ブルックナー演奏の伝統を担うウィーン・フィルが巨匠ティーレマンのもとで完成させた全集が、作曲者生誕200年の前祝いとして2023年10月発売

ポスト
(C)Dieter Nagl

2023年10月、クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナーの交響曲全集が、2023年10月にリリースされる。

◆ ブルックナー交響曲全集 関連画像

収録されているのはブルックナーの番号付きの9つの交響曲(第1番~第9番)のほか、習作とされる交響曲ヘ短調、作曲者によって「無効」とされ、従来は「第0番」とも称されることのあった交響曲ニ短調を合わせた全11曲の交響曲。これは2024年の作曲者生誕200年を記念するプロジェクトで、ウィーン・フィルがひとりの指揮者で完成させる初のブルックナーの交響曲全集で、全11曲のうち5曲が今回初発売となる。

ウィーン・フィルほど作曲者ブルックナー自身との絆の深さを誇るオーケストラはほかにない。1873年に作曲家の指揮で交響曲第2番を初演して以来、1881年には第4番、1883年には第6番の第2・第3楽章、1890年には第3番、1892年には第8番を初演し、ブルックナーの音楽と独自の関係を築いてきた。特に1892年のハンス・リヒター指揮による交響曲第8番の初演は、ブルックナーの生前に自作が文句なく称賛され大きな成功を収めた、数少ない機会のひとつとなった。そうした絆を持つウィーン・フィルもモノラル時代から名指揮者のもとでブルックナーの交響曲を数多く録音してきたが、ヘ短調・ニ短調は今回のティーレマン指揮が同団史上初演奏で、この2曲も含む全11曲をひとりの指揮者で演奏・録音したのも今回が初めてである。

(C)Marco Barelli

いっぽうクリスティアン・ティーレマンは、2000年10月にR.シュトラウスの「ばらの騎士」組曲と「アルプス交響曲」を指揮してデビュー以来、ウィーン・フィルとは緊密な関係を保ち、定期演奏会、特別演奏会や音楽祭、演奏旅行など、数多く共演を重ねてきた。中でも、2008年~2010年にかけて行われたベートーヴェンの交響曲全曲演奏は、パリ、ベルリン、東京、モスクワでも時期を置いて開催され、音声・映像ソフトとしても発売されたことで相性の良さが世界規模で認知されたと言える。

ティーレマンがウィーン・フィルでブルックナーの交響曲を取り上げたのは、2003年11月、サヴァリッシュの代役として東京で指揮した第7番が最初。2019年4月の第9回定期演奏会で取り上げられた第2番をもって、ユニテル、ソニークラシカル、ウィーン・フィルの共同制作による交響曲全曲の映像と音声の収録がスタートした。以後ウィーンおよびザルツブルク音楽祭での演奏の機会を捉えて順次収録が進み、2022年7月、ザルツブルク音楽祭での第9番で全11曲の収録が完成した。この間コロナ下ゆえの無観客上演でも5曲が収録されている。

ティーレマンはウィーン・フィルの持つブルックナー演奏の伝統に寄り添い、豊潤かつ濃厚なサウンドを生かした流麗な解釈を披露。弦楽器の対向配置も作品の構造を浮き彫りにし、大きな効果を上げている。ティーレマンはドレスデン・シュターツカペレと2012年から2019年にかけてブルックナーの交響曲全曲を演奏しソフトとしても発売されているが、そこには含まれなかったヘ短調・ニ短調の2曲、さらにオーケストラの特性を生かして敢えてウィーン稿で演奏している第1番には一層の注目が集まるだろう。

またこれまでに単独で発売された6曲についてはワールドワイドのメディアで大きく取り上げられ、「録音されたサウンドは、広々とした空間とディテールの明瞭さの間でほぼ理想的なバランスを保っている」(英『BBCミュージック・マガジン』誌)、「驚異的なオーケストラを指揮するティーレマンの最高の演奏を聴きたいなら、まさにこれだ」(米『ファンファーレ』誌)、「繊細さ、表現力、音色の魅力が催眠術のように混ざりあい、聴き手を作品へと導いていく」(英『グラモフォン』誌)など、熱い賞賛の言葉が贈られている。

なお、日本国内プレス盤のみオーディオファイルを見据えたハイブリットディスクでの発売となる点も要注目したい。


『ブルックナー:交響曲全集 』クリスティアン・ティーレマン(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

◎日本国内プレス盤
2023年10月25日
Sony Classical SICC-10437~47  ¥19,360(税込)
仕様:ハイブリッドディスク11枚組 マルチケース2つを厚紙製三方背ボックスに収納 別冊解説書付き

◎輸入盤
2023年10月13日
Sony Classical  19658760172 オープンプライス
仕様:通常CD 11枚組 各ディスクは紙ジャケットに収容し、厚紙製クラムシェルボックスに収納 172ページの別冊解説書付き

[収録曲]
ブルックナー(1824-1896)
DISC1
交響曲ヘ短調 WAB 99★
[原典版(新全集X 1973年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2021年3月27日&28日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 2
交響曲第1番 ハ短調 WAB 101 ★
[1891年第2稿(ウィーン稿新全集I/2 1980年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2021年4月12日~14日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 3
交響曲ニ短調 WAB 100「無効」★
[原典版(新全集XI 1968年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2021年3月27日&28日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 4
交響曲第2番 ハ短調 WAB 102
[1877年第2稿(新全集新版II/2 2007年出版)/キャラガン校訂]
[録音]2019年4月25日~28日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 5
交響曲第3番 ニ短調 WAB 103 
[1877年第2稿(新全集III/2 1981年出版)/ノーヴァク校訂]
[収録]2020年11月27日~29日、ウィーン、ムジークフェラインザール

DISC 6
交響曲第4番 変ホ長調 WAB 104「ロマンティック」
[1878/80年稿(旧全集 Band 4 1936年出版)/ハース校訂]
[録音]2020年8月19日~22日、ザルツブルク、祝祭大劇場

DISC 7
交響曲第5番 変ロ長調 WAB 105
[原典版(新全集V 1951年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2022年3月5日~7日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 8
交響曲第6番 イ長調 WAB 106★
[原典版(新全集VI 1952年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2022年4月30日、5月1日、2日、ウィーン、ムジークフェラインザ-ル

DISC 9
交響曲第7番 ホ長調 WAB 107★
[原典版(旧全集 Band 7 1944年出版)/ハース校訂]
[録音]2021年8月1日&3日、ザルツブルク、祝祭大劇場

DISC 10 81:27
交響曲第8番 ハ短調 WAB 108
[1887/1890年第2稿(旧全集 Band 8 1939年出版)/ハース校訂]
録音]2019年10月5日&13日、ウィーン、ムジークフェラインザール

DISC 11 57:38
交響曲第9番 ニ短調 WAB 109
[原典版(新全集IX 1951年出版)/ノーヴァク校訂]
[録音]2022年7月28日&30日、ザルツブルク、祝祭大劇場
★初発売

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:クリスティアン・ティーレマン
[ユニテル]
レコーディング・プロデューサー:アーレント・プローマン
バランス・エンジニア:ペーター・ヘッカー
[ORF]
レコーディング・プロデューサー:フリーリアン・ローゼンシュタイナー(ヘ短調・第0番・第1番~第3番・第5番・第6番・第9番)、ミヒャエル・ブレース(第6番)
レコーディング・エンジニア:クリスティアン・ゴルツ(ヘ短調・第0番・第1番・第3番・第5番・第6番・第9番)、マルティン・ライトナー(第2番)
マスタリング・エンジニア:マルティン・キストナー(b-sharpミュージック&メディア・ソリューションズ)

◆ソニーミュージック クラシック公式ツイッター
この記事をポスト

この記事の関連情報