【レポート】髭、20周年記念ライブに歴代9名が全員集合「出会いはあったけど別れはなかった」

髭が7月9日、デビュー20周年記念ライブ＜(4+1)×4＝XX＞を恵比寿LIQUIDROOMで開催した。

◆髭 (HiGE) 画像

ほとんどの人が未体験であろうバンドライブだった。この日、ステージに上がったのはなんと総勢9人。いやいやスカパラも9人でしょ？という突っこみは成立しない。なぜなら、今回の9人とはこれまで髭に関わってきた全メンバー、だったのだから。長い年月のあいだにいろいろあって退出したミュージシャンが一堂に会してしまう。これはなかなか見ることが出来ない光景だろう。

そう思った人が多かったのかもしれない。会場となったLIQUIDROOMは後方のPA席を取り巻くエリアも各時代のファンでぎっしり！　場外では「あ、ひっさしぶりー」みたいな声も飛び交っている。そして始まったライブは、現メンバー4人以外の人間が登場するたびに、このバンドが持つ多面性が明らかになっていく印象だった。



開演。まず須藤寿(Vo, G)、斉藤祐樹(G)、宮川トモユキ(B)、佐藤“コテイスイ”康一(Dr, Per)に加え、2014年まで正式メンバーだった川崎“フィリポ”裕利(Dr, Per)が登場。いきなり場内の興奮、爆上がりする。叩きながら舌を出したり、両手を上げたり、前に出てきたり…。そういえば髭ってキャラが立ったメンバーの集まりとして認知を広げていった部分もあったよなー。現メンバーの嬉しそうな顔も予想以上だった。

続いて、かつてのプロデューサーでギタリストとしてステージも共にしていた會田“アイゴン”茂一(G)が登場。プレイは的確、しゃべりで笑わせ、あげくギターをPAスピーカーにこすりつけたものの、シールドが抜けて音が出なくなってしまう。でも平然。このゆるさも髭の味わいを代弁していた。なお、彼の登場の3曲のうち後半2曲はドラマーが現在サポートをしているMO'SOME TONEBENDERの藤田勇(Dr)に代わっていた。


6〜8曲目はドラマーが元・踊ってばかりの国のメンバーで2020年までサポートを続けた佐藤謙介(Dr)にバトンタッチする。存在感で叩くフィリポ。バンドが持つルーズなノリに溶け込んだ藤田。対して謙介は誰よりもシャープなタッチで、ゆえにとかく音がグワングワンしがちなライブで最も音抜けのいいビートを放っていた。

この中盤ではキーボードのgomes (Key)こと中込陽大が登場。これまでキーボードが入っててもおかしくない曲をいろいろと発表してきた髭。アイゴンはギターでギターとは思えない音を出すことに目覚めた世代のプロデューサーだったし、斉藤は近年まさにそういうプレイを繰り出している。ゆえに本物のキーボードが入るというのもまったく違和感なかった。


後半は藤田が3曲叩いたあと、なんと9人全員がステージに立った。おそらくこういう場合、1曲だけやってシメになりそうなものだがそこは髭。本編ラストの3曲はこの編成のままやってのけた。しかもこの新旧取り混ぜのメンツで「髭よさらば」をやるおかしさ。そして「出会いはあったけど別れはなかった」という須藤の素晴らしい言葉から「きみの世界に花束を」。さらにはアンコールも9人で2曲をプレイ。最後にお客さんにも向かって「今日はみんな髭だと思っています」と閉めた。

話は戻って中盤、「TOMATO」というナンバーがあった。作品の大半を手がける須藤のエレキ弾き語りから始まる曲だ。この形が髭の原型だとすると、今回はそこに歴代のメンバーがどんな肉付けをしていったのか？目の当たりにできた。しかも入れ替わり立ち替わり誰が参加しても、髭の音楽であり続けた。お客さんの盛り上がりが絶えなかったのも、そのことを証明していた。その様を見て、どのミュージシャンもどこかの部分で髭と接点があったからこそ共演してたんだなあ、という事実を想った。


人の組み合わせがバンド。そのことを誰にも出来ない形で立体的に披露した髭。こういう20年目を迎えることができたのであれば、まだまだ先は長そうだ。そういえば7月19日には20周年を記念したアルバム『XX』をリリースする。こちらも今までになくコーラスを多用するなど、未だ進化し続けている4人の姿を耳にすることができる。なによりも変わらず良い詞・曲と演奏を聴かせながら。

取材・文◎今津 甲
撮影◎Wataru Umeda