【インタビュー】横山剣がルーキーの気分で取り組んだ“シン・クレイジーケンバンド”によるアルバム『世界』
■ 楽曲がいちばん幸せな形で着地することを重視
──CKBの凄さって、もちろん剣さんのボーカルを軸としながら、いろんなメンバーの方が歌うことですよね。
横山:そうですね。僕はコーラス・グループが大好きだし、もともとクールスもそんな感じでしたから。
──メインボーカルは剣さんの名前だけど、剣さんじゃない人もボーカルをやってるという。
横山:ジョージ・クリントンのPファンク軍団じゃないけど、混沌としていて、どこまでがメンバーなのか違うのか、クレジットを見ても曲ごとにメンバーが違ったりして、バンドという概念をはるかに超えている。例えばクリントンのソロ名義でも色んなヴォーカリストが参加していたり、ソロ・ツアーのメンツのままPファンクオールスターズ名義だったり、パーラメント・ファンカデリック名義だったりするし、クリントン自身もどの名義でやったのか憶えてなかったり。でも重要なのは最高のファンクをやるってことだから名義には執着しないと。まさにサウンド・マシーンって感じですよね。僕らにもそういう曖昧な部分があったので、自らを“東洋一のサウンド・マシーン”と称してました。しかし、これからはライヴへの比重が大きくなるし、ライヴバンドとしてサバイブして行かなきゃということで、結成当初のコピー、“東洋一のライヴ・マシーン”に戻しました!
──それこそ、“シン”じゃないですか!
横山:はい。シン・クレイジーケンバンドです。勿論、『世界』のレコーディングに関しては形式や常識に囚われず、自由なスタイルで、楽曲がいちばん幸せな形で着地することを重視しましたが、ここ10数年間、CKBのトレンドだったループや打ち込みは影をひそめ9割方が「せ〜の」の録音でした。
──なるほど。12曲目「TERIYAKI」は、完全にマーサ&ザ・ヴァンデラスですね。
横山:実は、過去にこのコードで3曲作っていまして、ひとつはダック・テールズの「我爱你」という曲ですが、もう1曲はタイトルを忘れましたが、その第三弾が今度の「TERIYAKI」です。曲中、柳ジョージ&レイニーウッドの「本牧綺談」の印象的なギターフレースを引用してみました。往年の横浜サウンド特有のギターにレズリーをかけるという手法。パクリではなくオマージュとして捧げようと。
──そのあたりの流れを聞いていると、剣さんの中ではやはりモータウンサウンドがすごく好きなんだろうなと感じました。
横山:そうですね。ある時期は、アトランティック音源、サザンソウル、オーティス(・レディング)、ウィルソン・ピケット、或いはJBが「カッコイイ!」と言っていました。で、「モータウンはポップすぎて!」なんて言うくせに、モータウンやフィラデルフィアソウル、バート・バカラックやカーペンターズ等、メロディのすばらしさに惹かれて、仲間には言わないけれど一人で聴くのは実はそっちでしたね。ただ、自分の姿勢として「そういうわけにはいかない!」と(笑)。なんでそうだったかいまでは理解できないんですけれどね。いまは正直にモータウンが偉大だったことを、ファンク・ブラザースは素晴らしい、と胸を張って言えます。
──「Sweet Vibration - CKB tune -」は、JB'sとかのファンクサウンドですよね。
横山:これはすごく古い曲なんです。89年くらいに「スージー・ウォンの世界」という曲を作って、この曲も89年くらいに生まれた曲なんです。その当時やっていたZAZOUというバンドでは拒否された曲で、その恨みが…。いまだに根に持っているんですけれど(笑)、まぁでも、いまの編成だったらできると思った曲ですね。
──恨み(笑)。
横山:その頃は、ロンドンやパリに行くのが好きでよく行っていたんです。カムデンに昼間が画廊で夜はクラブみたいになる場所があって、そこではジャズで踊るようなムーブメントが起こっていて。ジャズといってもジャズファンクで、後のアシッドジャズですよね。その時に「この感じ、良いな!」と。ジャズ系とかファンク系にシビレまして、そういう曲をたくさん作ったんですけれど、その中のひとつです。
──アシッドジャズ創世記ですね。
横山:この旅行の帰りの飛行機の中、香港あたりで「スージー・ウォンの世界」が生まれたのですが、そのときに立て続けに生まれた曲です。でも、そのあとザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズやジャミロクワイが出てきて、「ああ、やられちゃった!」ってすごく悔しかったですよね。大は小を兼ねるけど小は大を兼ねないので、大じゃないとダメだということで、メンバー11名、さらにサウンドプロデューサーもいて12名っていう今のCKBの編成じゃないとできないサウンドなんですよ。
──実は、この曲に今のCKBを感じました。
横山:デッドストックでとっておいて良かったなと(笑)。
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