【トークイベント完全再現】SUGIZO × ESP、“音楽×ファッション”を語る「MADE IN JAPANを使いたい」
■ライヴ現場はF1と同じ
■実は1mmの差でもめっちゃ大きい
──客席のみなさんもスマホケースとかにスワロフスキーを貼ったことありますよね。
SUGIZO:僕のギターの場合は、ボディーに打ってるんですよ。
──本番で使うギターは1本ものなので、失敗は許されない。だから、そのためのテスト用ギターを何本か用意して、図面を引いてサンプルギターに一回貼って、塗装を剥がして打ち付けるという大変な工程があるんですね。さっきも話がありましたが、ステージ上でギターをぶっ壊すような人が激しく使っても、剥がれることなくキラキラとスワロフスキーが輝いていると。
SUGIZO:この20年は、ギターを壊すようなことしてないですけど(一同笑)。
高栁:ご説明していただいた通りで、見た目的には簡単につけられそうなんですけど、スワロフスキーを二回貼っているんです。デザイン上の配置を決めて、仮止めをして一回剥がすんですが、その前に塗装を剥がさないといけない。その練習用に3本のギターを使いました。ところが練習用に買ったギターは安物なので、塗装が本物とは違うんですよ。
──本物のSUGIZOさんモデルはすごく塗装が薄いんですよね。
高栁:はい。すぐ塗装が剥がれてしまう。ご本人の使用ギターで失敗するわけにはいかないですから、まず工場では怖がってやってくれなくて。
SUGIZO:僕は、塗装が薄ければ薄いほど好きなんですよ。ポリは使いたくないとか、ラッカーで極力薄くしたいとか細かい注文があって。ESPはこの20数年、そのリクエストに応えてくれてるんですよね。
──そういうギターにスワロを貼ってくれと言っちゃダメってことなんですよね(一同笑)。
SUGIZO:これは大事なことなんですけど、僕はこの20年ぐらい海外での活動が多いじゃないですか。そうなればなるほどMADE IN JAPANを使いたいんです。レコーディングではフェンダー製のヴィンテージを使ったりもするけど、ライヴでは日本製のESP。服も車もそう。たとえば、海外でkiryuyrikを着てると「その服、めちゃクールだね。どこの?」ってみんな聞いてくるんですね。ヨーロッパに行くとGUCCIやサンローランよりMADE IN JAPANを着ているほうが絶対カッコいい。なので、日本製にこだわるし、MADE IN JAPANで最も僕が好きなブランドのアイコンを背負いたかった。覚えているのは、このギターにスワロをつけてもらった2011年、東日本大震災の被災地から打ち合わせしましたね。
高栁:先ほどギターを持ってきてくれた話をしましたけれど、「明日から、被災地へボランティアに行くから連絡が取れなくなる」と。
SUGIZO:当時の石巻は電波関係が破綻していたので、現地ではなかなか連絡が取れなかったんですよね。でも、結局携帯がつながったんですよね。
高栁:電話越しに「ああでもない、こうでもない」と打ち合わせをして、やっと完成した感じです。この作業をやってくれたのがIVXLCDMのデザイナー上島徹也さんです。
SUGIZO:そこで上島さんとつながったわけですね。これ以降、IVXLCDMが僕らの重要な仲間になりましたね。
── “日本製”という話がありましたが、SUGIZOさんは、振動を抑えるためのミュートクリップとかストラップとか、日本製の新アイテムをいろいろリリースしてますよね。
SUGIZO:そのクリップが今、話に出たIVXLCDMという本当にクオリティの高いシルバージュエリーを作っているブランドでね。このクリップは3種類のカラーバリエーションがあるんですが、今日ここに来てくれてる方々にとっては釈迦に説法だと思うので(笑)、割愛します。ストラップはModern Pirates。20年ぐらい前から僕が好きなブランドで、最初に購入したのはエナメルで鋲が打ってあるカッコいいデザインの雪駄でね。愛用していたModern Piratesベルトを「そのままストラップにしてくれないか」っていう話をしたんです。
──Modern Piratesでストラップは制作してなかったのにSUGIZOさんが作らせたということですか?
SUGIZO:まぁ、そうかもしれません(一同笑)。
──ある時、いきなりSUGIZOさんがそのストラップを持ってきて、ESPさんが現場でテンパったという話を聞きました。
進士:確か、<20th ANNIVERSARY WORLD TOUR REBOOT>(2010年)本番初日の朝でした。僕もビックリしましたけど、ギターテックとかスタッフも困った顔をして(笑)。
SUGIZO:なんで? ただストラップ作っただけなのに(一同笑)。
進士:ストラップが変わるって大変なことなんですよ。トランスミッターとか全部付け替えないといけないですし、それも単純にガムテープで貼ればいいってものじゃないので。
SUGIZO:そうか。美しさにもこだわりますしね。ありがとうございます。
▲<ESP CRAFT HOUSE 40th Anniversary Exhibition『SUGIZO Museum -MUSIC×FASHION-』>
──反省してます?
進士:反省は求めてません(笑)。
SUGIZO:悪いことはしてないし、合法的なことなので、隠すことはひとつもないです(笑)。
進士:はい。僕らはついていくだけです。
──そういうこだわりやポリシーを持ちながらの活動の中、みなさんもご存知のEDEN(Navigator N-ST SGZ Custom -EDEN-)がセンセーショナルなデザインだと思うんですが、改めてご説明いただけますか?
SUGIZO:これも釈迦に説法だと思うんですが、想いが詰まったギターです。
──EDENという名前の由来は?
SUGIZO: tenboの鶴田さんが名付けてくれたんです。思い出深いのは、絵を描いてくれたのはイラクの小児癌の子供たちなんですけど、ギターの裏側に絵を描いてくれた子が亡くなっちゃってね。イラクに拠点を置いて、彼ら彼女たちをずっとサポートし続けているJIM-NETという団体と僕はとても親しくしてて。実はこのデザイン、もともとはギターじゃなくて衣装だったんです。「子供たちの絵をプリントした衣装を作りたい」ってtenboに持ちかけたんです。
──その衣装がこの会場にも展示されています。
SUGIZO:その次の段階として、「これをギターにしたらカッコいい」と発案して、ESPに相談した流れですね。
▲<ESP CRAFT HOUSE 40th Anniversary Exhibition『SUGIZO Museum -MUSIC×FASHION-』>
──となると、また苦労話が進士さんからありそうですね。
進士:そうですね、このギターはすごく時間がかかったんです。何が大変だったかというと、ギターのボディーサイド含め、平面の絵を球体状の曲面に繋げて貼ることが難しいんですよ。
SUGIZO:ギターを弾く人でさえ意識しないことですよね。ものを作ってると、すごくハードルが高いことが多々あるんです。
進士:だから、「ボディーサイドは白く塗りつぶさせてもらえませんか?」って、一番最初に提案させてもらったんですけど。
──その提案が通るはずないのはわかってますもんね(一同笑)。
進士:はい。SUGIZOさんはガンとして譲らず(笑)。
SUGIZO:STシェイプだから難しかったんですよね。ECLIPSEだったら違ったんでしょうけど。要するにボディーのトップとサイドにバインディングがあるから、そこで一回遮断されるので、ECLIPSEだったら貼るのがラク。今はあまり使わなくなったけど、MIXEDMEDIAもそうで、バインディングがあるからアルミ箔を貼るのはボディーとヘッドのトップだけでもいい。
進士:そうですね。
──トップアーティストの思いつきを実現することって、車にたとえるとF1の技術が大衆車に使われていくみたいなもので。ESPにとってもきっと学ぶことがあって。
進士:アーティストさんと一緒に仕事をするのは、それが全てですね。僕らだけだと効率を考えるので、絶対にやらないことなので。
SUGIZO:本当にライヴ現場はF1と同じ。僕はドライバー、ピットには様々なテクニシャンがいて、車を走らせてピットで調整してもらう。まさにライヴ中もそうで、必ず次に使うサオのメンテナンスなど、テックは本番中ずっとギターをいじってるんですよね。操作性の面では、実は1mmの差でもめっちゃ大きいんですよ。1mmの10分の1、100分の1のレベルのセットアップを本番中にする。楽器なんかすぐにセッティングがズレますからね。
──ステージの照明が当たるだけで変わるし。
SUGIZO:温度と湿度ですね。その差に弱いんです。だから、この時期は最悪です。
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