【インタビュー】レイ・バービー、「 <GREENROOM FESTIVAL>が何より素晴らしいと感じるのは、人々が集まって祝福するという素晴らしい文化を持っていること」
レイ・バービーが来日公演を行う。レイ・バービーと言えば、かのトミー・ゲレロの盟友として知られており、彼同様、スケートボード・カルチャーで名を馳せ、ミュージシャンとしても活躍、そして日本びいきでもあることはご存知の通り。2000年以来ほぼ毎年、来日していた彼が「こんなに何年も日本から離れていたのは初めてだよ」というほど楽しみにしているという今回の公演。さっそく今の思いを聞いてみた。
◆ レイ・バービー 関連画像
■スケートボードのカルチャーは
■サーフィン、アート、ストリートのカルチャーと繋がるものがある
──体調はいかがでしょうか? スケートボードをやられているのでコンディションはバッチリでしょうか?
レイ 元気だよ。僕は特別なトレーニングとかはしないけどね。日常にするのはスクワットとかストレッチくらいかな。スケートボードも毎日するわけじゃない。
──またご家族はいかがお過ごしですか? 息子さんは大きくなりましたか? レイの奥様は教師と聞いてます。お元気でしょうか?最近のカリフォルニアでの活動を教えてください。
レイ 今ちょうど夏休みで学校も休みなので何時もより家族と時間を過ごすようにしているんです。妻に子供、犬と猫も居るから責任重大なんだよ(笑)! 普段は仕事で家を留守にすることが多いから、夏休みくらいはね。じゃあ夏の間はいつ仕事するのかって? 僕自身にも分からないけど、するしかないよね(笑)、時間がちょっと空いたときにね。
普段学校があるときは音楽、スケートボード、写真撮影などにかける時間がもっとあります。僕はスケジュールを決めて仕事をするタイプじゃないし、毎日の日課とかはありません。だから例えば目が覚めて、サウンドが頭に思い浮かんだら忘れないうちに録音しなきゃって感じで作業が始まります。あるいは起きてすぐ散歩に出かけて、「今日はなんて天気が良いんだ!」ってなったら写真撮影をしたり、あるいは友人が一緒にスケーティングに行こうって電話して来てスケートボードしたり。日によってはバンドと演奏しに出かけたり。今ちょうどソロアルバムにとりかかるところなのでアイデアを得たりするのにね。僕の活動は日によって違う……ジャズみたいな感じに(笑)。多くの人はスケジュールに従って仕事をするでしょう? 僕も同様に責任を持ってやり遂げなきゃいけない仕事がたくさんあるけど、時間の枠がとても大きいから自分で時間をコントロールできるので、自由が有ります。選択できることがラッキーだと思います。
──スケートや音楽制作中以外にロングビーチの海、自然、人々、町のエネルギーから、あなたの制作意欲は生まれてくるのでしょうか?
レイ (ロングビーチでの生活から得るインスピレーションが多いことは間違いないね、ロングビーチが大好きだから。オレンジ・カウンティで場所もとても便利だし。コラボレーションの多いVANSの本社もすぐ近くにある。ロングビーチはどこに行くのも便利で助かる。ロサンゼルスまでは40分くらい、サンディエゴも1時間強で行けます。大都市に近いけど少し離れているところがいい。ビーチタウンだけど波が高くないのでサーファーは来ないし。ボートが来るポートタウンでもある。僕はサーファーの人たちは大好きだけれど、サーファーの観光客を呼び入れようとしてビーチの周囲を開発するマーケティングが嫌なんだ。今のままのロングビーチが好きだから変わらないでいてほしい。それにマーケティングのためにビーチ周辺が開発されると生活費も値上がりして、観光客も増えて住んでいる住民がもう住めなくなることもよくあるから。それにチェーン店がたくさん増えて街の良さが無くなることもあるでしょ?
──レイは「ただ音楽を作りたいという気持ちがあるからやるだけ。その気持ちは神から授かったものだし、音楽をやっているとすごく楽しいしね。音楽制作の面でもっとも大切にしているのは、“過程を楽しむ”ということ。頭にあるアイデアを音楽という形にするためには、それがすごく大事だと思うんだ」と言っていますが、ヴィジョンは変わっていませんか?
レイ 100%そう感じてるよ。もし自分のやっていることが愛せなくなったら辞めるしかない。だって好きでもないのに音楽をするっていうのは誠実じゃないし、フェアじゃないと思う。
──<GREENROOM FESTIVAL>にはトミー・ゲレロと一緒に最多出場かと思います。<GREENROOM FESTIVAL>はサーフィン、スケート、アート、“セイブ・ザ・ビーチ”がコンセプトですが、このフェスティバルやオーディエンスなどに何か感じることはありますか?
レイ <GREENROOM FESTIVAL>で演奏できて光栄に思っています。<GREENROOM FESTIVAL>や、それに影響を与えた<The Moonshine Festival>も、僕が何より素晴らしいと感じるのは、人々が集まって祝福するという素晴らしい文化を持っていること。とてもユニークだし、その一部分として演奏できると思うと本当にワクワクする。他にはない雰囲気です。僕はスケートボーダーで、スケートボードのカルチャーはサーフィン、アート、ストリートのカルチャーと繋がるものがあります。
──9月9日(土)横浜で行われる今年の<Local Green Festival>ではどんなプレイを披露してくれますか?
レイ 昔の曲、それからまだ録音していない新しい曲も披露しようと思っています! だから来るお客さんは初めて聴くことになるよ。新しい曲気に入ってくれるかな? どうだろう(笑)?
──10日日曜日高崎、11日月広島、12日火曜日京都、13日水曜日名古屋の地方公演もありますが、各地のファンに一言お願いします。
レイ 名古屋には行ったことがあります! また行けるのが嬉しいな~。僕にとって初めての街に行けるのも楽しみでしょうがない。日本に行けるのが嬉しくてワクワクする! コロナでもう何年も行けてないからね。2000年以来日本には毎年か一年おきくらいには行っていたのに、こんなに何年も日本から離れていたのは初めてだよ。この前来日ツアーしたのは確か2018年、僕のアルバムのリリースのときだったと思う。日本に戻って皆さんと僕の音楽を一緒にシェアできるのが楽しみです!
■僕の音楽を映画に使ってくれたお陰で
■音楽を仕事にするという機会が開かれた
──あなたはトミー・ゲレロの盟友であり、現役のプロ・スケートボーダーでもあります。同時に音楽制作にも力を入れていますね。自宅で録音した音源をトミー・ゲレロに聞かせたところ、それをトミーが気に入ってgalaxiaに紹介した経緯があったそうですが、本当ですか?
レイ そうなんです。95年か97年か? 思い出せないけど90年代半ばだと思います。そのころトミーがファッションの会社を持っていて、宣伝用のビデオの製作をしていて、僕の音楽をビデオ用に録音してくれと依頼して来たんです。気に入ったらビデオに使いたいからって。それで家で録音して渡したら、トミーがgalaxiaに紹介してくれたんです。
──そしてサーフィンやスケートボードの映画監督トーマス・キャンベルに紹介したことがきっかけで、01年galaxiaからデビューEP「トライアンファント・プロセッション」をリリースすることになりました。メロウ/チルアウト/ジャズ…etcのキーワードを想わせ、自由でリラックスしたサウンドがスケーターやサーファーなどの間で話題となりロングヒットを記録しました。いま聴いても傑作だと思います。
レイ トーマス・キャンベル監督が僕の音楽を彼の映画に使ってくれたお陰で僕にとって音楽を仕事にするという機会が開かれたんです。たくさんのサーフィン関係の会社から問い合わせがあってイベントに来て演奏してくれと依頼して来て、サーフィンをする人たちのパーティでの演奏の依頼もたくさん来ました。それで音楽でお金を稼げるようになった。それ以前は誕生日パーティーの演奏等小さな催しの演奏での仕事はあったけど、サーフィン業界の大きなイベントに出演するようになって変化が訪れました。
──05年2月に行われた第一回<THE GREENROOM FESTIVAL>に出演、3月には、サーフィン映画金字塔『スプラウト』のサウンドトラックに3曲提供、そして同年7月にファースト・アルバム『イン・フル・ヴュー』をリリース、独自のリズミカルなギター、そしてメロウな世界観を増幅させ、幅広い層から支持を受けました。『スプラウト』のエピソードを教えてください。
レイ 映画『スプラウト』で楽しかった思い出はトーマス・キャンベル監督と一緒に各地で開催されたプレミア上映会のツアーに出かけたこと。サーフィンが盛んな地域の都市や映画を上映する映画館を多数廻って、上映前に映画のサントラの僕の曲を生演奏しました。それまでにない経験をできて楽しかったし、それまで接する機会の無かったサーフィン・コミュニティの人たちとも触れ合えて良かった。素晴らしい観衆で僕の音楽を楽しんでくれました。
──『イン・フル・ヴュー』は、ここ日本でも1万枚に迫る大ヒットを記録し、現在の西海岸のストリート・ミュージックを象徴する一枚となっています。またこの作品に近いサウンドを制作するアイディアはあるのでしょうか?
レイ 実はちょうど新しい音楽プロジェクト(アルバム)に取りかかっていて、その中に『イン・フル・ヴュー』に近いサウンドの曲ができる予定です。今はいろんな呼び方があるけど、あのころは粗末な機材を使って家で録音するので、“DIYレコーディング”って呼んでた(笑)。4トラックくらいまでのテープレコーダーで録音してた、あのころみたいなフィーリングでね。そんなフィーリングって魅力的だと思うんだ。(聴き手にとって)親密な感じがして、「オーディオ」とか「加工された音」とかじゃなくて目の前で自分のために演奏してくれてる感覚っていうのかな。『イン・フル・ヴュー』と全く同じではないけど、あのアルバムを聴いてくれたリスナーが新しい曲を聴いてくれるとしたら、きっと「あの感じだ!」って気づいてくれると思う。僕が作ってるんだし、新しいフォームでクリエイトする“あの”フィーリングなんです。
──さらに同年12月には、『スプラウト』のサウンドトラックでのセッションがきっかけとなり、トミー・ゲレロ、マット・ロドリゲス、チャック・トリースの4人によるスペシャル・プロジェクト”BLKTOP PROJECT”として8曲入りのミニ・アルバムをリリースしましたね。たくさんの話題を振り撒いた’05年度レイ・バービーは、一気に音楽シーンでも知名度を上げることになりました。 ”BLKTOP PROJECT”のエピソードを聞かせてください。
レイ “ブラックトップ プロジェクト”って発音するんだよ。当時の『スラップマガジン』(現在は廃刊)の写真の編集にいたジョー・ブロークという友人のアイデアで、雑誌『ナショナルジオグラフィック』が扱った、シカゴからニューオリンズまでの“ブルース街道”の旅をヒントにして、同じブルース街道をスケートボードで旅しながら写真撮影をしたんだ。そしてそこで生まれたインスピレーションを元に作曲をしてホテルの部屋で録音した。『スラップマガジン』の“ブルース街道スケートボードの旅”の記事が出版されると、読者が皆僕たちの音楽をダウンロードして聴き始めたんだ。それでgalaxiaが興味を持ってくれて、その時点ですでに録音した曲が5曲くらいあったので、もっと曲数を増やしてミニアルバムをリリースしたいという話になった。それで僕は家でさらに何曲か作曲して、そこにトミー、マット、チャックが各々のトラックを足して仕上げて、僕たちはこれをブラックトップ プロジェクトと呼んだのです。
──07年3月にはgalaxia入魂の新人ザ・マットソン2との共作盤『レイ・バービー・ミーツ・ザ・マットソン・ツー』をリリース、その後スタジオ・コースト、渋谷DUOなど日本ツアーを行い高い評価を得ました。またレイ・バービー&マットソン2をアルバム単位で復活することをありますか?
レイ タイムリーな質問ですね(笑)。実は僕たち最近また一緒に活動していて、8月にマットソン2と一緒にショーをします。それからまた一緒に音楽を作りたいと話していたところなんです。だから一緒にアルバムを作れたらいいなと思います。『Ray Barbee Meets The Mattson 2 Part 2』かな?
──最後にやっとコロナ禍が落ち着きそうです。その一方で、いまは戦争中で現地では信じられない状況がテレビに映し出されています。あなたは音楽だけではなく、社会的に影響があるので、どう世界は秩序が守られて平和になってくると思いますか?
レイ (溜め息)……この質問の答えは見つからないけど、現代社会に人間性が壊れていると感じることが多いです。僕はキリスト教徒だから、イエス・キリストの言葉の中に、僕ら人間がお互いを傷つけ合うのではなく愛し合うようになれるように心の状態を良くしていくためのヒントを探っています。僕たちは人間が神によって創造されたという教えを忘れ、謙虚さを失ない、あたかも自分が一番だと言うかのように他人をないがしろにしがちです。それによって人々の心の中に例えようのない“いらだち”の感情が生まれ、他人をああだこうだと決めつけて傷つけ合うんだと思います。人種差別もそうですね。僕たちの皮膚の色も、髪の色も、瞳の色も与えられた物であって僕たちが決めつけるべきでもなく、本来ならそれぞれの違いを尊重し合って愛し合うべきなのに。現代社会はそれが極端なところまで行ってしまって“あの人は人種差別者だ!”と訴えられて仕事を首になることだってあります。そうやって人間同士の関係や国までもが引き裂かれて傷つけ合っているひどい状況です。例えばひどい風邪をひいたときに症状を抑えるだけの薬を飲んで我慢して仕事に行くとします、そのときは収まるけど、また症状が悪化します。抗生物質を飲んでしっかり休んでウィルスを元から絶つことが必要なのかもしれません。抗生物質は数日飲み続けるだけで効くでしょうが、僕たち人間ひとりひとりの根本的な心の問題を改めようとすると一生かかるかも知れませんね。
──音楽にはヒーリング効果があると言われますが、あなたはどうお考えですか?
レイ 僕は音楽をクリエイトできるのが最高に楽しく、また感謝すべきことだっていつも思っています。それは音楽によって人々のバイブやモーティベイションを上げることができるからです。車を運転してる人が居眠りしないようにするのにも役立つしね(笑)! 音楽は一般的に人々の気分を良い方向に変えられると思う。音楽の持つリズムとか何かが人を楽しませる力を持っているし、大体音楽が与えてくれるリズムとかサウンドが無かったとしたら僕たちの人生はどうなっちゃうのか想像がつかないよね?
インタビュー:YASUSHI TAKAYAMA (RUSH! PRODUCTION)
通訳:MIKI ISHIKAWA
<RAY BARBEE SOLO JAPAN TOUR 2023>
https://instagram.com/localgreenfestival
https://localgreen.jp
9月10日(日) HUBFUN @ 高崎
https://instagram.com/hubfun_skate
https://hubfun.localinfo.jp
9月11日(月) CLUB QUATTRO @広島
https://instagram.com/hiroshima_club_quattro
https://www.club-quattro.com/sp/
9月12日(火) METRO @京都
https://instagram.com/metro_kyoto
https://www.metro.ne.jp
9月13日(水) 24PILLARS @名古屋
https://instagram.com/24pillars
https://www.24pillars.online
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◆レイ・バービー オフィシャルサイト(RUSH! PRODUCTION)