【ライブレポート】『マガツノート』初ライブツアー＜荒魂決起會＞、V系バンド＆声優陣が描く“悲哀”の向こう側

近未来戦国×ダーク楽曲メディアミックスプロジェクト『マガツノート』のライブハウスツアー＜マガツノート全国巡業二〇二三「荒魂決起會」＞。全国4カ所にて開催されたプロジェクト初の全国ツアーの3本目となる『悲哀ノ夜』が、7月23日に仙台Darwinにて開催された。

◆ライブ写真

武将達が各陣営の枠を超え、「喜」「怒」「哀」「楽」をテーマにした4バンドを結成してフェスに出演するという、『戦シーズン 弐nd Battle 荒魂大祭』（通称：『戦シーズン2』）と連動したライブハウスツアー＜荒魂決起會＞。チーム哀をフィーチャーした仙台公演『悲哀ノ夜』には、ZOMBIE、ザアザア、零[Hz]の3バンドと、大河元気（左馬之助役）、沢城千春（直政役）、峯田大夢（政宗役）、美藤大樹（家康役）が参加。ゲスト声優と各バンドのボーカリストが出演する“幕間キャラトーク”や、ときに激しく、ときに繊細な楽曲を響かせたステージに、“有害人類Tシャツ”を着用したオーディエンスは深く酔いしれた（“有害人類”は『マガツノート』に登場する用語であり、同プロジェクトのファンネーム）。


トップバッターを務めたZOMBIEは、「『マガツノート』が大好きな奴らが集まったってことだよね!?」と奏多（Vo）が叫び、怪しげなベースリフから「腐り姫」へ。お馴染みのゾンビダンスを繰り広げたり、「シン・細菌マン」ではフロアの上手側と下手側を交互にジャンプさせたりと、有害人類を激しく巻き込んでいく。場内の熱気をぐんぐんと高めていく中、その熱を「もっともっと熱くしたくない！？」と、左馬之助役の大河元気を呼び込み、『マガツノート Season:1』で「蛇-ウロボロス-」に提供した「ウルトラムシケラボーイ」を披露。



大河はセリフを交えながら、ときにがなるようにメロディを叫び上げ、有害人類のテンションを引きずり上げていた。大河を送り出した後、ラストナンバーの「クソッたれが」へなだれ込んだのだが、曲の途中で奏多がステージからはけていく。なにかトラブルがあったのかと思いきや、なんと舞台袖でライブを観ていた政宗役の峯田大夢を引っ張り出してくるというサプライズ。峯田が凶暴なシャウトを炸裂させるという、1組目から凄まじい熱狂を巻き起こすステージとなった。


続いて登場したのは零[Hz]。ド派手なエレクトロサウンドに乗って登場した5人は、「SINGULARITY」でライブスタート。続く「Changing Mrs.SATELLITE」では、ROY（Vo）が強烈なロングトーンのデスボイスを放ち、アップテンポな楽曲を豪快に畳み掛けていく。その勢いを加速させるように次の曲へ突入……しそうだったのだが、突如テンポを緩め、「叶えたい夢と、守れない君と」を披露。センチメンタルなミディアムナンバーを挿し込んできたところは、仙台公演のコンセプトでもある「悲哀ノ夜」をイメージしたものでもあるだろう。伸びやかな歌声とエモーショナルな演奏で有害人類を魅了した。


また、ソロ回しを繰り広げた「DarthHerz」から、『マガツノートSeason:1』でMAD FANGに書き下ろした「惡⻤招雷」を曲間ゼロで繋げるなど、巧みなライブ運びで瞬く間にラストナンバーへ。「“悲哀ノ夜”だけど、今日は悲しみの向こう側にある幸せを表現しに来ました。一緒に幸せなこと、楽しいことを数えていこう」というROYからのメッセージの後、「VENOM」を力強く高鳴らし、最後までノンストップで駆け抜けた。


3組目のザアザアは、「悲哀ノ夜」というこの日のコンセプトに最もふさわしいバンドとも言えるだろう。1曲目の「被写体は死体」から、メランコリックなメロディと激情的なバンドサウンドで、胸を激しく締め付けられるほどに苦しくなる光景を描いていく。「今日は哀しみの日らしいです。哀しみの涙、大雨降らしましょう」と、一葵（Vo）が告げて「大雨警報発令」へ。異常なまでの重音を轟かせ、そのまま「死にたい」になだれ込む。4人が1曲1曲に込める熱量が異常なまでに高く、嘆きに満ちた言葉達を吐き出していきながら、一葵はもちろん楽器隊もフロアにいる有害人類を片っ端から煽り倒していた。


そんな凶暴なステージから一変、一葵が内省的な詩を朗読し始めると、左馬之助役の大河元気、直政役の沢城千春、家康役の美藤大樹の3人がステージに姿を現す。そして、ザアザアが「戦シーズン 壱st Battle 『桜華狂騒』」で光秀・家康連合軍に書き下ろした「闇と桜」を、4人ボーカル編成で披露。4人はかわるがわるメインを取りながら、憂いと感傷に満ちたメロディをフロアに届けていた。


3バンドからのバトンを受け取ってステージに登場したのは、政宗役の峯田大夢。彼はYuh（G／vistlip）、燿（B／摩天楼オペラ）、ササブチヒロシ（Dr／CREATURE CREATURE）の3人によるサポートバンド「マガツノバックバンド」と共に、「破壊天秤」を披露した。この曲は『マガツノート』ソロ楽曲プロジェクト【COVER&EXPOSE】から生まれた政宗のオリジナル楽曲。同プロジェクトでは、1武将につき2曲のソロ曲が制作され、「COVER」は“キャラクターの外面的な部分を、人気アーティストのダークな名曲をカバーすることで表現”、「EXPOSE」は“キャラクターの知られたくない素顔や弱さ等の内面をオリジナル楽曲で表現”するというものになっている。


ヘヴィなバンドサウンドが鳴り響く中、峯田は様々なシャウトを使い分けつつも艶のある歌声とパフォーマンスで、有害人類のヘッドバンギングを誘発していた。さらに、峯田と入れ替わる形で、左馬之助役の大河元気と、直政役の沢城千春の2人がステージに登場。ボイスドラマでのMCを挟んだ後、2人は『戦シーズン2』チーム哀・屠所之羊のテーマ曲「遺書擬き」を歌唱した。ラップも交えながら、サビでは熱のこもったユニゾンを響かせる大河と沢城。そんな2人とマガツノバックバンドによる熱演の余韻が漂う中、ライブの幕が降りたのだった。




現在も様々な企画が進行している『マガツノート』だが、8月27日には、同ツアーの千秋楽公演＜荒魂大祭＞が、ヒューリックホール東京で開催されることになっている。出演者は、峯田大夢、小笠原仁（秀吉役）、馬場惇平（官兵衛役）、大河元気、美藤大樹、岡本和浩（忠勝役）、沢城千春、神尾晋一郎（織田信長役）、堂島颯人（才蔵役）の9名。こちらは『戦シーズン2』の楽曲をはじめ、『マガツノート』の楽曲達を声優陣が歌唱するフェスライブになるとのことだ。

文◎山口哲生
写真◎村長 / タカハシ