【インタビュー】ASH DA HERO、2ndアルバム『HUMAN』が高濃度な理由「進化と変化が自然発生している」

■ライブやツアーに来てくれる人たちと
■一緒に成長させていくのがアルバム

──今回、歌っているベースリフやフレーズも多いですよね。

Narukaze：これだけ芳醇なリズムアプローチだと、他のパートも乗っかりやすいんですよ。練るところはちゃんと練って、タイトなところはタイトに引き締めて。押し引きが作りやすかった。

──それによってボーカルとギターのアプローチも、さらに幅広くなったんですか？

ASH：そうだと思います。あと、実は『Genesis』のツアーが終わったタイミングで、ボーカルのコーチを付けたんですよ。自分のボーカルスタイルはこうだ！という一本の根幹があるとしたら、作曲中やリハーサル中に、Naru君はそこに彩りを与えてくれるようなコーチングをしてくれることがすごく多くて。それをテクニックでカバーするとなったときに、自分のロジックをちゃんと知っておきたかったんです。

──そのためにも第三者のアドバイスが必要だった？

ASH：そう。ボーカルコーチに、自分の歌を因数分解してもらったんです。「本来の君の歌声はここ」とか、「君の歌の弱点はここだよ」みたいな。「君の思うその歌声は、弱点を補うためにこうなっていたんだよ」とかね。

──理論的に自分の声質や歌い方を解釈したんですか？

ASH：そうです。最初はヤベーッと思いましたよ（笑）。自分で思うように築いてきたジェンガが、根底から崩される感じで。でも、それはネガティヴな話でもなくて、コーチは弱点も含めてロジカルに整理してくれたから。「克服するためにはこの特訓すればいい」とコーチングも与えてくれて。そのタスクをこなしながらレコーディングを進めていったんです。だからボーカリゼーションが確実に研磨されていったのが『HUMAN』でもある。


──実際にレコーディングで歌録りして、声の出し方とか気持ちの込め方とか、いろいろ変化も？

ASH：歌録りはNaru君にディレクションをお願いするんだけど、自分の中で4パターンぐらいをまず歌って、「どれが好き？」っていう録り方に変わってきている。

Narukaze：別人とまではいかないけど、パターンごとにニュアンスも違ってて。

ASH：ギターで例えるなら、違うエフェクターを踏む感じ。

Narukaze：でも基本は、ASHの中で見えていたと思う。“この曲はこう歌いたい”っていうのが。

ASH：作り方とか進め方は、『Genesis』のときと大きく変わっていないけど、ひとつずつが全て濃くなったんじゃないかな。メンバーみんなが、ツアーをひとつ回って、バンド活動をしていく中で、より濃度が強くなった。例えば学校の部活にしても、1年のときと2年では全然違うじゃないですか。

──分かりやすい例え話。1年のときはペーペーだけど、2年生になるとチーム感がいきなり出ますからね。

ASH：そう、チーム感が出るし、「俺たちが全国大会で優勝するには、どうすりゃいいんだろう」って気持ちで一体感が高まるじゃないですか（笑）。バンドとして重ねていくバイオグラフィの中で、そういったものは自然と生まれているんじゃないかな。


──ひと塊になろうとしていたのが1stアルバム『Genesis』のころだったら、今回の2ndアルバム『HUMAN』は、ひと塊になれば強いのは分かったから、それぞれが外側に向けてやっていこうぜぐらいの。

ASH：確かにそうかもしれない。

Dhalsim：楽曲の振り幅も大きいんで、自分でも曲ごとにどんなアプローチでいこうかとか、新しいことに挑戦したアルバムになってますから。今までやっていなかったDJ技を使ったり、新たにエフェクターを使ったり。NaruさんとフランスのC2Cというターンテーブル・バンドの話になったときがあって、「Stigma」ではギターソロの音を俺がスクラッチでやっちゃって（笑）。というのも、アコギで弾いたソロを一度ターンテーブルに落として、それをスクラッチでプレイしているんです。

ASH：うん、めちゃくちゃカッコいい。

Dhalsim：Naruさんとの会話でC2Cのことが出なければ、そんなことやっていなかったと思う。C2Cを知っているんだったら、こんなこともありかなと。そうしたら「もっとカオスにしてくれ」みたいな話まで出て（笑）。だから波形を刻みまくり、エフェクトも掛けまくり。今までは、生で再現できないことはやりたくなかったけど、作品としてカッコいいものになればいいという発想です。


──バリエーションが広くアプローチも濃い曲が取り揃えられて、曲が進むたびに新しさがある。アルバム『HUMAN』が形になった今、自分たちの成長も大いに感じるでしょ？

Narukaze：これはバンドにとって新しいなって曲を、毎回作っているイメージではあるんですよ。

ASH：バンドって絶対に、進化と変化が必要だから。そこは自然な新陳代謝として起こっていると思う。あと、より広いリスナーにリーチしたいってのは、やっぱり僕らの願いでもあるから。限定的なところだけに伝わればいいってことではなく、より広く、よりたくさんのリスナーに聴いてもらいたい。その中でキャッチしてくれる人が増えれば、すごくハッピーなことで。今回のアルバムは、ライブハウスも似合うだろうけど、ライブハウスのその向こうにも連れて行ってくれる気がしている。そういうところでも似合う曲たちが並んでいますね。

──その作品に『HUMAN』というタイトルを付けた、その真意は？

ASH：アルバムタイトルは最後に付けたんです。そのとき、ひとつ根幹としてあったのは、全部の曲が、人間がテーマになっていることで。人間心理学の種類が、大きく分けると14通りあるんですよ。そしてトラック数も14。“あっ、『HUMAN』だな”と。インスピレーションでアルバムタイトルを決めましたね。

──たしかに、全曲の歌詞がそうですね。

ASH：リリックには、いろんな隠喩が入っているし。14通りの人間教科書をリリックに散りばめていますね。

──さて、9月23日からツアー＜ASH DA HERO LIVE TOUR 2023-2024 “HUMAN”＞もスタートします。各ライブ会場で出会うことになるみなさんに言葉をください。

ASH：ライブやツアーに来てくれる人たちと、一緒に成長させていくのがアルバムだと思うんです。まずは『HUMAN』を余すことなく聴いてもらって、ライブで曲を一緒に育てつつ、2024年1月8日のツアーファイナルまで共に走り続けていきたいなと思っています。あと、バンドにとっては初の年またぎツアーなんですよ。ロングツアーだから、まだ行ったことがなかった地域にも行くし、やっとみんなの近くまで行けるぞってツアーでもある。だから、アルバムをたくさん聴いて待っていてほしい。そしてツアーファイナルとなる Zepp DiverCity(TOKYO)ワンマンでは、『HUMAN』のライブでの完成形をみんなで一緒に作ろうぜ、と思っています。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎堅田ひとみ




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