【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】SPECIAL OTHERS、いつでもすぐに音が出せるプライベートスタジオ
SPECIAL OTHERSのプライベートスタジオ『SPE STUDIO JAPAN』で取材を行った。新作アルバム『Journey』の制作に使用したものを中心に機材を紹介してもらった。プライベートスタジオの良さは、とにかくいつでもすぐに音が出せるところ。曲を作るのも早くなり、ミュージシャンとしての成長率が一気に高まったという。
──この『SPE STUDIO JAPAN』は、いつ頃から使っているんですか?
芹澤“REMI”優真(以下、芹澤):2018年からです。
又吉“SEGUN”優也(以下、又吉):それまでは町のスタジオを使っていました。
芹澤:仲が良いおじさんが経営している横浜のスタジオに通っていました。
宮原“TOYIN”良太(以下、宮原):そのスタジオが「そろそろ経営をやめようかな」っていう話になって、「うわっ! 困った!」ってなったんです。
柳下“DAYO”武史(以下、柳下):「俺たちがやる場所がなくなってしまう!」と。
宮原:それで事務所に「スタジオを借りてくれ」って言ったら借りてくれたんですよ。本当に感謝しています。
柳下:僕らは今、このスタジオ『SPE STUDIO JAPAN』を維持するために頑張っています(笑)。
──(笑)。好きな時に集まって音を出せるし、1人で来て何かすることもできる場所って、ミュージシャンにとって理想の環境ですよね?
宮原:そうなんです。機材を置いておけるし、用意が要らないっていうのもいいんですよ。
又吉:町スタを使っていた頃は「倉庫から機材を搬出してスタジオに持って行って、終わったらまた片づけて倉庫に戻す」っていうのを結構な頻度でやっていたんです。Rhodes Pianoとか重いですし、あれを毎回みんなで運ぶのって大変なんですよ。
宮原:このスタジオができたことで、腰への負担が10分の1くらいになりました(笑)。
──エネルギーをクリエイティブな方向に注げるようになったということですね?
宮原:はい。ここができたことで、ミュージシャンとしての成長率が一気に高まって、曲を作るのも早くなりました。
芹澤:前まではフル機材を試せるのはライブ本番前のリハくらいだったので、音作りを詰めるのに時間がかかったんです。でも、ここだったらいつでも無制限にそういうことができるんですよね。アンプの音作りも1年で今までの10年分を超えるくらいの知識がついたんじゃないですかね。
──ここは建物全体が防音のマンションですよね?
宮原:はい。ドラムも叩ける防音マンションです。
芹澤:他の部屋もミュージシャンが使っていて、ピアノをやっている娘さんが親御さんと一緒に住んでいたりもするみたいです。日比谷野音の音のデシベル制限より上なので、音量を気にしないでいいんですよね。
■ドラムはGaai Drums スネアがお気に入りだったんです
──置いてあるドラムセットは、ライブでも使っているGaai Drumsですね。
宮原:はい。アメリカで日本人の職人の中村雅愛さんが作っているドラムです。もともとここのスネアがお気に入りだったんですよね。
──バスドラムは18インチ?
宮原:はい。最近はどジャズなサイズ感が好きで、タム12、フロアタム14みたいな感じです。シェルはメイプルですね。
柳下:このドラム、音が良いですよ。見た目もかっこいいし。
又吉:フープが木なのも良い感じです。
宮原:普通は金属ですからね。金属とは違って乾いた感じというか。あと、ドラム用のマイクにはこだわっています。
──このバスドラムの卵型のマイクは定番ですね。
宮原:はい。AKGのやつです。D112だったかな?
──バスドラムのミュートは?
宮原:フェルトミュートです。ビンテージというか古くさい感じのミュートを狙っています。これを入れることによってちょっとサステインを抑えています。
──ビーターは、いろいろ試したりします?
宮原:試しますけど、定番の白いフェルトのが一番好きです。
──シンバル類の好みは?
宮原:あんまりギラギラしていないものが好きです。このハットは10年以上使っているかもしれないですね。ライドも良い感じです。クラッシュなんですけど乾いた音なのでライド代わりに使っています。
──セット全体は、やはり突き詰めていくとコンパクトになっていきますか?
宮原:そうですね。少なければ少ないほど美しいと思っています(笑)。たくさん並べるのもかっこいいとは思うんですけど。
■NordとRhodes、フェンダーのビンテージアンプ
──続いて鍵盤のお話に移ろうかなと思ったのですが……後ろにアンプがたくさん置いてあるのが気になります。
芹澤:小さいアンプもかわいいので、ぜひ写真を撮ってください。フェンダーのビンテージのアンプをたくさん持っているんですよ。フェンダーしか買えない呪いにかかっています(笑)。65年のDeluxe Ampは多分、市場でほぼ見られないくらい珍しいと思います。
──フェンダーのアンプの魅力はどこにあると感じていますか?
芹澤:乱暴に弾いても様になるかっこいいロックな音が出てくれるところです。鍵盤の音はリードにするにはどこか頼りないところがあって、特にエレピはなかなかリードっぽい音が出ないんですよね。でも、フェンダーで歪ませた音はリードギターに近いリード感が出るんです。これはフェンダーのアンプだからこそなせる業っていう感じがします。
──ビンテージアンプの良さは、どのような点にありますか?
芹澤:ハンドワイヤードで作られているビンテージのアンプはレスポンスが速くて、自分が弾いたタイミングとアンプから音が出るタイミングが重なるから、喋ったり歌ったりしている感覚で弾けます。
──日頃からいろいろ探しているんですか?
芹澤:ウェブのショップをよく見ていますね。お店に行っても鍵盤で試せるところはないので、出たとこ勝負です。「買っては試して」の繰り返しですね。今までに何十台も試しました。ギタリストにはもっと詳しい人がいるかもしれないですけど、鍵盤でフェンダーのアンプをこれだけ試してきた人は他にはいないかもしれないですよ。
──普段の基本のセットは、ここに置いてあるNordとRhodes?
芹澤:はい。これがライブのセットです。Nordはライブにめっちゃ向いています。マニアックな話ですけど……LとRで別系統の音を出して、それぞれのアンプに挿して「オルガン」と「クラビネット」という感じでセパレートできます。あと、ドローバーが付いていて、操作がしやすいです。他の操作類も使いやすいんですよね。即興性を持っている人にすごく向いている鍵盤だと思います。こういうのは物理ボタンの強みです。ノードは鍵盤のタッチも良いですし、本当に弾きやすいです。タッチっていう点だと一番弾きやすいのかも。ビンテージにかなり肉薄するくらいの音が出てくれるのも、ライブで心強いところです。
──下の段はRhodesですね。
芹澤:はい。Rhodesは「すごいもの弾いてる」って思わせられるのも魅力です(笑)。
──(笑)。風格がある見た目ですからね。
芹澤:そうなんです。アイテムとしてもかっこ良いですから。エレピとしては「強い音」っていう感じです。歪ませた時の音が良いんですよ。これがなくてもやれなくはないですけど……やっぱりこれが一番萌えます(笑)。一生の相棒です。手放すことはないでしょうね。
──何年製ですか?
芹澤:俺と同い年くらいです。ライブではMARK Iのスーツケースを使っていて、家ではMARK Vを使っています。それぞれの個性があって、そこもローズの面白さです。鍵盤のニュアンスも違うんですよ。それは調整の差でもあるんですけど。
■メインギターはES-175、かなり歪ませて使っています
──柳下さんのこのギターは、ファンにはお馴染みでしょうね。ギブソンES-135ですか?
柳下:ES-175です。1954年製で、デビュー前の2003年に買って、そこからずっと弾いています。年代によって違いはあると思うんですけど、この頃の仕様は1ピックアップです。ピックアップのP-90の音が自分的にはしっくりきています。このギターをここまで歪ませて使っている人はそこまでいないかもしれないですね。イエスのスティーヴ・ハウとかくらいかも。
──一般的なシングルコイルとはまた別の特性がP-90にはありますよね?
柳下:そうですね。普通のシングルコイルより若干出力が高いのでパワー感があります。あと、音がちょっと前に出てくる感じと言うか。ミッドが強調されている感じなので、もしかしたら歌ものだったらぶつかる場合もあるのかもしれないです。インストだとそれが良くて。前に出しやすいサウンドですね。
──パーツ類は、交換していますよね?
柳下:はい。ペグはかなり早い段階で交換しました。
──ブリッジも交換していますね。これはレスポールとかみたいな金属製のチューンOマチックタイプ?
柳下:はい。オリジナルは木製のブリッジです。オクターブチューニングができた方が良いので、このブリッジにしました。トーンやボリュームのノブも交換しています。
──ビンテージですけど、実用性を優先しているということですね。
柳下:はい。こういう部分は、消耗品だったりもするので。あと、このギターはフルアコなのでハウリングしやすいんです。それを解消するために穴(fホール)を埋めてあります。穴が空いているように見えると思いますけど中にスポンジを入れて、黒いプラスチックの薄い板を貼っています。それによってステージで使いやすく、大音量にも耐えられるようになっています。このギターはサステインが短いんですけど、その短さがアタックを強調するというのもあって。それも特色の1つかもしれないです。
──ライブはこれ1本でやっていらっしゃる印象ですが、サブは?
柳下:一応サブでES-135を控えさせています。最近はあまり使う機会がないですけど。あと、ES-175のリイシューも1本持っています。このES-175が使えなくなった時のための控え選手です。
──メインのES-175は、見た目も渋いですね。
柳下:いろんな傷とか汚れがあるんですけど、どう掃除したらいいのかわからないです。
──前のオーナーは、どんな人だったんですかね?
柳下:ちょっとヤニっぽいものがついていたので、タバコを部屋でたくさん吸っていたのかもしれないです。
──足元のエフェクターに関しては、どの辺りがこだわりのポイントですか?
柳下:歪みがやたらと多いんです。たまに歪ませる時の音にやたらとこだわっちゃうので。細かな部分は定期的に変わりますけど、RATはずっと気に入っています。プリアンプ的に常時ONにして使っています。リヴァーブも気に入っています。ホーリーグレイルですね。アンプにもリヴァーブは付いているんですけど、エフェクター的なリヴァーブとしてこれをよく使用しています。深めにかけるとアタックがなくなって、エフェクト音だけになるんです。それが良いんですよね。セッションの時に雰囲気が良くなるので。
──想像していたよりもエフェクターの数が多いです。
柳下:このエフェクターボードに合わせて並べたくなる感じがあるんだと思います(笑)。最近、初代のワーミーを購入したので、全体の収まりが良くなりました。実際は今回のアルバムでもそんなにエフェクターは使っていないんですけど。歪みが1、2個とディレイがあればやれちゃうくらいの数しか使っていないので。年々、使用エフェクターの数が減ってきている気もします。昔は飛び道具的なものを多用しようとする気持ちがあったんですけど。
■ベースのメインはストランドバーグ。軽くて楽なんです
──又吉さんのベースは、ストランドバーグですね。
又吉:はい。特徴としてまず大きいのは、ファンフレット。とっても弾きやすいです。そしてベース本体が軽いので、身体への負担がないです。もともとはフェンダーのジャズベとかを使っていたんですけど。あとワーウィックも使っていて、あれはとっても重かったです。ライブが終る度にすごく疲れていました。
──2時間くらい持っていたら、かなり大変ですよね。
又吉:そうなんです。「軽いのないかな?」と思って探したら、これを見つけたんです。良太が見つけてくれて、試奏しに行って即買いました。使い始めて3年くらいになるんですかね? 今のライブのメインは、ほぼこれになっています。
──ストランドバーグと言えば人間工学に基づいたデザインも特色ですね。身体へのフィット感も良いんじゃないですか?
又吉:はい。とっても良いです。普通のベースは1フレット側に近づくほどネックが分厚くなっていくんですけど、これは普通のベースとは逆なんです。ネックの強度を保つためらしいんですけど、不思議なことにそれが弾きやすいです。チューニングの安定感もあって、あんまりずれないです。
──ビンテージのベースは持っていますか?
又吉:持っていないです。手入れが大変ですし、パーツを交換すると音が変わっちゃうのも気になるので。最新の良い音を探す方が、僕的には合っているのかなと思っています。
──アップライトベースは、どこのメーカーですか?
又吉:アルター・エゴです。もともとはコントラバスを持っていたんですけど、持ち運びが大変過ぎて、運搬中に壊れちゃったんです。それでアップライトを使うようになりました。枠の部分を外せたりもしますから、持ち運びが楽になりました。アップライトはこれで4本目です。アルター・エゴが、今まで使ってきた中で一番好みの音ですね。
──サウンドの特色は?
又吉:コントラバスの職人が作っているらしくて、ボディが空洞なんです。それによって音の温かみが出るようになっています。今まで使っていたアップライトは「フレットレスベースの延長線上」みたいな音のニュアンスだったんですけど、これはコントラバスみたいな空気感が出ます。張っている弦はオブリガート。好きなコントラバス奏者と同じものを使っています。中に金属が通っていなくて、ガットの弦なんです。弦によってはバリバリした音が出るんですけど、これはもうちょっとふんわりした温かい音です。
──エフェクターボードの中身は、どのようなところがポイントですか?
又吉:これは主にライブ用ですね。レコーディングではそんなに使っていないです。敢えて1つ何かを挙げるならばラディアルのピエゾ用のDIですかね。ライブハウスでDIを借りるとメーカーがバラバラで、自分の音が決まりきらないことが多いんです。だから自分で購入しました。これはエレキベースにも使えるので、その点でも重宝しています。
取材・文:田中 大
リリース情報
2023.10.25 Release
価格:¥6,300 (税抜)/¥6,930(税込) /商品番号:VIZL-2175
収録内容:CD (10曲)+特典DVD (10曲)+特典CD (10曲)
[CD収録楽曲]
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
[特典DVD「2023年 ニコニコの日全集『252510』」収録内容 (Music Video LIVE映像)]
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
[特典CD収録内容「2023年 ニコニコの日全集『252510』」(Music Video LIVE音源)]
01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A019738/VIZL-2175.html
≪ 通常盤 ≫CD ONLY
価格:¥3,000 (税抜)/¥3,300(税込) /商品番号:VICL-65800
収録内容:CD (10曲) ※初回盤のCDと同内容
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A019738/VICL-65800.html
初回盤/通常盤いずれも初回生産分には「ジャケットステッカーシート」封入
9th ALBUM 『Journey』
2023.11.03 Release
アナログレコード盤(2枚組)
価格:¥5,500(税抜)/¥6,050(税込) /商品番号:VIJL-60305?6
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A019738/VIJL-60305.html
[アナログレコード収録楽曲]01. Fanfare
02. Early Morning
03. Apple
04. Bluelight
05. Bed of the Moon
06. Falcon
07. Feel So Good
08. Point Nemo
09. Journey
10. Thank You
11. Session1222
ライブ・イベント情報
12月16日(土) OPEN/START 16:00/17:00
会場:横浜Bay Hall
(横浜市新山下3-4-17)
チケット:前売 スタンディング5,000円(税込、整理番号付、ドリンク代別)
当日 スタンディング5,500円(税込、整理番号付、ドリンク代別)
チケット発売日:10月28日(土)
ライブ・イベント情報
11月3日(金・祝) 仙台darwin
Info. ノースロードミュージック仙台
https://www.north-road.co.jp/
11月5日(日) 札幌cube garden
Info. ウエス https://wess.jp/
11月11日(土) 富山MAIRO
Info. キョードー北陸チケットセンター
https://www.kyodo-hokuriku.co.jp/
11月12日(日) 長野CLUB JUNK BOX
Info. キョードー北陸チケットセンター
https://www.kyodo-hokuriku.co.jp/
11月18日(土) 名古屋クラブクアトロ
Info. JAILHOUSE https://www.jailhouse.jp
11月19日(日) 浜松窓枠
Info. JAILHOUSE https://www.jailhouse.jp
11月23日(木・祝) 福岡BEAT STATION
Info. BEA https://www.bea-net.com
11月25日(土) 岡山YEBISU YA PRO
Info. YUMEBANCHI(岡山) https://www.yumebanchi.jp/
11月26日(日) 梅田クラブクアトロ
Info. YUMEBANCHI https://www.yumebanchi.jp/
12月9日(土) 那覇桜坂セントラル
Info.ピーエムエージェンシー https://www.pmnet.co.jp/home/
◆『Journey』アルバムインタビューはコチラから
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