【インタビュー】SUKEROQUE、日本のポップスの王道に向かって突き進むユニークなアーティスト
■昔のディスコみたいにみんなが踊れるような空間を作りたい
■お客さんの恥ずかしさを取っ払えるような奴でいたいです
――では、話を一気に現代へ飛ばしましょう。7月から毎月連続リリースが始まっていて、まず「オリーヴの星」と「蝸牛」が出て、8月に「COOL CHINESE」が出て。見事にタイプの違う曲がどんどん出て来ていますけども。
SHOHEI:そうですね(笑)。
――「オリーヴの星」と「蝸牛」は、編曲が屋敷豪太、保本真吾、SUKEROQUEの連名で、豪太さんはドラムでも参加していますね。しかも京都にある彼の自宅スタジオ、古い蔵を改装したスタジオで録音していて、空間的な響きが抜群に良いです。
SHOHEI:いいですよね。そもそも出音がいいし、周りが土と木と漆喰なので、音の吸収も良い感じがします。湿度を調整してくれるので、機材の保管にも良いらしいです。
――そもそも豪太さん、保本さんと組んだのは、どういうきっかけで?
SHOHEI:保本さんとはすでに昨年ご一緒してた流れから、豪太さんを紹介頂きました。すごく良い経験になりました。豪太さんのスネアの選び方やチューニングが、曲に対してよく考えられていて、すごいなぁと思いましたね。ドラムと同じ場所ででレコーディングしてたので、「ここをもうちょっとこうしてほしい」とかも言いやすくて。良いレコーディングでした。
――「オリーヴの星」は、元々、どんな曲を作ろうと思っていたんですか。
SHOHEI:元々は、どファンクな曲を作りたかったんですけど、より一般的に聴きやすい曲にしたいなと思ったので、サビは思い切り聴きやすいサビにしようと。歌詞もそれに付随して、いろいろ言葉を思いついていたので、それをスタッフのみなさんと一緒に聴いて、「いいじゃん」ってなって、「この曲は豪太さんに叩いてほしいよね」という話になったんですね。結果的に、何て言うのか、豪太さんが叩くと、スガシカオさんっぽくなりましたね。
――それは思いました。比較するわけではないですけど、スガシカオさんが好きな人にはドンズバな曲だなぁと。
SHOHEI:実はそれまで、あんまりスガシカオさんを聴いてこなかったんですよ。ただ、豪太さんは一緒にやられているし、豪太さんが叩くと、よりそういう感じになっていくというか。
――そこは偶然なんですね。どファンクを追求する過程で、似てくる部分があるのかなぁと思います。
SHOHEI:そのあと、スガシカオさんをちゃんと聴き始めました(笑)。やっぱり良いですね。めっちゃ良いです。
――しかもそこに、ハードロックなギターもしっかり入って来る。ジミ・ヘンドリックス風のハードなギターリフが。
SHOHEI:そういうの、入れたくなっちゃうんですよね。そのへんは、プリンスの影響が強いのかなと思います。
――プリンスも、ファンクの中にむちゃくちゃハードなギターを入れたりしますからね。それと、この曲、歌詞がすごく面白いんです。歌詞を本人に説明させるのは野暮だと思いますけど、言葉のポップな響きとは裏腹に、皮肉や毒もたっぷりあって、時代のドキュメンタリーっぽいし、哲学的な要素もあって。これは、何を歌いたかった曲ですか。
SHOHEI:これは生活の中で感じたことというか…戦争って、昔からずっと続いていると思うんですけど、たぶん自分が生まれてから今日まで、止んだことがないと思うんですよね。ただ、今のウクライナとロシアの戦争だけは、身近に報道されているという感じがして、より日本人に戦争というものを意識させたいんだろうなというものを感じるし、実際に意識している人が増えていると思うんですけど。そんな中で、僕は最近太りすぎてダイエットしてるんですけど、要は、世界には食えない人がいる中で、痩せたいと思っていることは、すごく平和だなと思うんですね。同じように、戦争している国があって、そのニュースやドキュメンタリーを見てかわいそうだよねと言えることは、すごく平和な証拠だと思うし、栄養過多になって成人病の人が多かったり、そういうマイナスなことも、見方を変えると平和の象徴な感じがするんですよね。そういうふうに、普段の生活で思ったことをどんどん歌詞に入れていきたいなと思って、思ったことを歌詞にしました。
――こうすべきだ、というメッセージ性みたいなものは、直接的な言葉としてはまったく出て来ないですけど、皮肉めいたニュアンスとして、このままでいいのか?という感情は伝わってくる気がします。
SHOHEI:そうかもしれないです。
――つまり平和ってどういうこと?という問いかけにもなっていると思いますし、それを音楽としてポップに、ファンキーに、かっこ良く聴かせてしまうところが素晴らしいなと思います。そこが音楽ならではの、音楽の面白みだなと思ったりします。
SHOHEI:聴いて、暗い気持ちになってほしくないので。暗いメッセージだとしても、楽しい気持ちになってほしいというのはありますね。
▲「オリーヴの星」
――タイトルにある「オリーヴ」という単語は、歌詞には出て来ないですけど、平和の象徴ですよね。
SHOHEI:そうですね。ある意味、成人病の人も平和の象徴だと思うんですよ。サバゲーみたいな、ゲームをやってる人たちも平和の象徴だと思うんですね。たとえば日本が戦争真っただ中になったら、その人たちは全部いなくなると思うんですよ。成人病の人もいなくなるかもしれないし、ゲームでわざわざサバゲーする人もいなくなると思うし。なので、今それが見られるのは平和の証拠というか、オリーヴ的なものなんだろうなということを思って、作った曲です。
――楽しく聴いて、「でも、ちょっと待てよ」となる。良い曲だと思います。もう1曲の「蝸牛」はどうですか。
SHOHEI:「蝸牛」に関しては情景描写の曲で、どんな季節に聴いても梅雨を肌で感じるような曲にしたいと思っていました。ネットを見ていても、嫌なニュースが多いですけど、そういうマイナスなものを一旦家に置いて、ケータイを持たずに散歩に行ったり、よくするんですけど、その時の気持ちを曲にしたかったんですね。特にメッセージが無いと言えばそうなのかもしれないですけど、そういう気持ちになった時に自分が見たものを、同じように感じてもらえるような曲を作りたいと思っていました。
▲「蝸牛」
――自分が蝸牛なんですね。嫌なことがあると殻にこもってみたり。
SHOHEI:そこから這い出たり。そういう心情を書いてみました。
――これまでのSUKEROQUEの曲の歌詞にも、情景描写がかなり多いという印象を持っているんですが。
SHOHEI:そうですね。
――四季の風景とか、日々目に映るものとか、そういうところに感情を重ねていく描写が多いなと感じています。
SHOHEI:そこは、フジファブリックの影響がけっこうあると思います。作詞をする時に一番意識していたというか、参考にしていました。フジファブリックと中島みゆきさんは、歌詞の書き方をけっこう参考にしています。よく読んでいました。歌詞だけでも楽しめるなと思います。
――中島みゆきさんも好きですか。
SHOHEI:はい。中島みゆきさんのベストアルバム『大吟醸』が、よく家で流れていたので。子供の頃は、中島みゆきさんがちょっと怖かったんですけど、だんだん好きになってきました。
――言葉に関しては、たとえば文学が好きとか、そういう嗜好性もありますか。
SHOHEI:詩集はたまに見たりするんですけど、王道のものしか見ないです。谷川俊太郎さんとか。昔から活字があまり読めなくて、飽きちゃうんです。漫画の方が多かったですね。手塚治虫さんと藤子・F・不二雄さんがすごく好きで、藤子・F・不二雄さんの短編集にはけっこう影響を受けたかもしれないです。
――Fさんって、「ドラえもん」ですよね。どっちかというとファンタジー寄りの。
SHOHEI:そうです。「ドラえもん」は途中まで共作で、後半はFさんですね。
――藤子 不二雄Ⓐさんは、怖いやつだったり、社会派だったり。
SHOHEI:そっちも好きなんですけどね。「笑ゥせぇるすまん」を、最近毎日見ているんですよ。毎日2話だけ見ると決めて。あの時代の漫画って、言葉が面白いんですよね。活字が読めないぶん、そこで補っています。
――僕の方がかなり年上なんですけど、だんだん同世代に思えて来ました(笑)。古いものをよく読んでいますね。
SHOHEI:漫画は結構古いものが多いかもしれないです。「デビルマン」とか、「あしたのジョー」とか。「あしたのジョー」は、最近三周目を見ました。何回見ても泣けますね」
――音楽もそうですけど、時代を超える王道、オリジナル、強い生命力を持つもの。そういうものが好きなんでしょうね。きっと。
SHOHEI:「美味しんぼ」も好きです。
――王道ですね(笑)。そして8月にリリースされたばかりの「COOL CHINESE」はどうですか。夏らしく爽快な、明るくポップな曲ですよね。
SHOHEI:この曲に関しては、メッセージ性は皆無です(笑)。去年の秋に作った曲なんですけど、夏に冷やし中華を食べようと思っていて、食べられなくて、秋でも食べられるんですけど、夏に食べるのとではちょっと違うじゃないですか。“逃しちゃったな”という、本当にしょうもない気持ちなんですけど、そんな夏を、思いっきりかっこ良いサウンドに乗せて歌ったら、みんな笑ってくれるかなと思って作った曲です(笑)。
――これまでもユーモアの要素って、そこはかとなく匂わせてはいましたけど、ここまで解禁したのって初めてじゃないですか
SHOHEI:そうかもしれないです。ここまで内容がないものは初めてです(笑)。
――思い切り楽しさに振り切るという。何かきっかけがあったんですか。新たな扉を開いてみたいとか。
SHOHEI:時にないんですけど、やっぱりそういうのも好きなんですね。思いっきり明るい曲とか。「マツケンサンバ」とか、けっこう、ちゃんと好きなんですよ。本当に良い曲だなと思って、ああいう曲を作りたいなと思ったりします。というか、そういう曲もやれるような人間でありたいと思います。あれをやっている松平健さんは、かっこ良いなと思います。
▲「COOL CHINESE」
――あの曲は日本国民全員が喜びますからね。誰も嫌いにならない。
SHOHEI:すごく良い曲ですよね。サンバと言ってるのにアモーレとか、セニョリータとか、めちゃくちゃですけど(笑)。そこが良いんです。あと、SMAPの明るめの曲とか、そういうところにもかなり影響を受けていると思います。
――ああ、そこは確実に通じ合う部分ですよね。SMAPは好きですか。
SHOHEI:大好きです。ジャニーズでは一番好きですね。すごい研究しました、曲を作る時に。
――そのへんは、SUKEROQUEの音楽性を語る上で、すごく重要なポイントの一つですね。日本における王道ポップスの定義みたいな。
SHOHEI:僕にとってSMAPはかなりデカイと思います。「COOL CHINESE」を作った時も、ちょっと意識した部分がおそらくあると思います。いろんなものを意識したと思うんですけど、その中の一つにSMAPはあったはずだと思います。
――サウンド的には、フュージョンっぽさを強く感じましたけどね。高中正義さんの一番ポップな頃の感じとか。
SHOHEI:まさにそのへんも、父親がずっと聴いていたものなので。スクエア、カシオペアとか。
――テクニックはめちゃくちゃうまいけど、曲名がユーモラスだったり、見せ方がエンタメ的だったりしましたよね。あの頃のフュージョンって。明るいサービス精神というか。そこもSUKEROQUEの音楽性と通じるところは感じます。肯定的というか、聴き手を幸せにしたい音楽なんだなぁと思います。
SHOHEI:とにかく楽しんでもらいたい気持ちが一番デカいです。
――さぁ、これからどうしましょう。今はライブをしなくても、YouTubeがあったりTikTokがあったり、いろんな音楽の広め方がありますけど、どんなやり方が一番自分に合っていると思いますか。
SHOHEI:ライブとリリースを中心にやれるといいなと思います。山下達郎さんがMCで言ってたんですけど、結局それが一番強いし、それに戻ると思うって。やっぱりライブを中心に活動していくことに、必ず戻って来ると思っているから、年間50本ぐらいライブをやっているらしいんですけど。僕もそう思うので、やっぱりライブかなと思います。
――8月、9月にも、イベント出演のスケジュールが決まっていますね。ちなみにワンマンライブの予定は?
SHOHEI:まだないです。SUKEROQUEになってから、ワンマンはやってないです。
――やりたいですよね。
SHOHEI:やりたいです。
――いつかワンマンをやるとしたら、どんなライブが理想ですか。規模とか、見せ方とか、
SHOHEI:昔のディスコみたいに、みんなが踊れるような空間を作りたいです。映像でしか見たことないんですけど。(手を振りながら)こういうふうにするよりは、みんなが踊ってほしい。周りを気にしないで踊ってほしいです。それってけっこう恥ずかしいじゃないですか。その、お客さんの恥ずかしさを取っ払えるような奴でいたいです。
――楽曲の完成度の高さと、ライブの自由度の高さは、SUKEROQUEの音楽の大きな魅力だと思うので、ぜひ楽しみにしています。それと、今後どんな曲が出てくるかも。マンスリーの連続リリース、楽しみにしています。
SHOHEI:9月13日に出る新曲も、かなり違う感じですよ。楽しみにしていてください。
取材・文:宮本英夫
リリース情報
https://nex-tone.link/A00120130
配信中
「オリーヴの星」
https://nex-tone.link/A00118841
配信中
「蝸牛」
https://nex-tone.link/A00118840
配信中
ライブ・イベント情報
8月31日(木)SHIBUYA Spotify O-nest
チケット発売中
https://www.sukeroque.com/news/306/
9月13日(水)SIMOKITAZAWA MOZAIC
<TOUR FINAL LIVE>
11月29日(水)SHIBUYA Spotify O-west
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