【コラム】ももクロがNIPPONで頑張る人たちへ贈る渾身の応援歌、「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」
結成15周年のアニバーサリーイヤーを迎えている、ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)の激走が止まらない。それどころか、ギアを上げてますます加速度が増している。
まず、ここまでの15周年のトピックを、かなりざっくりとだが、振り返ってみよう。4月に、結成15周年記念ソングとして「いちごいちえ」をリリースした。これは10周年記念ソング「クローバーとダイヤモンド」を手がけたC&Kが15周年に再び手がけたニューアンセムと呼ぶべきナンバーだ。アニバーサリー感を随所に潜ませた歌詞では、感謝の気持ちをいっぱいに伝えながら、その先へと続く明るくも力強い未来を高らかに宣言している。
5月には、ももクロの生まれた日=結成記念日とその前日に、彼女たちの出発点ともいえる代々木の地で記念ライブ<代々木無限大記念日 ももいろクローバーZ 15th Anniversary>を開催した。サプライズとして、4人自らが作詞に挑戦した「ヒカリミチ」をライブ会場やオンライン配信で集ったモノノフたちに歌いかけ、感涙せしめたのも記憶に新しい。
7月に入ると、ゆかりの深い田中将大投手の2023年度登場曲で、BLUE ENCOUNTが手がけた「Re:volution」の配信がスタートした。また、同時期に始まった15周年記念ツアー<QUEEN OF STAGE 15th Anniversary Tour MOMOIRO CLOVER Z>でも、サプライズは用意されていた。それが、ツアー初日に披露された新曲「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」である。この楽曲を聴き、改めて2023年がももクロ15周年記念イヤーであることを実感したモノノフも多かったのではないだろうか。
こうして、ももクロの15周年記念イヤー・前半戦を振り返るだけでも、4人が活動の中で重ねてきた大切な人との出会いに思いを致し、いま一度、真正面から感謝を伝えながら、また一緒に手を携えて歩き出そうとしている姿勢が見えてくる。そんな誠実さもまた、ももクロらしいではないか。
この新曲「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」でも、タイトルからも分かるように、2012年に発表されたももクロのヒット曲「サラバ、愛しき悲しみたちよ」でコラボレーションを果たした布袋寅泰との邂逅を、11年の時を経て果たしている。
作詞・作曲を手がけたのは、「行くぜっ!怪盗少女」をはじめとする、ももクロの人気曲を多数手がけてきた音楽プロデューサーの前山田健一(ヒャダイン)だ。ポップでキャッチ―ながら、ヒャダインらしく非常にロジカルで複雑かつ綿密にアーキテクトされた楽曲は、寸分の隙もない。
そんなリスナーコンシャスでありながら、音楽的難易度の高い楽曲の編曲を任されたのは、2名のロックスピリッツを備えた俊英クリエイターたちだ。1人は、元ロックバンドHaKUのギター・ボーカルで、UVERworldやなにわ男子などに楽曲を提供する辻村有記。もう1人は、元ミクスチャーバンド、EdgePlayerのギタリストで、緑黄色社会やAdoなどの楽曲で手腕を振るっているNaoki Itaiだ。
彼らのタッグにより、サウンドに2023年感をナチュラルにじませつつ、聴き手を鼓舞する不滅のロックスピリッツというジェネレーションを問わない共通言語を大切にしていることが伝わってくる。それはまるで、ヒャダインという天才が投げる超剛速球を、2人のクリエイターは快音とともにキャッチャーミットへ美しく収めるがごとくであり、むろん布袋寅泰の奏でる、ときに雄弁に語り、流麗に歌い、そして、荒々しく吠えるようなギターの存在感をも減退させることは決してないのである。
こうした表現者同士のハッピーなコラボレーションもまた、ももクロらしさではないだろうか。ももクロという、変幻自在でありながら個性が際立つ素材でなければ、強烈なアイデンティティを備えるアーティストやクリエイターが、寄ってたかって料理することは難しい。才気あふれるアーティストたちが楽しみながら作り上げた楽曲によって、彼女たちの個性は薄れるどころか、むしろ新たな部分にあてられた光によって、魅力を増し続けてきた。アニバーサリーソングであっても、回顧主義に陥ることなくこうして音楽性を更新し続ける様にももクロの凄みを感じずにはいられない。
さて、小難しい話は置いといても、「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」は手放しで楽しめるアッパーチューンだ。のっけから畳みかけてくるようなリフや、高速で矢継ぎ早に勢いある言葉を投げかけてくる4人ボーカル、巧みでエモーショナルなギタープレイなど、聴いているだけで体の内側から熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ない。うっかり、通勤通学中などに聴いてしまったあかつきには、「叫べ!」の号令にあわせて、大声を出しそうになる衝動を、なんとか理性で思いとどまらせるモノノフも少なくないのではないだろうか。キャッチ―で祭り感漂うサビは、思わず歌いたくなること必至で、ライブで必ずやももクロとモノノフの堅固な一体感を示すことはもちろん、初めて聴いた方でもグッと心を掴まれることだろう。
なぜ、これほどまでにももクロの歌は、聴く者の気持ちを湧き立たせるのだろうか。おそらく、それは彼女たちの歩みそのものが、歌に色濃く投影されているからではないかと推察する。
本楽曲の一節にこんな歌詞がある。“Idol means Warrior!/差別も区別もなんからなんまで/ぶっ壊して”──この短いフレーズから感じ取ったのは、彼女たちの笑顔の裏側で繰り広げられてきたであろう葛藤と闘いの日々だ。ときに、誤解や先入観から生じる、偏見や白眼視をも飛び切りの笑顔でかわし、その悔しさを前向きなエネルギーに替えて自分たちの推進力としてきた。悔しさやつらさを十分に知るから他者に対して優しさを持てる、そんな4人だから、いまこのNIPPONで頑張る人たちへのパワフルな応援歌を、真実味をもって届けられるのだと思う。
だって、たいして頑張ってないやつに、「頑張れよ」と言われても、全然心に響かないどころか、むしろ反発したくなる。でも、自分以上に頑張っている人から言われたら、「そうだよな」と素直に思えるし、その言葉はむしろ心の支えになるではないか。
社会の様々な場所で懸命に生きるモノノフたちへ、そして、そのモノノフの大切な人たちにも、ももクロはずっと励ましの歌を贈り届けてきた。そんな彼女たちが、15周年の節目として、真夏に打ち上げる花火のようにあっけらかんとして、楽しく、そして、あとから余韻がじんわりと残る……そんな名曲をギフトとして贈ってくれたのだと感じた。
ちなみに、「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」は、8月4日から配信されている。この楽曲をはじめ、たくさんの新旧のナンバーを携え、夏から秋にかけてももクロは、ツアーとフェスで全国を飛び回ることが決まっている。これまでそうであったように、一ミリの余力も残さず各会場で大暴れすることになるだろう。モノノフは嬉しい悲鳴を上げながら、彼女たちにしっかりと喰らいついていくことになりそうだ。彼女たちの獅子奮迅の働きぶりは、あたかもモノノフの本気度と精神力を試されているのではないかと思うほどである(そんな意地悪なことは絶対にしないと分かっているが、それくらい、ももクロのライブ体力と活動への精神力、集中力はすさまじい)。
そして15周年の様々な活動や経験、そこで気づいたことや芽生えた感情により生まれた表現で、彼女たちはきっとステージの女王であることを自ずと証明してくれるだろう。少し気は早いが、この先のももクロがいったい何を魅せてくれるのか、そう思っただけでさらなるワクワクが止まらないのである。
文◎橘川有子
「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」
2023年8月4日(金)配信開始
配信リンク一覧:https://mcz.lnk.to/MNNFNIPPON
作詞・作曲:前山田健一
編曲:辻村有記/Naoki Itai
Guitar:布袋寅泰
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