギターへと持ち替え、ピアノのイントロダクションから配信されたばかりの新曲「コワレモノ」へ。泣きのせつなポップの披露だ。

ライブで映えるギターポップチューン「あしたてんき」は、寝室=陽の当たらないベッドルームに閉じこもる繊細な心情を歌ったナンバーだ。誰もが知る“明日天気になーれ”というフレーズから展開されていく孤独と葛藤。しかしながら、ネガティブとポジティブの狭間をたゆたうポップセンスの妙。遊び心ある歌詞のギミックがとたの真骨頂を表現していく。

ここで、ネット上ではショートバージョンが上がっていたが、未発表曲「押して」を初披露。ハンドマイク片手に「リリースしていない曲をやります。好きに踊ってください!」と語り、軽快なビートが心地よいディスコチューンでフロアを盛り上げる。ミラーボールが眩く、飛び跳ねながら歌うキュートな佇まいが愛らしい。

メンバーがはけてロングなMCタイムへ。

“今の曲はだらしない恋愛を歌った曲です。作ったのは、活動をはじめた最初の頃で。もしかしたら知っている人もいるんじゃないかなと思うんですけど、ライブで楽しめる曲になったらいいなと思っています。次に歌う曲は、いなくなってしまった人を思いながら、でも、少しだけ前を向こうとしている曲です”。新曲「右手のネイル」をキーボード弾き語りで歌い出す。没入感高い物語性のある切なくも狂おしいナンバーだ。

ふたたびバンドメンバーがステージに登場。メンバー紹介へ。初ライブとなった『SUMMER SONIC 2023』から一緒の気心知れたメンバーだ。続く、「カメラロール」では、“楽しかった思い出を見返して、寂しくなっちゃう気持ちを歌った曲です。電車に乗りながら作ったので揺られている感覚を思い出しながら歌います”と、ハンドマイクで座りながら歌う。途中立ちあがり、エモーショナルに歌いあげていく。



ライブ終盤。ふと、波の音が聞こえてきた。映像が投影され、本編ラストに奏でられたのは、TikTokやSNSを通じてオーガニックに広まった、とた代表曲である「紡ぐ」。当初はショートバージョンしかなかった本作。SNSでのリスナーの反応を鑑みて、追加の展開が増やされていったというフルバージョン。ギター片手に、今にも泣き出しそうな心情を吐露するせつなき歌。バンドならではのカタルシスを感じるエモーショナルな演奏に胸がいっぱいだ。

“とたでした。また会いましょう。ありがとうございました!”

深々と礼をして、ベッドサイドランプの電気を“パチっと”消してステージを去っていく。エンディングには、とたが撮影したであろうリリック付き映像とともに「寝言」がSEとして流れた。今晩のライブはとたの夢だったのかな? なんて思わせてくれるまさに、一期一会の夢見心地なベッドルームポップだった。



テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
撮影:垂水佳菜

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<セットリスト>

1.薔薇の花 (bloomin')
2.君ニ詠ム。
3.ブルーハワイ
4.こうかいのさき
5.せーかいせかい
6.一弦
7.コワレモノ
8.あしたてんき
9.押して
10.右手のネイル
11.カメラロール
12.紡ぐ
SE 寝言

ニューシングル「コワレモノ」

10月18日(水)配信リリース
▼とた「コワレモノ」配信リンク
https://lnk.to/kowaremono
▼とた「コワレモノ」ミュージックビデオ
https://youtu.be/OfayMTYjTeY

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